2005年10月17日

つい読んでしまっていた

【32】
つい読んでしまっていた
 岡島昭浩
 - 04/4/29(木) 12:18 -
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「つい読んでしまう」
を継承するものです。

学部生時代に大学院の受験勉強をしていた時には、「てにをは義慣鈔」を「てにをは義憤鈔」だと思っていました。なんだか義憤にかられて書いた書だと思ったわけです。
院生になり、序文を読んで、この「義慣」が古今集真名序の「語近人耳、義慣神明」によるものだと書いてあることにより、間違いに気付いたのでした。

外題学問ではいかん、ということですね。

真名序は、
http://www5a.biglobe.ne.jp/~pinewell/waka/kokin/k_manajo.html
ここにありましたが、他にもありそうに思います。
ただ、古今集の歌だけとかは多くても、真名序はあまりなさそう。
(国文学研究資料館にはありますが、自由なデータではないので)



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読み方が分からない漢字表記の語 #

【91】
読み方が分からない漢字表記の語 #
 Yeemar
 - 04/5/21(金) 6:31 -
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読み方が分からない漢字表記の語
の続きです。
鹿児島の芋焼酎の逸品アサヒ(日當山{ひなたやま}醸造)は朝日の如くさわやかに≠フ心でつくる。県産のさつまいも「黄金千貫」を霧島山系の湧水で仕込み、常圧蒸留。芋香ほのかな美味。(『週刊新潮』2004.05.06・13 p.129)
「いもか」だろうと思いますが、分かりません。「うこう」ではなさそうです。

「香」は造語成分になれば「芳香」「薫香」のように「コウ」の読みで使われますが、「か」はあり得るものでしょうか。たとえば、イチゴの香りは「いちごか」(苺香)と言って分かるか。こういう場合は一語化せずに「イチゴの香り」というはず。「いもの香り」は「いもの香り」というしかないと思いますが、ウェブ上ではまま使われています(100件程度)。

「臭」は「シュウ」の読みで「カルキ臭」「学者臭」などとさかんに語を作ります。しかしこれは悪いにおいのほう。「香」に同様の造語力はなさそう。



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若い人のことば #

【285】
若い人のことば #
 Yeemar
 - 04/8/8(日) 15:31 -
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若い人のことば
を継承するものです。

■なるほどですね
最近、たてつづけに耳にしました。職種の異なる男性と女性から。どちらも推定20代後半〜30代。うなずくときに「ああ、なるほどですねー」「なるほどですね、なるほどですね」と言う。

「ですね」は間投助詞的な語です。「だからですね、もう少しですね、はっきりとですね、回答をですね、しなければですね」と、文節のおわりなら何でもつきます。ところが、感動詞にはつかない。「はいですね、わかりました」「よしですね、やりましょう」などとは言わない。なぜなら、感動詞と間投助詞とは役目がほぼ同じだから、感動詞に屋上屋を架すようにして間投助詞をつける必要はない。

ところで、「なるほど」は感動詞です。感動詞に間投助詞的な語がついている。それで注意を引くのでしょう。似たような例として「あのですね」「ええとですね」があります。これもむかしはへんだったのでしょう。



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この人が作った ##

【82】
この人が作った ##
 Yeemar
 - 04/5/19(水) 16:54 -
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この人が作ったの続き。
わたしが作ったの姉妹編。
肩がこる」という表現を初めて使ったのはだれか。
答え、夏目漱石。
「門」に「指で圧して見ると、頸と肩の継目の少し脊中へ寄った局部が、石の様に凝っていた」。
ちなみに、この「肩がこる」という表現は昭和になって庶民に広まったと言われる。〔以上要約〕
(NHK「ためしてガッテン・指圧!3つのお願い」2004.05.18 深夜2:35放送=2004.05.12の再放送)
これはクイズで、「森鴎外・夏目漱石・樋口一葉・二葉亭四迷」の中から選ぶのでした。おそらく『日本国語大辞典』の用例にあるところから、このようなクイズができたのでしょうが、『日本国語大辞典』の使い方を間違っているというべきものです。



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近刊『日本語源大辞典』(小学館)

【641】
近刊『日本語源大辞典』(小学館)
 岡島昭浩
 - 05/1/6(木) 2:44 -
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2月25日ごろ刊行予定。定価6000円+税。A5判 1282ページ。ISBN 4-09-501181-5
「日本語の語源に関する古来の諸説を集大成した日本最大の語源辞典」で、「約6000語をおさめる」とのこと。



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みなれないヘビが横たわっている

【1067】
みなれないヘビが横たわっている
 みさお
 - 05/10/7(金) 6:50 -
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各地で大型のへびが発見されるニュースが続いています。「みなれないヘビが横たわっていると市民が通報」とめざましテレビ(フジテレビ、10月8日午前6:35ころ)のニュースで報じていました。
でも「みなれないヘビ」って変な気がしました。発見されたのはニシキヘビ。見慣れないというか「動物園でしかみたこともないようなヘビ」というのが実際のところだと思うのですが、「みなれない」ってどの程度の「みなれなさ」に使用したらよいのでしょうか?



【1068】
Re:みなれないヘビが横たわっている
 道浦俊彦
 - 05/10/7(金) 8:13 -
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たしかに・・・。
「見慣れない〜」は、その「もの」や「動物」自体は「見慣れているもの」(たとえば犬や猫、人間、自動車など)だが、こと、固有のその「もの」に限ると、特徴などから「見た覚えがない、見慣れない」というふうに使うのでしょう。
だから「見慣れない犬、ネコ人、クルマ」などはOKです。

ところが、「ヘビ」はふだんから身の回りでごく普通に眼にするものではない(都会ににおいては)だけに、「見慣れない」は使えないのではないでしょうか?

一方「見たこともない」は、これまでの人生において視覚的に経験したことがない、ということで、「見たこともない犬、ネコ、クルマ」は、それまでに見たことがある犬やネコやクルマの概念を越えているということでしょう。
この場合の「ヘビ」も、動物園では見たことがあっても、街中での概念は超えているということであれば「見たこともないヘビ」と使えるのではないでしょうか。



【1069】
10月7日の間違いでした
 みさお
 - 05/10/7(金) 17:42 -
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10月8日と書きましたが7日(金)の誤りです。
訂正いたします。


ひとり旅

【1056】
ひとり旅
 道浦俊彦
 - 05/9/29(木) 22:06 -
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マラソンでトップ独走することや、転じてプロ野球などリーグ戦で他チームを圧倒的に引き離してトップをゆくこと、逆に引き離されて最下位をゆくことを、

「ひとり旅」

という表現を耳にしますが、なぜ「旅」なのでしょうか?
マラソンは「道行き」なので「旅」、野球の場合はペナントレースがリーグ戦で長いので、「旅」のように感じられるから?などとも考えられますが。

いつごろからこのような言い方をするようになったのでしょうか?



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「しか…ない」

【1058】
「しか…ない」
 MM
 - 05/10/1(土) 15:35 -
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はじめまして。検索で漂着しましてから興味深く読ませていただいております。

いきなりの質問で恐縮ですが、以下の二つの文章の違いが気になっています。

「わかる人にしかわからない」
「わからない人にはわからない」

両者の意味するところは同じだと言ってよいと思うのですが、
それぞれの述語の「わからない」は文法的にも同じなのでしょうか?
また、前者の「主語」は何だと考えればよいのでしょうか?



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幼貝

【1062】
幼貝
 道浦俊彦
 - 05/10/3(月) 18:41 -
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9月23日朝日新聞のサイトで、
「北海道厚岸町の特産かき”カキえもん”の『幼貝』が暑さにやられた」
という記事が載っていました。「稚貝」は「チガイ」で種苗にあたるそうですが、この「幼貝」はなんと読むのでしょうか?「ようがい」?それとも「ようばい」でしょうか?


こがわ(小川)

【1054】
こがわ(小川)
 Yeemar
 - 05/9/28(水) 20:44 -
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金田一春彦・安西愛子編『日本の唱歌 中』(講談社文庫)p.50所収、「故郷を離るる歌」(吉丸一昌訳詞、大正2年)の2番に「小鮒{こぶな}釣りし小川{こがわ}よ、柳の土手よ。」という歌詞があり、解説に
第二節の第二行「小川」に「こがは」と仮名が振ってあるのは不審。「をがは」の間違いではないか。一般には「をがは」と読まれていた。
とあります。こういう箇所は金田一氏が書いたのではないでしょうか。

ところで、『国定読本』巻三(第1期2年上、1904〈明治37〉年から使用)には「コガハ」という唱歌が載っており、
イヘ ノ マヘ ヲバ
ナガレル コガハ。
とあります。「こがは」は間違いではなさそうです。

そう思って『日本国語大辞典』を見ると、当然というか、「こがわ」は載っていました。日葡辞書や、この読本のこの歌の直前の文章などが出ています。唱歌の解説文の「間違いではないか」というのは、軽い気持ちで書いたのでしょうか。



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ぽち #

【1053】
ぽち #
 Yeemar
 - 05/9/28(水) 20:18 -
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ぽち
の続きです。

故團伊玖磨氏が健在のころ、テレビ(1997年)で「かめかめ、来い来い、まま食わしょ」という歌があることを口頭で紹介していました。それはいったい何の歌なのか、分かりませんでした。

『小学唱歌』(明治25年3月12日印行、3月14日出板)には、「ゑのころ」という歌が載っており、
ゑのころ
こいこい
ままくは
せう
とあります(『日本教科書大系 近代編5 唱歌』)。

作曲は伊沢修二で、「童謡 同人改作」とあります。伊沢修二が詞をいじっているのかどうか、わかりません。「かめかめ」が「ゑのころ」になったのか、その逆か、「かめかめ・ゑのころ」に共通祖先があるのか。


真逆

【1050】
真逆
 道浦俊彦
 - 05/9/27(火) 23:00 -
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「真逆」という言葉は、まだ辞書には載っていないのではないかと思いますが、いつごろ、どういうところから発生したのでしょうか?
議論や会議で相手の発言を封じつつ、注目を集めて発言機会を得るための言葉のように思うのですが。単に「逆」と言うよりも強調しているわけですよね。評論家の宮崎哲弥さんあたりが使っているような気がしますが。どうでしょうか?



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ぜんぜん大丈夫? #

【1049】
ぜんぜん大丈夫? #
 Yeemar
 - 05/9/20(火) 2:00 -
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ぜんぜん大丈夫?
の続きです。

「全然」のあとには、むかしから、肯定も否定も来ることが出来た、というのは今や定説であろうと思います。放送などでも耳にします。最近では、「全然可愛い」は、単なる肯定ではないということも指摘されています。つまり、「あなたは自分では可愛くないと思うかもしれないが、そんなことは全然ない、可愛いのである」という語感、いわば、広義の否定表現に変わりないというわけです。

研究上、なぞとされているのは、昔から肯定・否定形の両方があるにもかかわらず、なぜ「全然〜肯定」の形が批判の対象になったのか、ということ、また、批判されるようになったのはいつごろからか、ということであろうと思います。これについては、いくつか説が出されているものの、まだ霧がはれたとは行かないようです。

それに関連して――石坂洋次郎『青い山脈』〔1947年発表〕に、こういう部分があります(手元の新潮文庫 昭和43年1月47刷改版 昭和62年10月87刷では p.292)。
全然同意ですな」
 沼田は変な軍隊用語で、ポカンと気が抜けたように答えた。
石坂洋次郎は、「全然同意」というこの言い方に、1947年当時、「変な」という語感、かつまた、「軍隊用語」だという認識を持っていたことが分かります。おもしろい例だと思います。


「ぬ」と「ない」

【1021】
「ぬ」と「ない」
 Yeemar
 - 05/9/5(月) 12:04 -
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本棚の筒井康隆『旅のラゴス』(新潮文庫)を久し振りに手にとってみると、1箇所、ページに折り目がついていました。何のつもりで折ったのだっけと思ってよく読むと、
城壁はほんの二間余の高さしかなく上部の幅も三、四尺であり石火箭が設置されると通行不能になるという不便な代物{しろもの}で、半日の守備さえおぼつかぬように見えた。(p.77)
とありました。

「おぼつかぬ」「やるせぬ」等、「ぬ」「ない」の混乱の例を集めたスレッドがあったような気がしましたが、ありませんでしたので、新設しました。

「かたじけぬ」の幽霊例はこちらに書きました。「かたじけぬ」は、ウェブでは若干の例が拾われますが、まだ放送や活字では出会いません。



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タモリのジャポニカロゴス 第3弾

【1047】
タモリのジャポニカロゴス 第3弾
 NISHIO
 - 05/9/17(土) 3:51 -
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1月・4月に続く、第3弾です。
タモリのジャポニカロゴス
 2005年9月21日(水) 19:00〜21:09 フジテレビ系
 →http://www.fujitv.co.jp/b_hp/japonica/
(続いて21:15〜22:24は「トリビアの泉スペシャル」、微妙に拡大版)

また、来月から深夜枠のレギュラー番組になるそうです。
2005年10月11日(火)スタート 毎週火曜23:00〜23:30
 →http://www.fujitv.co.jp/tokuhen/05aut_new/b_hp/logos.html
 →http://www.ktv.co.jp/autumn2005/va_tu2300.html

フジテレビ深夜黄金伝説」に新たな1ページが書き加わるか!?
仲谷昇教授の「カノッサの屈辱」、近藤サトアナウンサーの「音楽の正体」などが
印象に残っています。「たほいや」はほとんど見ず。


水菓子

【881】
水菓子
 道浦俊彦
 - 05/6/9(木) 12:35 -
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本来は「果物」のことを指す「水菓子」ですが、最近は「水羊羹」などのお菓子にも使われているので、 それは誤用・・・とされていますが、
先日行った京都の「京菓子資料館」にあった、江戸時代の『御蒸菓子図案帳』という本に、

「御水菓子」

という項目があるのを見つけました。そこには「定家餅」「水仙粽」といったお菓子がイラストとともに載っていました。
とすると、江戸時代から、水羊羹のような菓子のことを「水菓子」と呼んでいたのではないでしょうか?専門用語としてかもしれませんが。
少なくとも「果物」ではない和菓子のことを「水菓子」と呼ぶことはあった、ということですね。

こうなると、あながち「誤用」とは言えないのではないでしょうか?
いかがでしょうか??



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自転車を漕ぐ

【1030】
自転車を漕ぐ
 Yeemar
 - 05/9/11(日) 19:11 -
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自転車を漕ぐという言い方がおかしいという子を詠んだ短歌。その子は「自転車」は「乗る」とか「運転する」とかいうわけでしょうか。
自転車を漕ぐといふ歌句{かく}を子らわらふ辞書を示せばこれをしも嗤{わら}ふ
〔『含紅集』の「昭和三十三年」の章、『日本詩人全集29』(新潮社)p.41による〕




【1033】
Re:自転車を漕ぐ
 NISHIO
 - 05/9/12(月) 6:27 -
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▼Yeemarさん:
>「自転車」は「乗る」とか「運転する」とかいうわけでしょうか。


より厳密には、「自転車に乗ってペダルを漕ぐ」でしょうね。

自転車を舟と同じく「漕ぐ」というに至った経緯に興味があります。
ペダルを櫓に見立てたのか、乗ったまま人力(脚力)で推進する共通点からか。
そういえばブランコも「漕ぐ」といいます。

# 名古屋あたりでは「けったくる」。



【1034】
Re:自転車を漕ぐ
 岡島昭浩
 - 05/9/12(月) 14:03 -
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名古屋で自転車を「ケッタ」というのが理解できない、というような質問から学生さんから出て、次のように答えた記録が、たまたま残っていました。

Q:名古屋の自転車:ケッタ。「蹴る」と自転車が結びつかない。
A:自転車を「こぐ」行為は、船を漕ぐのとは全く違う動きですが、自転車が出来るまではなかった動作を、〈乗り物を前に進める〉という共通点から、「こぐ」という動詞を使って表しているわけでしょう。それに対して「ける」は、〈足を使ってものを前に進める〉という共通点で、その動詞を採用したのでしょう。「自転車をふむ」と言っている地方もあったかと思います。(なお、日本に入ってきた自転車は、足で地面を蹴って進むもの(ドライジーネ)ではなく、ペダルが付いていたものだったと思われます。佐野裕二『自転車の文化史』中公文庫)


「自転車をふむ」は、今調べると次のページにありました。熊本日日新聞に載ったそうです。http://www1.ocn.ne.jp/~haibis/douwa.htm
五分ほど行くと、あのいやな上り坂にさしかかりました。自転車をふむのはつらいので、そこだけは歩いて進みます。




【1035】
Re:自転車を漕ぐ
 NISHIO
 - 05/9/13(火) 4:21 -
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▼岡島昭浩さん:
>自転車が出来るまではなかった動作を、〈乗り物を前に進める〉という共通点から、「こぐ」という動詞を使って表しているわけでしょう。


御教示ありがとうございます。なるほど納得できました。

日本に初めて入ってきた自転車の推進方式は、「自転車文化センター」のサイトの図版や説明には明記されていません。

>「自転車をふむ」は、今調べると次のページにありました。


「自転車をふむ」はまさか存在しないだろうと思っていました。意外です。
  ○櫓を漕ぐ ⇔ ○ペダルを漕ぐ ⇔ ○ペダルを踏む
  ○舟を漕ぐ ⇔ ○自転車を漕ぐ ⇔ △自転車を踏む

漢字表記の「自転車を踏む」は、84件ほど見つかりました。
中にこんなのもありました。札幌方言「こぐ」の標準語訳が「踏む」だそうで…。
http://sapporo.client.jp/kotoba/k.htm
リンク先が開けないので、キャッシュから拾って引用します。
こぐ
【意味】(1)踏み分ける (2)踏む
【用例】(1)雪をこいでこ。 (2)自転車をこぐ。
【標準語訳】(1)雪を踏み分けて行きましょう。 (2)自転車を踏む。
【解説】「こぐ」も「投げる」と同様に、言葉が広い意味で用いられるようになった例の一つである。本来、「こぐ」は「漕ぐ」で舟を漕ぐものであっただろう。その海をまっすぐに進む様子から「雪を漕ぐ」用例が生まれたものだろうか。「雪漕ぎ」といった名詞もある。同様の使い方は、青森、秋田、岩手、宮城、新潟などでもみられる。




【1038】
Re:自転車を漕ぐ
 岡島昭浩
 - 05/9/13(火) 10:19 -
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ブランコのことを考えると、〈体の動きで、乗り物を動かす〉と言ったことでしょうか。

「踏む」については、「ける」の意味で「ふむ」を使う方言もあり(柴田武『生きている日本語』など)、それとの関連も考えねばなりますまいが、「自転車をふむ」は、もっと広そうですね。

明治には、「自転車を駆る」という言い方もあったようです。これは「馬を駆る」からの転用でしょう。
もし自転車を駆り、または扁舟に棹さして、遠近の地方を探《さぐ》らば、さらにいっそう懐古《かいこ》の情を動かすに足るものあらん
『田園都市と日本人』講談社学術文庫p300

