憂いを薫ずる
Yeemar
- 05/8/26(金) 8:13 -
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萩原朔太郎の詩「盆景」に、
春夏すぎて手は琥珀とあり、また、「雲雀料理」に
瞳{め}は水盤にぬれ、
石はらんすゐ、
いちいちに愁ひをくんず、
ささげまつるゆふべの愛餐、とあります(いずれも『月に吠える』1917所収)。
燭に魚蝋のうれひを薫じ、
してみると、「憂いを薫ずる」という言い方がありそうに思われますが、手近の辞書には見えません。朔太郎語かもしれません。『日本国語大辞典』の「薫ずる」を引くと「かおらせる。におわせる。くんじる。」という語釈があるので、「憂いの香りをただよわせる」ということで意味は通じないことはありません。それにしてもめずらしいことばです。