〔明治27年2月17日 東京日日〕
 第三回自転車郊遊 日本輪友会にては、明十八日を期して、亀井戸、本下川、向島等の各地へ自転車を駈り、会員の観梅野乗りを試むる由にて、当日午前十時までに神田区錦町の吉村方に待ち合わする予定なりと。
『明治ニュース事典5』毎日コミュニケーションズ



【1039】
自転車を……
 岡島昭浩
 - 05/9/13(火) 11:19 -
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これは、東京でしょう。ちょっとびっくり。
恋人どうしなのだろうか、楽しげに語らいながら自転車を踏む若い二人が、われわれの車を追い抜いていった。
(星新一「生活維持省」『ボッコちゃん』)
父親の星一は福島出身だったと思いますが。


 新たに気になったこと。

自転車に乗らずに、自転車と共に歩くことを、「自転車を押す」とも「自転車を引く」ともいう。体の横に置いて共に進行するわけですから、押すとも引くとも言えそうです。私の意識ではハンドル部分を押すように動かしているように思いますが、軽めの自転車であれば引くこともあるようにも思います。

牛馬は押すものではなく引くものですから、それとの連想もありそうです。



【1040】
Re:自転車を「ころがす」
 Yeemar
 - 05/9/13(火) 20:16 -
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冒頭発言の歌集『含紅集』はだれの作か、このスレッドに記すのを忘れました。吉野秀雄です。

▼岡島昭浩さん:
>自転車に乗らずに、自転車と共に歩くことを、「自転車を押す」とも「自転車を引く」ともいう。


私は「自転車をころがす」と言います。

ところが、周囲に聞いてみると、「ころがす」というのは「のる」ということであって、「単車をころがす」といえば「単車に乗る」ということだそうです。

私が日本語を習ったのは主に母からですから、母に電話して確認してみますと、「自転車をころがす」というのは、自転車と共に歩くことであると、自信を持って言明していました。父は、自転車に乗ることであろうと言いました。父は香川県出身、母は埼玉県出身であります。



【1042】
Re:自転車を漕ぐ
 UEJ
 - 05/9/13(火) 23:05 -
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> 本来、「こぐ」は「漕ぐ」で舟を漕ぐものであっただろう。
> その海をまっすぐに進む様子から「雪を漕ぐ」用例が生まれたものだろうか。
> 「雪漕ぎ」といった名詞もある。


山用語で「藪漕ぎ(やぶこぎ)」というのもあります(広辞苑にも載っていた!)。
これなどまさに「藪の海を進む」という感じが出ている言葉ですね。



【1043】
Re:自転車を「ころがす」
 岡島昭浩
 - 05/9/15(木) 0:42 -
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▼Yeemarさん:
>ところが、周囲に聞いてみると、「ころがす」というのは「のる」ということであって、「単車をころがす」といえば「単車に乗る」ということだそうです。


「チャリンコ転がして行った」と、さだまさしが「木根川橋」で歌っていましたね。
これは、乗って行くのだろうと理解していました。

自転車はそれしか知りませんが、車ならあります。

『現代日本語用例集』に「車を転がす」があるようなのですが、行方不明。

新潮のCD-rom関係では、井上ひさし『下駄の上の卵』「院長なぞ東京まで車をころがしてたっぷり別れを惜しむことができたのだからまだいい。」、曾野綾子『太郎物語』「お父さんは、これから、うちまで車を転がして帰るという大事業が残ってる」

他に、
高樹のぶ子『百年の預言』 第172回 解かれる謎(32)「真賀木は女の指示どおりに、車を転がして来たのだ。」

宮部みゆき『我らが隣人の犯罪』文春文庫
p168 車を転がして遠出する

といったところ。

新明解の五版で、
〔広義では、自動車を運転することや、物事を ひとまず先へ進めることをも指す。例、「車を転がして来る/一転がし転がしておいて」〕
とあるんですね。



【1045】
Re:自転車を漕ぐ
 道浦俊彦
 - 05/9/15(木) 10:02 -
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関連ですが、以前「平成ことば事情1178」で、「自転車を押す・引く」と題して、こんなの書きました。
*************************************
新聞用語懇談会放送分科会でご一緒させていただいているS放送のIさんから質問のメールがきました。
「先日ローカルニュースで自転車の人がひき逃げされる事件がありました。その原稿で、『被害者は路側帯を、自転車を引いて歩いていたところ』という表現があったのですが、『自転車は「引く」ではなく「押す」ではないか?』という疑問が出ました。重さで判断して『オートバイは「押す」、自転車は「引く」』という人もいました。自転車の場合はどちらなんでしょうか?」
というものでした。ははあ、なるほど。私は個人的には「自転車を押す」ですね。「引く」とは言わないな。とりあえず、いつものようにインターネット検索のgoogleで調べました。
「自転車を押す」=759件
「自転車を引く」=  98件       (2003年5月13日調べ)
で、やはり私と同じ感覚の方の方が多いようです。7:1くらいで「押す」人の方が多いようです。
「自転車を引く」を使っている人を見てみると(全部ではないですが)、長野県、山梨県の人が使っているようです。もしかしたら方言かも?
NHK放送文化研究所の塩田さんにメールしたところ、
「個人的な感覚としては、上り坂でこげなくなった自転車には『押す』を使う気がする。『引く』は『押す』よりも、『力を込めて』というニュアンスがないように感じる。私としては『自転車を引く』は言わないと思う」
というメールが返ってきました。
他のもの、例えば、「大八車」は「引く」ですね。「手押し車」は、文字どおり「押す」です。そこから考えると、自転車のハンドルとその人の位置関係が問題になってくるのではないでしょうか。ハンドルより前にいれば「引く」、ハンドルより後ろにいれば「押す」。これでどうでしょうか?普通はハンドルより後ろにいるでしょうから、「押す」を使う人の方が多いのではないでしょうか。「引く」を使う人は、位置は関係なしに、「動力としての人」が、自分だけでは動かない自転車を「牽引」している、というふうに考えているのではないでしょうか。
皆さん、ご意見お待ちしていまーす!!
2003/5/18


我事におゐて

【1044】
我事におゐて
 Yeemar
 - 05/9/15(木) 2:52 -
----
宮本武蔵が書き残した箇条書きの文章「独行道」の中に
「一 我事におゐて後悔をせす」
という一箇条があります(熊本県立美術館蔵、正保2年、こちらで画像検索可能)。

これは、岩波文庫『五輪書』の「独行道」(p.165)では「我{われ}事におゐて後悔をせず。」とルビが振られています。

私は「我{わが}事において」と読むべきものではないかと思います。つまり、「自分のことに関しては後悔しない(他人のことについては、ああもすればよかったろうに、と同情することはあるかもしれないが)」という意味になります。

もし「われ」と読むとすれば、これは主語ということになりますが、他の条には「我」という主語がないのに、この条だけにあるというのはへんです。それに、「ことにおいて」という言い方が不自然です。「われ、何ごとにおいても後悔せず」ならわかるのですが。「われ」と読むことには、何か理由があるのか、わかりません。

ネットでは、「我、事において」と書いている人(「われ」派)と、「我が事において」と書いている人(「わが」派)といます。


「放香」システム

【1023】
「放香」システム
 みさお
 - 05/9/8(木) 22:08 -
----
http://www.asahi.com/culture/update/0903/002.html
映画館でチョコの匂いが出る機械とのこと。
放香という言葉がなにかあまりよいイメージを抱けないのは
なぜでしょうか?放というのが投げ出すとか放つという意味
があるからでしょうか、なにかこう、香りがただようという
イメージが表現されていないからでしょうか?



【1026】
Re:「放香」システム
 岡島昭浩
 - 05/9/10(土) 11:46 -
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▼みさおさん:
>放香という言葉がなにかあまりよいイメージを抱けないのは
>なぜでしょうか?


放尿・放屁はもとより、放言・放蕩・放漫・放埒など、悪いイメージの語が想起されるからではないでしょうか。放物線の「放物」のように、悪くない意味で、意図的に放るものもありますが、「放−」の多くは、意図せず出てしまう、という意味で使われているように思います。「放射」も元々は悪くないイメージだったのでしょうが、放射能などから、やはりこれも悪いイメージを持ってしまいそうです。



【1027】
Re:「放香」システム
 道浦俊彦
 - 05/9/10(土) 16:34 -
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「放課後」の「放課」には悪いイメージはありませんが、「放火」には悪いイメージがありますね。(イメージと言うか、そのものが、悪いのですが。)
祇園祭の「放下鉾」の「放下」には特に悪いイメージはありません。



【1028】
Re:「放香」システム
 Yeemar
 - 05/9/11(日) 11:42 -
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私は、「はなつ」ということばをいい匂いににも使えるのか、もしかすると、「悪臭をはなつ」のように悪い場合により多く使うのかもしれない、それで「放香」にみさおさんが違和感をお持ちになったのではないか、と問題設定しました。

しかし、そうでもないようです。手元のデータを見てみると、いい匂い・悪い匂いがほぼ半々でありました。

放送の「放」は悪い感じはしません。

私は「放香」ということばについてはっきりした好悪のイメージを持ちませんが、いかにも日本製漢語という気はします。中国語では、「芳香を放つ」は「散発芳香」だそうですが(小学館日中辞典)、それならば「散香システム」でもよいかもしれません。

注・元の記事:
この放香システムを扱う企画・販売会社は今後、映画のほか展示会やイベントでの有力な演出手法として売り込んでいくという。
〔映像に合わせチョコの香り 映画館に「放香」システム〕(「asahi.com」2005.09.03.08:01)




【1032】
Re:「放香」システム
 NISHIO
 - 05/9/12(月) 0:40 -
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▼Yeemarさん:

>私は「放香」ということばについてはっきりした好悪のイメージを持ちませんが、いかにも日本製漢語という気はします。中国語では、「芳香を放つ」は「散発芳香」だそうですが(小学館日中辞典)、それならば「散香システム」でもよいかもしれません。


Googleで "放香" を検索すると、日本語のページは件の「放香」システムと神戸の茶商「放香堂」が大半、その他が数件。
あとは中国語(簡体字・繁体字)のページばかりです。中国語で「放香」はどういう意味なのでしょう。「放香屁」というのもあります。『大漢和辞典』の「放」の項にも「放香」は見当たりません。気になります。

「芳香を放つ」ものといえばトイレなどの芳香剤が思い浮かびます。最近は消臭剤ばかりで芳香剤は数点しかありませんが、パッケージの説明は「発散させます」「漂わせます」「広がります」など。「放つ」という言葉はありませんでした。

「香りを放つ」「放香」に代えて、ほんのり漂わせるようすにふさわしい語はないでしょうか。
「散香(さんこう)」はキリスト教の儀式にあるようです。「散香(さんか)」は森博嗣の小説に登場する戦闘機の名前…。


余談ですが、こちらはインターネット経由で遠隔制御できる「調香器」。
http://www.ntt.com/release/2005NEWS/0005/0523.html
『OCNブロードバンドコンテンツに連動した「香り配信サービス」の実用化開始について』


疑わしい語源説の出所

【657】
疑わしい語源説の出所
 Yeemar
 - 05/1/10(月) 14:16 -
----
旧会議室に語源のスレッドは少なからずありますが、ここではとりわけ
 「しかと」「くだらない」語源説の出所
 「しかと」「くだらない」語源説の出所 #
と関連し、疑わしい語源説がどこから来たか(または現在どこで言われているか)についての話をしたいと思います。

別スレッドで田島さんご紹介の「新春! 日本語で遊ぼう ココリコのお笑いコトバの大語源」の「ぎょっとする」「へべれけ」とも関連します。

ことばについての伝説」にも関連しますが、ここでは語源説にしぼります。

ちなみに、旧会議室では語源に関し「がめる」「たわけ」「ださい」「ずばぬける」「ちゃら」「ぼったくり・ぼる」「むし(虫)」「ことぶき」「エッチ」「ばったもの」「(鼻を)かむ」「こけし」「みいはあ〔ミーハー〕」などが話題になっています(これで全部に非ず)。



【658】
Re:疑わしい語源説の出所(かわりばんこ)
 Yeemar
 - 05/1/10(月) 14:19 -
----
「かわりばんこ」の語源は何か?

――このような疑問を、私はまったく抱いたことがありませんでした。ほとんど疑問の余地がないように思われます。

「こ」は接尾語でしょう。互いに取り替えることを「取り替えっこ」、互いに追いかけることを「追いかけっこ」、互いに恨むことを「恨みっこ(なし)」と言います。それと同じく、互いに順番を替わることを「替わり番こ」というのでしょう(辞書を見ると「こ」は「事」の略であるようです)。

もっとも、「番」は名詞で、「追いかける」「取り替える」などの動詞に「こ」がつくのとは異なっています。その点について探求の余地があるとはいえ、母語話者ならば「かわりばんこ」の「こ」と「取り替えっこ」の「こ」は「同じだろうな」と自然に意識しこそすれ、「ばんこ」の意味が分からぬ、という方向には行かないはずです(語構成は「かわり番+こ」であって、「かわり+番こ」ではないでしょう)。

ところが、ウェブを見ると、「かわりばんこ」の「ばんこ」は、たたら製鉄の「番子」からといいます。
・タタラ製鉄〔略〕の労働者の事を「バンコ」(番子とも書く)と言っていたのだ。ここから転じて、交代で何かをする「かわりばんこ」という言葉が生まれたのだ。(オジサンのへや>雑学の小部屋>かわりばんこ
・このたたらを踏む人は「番子(ばんこ)」と呼ばれ、交替制で三昼夜にわたり連続送風する過酷な労働だったそうです。これを語源に交替で何かをする時の「かわりばんこ(代わり番子)」という言葉が生まれたといわれています。(国土交通省中国地方整備局 中国幹線道路調査事務所 調査課 MichiMag ちょっといい噺{はなし}(PDFファイル))
・ ふいごを踏んで風を送る送り手のことを番子(ばんご)〔ママ〕と言ったが、30分も踏むと疲れてしまうので代わる代わる行った。ここから「かわりばんこ」という言葉ができたという。(自転車・峠おやじ>TOURING REPORT>出雲の旅(2003.5.27)6〔島根県飯石郡吉田村「鉄の歴史博物館」のビデオ説明によるか〕)
また、昨年の大晦日に放送のテレビ朝日「コドモのギモン2」でも、「かわりばんこって何だろう?」という疑問が取り上げられています。「かわりばんこ」は「たたら製鉄の労働者から来ている!」という結論になってはいないだろうかとおそれます。

番組をご覧になった方はおられますか。



【665】
Re:疑わしい語源説の出所(かわりばんこ)
 skid
 - 05/1/11(火) 23:58 -
----
▼Yeemarさん:
>「かわりばんこ」の語源は何か?
>また、昨年の大晦日に放送のテレビ朝日「コドモのギモン2」でも、「かわりばんこって何だろう?」という疑問が取り上げられています。「かわりばんこ」は「たたら製鉄の労働者から来ている!」という結論になってはいないだろうかとおそれます。
>番組をご覧になった方はおられますか。


見ました。
たたら製鉄の労働による説でした。



【668】
Re:へべれけ
 益山 健
 - 05/1/12(水) 10:31 -
----
「へべれけ」の語源説は木村鷹太郎「希臘羅馬神話」に由来するとのことです。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~windharp/v2_07.htm



【669】
Re:疑わしい語源説の出所(かわりばんこ)
 Yeemar
 - 05/1/12(水) 10:32 -
----
▼skidさん:
>見ました。
>たたら製鉄の労働による説でした。


やはりそうでしたか。ありがとうございます。

「語源の根拠はどうでもいい」という考え方が流行しているのでしょうか。もっとも、「このような民間語源がある」という紹介の仕方であれば、がぜん、情報の価値は高まります。「学問的には疑わしいが、人々の間に広まっている説である」という情報は、これはこれで貴重なものです(さればこそ、私もここに書きつけておきたいのです)。

先の、『新春! 日本語で遊ぼう ココリコのお笑いコトバの大語源』のリンクが誤っていました。ただしくはこちらです。

「ココリコ」にしろ「コドモのギモン」にしろ、アナウンサーが何らかの保留、エクスキューズをつけて謙虚に紹介したのなら、私も納得します。

私はごく素朴に「ぎょっ」も「へべれけ」も擬態語だろうと思います。「ぎゃっと驚く」「べろべろに酔う」とも関連があるでしょう。しかし、中国の楽器や女神ヘーベと無関係という証拠を出せ、と言われると困ります。

skidさん、田島さん、よろしければ番組のまとめ方(保留の有無など)はどんなふうだったか、お聞かせいただければと思います。



【670】
Re:へべれけ
 Yeemar
 - 05/1/12(水) 10:43 -
----
▼益山 健さん:
>「へべれけ」の語源説は木村鷹太郎「希臘羅馬神話」に由来するとのことです。
>http://www2s.biglobe.ne.jp/~windharp/v2_07.htm


ちょっと離れたブランチ(こちら)で私は「「べろべろに酔う」とも関連があるでしょう」と不用意なことを書きましたが、上記からのリンク先のmassangeana氏の「「へばる・へたばる」などとの関係をまず考える方が生産的ではないか」との説はごもっともと思います。



【707】
Re:疑わしい語源説の出所 ズボン
 岡島昭浩
 - 05/1/28(金) 1:37 -
----
1/26の「トリビアの泉」で、ズボンの語源が、「ズボンと入るから」であると放送されたそうです。コメントしたのは服飾関係の人ということでした。

説の出所は『言泉』とのこと。みてみましたら、
ずぼん 洋袴【名】『幕末の頃、幕臣大久保誠知といふ人のこれを穿けば、ずぽんと足のはいるとて言ひ初めたる語なりといふ』 洋服の下部。足に穿つもの。形、股引に似たり
とありました。「といふ」を、「はい、確かに」とは言えましょうかね。

『ことばの泉』には、その説はありませんでした。(初版21版)</p>
ずぼん [名] 【英語】 洋服の一部分にて、足に穿つもの。形、ももひきに似たり
と、英語にされています。
『ことばの泉 補遺』にもありません。

『大言海』などの、フランス語のjupon説は、服飾業界では否定されているということでした。



【713】
Re:疑わしい語源説の出所 ズボン
 NISHIO
 - 05/1/31(月) 1:18 -
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▼岡島昭浩さん:
>『大言海』などの、フランス語のjupon説は、服飾業界では否定されているということでした。


手もとの語源薀蓄本と古い服飾用語辞典はいずれもjupon説を採っています。2000年に服飾用語辞典の新版が出ていますが、そちらは確認していません。

実用服飾用語辞典 増補版』(山口好文編、文化出版局、昭和52年7月25日)
ズボン
 フランス語のジュポン(jupon)がなまってできた外来語で英語のトラウザーズ(trousers)。腰回りと二本の脚部をもつ外衣の総称。スラックス、パンタロン、ニッカーボッカーズ、トランクス、パンツなどがこれに属する。

生活のことば語源読本』(杉本つとむ著、雄山閣出版、昭和52年8月15日)
〈ズボン〉
――これはフランス語の jupon <ジュポン> 語源的には女性のペチコートと同じ下につけるもので、明治に出版された『洋装読本』にも〈此ジュポンとは下袴とか腰巻の意味である〉と解説されている。いわば、今の〈ズボン下〉に相当するのが、ジュポンだったわけだ。

暮らしのことば語源辞典』(山口佳紀編、講談社、1998年5月25日)
ズボン
 下半身にはく二股に分かれた洋服。語源はフランス語の jupon だが、このジュポンとは女性用の腰から下のスリップ、つまりペチコートのことである。jupon の語源はアラビア語の djubba であり、これは男性が身にまとうゆったりした衣服のこと。
 ズボンは幕末の頃から用いられているが、漢字表記は「洋袴・細袴・股袴・下袴・袴服・穿袴・短袴・服筒・下服」などさまざま。(佐々木文彦)

『大辞林』と『新辞林』は両方を挙げていますが断定はしていません。
ズボン
〔(フランス) jupon からか〕
 主に男子の衣服で、両足を別々に包む形で下半身にはくもの。スラックス・パンタロンなどの総称。〔明治時代には「洋袴・段袋(だんぶくろ)」ともいった。語源は幕臣大久保誠知が「ずぼんと足がはいる」といったことに由来するとの説もある〕)

根拠を挙げてjupon説を否定しているのは下記の一篇だけでした。

新装版 事物起源辞典(衣食住編)
(朝倉治彦・安藤菊二・樋口秀雄・丸山信、東京堂出版、2001年9月20日)
ズボン
 男子の洋服で下半身にはくもの。江戸時代の末、洋式調練の行なわれたころ、西洋風の軍服のズボンをまねた陣股引、のちに細袴、俗に「だんぶくろ」と称するものをはいた。これを、ズボンと足がはいるからズボンだと、幕臣の大久保誠知があだ名をつけたことからこの称呼ができた(落合直文編『ことばのいずみ』)。文久以降明治元年ごろまで、この段袋服は一着白銀二分、仕立に一日半費やしたといわれる。明治三年の海軍下等士官以下の軍服の達しにも「水夫ハ紺ヘル胴服黒ヘルヅボンの事」とあるように、称呼が用いられたが、政府の公文書では、その後久しく袴の字を用い、陸軍などはズボン下のことを「袴下<こした>」と称していたことは周知のとおりである。しかし、戦後、制服に関する規定にも正式にズボンとしるすようになった。明治二年ころの都々逸の中に、「絆纏股引着た勇<いさみ>より卒着<ちよつき>ヅボンの好男<いろおとこ>」と、すでにうたわれている。ところが、明治四年一〇月東京茅場町の柳屋洋服店の広告に、「奇なり妙なり世間の洋服、頭に普魯西<プロシヤ>の帽子をかぶり、足に仏蘭西<フランス>の沓を穿き、筒袖(上衣)は英吉利<イギリス>海軍の装ひ、股引<ダンブクロ(ズボン)>は亜米利加<アメリカ>陸軍の礼服……」と、当時の洋服姿の異様さを皮肉っている。ズボンということばが定着するのは三〇年代になってからではないかと思われ、またフランス語のジュポン(jupon)の転化だという説があるが、ジュポンは婦人の下ばきであるから、それを武士ともあろう者が軍服の名称に用いるわけがない。またフランスから教官がきて、フランス風の軍服を着た伝習隊ができたのは慶応三年で、ズボンの俗称はそれ以前から行なわれていた。第一、当時フランス婦人の来朝はきわめて少なく、横須賀軍港構築のためにきていた技術団の夫人ぐらいなものであったから、ジュポンの名も実物も知る機会はなかったはずである。幕末フランス語入門書には、この訳はなく、明治四年長崎の好樹堂訳、上海版の『和仏辞典』に、はじめて「jupon」の語が出てくるが、訳は「下着」となっている。
 【参考】「日本洋服沿革史」(『被服文化」62号)昭35・4




【714】
Re:疑わしい語源説の出所 ズボン
 岡島昭浩
 - 05/1/31(月) 23:58 -
----
▼NISHIOさん:
>根拠を挙げてjupon説を否定しているのは下記の一篇だけでした。
>
>『新装版 事物起源辞典(衣食住編)』


有り難うございます。トリビアの情報のソースは、恐らくこれでしょうね。

出演打診があったという、ある人からの情報では、スタッフは『ことばのいずみ』に典拠がある、と言っていたそうですから。実際には『言泉』なのに。

今度は、「チョッキは、ちょっと着るからチョッキ」などが登場したりしないことを望みたいです。



【795】
Re:疑わしい語源説の出所(かわりばんこ)
 skid
 - 05/4/14(木) 1:44 -
----
テレビ朝日「マシューTV」の「なまり亭」とかいうコーナーで、金田一秀穂先生が「ばんこ」はポルトガル語とおっしゃっていました。
踏み台のことをいう「ばんこ」とは、英語で「ベンチ」なんだそうです。



【796】
Re:疑わしい語源説の出所(かわりばんこ)
 道浦俊彦
 - 05/4/14(木) 10:54 -
----
▼skidさん:
>テレビ朝日「マシューTV」の「なまり亭」とかいうコーナーで、金田一秀穂先生が「ばんこ」はポルトガル語とおっしゃっていました。
>踏み台のことをいう「ばんこ」とは、英語で「ベンチ」なんだそうです。


踏み台のことをいう「ばんこ」はポルトガル語起源で、英語の「ベンチ」のことだというのは、そうだと思います。北原白秋の「柳川風俗詩」(多田武彦作曲の男声合唱組曲にもなっていますが)の中にも「バンコ」は出てきます。九州の方言にも取り入れられているのではないでしょうか。
ただ、それと「かわりばんこ」が関係あるのかどうかはわかりません。「代わり番こ」で「こ」は、接尾語的なのだと、私は思っていました。



【798】
Re:疑わしい語源説の出所(かわりばんこ)
 skid
 - 05/4/17(日) 5:04 -
----
話が逸れますけれど、サルティンバンコは

  中世のイタリア語で「ベンチを飛び越える」という意味。
  総称は「大道芸人」。

だったんですね。



【818】
Re:疑わしい語源説の出所(むごい)
 Yeemar
 - 05/5/9(月) 6:51 -
----
べつに転職しようというわけではありませんが、ひやかしで「毎日キャリアナビ」というサイトにある「適性診断」の中の「言語能力(仕事の基礎的能力診断)」というのを試みました。自分の言語能力はどれくらいか?

テストは、次々に現れる文章を読んで、後の設問から「筆者の主張に一致しているもの」「そうでないもの」を選ぶというものです。

ところが、その第1問の文章の冒頭にこうあったのでおどろきました。
 ムゴイという言葉に興味をもって語源を調べた。やっぱりそうである。モンゴイという言葉、蒙古人のような、という語源をもつ。
 元々、日本人は他の民族に比べ、美的感受性において優れ、残酷さにおいて劣るところがある。最近の遺跡の発掘でも、縄文人と弥生人の戦いの規模は小さかったようだ。静かに同化と棲み分けが行われていったようだ。南米における征服とは違っている。
 意外に思う人が多いだろうが、カリスマには「人を残酷に扱う性質」が共通してみられる。ムゴイ仕打ちを平気でするのである。
〔*以下略。HTMLで書かれていないらしく、コピーアンドペーストができません。〕
「むごい」の語源について「やっぱりそうである」とあっさりへんな結論を下しているので、急に読む気が失せました。「元々、日本人は……」という類型化に首をかしげたり、「残酷さにおいて劣る」などというおかしな表現にいちいち立ち止まって考えたりしているうちに、持ち時間を消費してしまいました。

診断結果は「読解力はあるものの、理解するのが遅い」ということでした。



【988】
Re:疑わしい語源説の出所(くだらない)
 Yeemar
 - 05/8/7(日) 21:59 -
----
> 「しかと」「くだらない」語源説の出所
> 「しかと」「くだらない」語源説の出所 #
>と関連し、


その「くだらない」ですが、司馬遼太郎『菜の花の沖〔新装版〕(一)』(文春文庫)〔単行本は1982年刊〕p.305に以下のようにあります。
 江戸という都市の致命的な欠点は、その後背地である関東の商品生産力が弱いことであった。
 これに対し、上方および瀬戸内海沿岸の商品生産力が高度に発達していたため、江戸としてはあらゆる高価な商品は上方から仰がねばならなかった。しかも最初は陸路を人馬でごく少量運ばれていたこともあって、上方からくだってくるものは貴重とされた。
「くだり物」
 というのは貴重なもの、上等なものという語感で、明治後の舶来品というイメージに相応していた。これに対し関東の地のものは「くだらない」としていやしまれた。これらの「くだりもの」が、やがて菱垣船の発達とともに大いに上方から運ばれることになる。
司馬氏のことですから相当調べた上の記述と思われますが、何を参考にした記述でしょうか。



【1029】
Re:疑わしい語源説の出所(強羅)
 Yeemar
 - 05/9/11(日) 19:04 -
----
出所というわけではありませんが、地名の「強羅」の語源説が「故事附けにして〔も〕ややおもしろし」という吉野秀雄の以下の短歌を知りました。
強羅{がうら}の地名がgo roundの訛{なま}りとは故事附{こじつ}けにしてややおもしろし(箱根の歌)
〔『含紅集』の「昭和三十二年」の章、『日本詩人全集29』(新潮社)p.41による〕




【1031】
Re:疑わしい語源説の出所(強羅)
 Yeemar
 - 05/9/11(日) 19:11 -
----
正誤
×「昭和三十二年」の章
○「昭和三十三年」の章




▼疑わしい語源説の出所 Yeemar 05/1/10(月) 14:16
   ┣Re:疑わしい語源説の出所(かわりばんこ) Yeemar 05/1/10(月) 14:19
   ┃  ┗Re:疑わしい語源説の出所(かわりばんこ) skid 05/1/11(火) 23:58
   ┃     ┗Re:疑わしい語源説の出所(かわりばんこ) Yeemar 05/1/12(水) 10:32
   ┃        ┗Re:疑わしい語源説の出所(かわりばんこ) skid 05/4/14(木) 1:44
   ┃           ┗Re:疑わしい語源説の出所(かわりばんこ) 道浦俊彦 05/4/14(木) 10:54
   ┃              ┗Re:疑わしい語源説の出所(かわりばんこ) skid 05/4/17(日) 5:04
   ┣Re:へべれけ 益山 健 05/1/12(水) 10:31
   ┃  ┗Re:へべれけ Yeemar 05/1/12(水) 10:43
   ┣Re:疑わしい語源説の出所 ズボン 岡島昭浩 05/1/28(金) 1:37
   ┃  ┗Re:疑わしい語源説の出所 ズボン NISHIO 05/1/31(月) 1:18
   ┃     ┗Re:疑わしい語源説の出所 ズボン 岡島昭浩 05/1/31(月) 23:58
   ┣Re:疑わしい語源説の出所(むごい) Yeemar 05/5/9(月) 6:51
   ┣Re:疑わしい語源説の出所(くだらない) Yeemar 05/8/7(日) 21:59
   ┗Re:疑わしい語源説の出所(強羅) Yeemar 05/9/11(日) 19:04
      ┗Re:疑わしい語源説の出所(強羅) Yeemar 05/9/11(日) 19:11

新海物語の読み方は

【994】
新海物語の読み方は
 みさお
 - 05/8/10(水) 23:14 -
----
パチンコの機種名だと思いますが、「発音」されたのを聴いた事はありません。海物語というのがあるので読みは「うみものがたり」なんで「新」の方は「しんうみものがたり」なんでしょうが、「しんかいものがたり」が正しいのでしょうか、でも「深海物語」になってしまうのでやはり「しんうみ」なのでしょうか?なんかしんうみというのも気持ち悪いのですが・・・。日本語としても正しいのでしょうか?この名前、TVなど公式の場で読まれた例というのもあるのでしょうか?深夜番組などではあるのでしょうね。



【995】
Re:新海物語の読み方は
 Yeemar
 - 05/8/11(木) 4:19 -
----
▼みさおさん:
>海物語というのがあるので読みは「うみものがたり」なんで「新」の方は「しんうみものがたり」なんでしょうが、


公式ホームページを見ると、「三洋パチンコパラダイス 新海おかわり」に「SHIN UMI」とローマ字が振られており、したがって、「しん うみものがたり」らしいことがわかります。
http://www.irem.co.jp/official/pp9/index.html

1980年代、「松」(管理工学研究所)というワープロソフトがあり、やがてバージョンアップされて「新松」になりました。「しんまつ」と読み、「しんしょう」ではありませんでした。「松(まつ)」も「海物語」も固有名詞(商品名)なので、読み方は変わらないのでしょう。



【996】
Re:新海物語の読み方は
 みさお
 - 05/8/13(土) 10:15 -
----
ありがとうございます。「しんうみ」なんですね。おそらく巨大な産業なのに一度としてその発音を聞いていないというのに興味をひかれました。日本語の発音的には「ん」の次って「う」が続いたりするというのは珍しいのでしょうか?なんか気になる言葉です。しんうみ、しんうみ・・・。



【1019】
Re:新海物語の読み方は
 UEJ
 - 05/8/30(火) 23:37 -
----
「大海物語」というのも出たようです。
http://www.sanyobussan.co.jp/products/pk_greatsea/



【1020】
Re:新海物語の読み方は
 Yeemar
 - 05/8/31(水) 16:38 -
----
▼UEJさん:
>「大海物語」というのも出たようです。
>http://www.sanyobussan.co.jp/products/pk_greatsea/


このページから見られる「プロモーションムービー」なるものを再生したところ、
「おおうみものがたり、たんじょう!」
と言っていました。



【1024】
Re:新海物語の読み方は
 みさお
 - 05/9/8(木) 22:10 -
----
あくまでも「うみ」の発音にこだわるわけですね。
「たいかい」ではないんですね。
日常生活を続けていていつかこの言葉の発音を
耳にする日がくるのでしょうか?



【1025】
Re:新海物語の読み方は
 skid
 - 05/9/9(金) 10:56 -
----
▼みさおさん:
>あくまでも「うみ」の発音にこだわるわけですね。
>「たいかい」ではないんですね。


この名称は「海(うみ)物語」に対する「新」や「大」だから、新「海物語」、大「海物語」なのでしょう。
「新海」「大海」というくくりで読むべきものではないと思います。


「携帯」という略語

【1011】
「携帯」という略語
 アーム・ジョー
 - 05/8/25(木) 6:27 -
----
道浦アナのHPに、携帯電話を「携電」と略さず「携帯」と略すことへの
コメントが書かれていて、興味を持ちました。他にもこういう略し方の
語があったような気がしたからです。で、思い出してみました。

そうそう、国立競技場を「国立」って言いますよね。聞くたびに、国立の
何なんだよ?とつっこみたくなります。ま、これは主にサッカー関係の
報道で使われてますが。サッカー繋がりでは、サッカー日本代表をただ
「代表」と言ったりもします(こちらは語の後半をとったパターン)。
ちょっと下世話な例では、性感マッサージを「性感」。これも携帯と
同じパターンの略し方です。風俗で語るなら、もっと王道のソープランド。
これも「ソープ」で通ってます。遡って、ソープの「先祖」であるトルコ
風呂もやはり「トルコ」でした。

他にも、複合語(合成語)の前半分または後半分をとった略語、結構あり
ます。専売公社(現JT)を「専売」。東京ドームを「ドーム」。オール・
ナイト(徹夜)を「オール」(これは「徹夜で遊ぶ」ことを指す若者語)。
軟式野球(テニス)、硬式野球(テニス)をそれぞれ「軟式」「硬式」と
呼ぶのも、似たようなことでしょう。
私と同じ50代(以上)の方なら、これご記憶ですか? その昔、トラン
ジスターを使った小型(携帯)ラジオが商品化された当時、そのトラン
ジスター・ラジオを単に「トランジスター」と言っていたように思います。

さて、私の勝手な説ですが、上記の各例は「略語」というより「象徴語」
とでも呼んだほうがいいように思います。つまり、これらは、その「物」の
本質を象徴する部分だけを呼び名として使用しているのではないか、という
意味で、ですが。
例えば東京ドーム。「東ド」などと略してもなんか語呂が悪い。かといって
「東京」じゃ意味不明なので「ドーム」。国立競技場を「国競」とやったん
じゃ、なんだかなー、ってわけで「国立」。これ、まさか「競技場」だけ
で呼ぶわけには行きませんからね。性感マッサージも「性マ」といった
略語が定着する前に、手っ取り早く「性感」だけで通されてしまった。
これも「マッサージ」だけ取るわけには行かないですよね。



【1013】
Re:「携帯」という略語
 Yeemar
 - 05/8/25(木) 23:12 -
----
▼アーム・ジョーさん:
>道浦アナのHPに、携帯電話を「携電」と略さず「携帯」と略すことへの
>コメントが書かれていて、


「携電」のキーワードで、道浦さんのホームページを検索してみましたが、該当の文章が出てきませんでした。探し方が悪いのでしょうか。

私自身は、「携電」の語を新聞で見たことはあります。
それだから棺に携電入れといて
前橋市 秋山林次郎
〔略〕
五句、蘇生事件以後。〔朝日川柳〕(「朝日新聞」2002.01.27 p.14)
はやく岡島さんの報告もあります(こちら)。

「携帯」の類例は、「仮設住宅」を「仮設」、「スーパーマーケット」を「スーパー」(以上、佐竹秀雄『サタケさんの日本語教室』p.15)。また、「定期券」を「定期」、「活動写真」を「活動」、「新派劇」を「新派」(以上、相澤正夫「「ケータイ」にひとこと」『日本語学』2000.10 p.79)など。私は、「変態性欲」を「変態」というのを思いつきました(品性が表れています)。

「総理大臣」に「総理」と呼びかけるのも、おなじく、特徴をしめす部分だけを残してあとを省略したものでしょう。一方、「財務大臣」には「財務」とは呼びかけず、「大臣」というので、これは特徴をしめす省略法とはいえないでしょう。アーム・ジョーさんの挙げられた「代表」も、「大臣」と同様の省略法でしょう。



【1014】
Re:「携帯」という略語
 NISHIO
 - 05/8/26(金) 4:59 -
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▼Yeemarさん:
>「携電」のキーワードで、道浦さんのホームページを検索してみましたが、該当の文章が出てきませんでした。探し方が悪いのでしょうか。


『平成ことば事情』ウォッチャーのワタクシですが、「携電」は見覚えありません。
「ケータイ」というに略し方についてのコメントはいくつかありますね。
----------------
◆ことばの話1676「歩き電話」
でも最近は携帯電話のことを「電話」とは略さずに、「ケータイ」といいますよね。
----------------
◆ことばの話318「地上波テレビ」
携帯電話のことを「ケータイ」と呼ぶのはもうすっかり定着しました。(中略)「ケータイ」が「電話」としてよりも「携帯端末」としてメールやインターネットに使用されることが多くなった現在から考えると、「実にうまく省略したなぁ」という感じがします。
----------------

『新明解6版』には「携帯」の項に“「携帯電話」の略”が載っています。“「ケータイ」と書かれることが多い”とも。
『デイリー新語辞典』では、「携帯」で始まる32語中の18語が携帯電話関連です。「携帯カメラ」が“携帯できるカメラ”(←ふつうか)ではなく、“カメラ付き携帯電話の俗称”というのがいかにも現代的です。「携帯端末」としての機能が増えすぎて、もはや「電話もできるケータイ」が冗談ともいい切れない模様。

ケータイ関連の略称といえば、ごく最近の朝日新聞社会面に、こんな見出しの記事がありました。
 “携帯テレ電 「ワン切り」にご注意! 有料サイトへ誘導”

Googleでも「テレ電」は相当数ヒットします。
#「テレビジョン」+「テレフォン」なら「テレテレ」ぢゃあないか、と。(英語は“TV phone”)


>「携帯」の類例は、(中略)「変態性欲」を「変態」というのを思いつきました(品性が表れています)。


# ドキッ

「特徴をしめす部分だけを残してあとを省略したもの」は、何の「特徴」を示すのか特定できないのが問題ですね。

「携帯」… 「―灰皿」か「―ラジオ」か。
「スーパー」… 「―マン」ではない。「―インポーズ」かもしれない。
「定期」… 「―検診」「―考査」ではない。「―預金」かもしれない。
「冷やし中華」… 「―丼」「―饅」ではない。
「電卓」… 「電動麻雀卓」ではない。
「デニム」… ニーム産の―?
「空き巣」… 「入られるほう(家)」か「入るほう(人)」か?

ボケネタにはなりますが。



【1017】
Re:「携帯」という略語
 アーム・ジョー
 - 05/8/30(火) 1:38 -
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▼Yeemarさん、NISHIOさん:

●レスありがとうございます。

>▼アーム・ジョーさん:
>「携電」のキーワードで、道浦さんのホームページを検索してみましたが、該当の文章が出てきませんでした。探し方が悪いのでしょうか。


●すみません! 全く私の記憶違い/思い込みでした。『平成ことば事情』には、NISHIOさんご指摘のとおり「携帯をケータイと略す」件について書かれているだけでしたね。

>私自身は、「携電」の語を新聞で見たことはあります。
>それだから棺に携電入れといて
>前橋市 秋山林次郎
>五句、蘇生事件以後。〔朝日川柳〕(「朝日新聞」2002.01.27 p.14)


●私は朝日新聞を長年購読していますが、携帯電話の普及当初より同新聞は長いあいだ、頑なに(?)「携電」という略語を使用していました。しかし世間で全く定着していないことに気が付いたのか、ある時を境にパッタリ使わなくなりました。上の記事の頃(2002年1月)は、恐らく朝日の「携電」の末期だと思われます。

>「携帯」の類例は、「仮設住宅」を「仮設」、「スーパーマーケット」を「スーパー」(以上、佐竹秀雄『サタケさんの日本語教室』p.15)。また、「定期券」を「定期」、「活動写真」を「活動」、「新派劇」を「新派」(以上、相澤正夫「「ケータイ」にひとこと」『日本語学』2000.10 p.79)など。私は、「変態性欲」を「変態」というのを思いつきました(品性が表れています)。
>「総理大臣」に「総理」と呼びかけるのも、おなじく(以下、勝手に後略)


●沢山の例を挙げていただき、喜んでおります。こんなにあったんですね!自分の引用の貧困さを恥じております。
他に、「決勝」という語。これを何の違和感もなく使っていますが、本来は「決勝戦」、「決勝の試合」というべきところ、「決勝」だけで定着したのでしょうね。「決勝」自体には「戦い」という意味は含まれませんから。


恐怖漫画と恐怖映画

【999】
恐怖漫画と恐怖映画
 高橋半魚
WEB
 - 05/8/17(水) 16:47 -
----
ご無沙汰しています。苦しい時の岡島先生&皆様頼みですみません。
「恐怖漫画」という言葉は楳図かずおが作ったと言われています。それまでは「怪奇漫画」や「スリラー漫画」はあったが、それらは見た目の怖さにすぎず、心理に訴えかけるような怖さを描く漫画として、その語を作った、と。1961年10月頃刊の貸本漫画雑誌「虹」に発表した「口が耳までさける時」という作品で、この作品を「恐怖マンガ」としてお届けします、と楳図自身が書いています。その語の作風・志向性としても、まあ、納得していいと思っています。
 私が気になるのは、「恐怖映画」という言葉です。1961年以前に、普通に使われていたのでしょうか。
 他に、「恐怖小説」とは、あまり言いませんよね。

(なお、明後日から出張するので、お返事遅れるかもしれません。申し訳ありません)


【1000】
Re:恐怖漫画と恐怖映画
 岡島昭浩
 - 05/8/18(木) 13:04 -
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半魚さん、お久しぶりです。

▼高橋半魚さん:
> 私が気になるのは、「恐怖映画」という言葉です。1961年以前に、普通に使われていたのでしょうか。


「普通に」かどうかは分かりませんが、夢野久作『ドクラマグラ』で使われています。比較的最初の方の「卷頭歌」の少し後に、「『胎児の夢』と題する恐怖映画」と。他に、「恐怖劇」という言葉も見えます。

> 他に、「恐怖小説」とは、あまり言いませんよね。


江戸川乱歩がよく使っているようです。昭和10年の『改造』十月号に載った「日本探偵小説の多様性について」でも、
例へば異常な犯罪の経路を描いたもの、犯罪その他異常な事件の恐怖を主眼とするもの、怪奇なる人生の一断面を描いたもの、精神病者又は変質者の生活を描いたもの、ビーストン風の「意外」の快感に重点を置くものなどは、犯罪小説、怪奇小説、恐怖小説などに属するものであつて、探偵小説とは云へない。
とあります。

昔、英国で流行したそうです。

で、よく知らないのですが、どちらも翻訳語ではないのでしょうか。



【1001】
Re:恐怖漫画と恐怖映画
 高橋半魚
WEB
 - 05/8/18(木) 16:25 -
----
▼岡島昭浩さん:

 ほんとに頼りになります、なりました。
そうですか、「恐怖小説」もありましたか。
 方向性も見えてきた感じがします。僕としても、今後、用例を増やしていきたいと思います。翻訳語だとすると、ゴシック小説だとか、そんな感じなのでしょうか。あと、ポーなどは、楳図自身も読んでいます。

 ご教示頂いたものを、論文ですこしだけですが、使わせていただく事になるかも知れません。予め、ご報告申し上げておきます。ありがとうございました。



【1003】
「恐怖小説」用例追加
 岡島昭浩
 - 05/8/19(金) 12:07 -
----
江戸川乱歩『幻影城』「再版に際して」(江戸川乱歩推理文庫51のp11による)

読物時事 昭和二三・八・一(海外恐怖小説特集) 金剛石レンズ(オブライエン) 幽霊(モーパッサン) 死刑執行人(バルザック) 蝋燭の恐怖(コリンズ) いずれも訳者名なし


同書p40
セイヤーズは「探偵、怪奇、恐怖小説集」第一集の作品配列に於て一種の分類を行っている

ただし、原題の"Great short stories of detection, mystery and horror"(webcat)からも分かるように、「(探偵、怪奇、恐怖)小説集」。

同書p51
心理的スリル派(この派は多くの場合同時にサスペンス派でもある。映画「断崖」や最近の「窓」などから類推し得るような犯罪恐怖小説。

「恐怖映画」に、おしい用例。

p285-349は「怪談入門」。恐怖小説の歴史などが書かれています。

p397(「探偵小説叢書目録」)
「アルス・ポピュラー・ライブラリー 自大正十、十一年頃〜至同十四年」に、「フレデリック「恐怖の映画」」が採録されている、と。



【1004】
Re:恐怖漫画と恐怖映画 状況証拠ばかりでごめんな...
 佐藤
 - 05/8/19(金) 21:10 -
----
> 私が気になるのは、「恐怖映画」という言葉です。1961年以前に、普通に使われていたのでしょうか。


 『日本大百科全書』(小学館)に「恐怖映画」の項があるのですが、この言葉の日本での使われ方などは触れてないのが残念です(参考文献に、S・S・プロウアー著、福間健二・藤井寛訳『カリガリ博士の子どもたち――恐怖映画の世界』(1983・晶文社)があがってました)。

 また、「1910年ごろからのドイツ表現派映画には、芸術的恐怖映画ともいうべき不気味な作品がある。30年代には、アメリカのユニバーサル映画が製作した『ドラキュラ』『フランケンシュタイン』『狼男(おおかみおとこ)』などがヒット、シリーズ化され、いまや恐怖映画の古典となっている」とあり、この種の映画が古くからあったことが分かりました。
 
 これらの映画が日本にも上陸してくると「恐怖映画」という言葉が誕生しそうです。とりあえず大正期から続いている『キネマ旬報』のDBだと、題名に「恐怖」のはいった作品が1919年から見られました(作品の完成年なのか、キネ旬に紹介された年なのか不明)。
 ・ 恐怖の瞬間 1919
 ・ 恐怖島 1920
 ・ 恐怖市場 1920
 ・ 恐怖の家 1922
 ・ 恐怖の一夜 1922 (以下省略。全100作品ヒット)
この頃以降には、「恐怖映画」という語の生まれる素地ができたことになります。なお、「活動(写真)」が「映画」に取って変わられるのは関東大震災(1923)ごろからだそうです(日国2による)。



【1012】
Re:「恐怖小説」用例追加
 高橋半魚
WEB
 - 05/8/25(木) 19:00 -
----
 岡島さん、佐藤さん、ありがとうございました。
乱歩「幻影城」は、じつは楳図が10代の頃に読んでいる本の一つでした。
ご教示を参考にして、今回、初めて読みました。いや、もっと早く読んで
おくべき本でした。楳図作品のいくつかについて、元ネタの推測もできま
した。^^;
 佐藤さんにお示しいただいた恐怖映画も含めて、horror という言葉
の訳語のようですね。この、horror=恐怖、の内実をどう理解し構築した
かというような点が、作家的な問題なわけで、かなり方向性が見えてきま
した。ありがとうございました。


仮名遣異聞「泥鰌」

【985】
仮名遣異聞「泥鰌」
 佐藤
 - 05/8/6(土) 21:07 -
----
 杉浦日向子氏が若くして世を去りましたね。最近、彼女にかかわる文章をあちこちで見かけます。そのなかに、泥鰌の仮名遣いに触れるものがありました。生きてるときは「どじやう」で、食材になると「どぜう」と記すというのが、『大江戸美味草子』にあるとか。どこまで裏が取れるか、興味があります。
http://www.asahi-net.or.jp/~wh4k-bnb/dosa/2001/20010714.html

 純粋に仮名遣いの問題としては、そんな馬鹿なということになりますが、語形の異なり並みに見れれば、ありかなと思います(もちろん、発音上は同一でしょう)。類例はあるものか。



【1006】
Re:仮名遣異聞「泥鰌」
 NISHIO
 - 05/8/20(土) 5:34 -
----
▼佐藤さん:
>生きてるときは「どじやう」で、食材になると「どぜう」と記すというのが、『大江戸美味草子』にあるとか。どこまで裏が取れるか、興味があります。


『大江戸美味草むまそう子』(新潮文庫)p.62-64
 ところで、「どじやう」「どぜう」では、「どじょう」本人の状態が異なっていることを付記したい。「どじやう」は、「どじょう」が存命中の呼称で、「どぜう」は「どじょう」が食い物になった呼称である。それだから、たんぼに「どぜう」はいないし、はふはふつつく鍋に「どじやう」はいない。耳できいて、どじょうがどんな段階にあるか即わかるようになっている。それほど、江戸人とどじょうは付き合いが深かったのだ。再三出た「どじやう汁」は、生きたのをいきなり調理するから、あくまでも「どじやう」であり、対して「どぜう鍋」は、あらかじめ骨までやわらかく下茹でした姿煮や、裂いて頭を落とし、骨や内臓をきれいに取り除いた開き身をもちいるから、すでに「どじやう」ではなく、食材としての「どぜう」なのである。
「どじやう(土壌)」ではなく「どぢやう(泥鰌)」ではないか、という話はさておき、
「どぜう」の表記の元祖駒形どぜうを始め、東京のどじょう料理店のお品書きは、ほとんどが「どぜうなべ(鍋)」と「どぜう汁」となっています。
昭和創業の桔梗屋だけは「どじょう鍋」で「どじょう汁」は記載なし。ここだけが生きたままのどじょうを出しているというわけでもなさそうですが…。

・駒形どぜう(浅草駒形) 享和元年(1801)
  http://www.dozeu.co.jp/
  (「どぜう」の由来http://www.dozeu.co.jp/yurai.html
・どぜう伊せ喜(深川高橋) 明治20年(1887)
  http://www.iseki-dozeu.com/
・どぜう飯田屋(合羽橋) 明治36年頃(1903)
  http://www.asakusa-umai.ne.jp/umai/iidaya.html
・どぜうひら井(吾妻橋) 明治36年(1903)
  http://www.hanako-net.com/omise/detail.jsp?id=73008103&gosu=0
・どぜう桔梗屋(両国) 昭和8年(1933)
  http://sdi.co.jp/kikyou/


>類例はあるものか。


「どじょう」を一般名詞、「どぜう」を固有名詞(もとは駒形の商標?)と考えると、
似たような例はいくつかあります。

【プディング】
  卵・牛乳・砂糖・香料などを混ぜ、蒸し焼きにして柔らかく固めた洋菓子。プリン。
  パン・米・果物などを加えたものもある。「カスタード‐―」 (広辞苑)
【プリン】
  プディングの訛。カスタード‐プディングのこと。(広辞苑)
  1967年にハウス食品工業(株)(当時)が発売した「プリンミクス」が起源(推測)。
  http://housefoods.jp/products/catalog/index.php?cat=1,1111,1110
  現在でもカスタードは「プリン」(主に安価な量産品)、その他は「プディング」が一般的。

【スナップエンドウ】
  1970年代に米国で育種された莢も実も食べるタイプのエンドウ。英名:snap bean, sugar snap.
【スナックエンドウ】
  1979年に(株)サカタのタネが「スナックえんどう」の品種名で発売したのが起源。
  1983年に農水省が統一名称を「スナップエンドウ」と定めたが、市場では未だに混乱している。

【エシャロット】
  小型のタマネギに似たヨーロッパ産の香味野菜。仏名:eshalote, 英名:shallot.
【エシャレット】
  若採りラッキョウを髷状に束ねたもの。1955年頃に浜松の組合から「根ラッキョウ」の名で
  出荷された新商品を、東京中央青果常務の川井彦二氏が「エシャレット」と命名した。
  本物のエシャロットと区別のため「エシャ」「エシャラッキョウ」などと呼ぶこともあるが、
  逆に本物のほうが「ベルギーエシャロット」「ベルギーエシャ」と表示されることが多い。

「どじょう」は生物(生き物・生もの)、「どぜう」は加工した食材、とする観点では…

【サケ】と【シャケ】
  半分冗談でしょうが、前者をシャケと呼ぶのは聞かないような気もします。
  方言でもなさそうです。「酒」とはアクセントで区別できるので問題ないはず。
   広辞苑: サケの転。
   大辞林: 「さけ(鮭)」に同じ。
   新明解: 〔口頭〕魚のサケ。
   岩波 : →さけ(鮭)
   日国 : 「さけ(鮭)」に同じ。
   大言海: さけノ訛。

【スルメイカ】と【するめ】
  スルメイカの他に、ヤリイカやケンサキイカなども、するめに加工される。

【てれすこ】と【すてれんきょう】
  お後がよろしいようで…




【1007】
Re:仮名遣異聞「泥鰌」
 岡島昭浩
 - 05/8/20(土) 16:55 -
----
発音は同じだけれど、表記で書き分ける、という視点で行けば、「バレエ」と「バレー」とか、「ボウリング」と「ボーリング」とか、外来語系のものが思い浮かびます。

あと、無理矢理探せば、〈いやなおやじ〉を「おぢ」と書く、という風習が、数年前のどこかにあったような気がします。叔父・伯父は「おじ」だろうけれど。

「痔」だけは「ぢ」と書く、というのはちょっと違いますが、これが現代仮名遣だと思っている人もいるようで。



【1008】
Re:仮名遣異聞「泥鰌」
 佐藤
 - 05/8/22(月) 13:42 -
----
▼NISHIOさん:
 「どじやう」は、「どじょう」が存命中の呼称で、「どぜう」は「どじょう」が食い物になった呼称である。(中略)耳できいて、どじょうがどんな段階にあるか即わかるようになっている。


原文提示、ありがとうございます。ううむ。完全に言い分けていたと考えてますね。んん、そうだろうか。



【1010】
Re:仮名遣異聞「泥鰌」
 NISHIO
 - 05/8/24(水) 2:52 -
----
「どぜう」の同類で、「お嬢様」を「おぜうさま」と書く例を思い出しました。
また、「おたく」を「ヲタク」「ヲタ」と省略するのも相当あるようです。

■お嬢様
 "おぜう様"     236 件
 "おぜうさま"   1,230 件   "おぜうさん"    732 件
 "おぜうサマ"     7 件   "おぜうサン"    22 件
 "おじゃうさま"   22 件   "おじゃうさん"   117 件   
 "おじやうさま"    1 件   "おじやうさん"    2 件
 "おじゃう様"     8 件   
 "おじやう様"     - 件
 "おぢゃうさま"    6 件   "おぢゃうさん"   98 件
 "おぢやうさま"    - 件   "おぢやうさん"    2 件
 "おぢゃう様"     5 件   
 "おぢやう様"     - 件

 "お嬢様"    710,000 件
 "お嬢さま"   69,800 件   "お嬢さん"   639,000 件
 "お嬢サマ"     703 件   "お嬢サン"     587 件
 "御嬢様"     4,910 件 
 "御嬢さま"     104 件   "御嬢さん"     559 件
 "御嬢サマ"      4 件   "御嬢サン"     23 件
 "おじょう様"    489 件
 "おじょうさま"   890 件   "おじょうさん"  7,840 件
 "おじょうサマ"   28 件   "おじょうサン"   45 件

■泥鰌
 "どぜう"    22,900 件
 "どじょう"  1,190,000 件
 "どじよう"     107 件
 "どじゃう"     104 件
 "どじやう"     89 件
 "どぢゃう"     55 件
 "どぢやう"     114 件

■御宅(全く別の語彙を相当数含むと考えられます。)
  "おたく"   328,000 件
  "オタク"   812,000 件
  "オタ"    359,000 件
  "ヲタク"   259,000 件
  "ヲタ"    697,000 件




# せざるおえない

【1002】
# せざるおえない
 Yeemar
 - 05/8/19(金) 7:53 -
----
せざるおえない
の続きです。

最近、大学生のレポート(ワープロ文章)に、「やむ負えない時にだけ、」と書いてありました。



【1005】
Re:# せざるおえない
 NISHIO
 - 05/8/19(金) 21:16 -
----
「やむ‐おえない」とか「やもう‐えない」だと思っている人が少なくないようですね。耳で覚えて勝手に字を当てたと思しき表記をしばしば目にします。
Google検索結果。

"やむを得ない" 1,050,000 件    "やむを得ず"  387,000 件
"やむをえない"  173,000 件    "やむをえず"  78,700 件
"やむお得ない"    150 件    "やむお得ず"    79 件
"やむおえない"   7,930 件    "やむおえず"   9,210 件
"やむ終えない"   5,130 件    "やむ終えず"   4,470 件
"やむ負えない"    476 件    "やむ負えず"    215 件
"やむ追えない"    53 件    "やむ追えず"    52 件

"止むを得ない"  88,800 件    "止むを得ず"  43,900 件
"止むをえない"   3,450 件    "止むをえず"    568 件
"止むお得ない"    22 件    "止むお得ず"    11 件
"止むおえない"    296 件    "止むおえず"    250 件
"止む終えない"    723 件    "止む終えず"    782 件
"止む負えない"    235 件    "止む負えず"    107 件
"止む追えない"    116 件    "止む追えず"    25 件

"已むを得ない"    908 件    "已むを得ず"    544 件
"已むをえない"    56 件    "已むをえず"    38 件
"已むお得ない"     5 件    "已むお得ず"     2 件
"已むおえない"     8 件    "已むおえず"     5 件
"已む終えない"    33 件    "已む終えず"    36 件
"已む負えない"     5 件    "已む負えず"     1 件
"已む追えない"     - 件    "已む追えず"     1 件

"病むを得ない"    39 件    "病むを得ず"    30 件
"病むをえない"    16 件    "病むをえず"     9 件
"病むお得ない"     - 件    "病むお得ず"     - 件
"病むおえない"     4 件    "病むおえず"     4 件
"病む終えない"    35 件    "病む終えず"    42 件
"病む負えない"    40 件    "病む負えず"     6 件
"病む追えない"     1 件    "病む追えず"     - 件


"やもう得ない"    226 件    "やもう得ず"    64 件
"やもうえない"    602 件    "やもうえず"    443 件
"やもお得ない"     1 件    "やもお得ず"     - 件
"やもおえない"    185 件    "やもおえず"    235 件
"やも終えない"    13 件    "やも終えず"    27 件
"やも負えない"     5 件    "やも負えず"     5 件
"やも追えない"     2 件    "やも追えず"     9 件

"止もう得ない"    95 件    "止もう得ず"    17 件
"止もうえない"    13 件    "止もうえず"     9 件
"止もお得ない"     1 件    "止もお得ず"     - 件
"止もおえない"     2 件    "止もおえず"     - 件
"止も終えない"     - 件    "止も終えず"     1 件
"止も負えない"     - 件    "止も負えず"     - 件
"止も追えない"     - 件    "止も追えず"     - 件

"已もう得ない"     2 件    "已もう得ず"     1 件
"已もうえない"     - 件    "已もうえず"     - 件
"已もお得ない"     - 件    "已もお得ず"     - 件
"已もおえない"     - 件    "已もおえず"     - 件
"已も終えない"     - 件    "已も終えず"     - 件
"已も負えない"     - 件    "已も負えず"     - 件
"已も追えない"     - 件    "已も追えず"     - 件

"病もう得ない"     - 件    "病もう得ず"     1 件
"病もうえない"     - 件    "病もうえず"     - 件
"病もお得ない"     - 件    "病もお得ず"     - 件
"病もおえない"     - 件    "病もおえず"     - 件
"病も終えない"     - 件    "病も終えず"     - 件
"病も負えない"     - 件    "病も負えず"     - 件
"病も追えない"     - 件    "病も追えず"     - 件




地名の表記

【978】
地名の表記
 佐藤
 - 05/8/6(土) 13:46 -
----
カタカナ地名の姉妹編です。カタカナ地名は岡島さんの周到なリストアップでかなり進展したのでした。方言文字なども抑えておければ便利かと思い、立ててみました。

最近気づいたものを一つ。「北海道江別市豊幌はみんぐ町」。こういう名の町があると思っただけで、嫌な気分から解放される気がします。
http://www.mapion.co.jp/c/f?uc=1&grp=all&nl=43/07/57.726&el=141/37/48.579&scl=25000&bid=Mlink



【998】
Re:地名の表記
 NISHIO
 - 05/8/15(月) 5:22 -
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カタカナ地名の最新版です。市区町村名・コードは2005年8月1日現在のもの。

都道府県   市区町村 丁町名・大字・字 
01 北海道  104 札幌市白石区流通センター1〜7丁目 
01 北海道  108 札幌市厚別区下野幌テクノパーク1〜2丁目 
01 北海道  204 旭川市パルプ町  ★日本製紙(旧・山陽国策パルプ)旭川工場
01 北海道  204 旭川市パルプ町一条1〜8丁目 
01 北海道  204 旭川市パルプ町二条2〜9丁目 
01 北海道  204 旭川市パルプ町三条7〜9丁目 
01 北海道  228 深川市納内町グリーンタウン 
01 北海道  303 石狩郡当別町スウェーデンヒルズ 
01 北海道  303 石狩郡当別町太美スターライト 
02 青森県  203 八戸市卸センター1〜2丁目 
02 青森県  203 八戸市北インター工業団地1〜6丁目 
03 岩手県  201 盛岡市流通センター北1丁目 
03 岩手県  206 北上市流通センター 
03 岩手県  322 紫波郡矢巾町流通センター南1〜4丁目 
06 山形県  201 山形市流通センター1〜4丁目 
06 山形県  202 米沢市アルカディア1丁目 
07 福島県  202 会津若松市インター西  ★磐越自動車道・会津若松IC
09 栃木県  205 鹿沼市流通センター 
10 群馬県  205 太田市スバル町  ★富士重工・群馬製作所
11 埼玉県  101 さいたま市西区プラザ 
12 千葉県  211 成田市ウイング土屋 
12 千葉県  212 佐倉市ユーカリが丘1〜7丁目 
12 千葉県  212 佐倉市ユーカリが丘2丁目 
12 千葉県  212 佐倉市南ユーカリが丘 
14 神奈川県 201 横須賀市グリーンハイツ 
14 神奈川県 201 横須賀市ハイランド1〜5丁目 
15 新潟県  201 新潟市流通センター1〜6丁目 
15 新潟県  201 新潟市流通センター2丁目 
15 新潟県  213 燕市物流センター1〜4丁目 
16 富山県  202 高岡市オフィスパーク 
16 富山県  209 小矢部市フロンティアパーク 
16 富山県  209 小矢部市メルヘンランド
16 富山県  381 射水郡小杉町流通センター下条1丁目
16 富山県  381 射水郡小杉町流通センター青井谷1〜2丁目
16 富山県  382 射水郡大門町流通センター水戸田1〜3丁目
17 石川県  204 輪島市マリンタウン
17 石川県  365 河北郡内灘町字アカシア1〜2丁目
17 石川県  365 河北郡内灘町字ハマナス1〜2丁目
18 福井県  426 丹生郡清水町グリーンハイツ1〜10丁目
18 福井県  501 三方上中郡若狭町若狭テクノバレー
19 山梨県  208 南アルプス市 
19 山梨県  212 上野原市コモアしおつ1〜4丁目
20 長野県  201 長野市アークス
20 長野県  207 須坂市大字須坂須坂ハイランド町
20 長野県  321 北佐久郡軽井沢町大字発地ニュータウン
20 長野県  461 南安曇郡豊科町大字高家アルプス団地
20 長野県  461 南安曇郡豊科町大字田沢アルプス団地
20 長野県  485 北安曇郡白馬村大字北城エコーランド 
20 長野県  541 上高井郡小布施町大字小布施クリトピア 
21 岐阜県  201 岐阜市コモンヒルズ北山 
21 岐阜県  304 羽島郡柳津町流通センター1〜3丁目 
22 静岡県  101 静岡市葵区流通センター 
22 静岡県  206 三島市富士ビレッジ 
23 愛知県  211 豊田市トヨタ町  ★トヨタ自動車・本社工場
23 愛知県  216 常滑市セントレア1〜5丁目  ★中部国際空港(セントレア)
24 三重県  207 鈴鹿市鈴鹿ハイツ 
24 三重県  210 亀山市アイリス町 
24 三重県  210 亀山市関町富士ハイツ 
24 三重県  216 伊賀市阿山ハイツ 
24 三重県  216 伊賀市川合東山タウン 
26 京都府  206 亀岡市千代川町川関トビノス 
27 大阪府  204 池田市ダイハツ町  ★ダイハツ工業・本社工場
27 大阪府  219 和泉市テクノステージ1〜3丁目 
27 大阪府  362 泉南郡田尻町りんくうポート南  ★関西国際空港
27 大阪府  362 泉南郡田尻町りんくうポート北 
28 兵庫県  204 西宮市山口町阪神流通センター1〜3丁目 
28 兵庫県  204 西宮市名塩ガーデン 
28 兵庫県  219 三田市テクノパーク 
33 岡山県  202 倉敷市倉敷ハイツ 
33 岡山県  445 浅口郡里庄町大字新庄グリーンクレスト 
34 広島県  104 広島市西区商工センター1〜8丁目 
34 広島県  202 呉市安浦町中央ハイツ 
34 広島県  302 安芸郡府中町瀬戸ハイム1〜4丁目 
35 山口県  201 下関市ゆめタウン 
35 山口県  203 山口市大字朝田山口県流通センター 
35 山口県  212 柳井市ニュータウン南町 
35 山口県  216 山陽小野田市セメント町  ★太平洋セメント(旧・小野田セメント)
35 山口県  402 吉敷郡小郡町大字上郷流通センター西 
35 山口県  402 吉敷郡小郡町大字上郷流通センター東 
36 徳島県  204 阿南市中林町サンライズヒル 
37 香川県  201 高松市サンポート 
39 高知県  209 土佐清水市グリーンハイツ 
39 高知県  210 四万十市中村丸の内丸の内ハイランド 
39 高知県  323 香美郡土佐山田町テクノパーク 
40 福岡県  220 宗像市アスティ1〜2丁目 
41 佐賀県  204 多久市北多久町メイプルタウン 
42 長崎県  201 長崎市エミネント葉山町 
42 長崎県  201 長崎市ダイヤランド1〜4丁目 
42 長崎県  202 佐世保市ハウステンボス町  ★ハウステンボス
42 長崎県  204 諫早市多良見町シーサイド 
42 長崎県  367 南高来郡小浜町マリーナ 
44 大分県  201 大分市大字鴛野サンシャイン敷戸 
44 大分県  201 大分市大字旦野原旦の原ハイツ西 
44 大分県  201 大分市大字旦野原旦の原ハイツ東 
44 大分県  201 大分市大字中判田高江ハイツ 
44 大分県  201 大分市大字田尻天領ハイツ 
44 大分県  201 大分市大字東明野明野ハイツ 
44 大分県  207 津久見市セメント町  ★太平洋セメント
46 鹿児島県 211 加世田市ハーモニー 

流通センターのほか、バブル期に各地にできたテクノパークやオフィスアルカディアの名前、不動産業者が付けた宅地の名前をそのまま付けたものが目立ちます。
個人の住所としては、ちょっと恥ずかしいかもしれません。

ちなみに、カタカナの自治体名・丁町名・大字・字名をMapionで抽出してみたところ、前記を含めて4315件ありました(丁目の異なるものも1件ずつ数えて)。
このほか、「ノ・ツ・ケ・ガ」を含む地名が1万8千322件ありました。「ノ」が約1万2千件、「ケ・ガ」が5千6百件ほどです。
漢字の「ヶ」や平仮名の「の・つ・が」は数えていませんが、送り仮名の「上ミ・下モ・下タ・下リ・向イ・後ロ・新シ」等はカタカナ地名の4315件に含みます。



ムチはしなう?しなる?

【954】
ムチはしなう?しなる?
 道浦俊彦
 - 05/7/27(水) 18:06 -
----
「しなう」と「しなる」、「しなう」の方が古い言葉のようですが、意味の違いや使い分けはあるのでしょうか?
私は「ムチ(鞭)」は「しなう」の方が合うような気がするのですが。「木の枝」は断然「しなる」です。
そして、ともに過去形は「しなった」で良いのでしょうか?



【956】
Re:ムチはしなう?しなる?
 Yeemar
 - 05/7/27(水) 23:48 -
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▼道浦俊彦さん:
>「しなう」と「しなる」


ほかに、ごはんを「よそう」と「よそる」、赤ん坊を「負ぶう」と「負ぶる」、いずれも前者が古く、後者が俗語的という感じがします。私の場合、意味による使い分けをするかどうかは、あいまいです。

活用はいずれも五段活用で、過去形は「しなった」「よそった」「負ぶった」でいいでしょう。つまり、過去形では終止形が「う」か「る」か分からないところから、交替が起こったのでしょう。

見坊豪紀『〈'60年代〉ことばのくずかご』(筑摩書房)p.57によれば
「しなう」は辞書にある。「しなる」はない〔Yeemar注、当時の話〕。が、「しなる」は、「しなう」と同じくらいに新聞では使われているらしい。
オリンピック〔Yeemar注、東京〕期間中、「しなう」6例「しなる」5例「しなり」(名詞)1例を新聞から採集した。
とのことです。



【958】
Re:ムチはしなう?しなる?
 道浦俊彦
 - 05/7/28(木) 8:33 -
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『はなしのくずかご』によると、1960年代には、もう「しなる」が出てきていたのですね。じゃあ、もう「しなう」の方が詩か何か出ないと見られない言葉になっているのでしょうね、おそらく。



【971】
Re:ムチはしなう?しなる?
 POP3
 - 05/7/31(日) 9:58 -
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▼道浦俊彦さん:
>『はなしのくずかご』によると、1960年代には、もう「しなる」が出てきていたのですね。じゃあ、もう「しなう」の方が詩か何か出ないと見られない言葉になっているのでしょうね、おそらく。


童謡「船頭さん」の歌詞に

 元気いっぱい櫓がしなる

とあります.
 
作曲:河村光陽(1897-1946)
作詞:武内俊子(1905-1945)

だそうですから戦前にも「しなる」は登場していたのでしょう.

余談ですが,この歌詞を聞いて僕は「ろがす」という動詞があると思って
いました.



【972】
Re:ムチはしなう?しなる?
 Yeemar
 - 05/7/31(日) 11:29 -
----
▼POP3さん:
>戦前にも「しなる」は登場していたのでしょう.


「船頭さん」は「昭和十六年七月キングレコード」ということですね(『童謡』野ばら社1983)。



【973】
Re:ムチはしなう?しなる?
 佐藤
 - 05/8/1(月) 18:05 -
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▼道浦俊彦さん:
>『はなしのくずかご』によると、1960年代には、もう「しなる」が出てきていたのですね。


 方言差も考えたいところ。ここ十年くらいの論文で、誰のだったかで見た気がします(柴田武先生? 手紙で調査依頼が来たような記憶が……)。また、津軽方言などでは、共通語・東京語のワ行五段活用が、規則的にラ行五段活用化しているのは夙に有名。ただし、ここ10〜20年ほどのあいだで急速に共通語化が進んでいるようなので、若年層ではどんなものか。



【997】
Re:ムチはしなう?しなる?(しゃくる)
 Yeemar
 - 05/8/13(土) 18:02 -
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>ほかに、ごはんを「よそう」と「よそる」、赤ん坊を「負ぶう」と「負ぶる」


「しゃくる」と「しゃくう」というのもあり、前者は「さくる」の転、後者は「杓」+「う」という、名詞の動詞化でしょうか。ところが混用もされます。
 扉口で一度振り返った伊作を、天上は凝と見遣り、そうして、(もう行け)というように顎を掬{しゃく}うようにした。(森茉莉「甘い蜜の部屋」〔1975年発表〕『新潮現代文学62』1981.04.15発行 p.259)
「しゃくう」は、『大辞林』第2版によれば「手やひしゃくなどで液体や粉などをすくい取る。しゃくる」という意味しかありません。ところが、ここの「しゃくう」は、『大辞林』第2版の「しゃくる」(4)「あごを軽く突き出すようにして上げる。人に横柄に指示する時の動作」と同様の意味で用いられています。


雰囲気。 #

【300】
雰囲気。 #
 Yeemar
 - 04/8/19(木) 6:53 -
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女王・蝶々
雰囲気。
雰囲気。――続
などに関連するものと思います。

「女王→じょうおう」の類例として「目一杯→めいいっぱい」。
(笹を)めいいっぱい伸ばしてから抜くのは意外に面白いし、
学生の文章です。書き手は関西出身(1音節語の長呼)なのかどうか、分かりません。「せいいっぱい」からの類推もあるか。「Google」では「"めいいっぱい" の検索結果 約 10,400 件」となり、少なくありません。



【301】
Re:雰囲気。 #
 道浦俊彦
 - 04/8/19(木) 9:17 -
----
関西弁は単音を引っ張って2音にしますね。目エ、手エ、背エ、日イ、間ア、蚊アなどなど。それとの関連は銅なんでしょうか?いや、どうなんでしょうか?(五輪のせいか?)



【302】
Re:雰囲気。 #
 KS
 - 04/8/19(木) 10:55 -
----
▼道浦俊彦さん:
>関西弁は単音を引っ張って2音にしますね。目エ、手エ、背エ、日イ、間ア、蚊アなどなど。それとの関連は銅なんでしょうか?いや、どうなんでしょうか?(五輪のせいか?)


私(関西人)も「じょうおう」と伸ばして発音しています。
 「じょ」を長音にして「じょう」のようにも思いますが、「女王」のアクセントで見ますと「じょおう」の場合は「王」にアクセントを置いて発音しますが、「じょうおう」の場合は(関西風)しり下がりのイントネーションで発音しています。
 「じょうおう」と伸ばして云う場合に「おう」にアクセントを置いて、しり上がりに発音するのは(私には)かなり難しく変な感じです。
 「女」の文字は「じょ」と発音するのが殆どで「じょう」と発音するのは「女王=じょうおう」の場合だけのような気がします。「じょうおう」は発音の方言なんでしょうか?。
 ところで、このメールを打ってて発見したのですが「じょうおう」と入力しても、ちゃんと「女王」に変換してくれました。流石、関西のパソコンです!?。



【303】
Re:目一杯
 佐藤
 - 04/8/19(木) 15:33 -
----
▼Yeemarさん:
>「女王→じょうおう」の類例として「目一杯→めいいっぱい」。


東日本出身の私も言いますね。メイッパイも使うけれど。類例に「ひいじいさん/ひいばあさん」。2拍1音節で揃えようとする力が働くのか。

「ふいんき」の類例は「さざんか」(山茶花)。あと30年もすると山茶花のように、「ふいんき」が正しい形になるのかもしれませんね。変化の終着点を見てみたい気もします。



【352】
Re:雰囲気。 #
 NISHIO
 - 04/9/10(金) 1:06 -
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▼KSさん:
> 私(関西人)も「じょうおう」と伸ばして発音しています。


その昔、fj.jokes(だったか)で、「嬢王(じょうおう)」が流行したことがありました。

・・・が、関西特有というわけでもないと思います。

見坊豪紀『ことばのくずかご』(ちくまぶっくす15, 筑摩書房, 1979年8月23日初版)
(29)ジョオウか? ジョウオウか? 〔75.7 64〜65〕
エリザベス女王ご滞在中の一週間、ラジオ・テレビ各局の多数派は、NHKのアナウンサーも含めてジョーオー。〔NHKの『日本語発音アクセント辞典』はジョオ¬ー〕 そして「じょうおう」を載せる辞書は、『三省堂国語辞典』第二版『日本国語大辞典』の少数派。
ジョーオーに関する最高の証人は天皇だ。
英国ジョーオーエリサ〔?〕ベス二世陛下
ジョーオー陛下ならびにエジンバラ公(NHK総合テレビ75年5月7日19時59分「ニュースセンター特集」宮中晩さん会でのごあいさつ文)


# あ、天皇家は京都弁か…



【925】
Re:目一杯
 道浦俊彦
 - 05/7/11(月) 11:05 -
----
▼佐藤さん:
>「ふいんき」の類例は「さざんか」(山茶花)。あと30年もすると山茶花のように、「ふいんき」が正しい形になるのかもしれませんね。変化の終着点を見てみたい気もします。


『バカにみえる日本語』(誤字等日本語研究会・著、辰己出版:2005、6、1)という本の最初に取り上げられているのが「ふいんき」です。
Google検索では「ふいんき」が53%(2万3300件)、「ふんいき」が47%(2万0400件)だったと記されています。また「亜種」として「不陰気」「雰因気」「雰陰気」「風陰気」「風囲気」「分陰気」「負陰気」「不囲気」などもあったということです・・・。



【926】
Re:目一杯
 Yeemar
 - 05/7/12(火) 14:26 -
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▼道浦俊彦さん:
>『バカにみえる日本語』(誤字等日本語研究会・著、辰己出版:2005、6、1)


この本を道浦さんにお教えいただき、目次をデータ化してみました。この本は、もともとはインターネット「誤字等の館」に掲載された文章をもとにしたもののようですね。


●誤字等日本語研究会『バカにみえる日本語』辰巳出版株式会社 2005.06.01(注・〔 〕内は検索用に私が加えた参考語形。必ずしもそれだけが正用という意ではない)

1:ふいんき〔雰囲気〕/惜しい間違い
2:こんばんわ/「こんにちわ」派の先生/「こんにちは」と「こんばんは」
3:完壁〔完璧〕/和氏の璧
4:寸暇を惜しまず/寝る間も……
5:至上命題/ほんとに「至上」ですか?
6:思考錯誤〔試行錯誤〕/至高の嗜好を試行する
7:笑う角には〔笑う門には〕/鬼にも衣装?
8:そのとうり〔そのとおり・その通り〕/「とぅ」は何と読む?
9:うる覚え〔うろ覚え〕/裏の記憶?
10:出る釘は打たれる〔出る杭は打たれる〕/「打つ」のは何のため?
11:徴妙〔微妙〕/「税金徴収」は取りすぎ?
12:コミニュケーション〔コミュニケーション〕/間違えるのは「マスコミ」のせい?
13:ギブス〔ギプス〕/バネ仕掛けのギプス
14:忘備録〔備忘録〕/防忘録
15:同音意義語〔同音異義語〕/批判のつもりが……?
16:不詳の息子〔不肖の息子〕/不詳の身ながら
17:手持ちぶたさ〔手持ちぶさた・手持ち無沙汰〕/五豚さ〔ごぶさた〕
18:責任追求〔責任追及〕/原因追求
19:できかねません/「できかねる」は自己保身の言葉
20:前面リニューアル〔全面リニューアル〕/全面に集中せよ
21:アボガド〔アボカド〕/国のお墨付き?
22:濡れ手に泡〔濡れ手に粟〕/濡れ手にバブルとあぶく銭
23:どこにでも偏在する〔遍在〕/次に曲がるのは?
24:先立つ不幸〔先立つ不孝〕/不孝の手紙?〔不幸の手紙〕
25:年棒〔年俸〕/給料は年捧制〔年俸制〕
26:領布〔頒布〕/目で覚えるか、耳で覚えるか
27:自分では役不足〔力不足〕/敵をほめるヒーロー?
28:保障書〔保証書〕/共同で保障します
29:全知全能を傾けて〔全身全霊〕/神は全治なり?
30:一瞬先は闇〔一寸先は闇〕/一寸法師の身長は?
31:ファンタジック〔ファンタスティック〕/英語との併記
32:負けるとも劣らない〔勝るとも劣らない〕/負けじ魂、ここに
33:とんでもありません〔とんでもない〕/滅相もありません
34:国敗れて山河あり〔国破れて山河あり〕/杜甫と芭蕉と藤原氏
35:まぎわらしい〔まぎらわしい・紛らわしい〕/入れ替えは新語を生む?
36:汚名挽回〔汚名返上〕/汚名を手に入れたい人とは



【979】
「退院」
 佐藤
 - 05/8/6(土) 17:39 -
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 この種のものはまだ出てなかったでしょうか。
 私は、「退院・隊員」を〔ta:iN〕と発音しがちのようです。〔i〕が二つ並ぶのは厄介で、「退院」は前の母音を伸ばすように変わりますが、それでも存在の痕跡が主張されます。が、「体育」だと〔i〕を一つ落とすところまでいってしまう(この2種の差は、アクセントの位置が関与?)。
 こうした変化は、中世・近世では〔u〕が後ろにくる連母音が融合(異化をともなうものもあり)・長音化しましたが、近世以降だと〔i〕が後ろにくるものに変化がありますね(もちろん、方言による遅速はあります)。それと関連するものか。
 入試問題などで「読み仮名を記しなさい」という表現を見ることがあります。面妖な言い方だなと思っていました。が、単に「読みを記しなさい」としか書いてない場合、「退院→たあいん(たーいん?)」を×にできませんね(理屈をこねれば)。そうした事態への対策として「読み仮名」という術語(?)に、「漢字の読みの本来の仮名表記」の意味を込めて使っているのかも…… と思うことがあります。



【982】
Re:「退院」
 道浦俊彦
 - 05/8/6(土) 19:18 -
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「体育」「体育館」が「たいく」「たいっかん」(あるいは「たいくかん」)となるのもあるのではないでしょうか。



【984】
Re:「退院」
 佐藤
 - 05/8/6(土) 20:58 -
----
▼道浦俊彦さん:
>「体育」「体育館」が「たいく」「たいっかん」(あるいは「たいくかん」)となるのもあるのではないでしょうか。


「「体育」だと〔i〕を一つ落とすところまでいってしまう」として触れてますよ。



【986】
Re:「退院」
 道浦俊彦
 - 05/8/6(土) 21:32 -
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あ・・・失礼しました。
では、こんなのはいかがでしょうか。
「田園」(でんえん)が「でーえん」、「単音」(たんおん)が「たーおん」、「山陰」(さんいん)が「さーいん」のように撥音の「ん」をしっかり発音できないので、長音のように聞こえる曖昧な発音になる傾向がある、というのは。

昔、祇園祭の中継のリポーターが、祭に来ている人に、
「どちらからいらっしゃったんですか?」
と聞いたところ、その人は、京都市内の、
「西院(さいいん)」
と答えたのに、リポーターは、
「山陰(さんいん)」
と聞き取ってしまい、
「まあ、遠くからいらっしゃったんですねえ。」
と言っていたことを思い出しました。
母音にはさまれた「ん」は発音しにくいし、また聞き取りにくい、ということでしょうか。
また、同じ母音がつながる場合には、はっきりと言い直さないと長音になってしまってダラシがなく聞こえると、若手アナには指導しています。



【989】
Re:「退院」
 佐藤
 - 05/8/8(月) 13:01 -
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▼道浦俊彦さん:
>「田園」(でんえん)が「でーえん」、「単音」(たんおん)が「たーおん」、「山陰」(さんいん)が「さーいん」のように撥音の「ん」をしっかり発音できないので、長音のように聞こえる曖昧な発音になる傾向がある、というのは。


 それは済ませたつもりでおります。↓
  http://www.gifu-u.ac.jp/~satopy/kini085.htm#5

 私自身は、いまのところ「田・単・山」のンは長音化しないようです。いや、かすかに「山陰」の中の撥音が弱まっているかもしれません。ただ、同じ発音になるはずの「産院・参院」ではそうではなさそう。少なくとも意識の上では。

 おそらく、他の語(ことに対義語)との区別をはかろうとして撥音をきちんと保とうとしているのかな、と思っています。「山陰」の場合、「山陽」と対になりますが、発音のしやすい後字部末尾での言い訳(イン/ヨー)なので前字部の撥音はぞんざいでもいい。が、「産院/参院」では、区別する部分が前字部にくるので(参考:医院・病院……/衆院)きちんと発音しようとしている。ただ、これもぞんざいな発音になったとしても、他の語と紛れなさそうなので、単に気分の問題なのかもしれません。



【990】
Re:「退院」
 道浦俊彦
 - 05/8/8(月) 15:19 -
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今日の新人アナ研修の中で原稿を読ませていたら、「店員」をあいまいに発音していたので、「てーいん」に聞こえました。「店員」の最初の「ん」と次の「い」をキッチリ発音しないと「定員」なってしまいます。歯の治療で麻酔を打ったあとにしゃべっているような感じです。



【991】
Re:「退院」
 佐藤
 - 05/8/9(火) 16:44 -
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▼道浦俊彦さん:
>今日の新人アナ研修の中で原稿を読ませていたら、「店員」をあいまいに発音していたので、「てーいん」に聞こえました。「店員」の最初の「ん」と次の「い」をキッチリ発音しないと「定員」なってしまいます。


 研修、お疲れさまです(←誤用?)。前に他局の新人研修の様子を見たことがありますが、指導役が「君たちなんか、いらないんだ!」と言っているところから見だしたのでビックリしたものでした。でも、その気持ち(というか指導法)はよく分かります。新人の頭には「就職戦争に勝ち抜いた勇者なんだぜ、へへん!」といった思い上がりもないとは言えない。いつまでたってもそのような状態では、先輩たちが(必死の思いで)つかんできた技術を正当に評価することもできず、ひいては技術習得へのモチベーションを低下させることでしょう。「お前たちは、力も見識もない、ただの若者にすぎないのだ」、そう、初期段階で印象的に教えておけば、内省のきっかけとなり、自覚をもつことにもつながる。そして未熟さを知れば技術習得にもはずみがつき、結局、時間の節約にもなります。「最初の一喝」は効率的な指導法かもしれないなと思い直しているところです(ウチでもやろうかなぁ)。

 ところで、もう一押し。変化の最前線では何が起こっているかを観察したいですね。
 いま、「サンイン」が「サーイン」になりつつあるわけですが、そこで何が起こっているかを知りたい。全体的な傾向もそうですけれども、結局は、一人の人間において、どこまで進んでいるかということが知りたいですね。今だからできる検討です。5年・10年たってから振り返ってももう遅い。自分の変化がどこまで進んでいたかすら、忘れているでしょう。それではつまらないので、今の段階で書き留められたらいいな、と思うわけです。
 で、私の場合、「サンイン」であるべき発音のうち、「山陰」と「産院・参院」で違いがありそうだということまで確認できました。その進度の差の由来も見てみた、ということになります。道浦さんの内省で気づいたことがあれば、お書き込みください。



【992】
原因
 skid
 - 05/8/9(火) 22:22 -
----
つい「げいいん」とタイプしてしまいます。
鯨飲したことはないけれど、口でもそう言ってます。
物質も「ぶしつ」としか言わなくなりました。


ハモる ―名詞の動詞化―

【929】
ハモる ―名詞の動詞化―
 Yeemar
 - 05/7/13(水) 16:47 -
----
金田一春彦・安西愛子編『日本の唱歌(中)』(講談社文庫)p.292に「朝はどこから」の歌について
安西と岡本とがハモッて歌ったのが、当時はまだ珍しい試みで新鮮な感じを与えた。
とあります。この文庫の初版は「昭和54年7月15日」。このころから「ハモる」はあるのか、意外に古いと思いました。

『日本国語大辞典』の「ハモる」には用例がありません。

名詞の動詞化の例については、だいぶ前に、「トラブる」の先祖というページに書きつけたことがあります。ほとんどは知られた例ですが、中には珍しいと思ったものも入れたつもりです。



【930】
Re:ハモる ―名詞の動詞化―
 岡島昭浩
 - 05/7/13(水) 21:03 -
----
▼Yeemarさん:
>「昭和54年7月15日」。このころから「ハモる」はあるのか、意外に古いと思いました。



私が中学生の頃、昭和48年から51年頃ですが、福岡の民放、RKBラジオで、大人気番組「スマッシュ11(イレブン)」というのがありました。その中で、「○○○ないコーラス」というコーナーがありました。一語化して言っており、下がり目はコの後。聴取者が集まって、なにか歌を歌い、それを編集して放送する、というコーナーでした。


この「○○○ないコーラス」が何と言っているのか分からず、
「真駒内コーラス」?
「浜もないコーラス」?
「たまらないコーラス」?
と、首を傾げておりました。

これが「ハモらないコーラス」だったんです。多分、音楽愛好者の間では、早くから使われていたものだろうと思います。



【960】
Re:ハモる ―名詞の動詞化― 昭和35年!
 佐藤
 - 05/7/30(土) 11:25 -
----
昭和35年発生説、発見。我等、ハモるとともに生まれし者達?
http://www.geocities.jp/showahistory/history5/showa35.html

歌声喫茶が発祥の場。昭和35年に「使われ(てい)た」ということでしょうから、もう少しさかのぼれるか。ただ、回想録のような書きぶりなので、思い違いも考えられますね。他の証言もほしい。



【961】
Re:ハモる ―名詞の動詞化― 昭和35年!
 道浦俊彦
 - 05/7/30(土) 13:30 -
----
大学のOB合唱団で男声合唱をやっていますが、昭和20年代後半卒業の先輩たちも「ハモる」はごくフツウに使っていますね。新たに覚えた言葉、というようでもなく、学生時代から使われていると思われます。
今度、ご本人たちに直接伺って確認しておきます。



【962】
Re:ハモる ―名詞の動詞化― 昭和35年!
 道浦俊彦
 - 05/7/30(土) 14:49 -
----
『日本俗語大辞典』(米川明彦編、東京堂出版)に載っている「ハモる」の用例で一番古いのは、1955年(昭和30年)8月28日号の 『週刊読売』の記事で、「『みんなで”若者”でもハモろうぜ』(”ハモるは合唱する。ハーモニーの転)左翼学生の隠語」
だそうです。
また、昭和31年初版・昭和48年22版の楳垣実『隠語辞典』(東京堂出版)にも学生語として「ハモる」が載っていました。意味は「合唱する」。

ただ、現在私が使っている「ハモる」は、単に合唱するのではなく、和音を聞かせるものを「ハモる」と言います。斉唱は、合唱ではありましょうが「ハモる」ではありません。



【965】
Re:ハモる ―名詞の動詞化― 昭和30年!
 佐藤
 - 05/7/30(土) 19:03 -
----
▼道浦俊彦さん:
>『日本俗語大辞典』(米川明彦編、東京堂出版)に載っている「ハモる」の用例で一番古いのは、1955年(昭和30年)8月28日号の 『週刊読売』の記事で、「『みんなで”若者”でもハモろうぜ』(”ハモるは合唱する。ハーモニーの転)左翼学生の隠語」
>だそうです。


ありがとうございます。歌声喫茶を生み出した「うたごえ運動」(↓)の産物のようですね。するとさらにさかのぼるか。上限は1948年?
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%86%E3%81%9F%E3%81%94%E3%81%88

「ハモる」という言い方は、岡島さんやYeemarさんの受け取り方からすると、生まれてから現在まで必ずしも拡大の一途をたどった訳ではないようですね。ある時期に拡大してまた収束して、現代にみるように定着した、という筋でしょうか。あるいは大学生の隠語として長らく保たれたということか。



【966】
Re:ハモる ―名詞の動詞化― 昭和30年!
 道浦俊彦
 - 05/7/30(土) 19:09 -
----
昭和35年大学卒業の先輩から返事が返ってきました。それによると、

「現役の頃は、ごく自然に『ハモる』を使っていました。またジャズメン達が使っていた 「C千」(=1000)、「G百」(=500)など、金銭に関する表現や、「ジャズ」を「ズージャ」というように語順を入れ替える表現なども仲間内で隠語として結構使っていました。」

早稲田大学グリークラブ(男声合唱団)での話です。「現役の頃」と言うのは、「昭和31年から35年」にかけて、「1956年から1960年」です。



【967】
Re:ハモる ―名詞の動詞化― 昭和30年!
 道浦俊彦
 - 05/7/30(土) 21:36 -
----
さらに昭和34年(1959年)卒業の先輩からです。

「定かではありませんが、私の記憶ではグリークラブ現役当時(昭和30年から34年)から使われていたように思います。いつ頃からかと言われると、一寸困りますが・・・。21号館共通教室裏手の部室で、現在ボニージャックスの西脇さんや高橋さん玉田さん達が、何人か集まっては暇があれば何かを歌っているのを見かけて、
『あー、またハモッてるネ』
などと云っていたような気がします。」

とのことです。



【968】
Re:ハモる ―名詞の動詞化― 昭和30年!
 道浦俊彦
 - 05/7/30(土) 21:40 -
----
「うたごえ運動」で歌われたものは、どちらかというと「斉唱」のようにユニゾン(同じメロディ)で歌うものか、せいぜい2部合唱ぐらいが多かったのではないでしょうか?それだと「ハモる」感覚とは、ちょっと違うかなと思うのですが・・・。
「コード」がバシッと決まってこそ、「ハモった」と言えるような気がします。



【969】
Re:ハモる ―名詞の動詞化― 語義・語感
 佐藤
 - 05/7/30(土) 22:02 -
----
▼道浦俊彦さん:
>「うたごえ運動」で歌われたものは、どちらかというと「斉唱」のようにユニゾン(同じメロディ)で歌うものか、せいぜい2部合唱ぐらいが多かったのではないでしょうか?それだと「ハモる」感覚とは、ちょっと違うかなと思うのですが・・・。
>「コード」がバシッと決まってこそ、「ハモった」と言えるような気がします。


私も「ハモる」を使うときは、和音(三度とか六度?とか)が成立したときが主です。ちゃんとした(?)不協和音でも言いそうです(「音程が合っていない」とは別)。ただ、俗に「単に同じ言葉を同時に発話した(歌ですらない!)」場合でも使ってますね。そして、それを承知の上で、ちょっとだけ後ろめたさを覚えつつ、使うこともあります。

「ハモる」の許容度などを調べるのも面白そうですね。どこで線が引けるか、とか。
 A正式な不協和音でひびく
 Bきれいな和音(不協和音除く)がひびく
 C4声部(以上? 分からん)でうたう
 Dせいぜい2声部程度でうたう
 Eともかく皆で一緒にうたう
 F偶然、同時に同じ言葉をいいあう
程度差順に並べたつもりですが、BとCのあいだで、状態をいうのか、行為をいうのかという大きな境界ができますね。



【970】
Re:ハモる ―名詞の動詞化― 昭和30年!
 Yeemar
 - 05/7/31(日) 0:21 -
----
▼佐藤さん:
>「ハモる」という言い方は、岡島さんやYeemarさんの受け取り方からすると、生まれてから現在まで必ずしも拡大の一途をたどった訳ではないようですね。


私は1979年の例を見て「意外に古い」と思ったのですが、よく考えてみれば、私は中学生の時、1982年に音楽の先生が「ハモる」を使っているのを聞いた覚えがあります。そして、意味もすぐに分かりました。ですから、実際には79年の例は、私にとっても3年さかのぼったにすぎませんでした。考えが足りませんでした。



【974】
Re:ハモる ―名詞の動詞化― 昭和30年!
 道浦俊彦
 - 05/8/2(火) 16:37 -
----
昭和23年(1948年)入学の先輩から、返事が来ました。

「入部時には既に使われていた記憶があります。終戦間もない頃。当時、指揮者は磯部俶さん、一年上には故・関屋晋さんがいました。よく『ハモってないな』とか『ひとつハモるか』という風に使っていました。」

とのことです。



【975】
Re:ハモる ―名詞の動詞化― 昭和30年!
 佐藤
 - 05/8/2(火) 17:01 -
----
▼道浦俊彦さん:
>昭和23年(1948年)入学の先輩から、返事が来ました。
>
>「入部時には既に使われていた記憶があります。終戦間もない頃。当時、指揮者は磯部俶さん、一年上には故・関屋晋さんがいました。よく『ハモってないな』とか『ひとつハモるか』という風に使っていました。」


 あっさり理論的上限(=うたごえ運動発祥)の例まで出ましたね。
 ひょっとすると、合唱はじめ音楽に(準)専門的に関わる人には、早くから使われていたのでしょうか。で、うたごえ運動の広がりとともに昭和30年代あたりから「ハモる」が専門外の人にも広がりだした……

 いまさら言うのもあれなんですが、「ひとつハモるか」のような使い方、恐らくは「二声部以上で合唱する」の意味だと思うのですが、私にとっては初めて接する用法です。さきに語義などを何段階かに分けましたが、「合唱する」系のいくつかのブランチは、私にとっては実感のわかない用法です。



【976】
Re:ハモる ―名詞の動詞化― 昭和30年!
 道浦俊彦
 - 05/8/2(火) 18:46 -
----
うちのOB合唱団の最高齢の「大」先輩は、なんと、
昭和12年(1937)”卒業”
の92歳!現在、間接的に「現役時代に『ハモる」を使っていたかどうか?」を確認してもらっているところです。



【977】
Re:ハモる ―名詞の動詞化― 昭和30年!
 道浦俊彦
 - 05/8/5(金) 10:00 -
----
さらに古い時代の先輩の話が聞けました。

「昭和24年卒の先輩は所謂「特攻帰り」で、当時航空隊の長靴を履いて通学しておられたように思います。学徒出陣で戦闘機に乗っていたということでした。

その学生時代に「ハモる」を使っていたということですから、昭和17、8年(1942、43年)頃には間違いなく使われていたということになります。磯部さんは17年卒ですからその頃は普通に使っていたのではないでしょうか。
それ以前については残念ながら不詳です。」


チェゲバな服

【939】
チェゲバな服
 道浦俊彦
 - 05/7/16(土) 20:20 -
----
10代と思われる若い夫婦が3組も、
「チェゲバな服」
という表現をするのを聞いたと、うちの後輩アナウンサーが言ってきました。若者本人たちに聞いても、
「ニューヨーク・ヤンキースの服(ユニフォームか?)」
「ゆったりとした服」
「ラップ系の人が着ているような服」
「帽子を斜めにかぶる」
と言うような答えしか返ってこなくて、どう言う意味か、なぜそのように言うのか、わからなかったそうです。
ネットで検索すると「チェ・ゲバラ」を略して「チェゲバ」というケースがあるかのようですが、一体この言葉の意味、出自はどこにあるのでしょうか?
ご存知の方、ご教示ください。



【949】
Re:チェゲバな服
 後藤斉
 - 05/7/20(水) 11:54 -
----
▼道浦俊彦さん:
>10代と思われる若い夫婦が3組も、
>「チェゲバな服」
>という表現をするのを聞いたと、うちの後輩アナウンサーが言ってきました。
>一体この言葉の意味、出自はどこにあるのでしょうか?


よくわかりませんが
http://216.239.63.104/search?q=cache:http%3A//www.deodeo.com/jp-bin/cd_detail.exe%3Fmode%3D0%26productno%3DVICP62887
>ファッション(マンバ、センターGUY)音楽(トランス)、言語(「チェゲバ」など)・・・誰もが興味を持っている。最先端の若者文化を総合的に理解できてしまう刺激的な一枚!

だそうです。現在のこのページ
http://www.deodeo.com/jp-bin/cd_detail.exe?mode=0&productno=VICP62887
からは「チェゲバ」が消えています。



【964】
Re:チェゲバな服
 道浦俊彦
 - 05/7/30(土) 14:53 -
----
平成ことば事情2234に「チェゲバな服」について書きました。反応を待っていますが、今の所、何も反応なし、です。


「パトラッシュ」と「パトラッシェ」

【931】
「パトラッシュ」と「パトラッシェ」
 道浦俊彦
 - 05/7/14(木) 9:50 -
----
ご存知、『フランダースの犬』の主人公の犬の名前ですが、ポプラ社のこども向けの本(大石真・文)を読んでいたら、
「パトラッシェ」
と書いてありました。私が慣れ親しんだ(それほどでもないけど)名前は、
「パトラッシュ」
です。これはどちらが正しいのでしょうか?
「アタッシュ・ケース」とアタッシェ・ケース」のようなケース(事例)なのでしょうか?



【937】
Re:「パトラッシュ」と「パトラッシェ」
 益山 健
 - 05/7/15(金) 8:28 -
----
ほかに「シュワルツネガー」と「シュワルツェネガー」も同類でしょうか。

フランダースの犬の人名については以前ほかのところで話題になったことがあるのですが, そもそも Nello とか Patrasche とかいう名前はベルギーにはないらしい(原文は英語)ので, 正解のわかりようがないのかもしれません。ただオランダ語で語末の e を読まない理由はないでしょうね。



【963】
Re:「パトラッシュ」と「パトラッシェ」
 道浦俊彦
 - 05/7/30(土) 14:52 -
----
「平成ことば事情2226」に「パトラッシュ」と「パトラッシェ」を書きました。


アフガン

【932】
アフガン
 道浦俊彦
 - 05/7/14(木) 18:50 -
----
先日、赤ちゃんの「おくるみ」のことを「アフガン」と言うことを初めて知りました。なぜ「アフガン」なんでしょうか?



【933】
Re:アフガン
 岡島昭浩
 - 05/7/14(木) 22:54 -
----
▼道浦俊彦さん:
>先日、赤ちゃんの「おくるみ」のことを「アフガン」と言うことを初めて知りました。なぜ「アフガン」なんでしょうか?


アフガンコートって何でしたっけ。
ともかく毛糸の何かではないでしょうか。

アフガンとカシミールって近いですね。カシミヤを思い出します。



【934】
Re:アフガン
 岡島昭浩
 - 05/7/14(木) 22:56 -
----
>▼道浦俊彦さん:

>>先日、赤ちゃんの「おくるみ」のことを「アフガン」と言うことを初めて知りました。なぜ「アフガン」なんでしょうか?


infoseek辞書
の、「また、肩掛け」のあとに、「また、おくるみ」を追加せねばならないわけですね。



【935】
Re:アフガン
 skid
 - 05/7/15(金) 6:50 -
----
たまたま図書室から『田中千代 服飾事典』同文書院(1981、新増補版)を手元に出してあったので引きました。

アフガン[Afghan]ウールの柔らかい毛布、あるいは肩かけの一種。普通は編物でつくられ、ベッドの上かけなどのようなおおいや、おくるみとして用いられる。乳幼児のみくるみなどは、極細2本などで柔らかく編み、色もピンク、白、薄いブルーなどにする。

アフガンあみ【アフガン編】アフガン針を使って編む技術で、棒針編とかぎ針編を混合したような編方である。→あみもの

アフガンばり【アフガン針】アフガン編に用いる。竹製のかぎ型の針のこと。→しゅげいようぐ

「あみもの」「しゅげいようぐ」の項目では更に詳しく書かれ、図や写真もあります。



【936】
Re:アフガン
 道浦俊彦
 - 05/7/15(金) 7:37 -
----
皆様、ありがとうございます!
それにしても、「よだれかけ」の「スタイ」とか、この「アフガン」とか、男の私などにはよくわからない言葉が、横文字(カタカナ)語で出現しているんですねえ。別に新たに出現したわけではなく、前からあったのでしょうが・・・。



【938】
Re:アフガン
 skid
 - 05/7/15(金) 11:46 -
----
田中千代編『服飾事典』婦人画報社(1957)や被服文化協会編『洋装辞典』文化服装学院出版局(1955)にも「アフガン」の項目がありました。
国会図書館の蔵書検索では、1958年に『アフガン編全書』、1959年に『鈎針編とアフガン編』があり、1960年代は5冊、1970年代は4冊、80・90年代は各1冊だけです。
『角川外来語辞典』も1958年の書名を2冊載せて出典にしています。
このあたりから流行し始めたようですが、最近では下火なのかもしれません。



【944】
Re:アフガン
 道浦俊彦
 - 05/7/16(土) 23:28 -
----
たまたま(まったくの偶然で)「アフガン」について、朝日新聞の言葉のコラムでも、東京版は17日、大阪版では18日に取り上げるそうです。



【959】
Re:アフガン
 道浦俊彦
 - 05/7/28(木) 8:59 -
----
「平成ことば事情2228」にアフガン書きました。


お疲れさま・ご苦労さま・お世話さま

【957】
お疲れさま・ご苦労さま・お世話さま
 Yeemar
 - 05/7/28(木) 0:28 -
----
教えてください(ご苦労様)
の続きです。新会議室では、「Re:視聴記録 ##」「Re:NHK「気になることば」週間報告 ##」などでも話題になっています。

「教えてください(ご苦労様)」の中で、
▼豊島正之さん:
>野間宏「真空地帯」に、二等兵が上官に「ごくろうさん」を連発する場面があったと記憶します。

〔原発言こちら

とご指摘になっていますが、たまたま次のような場面が目に入りました。
 ふるえる安西二等兵を取りかこんでみなが上って行くと、出迎えた弓山二等兵は、「兵長殿、上等兵殿、三年兵殿、ごくろうさんでした。」といいながら安西の手をとって暗い電燈のたれさがった班内にひき入れた。(野間宏「真空地帯」第三章 九、『新潮現代文学27 真空地帯・暗い絵』p.125)

 階下の舎後の方で「ごくろうさん、別れ。」という外務週番上等兵の声がして馬手入れに行っていた初年兵と補充兵がかえってきたが、(第三章 十、p.128)
前者は部下から上官への、後者は上官から部下へのせりふですね。


何人と何名

【955】
何人と何名
 道浦俊彦
 - 05/7/27(水) 18:34 -
----
人数をいう時に、放送では「何名」は使わないと教えられましたが、一般の「数え方の本」には、「リストがあるときは『名』、ないときは『人』を使う」というふうに書いてあります。
「なるほどな」と思うのですが、放送で「名」を使わない理由は、「『名』は軍隊で使われていたので、それを嫌って」というふうな話も耳にしました。

その真偽の程はどうなのでしょうか???


「前へならえ」と「前にならえ」

【950】
「前へならえ」と「前にならえ」
 道浦俊彦
 - 05/7/22(金) 7:52 -
----
私は「前へならえ」だと思っていたのですが、「前にならえ」という言い方もあるようですね。本来はやはり「前へならえ」でいいんでしょうか?



【951】
Re:「前へならえ」と「前にならえ」
 NISHIO
 - 05/7/22(金) 21:45 -
----
「前にならえ」は知りませんでした。地域性があるのでしょうか。
娘も「前へならえ」しか聞いたことがないとのこと(神奈川の小学校、都内の中高)。

助詞の意味・用法としてはどちらでもかまわないような気がしますが、号令としては「前へならえ!」「右へならえ!」「右へ回れ!」「前へ進め!」など、「へ」が一般的ではないでしょうか。
【へ】 http://dictionary.goo.ne.jp/search.php?MT=%A4%D8&kind=jn&mode=1&base=1&row=9
【に】 http://dictionary.goo.ne.jp/search.php?MT=%A4%CB&kind=jn&mode=1&base=1&row=2

と思いきや、Goole検索結果では「前にならえ」のほうが上回っています。号令とは無関係な内容も多数含まれているとは思いますが。

"前へならえ"  811 件
"前へ倣え"   217 件
"前へ習え"   433 件
"前にならえ"  964 件
"前に倣え"   203 件
"前に習え"   547 件

"右へならえ" 7,310 件
"右へ倣え"  3,610 件
"右へ習え"  5,220 件
"右にならえ" 4,830 件
"右に倣え"   920 件
"右に習え"   834 件

"前へすすめ"  186 件
"前へ進め"  8,790 件
"前にすすめ"  251 件
"前に進め" 18,700 件

"右へまわれ"   8 件
"右へ回れ"   65 件
"右にまわれ" 約 11 件
"右に回れ"   196 件


【953】
Re:「前へならえ」と「前にならえ」
 岡島昭浩
 - 05/7/26(火) 14:43 -
----
私は「前にならえ」であると認識していました。「まえー、ならえ」と聞こえるのは「前、ならえ」であると捉えていたのです。「へ」を使わない九州人の内省ですが。

「○○へ倣う」(「○○へ習う」でも)という言い方は、あるのでしょうか。
「前例へならう」ではなく、「前例にならう」というと思いまして、「前、ならえ」も「前にならう」と認識してきたのかも知れません。


おまけ。
昨日読んだ、角田光代『キッドナップツアー』新潮文庫に「前ならえ」が出てきました。作者は神奈川生まれのようです。


「〜たことある?」と「〜たときある?」 #

【924】
「〜たことある?」と「〜たときある?」 #
 岡島昭浩
 - 05/7/10(日) 21:14 -
----
「〜たことある?」と「〜たときある?」を受けてのものです。

これについて書いた論文を最近見たような気がするのですが、それは確認できないまま、たまたま目にした用例を掲げます。

『制度としての「女」―性・産・家族の比較社会史』のp298、山形県北村山郡長沢村の人の語りで、「言って来た時ある」というのがありました。

旧会議室でYeemarさんが言及した山形県のものです。



【946】
Re:「〜たことある?」と「〜たときある?」 #
 茂木俊伸
 - 05/7/18(月) 21:45 -
----
▼岡島昭浩さん:
>これについて書いた論文を最近見たような気がするのですが、


 はじめまして,茂木と申します。
 論文ではありませんが,『問題な日本語』(北原保雄編,大修館書店)の106〜110ページに「昔、その公園で遊んだときがある」のような言い方に関する記述があります。
 ここでは,「〜たときがある」に経験を表す用法はない,とされています。

 なお,私は茨城県の大学に行っていたのですが,地元出身者は「とき」の方を自然に使うと言っていました。



【948】
Re:「〜たことある?」と「〜たときある?」 #
 岡島昭浩
 - 05/7/20(水) 0:07 -
----
▼茂木俊伸さん:
> 論文ではありませんが,『問題な日本語』(北原保雄編,大修館書店)の106〜110ページに「昔、その公園で遊んだときがある」のような言い方に関する記述があります。


なるほど、多分それです、私が見たのは。

どうもご教示ありがとうございました。
また、今後共、お越し頂ければ幸いです。


「お」のつき方

【945】
「お」のつき方
 しおかぜ
 - 05/7/18(月) 10:13 -
----
はじめまして。しおかぜと申します。
年来、不思議に感じていることがあり、いろいろな方に尋ねているのですが、なかなかすっきりした答えに出会えません。
不思議、というのは次のようなことです。

お母さんが幼い子供に話しかけます。
「ほら、お空に白い雲が…」

このとき、どうして「空」には「お」がつくのに、雲には「お」つかないのでしょうか?

これまで日本語教育関係の方々にご意見をうかがってきたのですが、日本語学・国語学関係の方にもご意見をお聞きしたいと思いまして、書き込みをさせていただきました。



【947】
Re:「お」のつき方
 Yeemar
 - 05/7/19(火) 0:17 -
----
▼しおかぜさん:
>このとき、どうして「空」には「お」がつくのに、雲には「お」つかないのでしょうか?


自然物については、「雲・雨・雪・丘・谷・岩・石・森・林・草・海・川」など、多くの場合は「お」がつきません。しかし、「空・山・花・池」などは「お」がつき、さらに、「日・月・星」は「お〜さま」がつく形で使われます。

ここで、「日・月・星」などの天体に「さま」がつく理由は、擬人化のためであることは疑いないでしょう。同様に、「お」も対象を擬人化するはたらきをもつと考えてはどうでしょうか。

「花」は「草」よりも明らかに擬人化しやすいと思われますが、このことは、「花」に「お」がつき、「草」につかない理由となっていると思います。

「空」は何か超越的な存在として人格(神格?)を感じるが、「雲」は「霧・かすみ・雨」などと同じく不定のもので、人格を感じにくいということではないでしょうか。

「山」も同様の考え方でいけそうです。

では、「池」はどうか、ということになりますが、われわれは池を擬人化することができるかというと、ちょっとむずかしそうです。思うに、「池」の場合は、これはまた別の要素が入って来るのでしょう。「お庭」「お池」「お外」というように、「家のまわりにあって、親しみを感じるもの」は、「お」をつけやすいのでしょう。


ヤカラ

【940】
ヤカラ
 道浦俊彦
 - 05/7/16(土) 22:01 -
----
電車の中で男子大学生の会話が入ってきました。その中で、
「ヤカラ」
という言葉が耳に留まりました。「不良」とかそんな意味のように聞こえました。
ググると1万8000件出てきましたが、「ヤカラ」の本当の意味や語源はなんでしょうか?



【941】
Re:ヤカラ
 Yeemar
 - 05/7/16(土) 23:01 -
----
▼道浦俊彦さん:
>電車の中で男子大学生の会話が入ってきました。その中で、
>「ヤカラ」
>という言葉が耳に留まりました。


その用法ははじめて聞きました。「やから」にもともと悪い意味はないのでしょうね。「や」は「家」、「から」は血縁関係にあることを表すとのこと(『日本国語大辞典』第2版)。つまり、一族。

天皇の一族のことも「御」をつけて「みうから(御親族)、みやから(御族)」などと言っています。昭和天皇の大喪の礼のときには「皇太子(ひつぎのみこ)をはじめ、みうからみやから、御別(みわか)れ告げたまひ……」と祭詞を読み上げていました。

「不逞のやから」などと悪い形容をつけて言われることは多くなったものの、「やから」自体には悪い意味がなかった。ところが、単独でも「やからがやって来た」などと悪い意味で使われるようになったとすれば、おもしろいですね。

あたかも、「ていたらく」が、「呆れたていたらく」と悪い形容をつけて使われつづけたあげく、「ていたらな生活(=ひどい生活)」と単独で悪い意味に用いられるようになったのと似ています(参照:飯間浩明『遊ぶ日本語 不思議な日本語』2003 p.101、読売新聞校閲部『日本語「日めくり」一日一語』2003 p.125)。



【942】
Re:ヤカラ
 Yeemar
 - 05/7/16(土) 23:06 -
----
正誤訂正

×ていたらな生活
○ていたらくな生活



【943】
Re:ヤカラ
 道浦俊彦
 - 05/7/16(土) 23:24 -
----
関西弁ですかね?
「不逞の輩(やから)」の「ヤカラ」です。アクセントは、中高で、
「ヤカラ(LHL)」
です。こういうふうに「3拍中高アクセント」にすると、すごく関西弁のにおいがします。しかも「隠語の香り」もします。


誤用(かと思われるもの)の用例集――体言+ごとく

【73】
誤用(かと思われるもの)の用例集――体言+ごとく
 岡島昭浩
 - 04/5/16(日) 12:51 -
----
誤用(かと思われるもの)の用例集の続きのようなものです。

普通は〈体言+の+ごとく〉。
〈体言+ごとき〉であれば、「貴様如きに斬られる拙者ではござらぬ」のように使うのですが(日本国語大辞典1で「さげすみやけんそんの表現」と)、〈体言+ごとく〉はどうでしょう。

これを考えるきっかけは、浜崎あゆみの歌(ならびに詞)で「俯瞰になる、傍観者ごとく」というような歌詞、「forgiveness」という題のようです。
「傍観者みたく」のような若者言葉からのものなのか、九州人らしく「傍観者んごと」から来ているのか。

こういったものは、電子テキストでも、プレーンなものでは探しにくいですね。

「さげすみやけんそん」のあるようなもので、「ごとく」をたまたま見かけました。
南方熊楠の「履歴書」(河出文庫の『南方熊楠コレクションIV』369ページ)に「切られ与三郎ごとく三十余カ処もかすり疵がつく」と。



【74】
Re:体言+ごとく
 岡島昭浩
 - 04/5/16(日) 15:11 -
----
▼岡島昭浩:

>南方熊楠の「履歴書」(河出文庫の『南方熊楠コレクションIV』369ページ)に「切られ与三郎ごとく三十余カ処もかすり疵がつく」と。


南方熊楠にはよくあるのでしょうか。
従来ごとく少破損あるごとにその神社の林中より幾分を伐ってただちにこれを修めなば事済むなり。
従来ごとくあまりの大害を仕出さぬよう、その兇勢を抑制するの功はありなん。
前述ごとく欧米人いずれも、わが邦が手軽く神社によって何の費用なしに従来珍草奇木異様の諸生物を保存し来たれるを羨むものなり。

http://www.aozora.gr.jp/cards/000093/card525.html
こう書いて、「かつてのごとく」「まえにのぶるごとく」などと読むのかもしれませんが。



【75】
Re:体言+ごとく
 畠中敏彦
 - 04/5/17(月) 8:22 -
----
【私ごとき】

「私のような至らぬ者のために」のように、自分をけんそん・へりくだった意味として理解しておりますが、どうなんでしょう。
私がサラリーマン時代、転勤や就任の挨拶(状)の中で「私ごとき・・・」のことばをよく使いました。



【76】
Re:体言+ごとく
 岡島昭浩
 - 04/5/17(月) 9:48 -
----
▼畠中敏彦さん:
>【私ごとき】
>
>「私のような至らぬ者のために」のように、自分をけんそん・へりくだった意味として理解しておりますが、どうなんでしょう。


はい。これは、「貴様如き」と同様に、『日本国語大辞典2』の、
体言、特に代名詞あるいは人名に付いて「……ごとき」の形で用いて、さげすみや、謙遜の表現に用いる。

という枠内に収まるものであろうかと存じます。

ここで問題にしようとしたのは、「……ごとく」の形で上に直接体言が来るか、という点でした。(上代はさておき)

当初、「与三郎ごとく」をみたときには、「体言+ごとく」を、「さげすみ」を持って使っているのかと思いましたが、熊楠の他の例をみると、そうでもないのだろうか、と思ったところです。



【87】
誤用?
 booko
 - 04/5/20(木) 0:31 -
----
スレッドを変えたほうがよいかどうか迷ったのですが、とりあえずここに。

フジテレビ月曜9時のドラマのタイトルが、「愛し君へ」となっています。
これも誤用だと思うのですが、なんとなく通ってしまっているようです。

「君愛し」か「愛しい君」か「愛しき君」としたいところですが、
類推が働いて「愛し君」になったのでしょうか。



【88】
Re:誤用?
 岡島昭浩
 - 04/5/20(木) 0:49 -
----
▼bookoさん:
>フジテレビ月曜9時のドラマのタイトルが、「愛し君へ」となっています。
>これも誤用だと思うのですが、なんとなく通ってしまっているようです。
>
>「君愛し」か「愛しい君」か「愛しき君」としたいところですが、
>類推が働いて「愛し君」になったのでしょうか。


旧会議室の「(歌謡曲における)終止形の連体用法」で、存疑例として「楽し都」を書いたのですが、存疑としたのは「形容詞語幹+名詞」でありうるからです。

マイペースの「東京」(70年代の歌)でも、「君が住む 美《うつく》し都」というのがありました。



【89】
Re:体言+ごとく
 Yeemar
 - 04/5/20(木) 18:25 -
----
「漢字+ごとく」で多そうなものを選びネットで探してみましたが、多くは、少数者の勘違いか誤記のようなもので、あまりおもしろくありません。歌詞などがみつかればおもしろいのですが。

国会会議録検索システムにより検索しました。「日ごとく」で2つ出てきました。しかし、テキストファイル化の際の間違いででもあろうかと思います。
第24国会・参議院地方行政委員会(昭和31年05月26日)
○加瀬完君 〔略〕しかしながら選挙における弊害というものを、まだまだ十年一日ごとくといいますけれども、何十年の間日本においては依然として行なっておる。

第2国会・参議院文化委員会(昭和23年02月06日)
○三島通陽君 〔略〕國祭日(祝祭日)として兒童デー(假稱)設置提唱〔略〕三、行事内容/(イ)、國を擧げての子供祝福の日として官廰、公署、學校、銀行、會社、工場、事業場等一切從來の祝祭日ごとく休日とする。




【99】
Re:誤用?
 booko
 - 04/5/24(月) 0:13 -
----
>終止形の連体用法」</a>で、存疑例として「楽し都」を書いたのですが、存疑としたのは「形容詞語幹+名詞」でありうるからです。

なるほど・・・。
そういう例もあるのですね。

「存疑」ということについても考えてみたいと思います。

ありがとうございました。



【461】
形容詞語幹+名詞(Re:誤用?)
 岡島昭浩
 - 04/10/13(水) 7:51 -
----
「いとしの系譜」です。((歌謡曲における)終止形の連体用法)の一部を継承する)
(「いとしご」は除く)

宮津節
 歌:京都府民謡
行こかもどろか 橋立なぎさ
いとし宮津の 灯がまねく

阿波おどり
 歌:徳島県民謡
巡礼のお鶴の あの菅笠に
いとし涙の 雨が降る

貝殻節
 歌:鳥取県民謡
 作詞:松本穣養子
戻る舟路にゃ 櫓櫂(ろかい)が勇む
かわいやの かわいやの
いとし妻子が 待つほどに

新潟の女
 歌:内山田洋とクールファイブ
 作詞:たきのえいじ
 作曲:内山田洋
霧にぬれてる港の灯
いとし想いがまた燃える

緑の地平線
 歌:楠木繁夫
 作詞:佐藤惣之助
 作曲:古賀政男
山の煙りを 慕いつつ
いとし小鳩の 声きけば

東京シャッフル
 歌:サザンオールスターズ
 作詞:桑田佳祐
 作曲:桑田佳祐
Shyなモードにジンジンジン
くどき文句で チャチャチャ
愛し女よ PiPiPi………

東京の灯よいつまでも
 歌:新川二郎
 作詞:藤間哲郎
 作曲:佐伯としを
いとし羽田の あのロビー

菩提樹
 近藤朔風訳詞
(うまし夢見つ)
(ゆかし言葉)
いとし友

「その他」
「終止。名詞」もあるのでしょうが、境界的例も含めて。

さくら貝の歌
 歌:岡本敦郎
 作詞:土屋花情
 作曲:八洲秀章
ほのぼのと うす紅染むるは
わが燃ゆる さみし血潮よ

What's your name?
 歌:少年隊
 作詞:宮下智
 作曲:Jimmy Johnson
お目にかかれて 嬉し恋の日
心乱れて哀し夏の日

ありがとうおまえ
 歌:殿さまキングス
 作詞:岸本健介
 作曲:岸本健介
今夜は嬉し酒

東京
 作詞:森田貢
 作曲:森田貢
君の住む美し都(みやこ)

桑港(サンフランシスコ)のチャイナタウン
 歌:渡辺はま子
 作詞:佐伯孝夫
 作曲:佐々木俊一
おぼろな瞳(ひとみ)花やさし霧の街
蘭麝(らんじゃ)のかおり 君やさし夢の街
故郷の夢よ 月やさし 丘の街

サンタルチア
 訳詞:堀内敬三
愛ぐしナポリ 夢の国

聖夜
 訳詞:由木康
きよしこのよる

ローレライ
 訳詞:近藤朔風
美(うるわ)し乙女の 岩に立ちて

バルカンの星の下に
(訳者不明。ロシア)
夢にも忘れざりき
恋しふるさと

カチューシャ
(ロシア)
やさしその歌声

夜のしらべ
(フランス)
心はかえる たのし昔

エリーゼのために
(ドイツ)
慕わし君
君のうるわし声に

シューベルトの子守唄
(ドイツ)
楽し夢

オールドブラックジョー
(アメリカ)
なつかし友は呼ぶ

旅愁
犬童珠渓
なつかし父母



【462】
Re:形容詞語幹+名詞(Re:誤用?)
 Yeemar
 - 04/10/13(水) 11:36 -
----
前の会議室で、「いとし殿御のこころの中{うち}は」(花笠道中)、「赤き灯燃ゆ 恋し東京」(なつかしの歌声)の例を書き付けましたが(後者、3番には「歌いし歌 楽しメロディー」)、ほかに、

・いとし糸ひく雨よけ日よけ
(時雨音羽作詞・二村定一歌「浪花小唄」1929年)

・春くりゃ 偲ぶ馬の市/秋くりゃ 恋し村祭り
(石本美由起作詞・青木光一歌「柿の木坂の家」1957年)



【463】
Re:形容詞語幹+名詞(Re:誤用?)
 岡島昭浩
 - 04/10/14(木) 0:49 -
----
▼Yeemarさん:
「赤き灯燃ゆ 恋し東京」(なつかしの歌声)の例を書き付けましたが(後者、3番には「歌いし歌 楽しメロディー」)、


「歌いし、たのし」と並ぶと、俳諧文法のように、「し」は、過去の「し」だろうが、形容詞語尾だろうが、切れ字、というのを思い起こしました。

聖夜
 訳詞:由木康
きよしこのよる

指摘を受けたのですが、これは、ク活用なので、語幹の用法にはならず、「清し! この夜」なのでしょう。なお、私の幼時の感覚では、「清いこの夜」という意味だったので、「終止形の連体用法」(と採られうる例)の方に、いれるべきところかもしれません。



【464】
Re:誤用(かと思われるもの)の用例集――体言+ご...
 Yeemar
 - 04/10/14(木) 1:54 -
----
「〜のごとく」を「〜がごとく」と言う例をまま見かけます。

「〜がごとく」は、「翔ぶがごとく」(動詞連体形)とか「わがごとく」のような場合に用いるのであって、一般的な名詞の場合には「〜のごとく」と言うのではないかと思っていました。しかし
白雪姫やかぐや姫がごとく、何かお伽噺の登場人物か、(桃井かおりの13チャンネル・「週刊新潮」2003.03.20 p.116)
のように言うのです。

次のような「〜がゆえ」も伝統的にはどうだったのか。
 身体を売るアルバイトをしながらもトミヤは、やはりその若さがゆえに、人間社会を白か黒かに分けたがる。(藤堂志津子『絹のまなざし』〔1993年発表〕講談社文庫 1997.04.15第1冊 p.303)

〔プリペイド式携帯電話は〕その匿名性がゆえに、犯罪の「小道具」に使われているケースが目立つ。(「朝日新聞」2000.04.26 p.3)
前者は「若さゆえ」とか「若さのゆえ」、後者は「匿名性ゆえに」「匿名性のゆえに」と私なら言いそうです。



【465】
動詞終止形+名詞
 Yeemar
 - 04/10/14(木) 2:07 -
----
▼岡島昭浩さん:
>旧会議室の「(歌謡曲における)終止形の連体用法」


旧会議室では、サザンオールスターズの「愛の言霊(ことだま)〜Spiritual Message」の冒頭の例、
生まれく叙情詩(せりふ)とは 蒼き星の挿話
が上がっており、動詞終止形+名詞の例です。

この類例。
タカリ、愛国者たむろすスエズ
 (北杜夫『どくとるマンボウ航海記』中公文庫p.64 表題)
またはサ変動詞の四段化かもしれません。「生まれく叙情詩」も四段化かもしれません。



【473】
Re:形容詞語幹+名詞(Re:誤用?)
 岡島昭浩
 - 04/10/16(土) 1:56 -
----
白蘭の歌 久米正雄作詞 竹岡信幸作曲
 かぐはし君の白蘭の花

白蘭の花(いとしあの星) サトウ・ハチロー作詞 服部良一作曲
 いとしこの身もどこまでも

 いとし返事はなんとする

 いとしあの星あの瞳

以上、『最新愛唱歌集』(昭和17.4.20) 日本レコード作家協会編 新興音楽出版社



【904】
Re:形容詞語幹+名詞(Re:誤用?)
 Yeemar
 - 05/6/19(日) 18:23 -
----
「形容詞語幹+名詞」の出てくる歌は、古いところで、いわゆる「パイノパイノパイ」、添田さつき作詞の「東京節」もそうです。
東京の中枢は丸の内
日比谷公園両議院
いきな構えの帝劇に
厳し館は警視庁
「いかめし・やかた」と読む。出典、日本コロムビア『小沢昭一が撰んだ恋し懐かしはやり唄 四』。このCDタイトルも「形容詞語幹+形容詞語幹+名詞」です。



【908】
Re:形容詞語幹+名詞(Re:誤用?)
 NISHIO
 - 05/6/21(火) 6:19 -
----
『東京ラプソディー』 詞:門田ゆたか、曲:古賀政男、唄:藤山一郎

 楽し都 恋の都

というのがあります。



【927】
Re:形容詞語幹+名詞(Re:誤用?)
 Yeemar
 - 05/7/13(水) 14:11 -
----
金田一春彦・安西愛子編『日本の唱歌(中)』(講談社文庫)p.208に載る「嫁ぐ日近く」(喜志邦三作詞)には次のように。
二 柘榴{ざくろ}の赤く実{みの}る日は
  いとし七つの妹と
  悲しき別れ思い出に
  花の髪挿{かざし}を残さまし




【928】
Re:形容詞語幹+名詞(Re:誤用?)
 Yeemar
 - 05/7/13(水) 14:28 -
----
同じく『日本の唱歌(中)』p.218「春の唄」(喜志邦三作詞)に
菫{すみれ}買{か}いましょ あの花売りの
可愛{かわ}い瞳{ひとみ}に春のゆめ
「かわいい瞳」でない。単に短く言っただけかもしれません。

小林旭、ザ・ドリフターズの歌った「ズンドコ節」の「ホームのかげで泣いていた 可愛いあの子が忘らりょか」も「かわいあのこ」でしょうか。「かわい○○」はすでに例が出ているかと思いましたが、ないようです。


没年不詳の人々

【158】
没年不詳の人々
 岡島昭浩
 - 04/6/18(金) 1:15 -
----
没年不詳の人々の続き。
中国語辞典などの石山福治。
建築家の石山修武氏の御祖父にあたるのだそうです。



【215】
Re:没年不詳の人々――国会図書館
 岡島昭浩
 - 04/7/6(火) 0:11 -
----
https://kokaityosa.ndl.go.jp/
今年は1500人に絞って調査するようです。



【257】
Re:没年不詳の人々――国会図書館
 狩野宏樹
WEB
 - 04/7/21(水) 12:08 -
----
絞った割には荻原井泉水が載ってたりしますね。



【258】
Re:没年不詳の人々――国会図書館
 岡島昭浩
 - 04/7/21(水) 13:24 -
----
▼狩野宏樹さん:
>絞った割には荻原井泉水が載ってたりしますね。


没年の記載がありますから、著作権継承者の連絡先等が分からないのでしょうね。
著作権台帳に載っていても、うまく連絡がつかない、とか。
そういえば、最近、若き日の日記が刊行されましたから、筑摩書房では把握しているのでしょうか。


国立国語研究所の調査
http://www2.kokken.go.jp/~taiyo/public/tyosakuken/
では、没年も書いていないので、没年不詳なのか、継承者不詳なのかも分からないので、情報提供がしにくいところです。



【810】
Re:没年不詳の人々――国会図書館
 岡島昭浩
 - 05/4/30(土) 15:46 -
----
https://kokaityosa.ndl.go.jp/

平成17年4月27日(水)から同年7月26日(火)までの3か月間、2367人。

今回は、何が不明であるのか、書いてあります。



【919】
Re:没年不詳の人々
 岡島昭浩
 - 05/7/5(火) 0:57 -
----
安藤彦太郎『中国語と近代日本』で、『儒家小誌』等の渡俊治は、p8,p42に出てくるものの、没年は判りませんが、『北京官話文法』の何盛三は、p92に、1951年没、とある。何初彦氏は、ご長男にあたるとのこと。

『急就篇』の宮島大八は、NDL-OPACで、 (1867-1943) 。



【920】
Re:没年不詳の人々
 後藤斉
 - 05/7/6(水) 10:50 -
----
▼岡島昭浩さん:
>『北京官話文法』の何盛三は、p92に、1951年没、とある。


田中貞美他編『日本エスペラント運動人名小事典』(関西エスペラント連盟, 1984)
p. 35は1948没としています。



【921】
Re:没年不詳の人々
 後藤斉
 - 05/7/6(水) 10:58 -
----
>田中貞美他編『日本エスペラント運動人名小事典』(関西エスペラント連盟, 1984)
>p. 35は1948没としています。


発行所は日本エスペラント図書刊行会でした。



【922】
Re:没年不詳の人々
 岡島昭浩
 - 05/7/6(水) 21:59 -
----
▼後藤斉さん:
>>『北京官話文法』の何盛三は、p92に、1951年没、とある。

>
>田中貞美他編『日本エスペラント運動人名小事典』(関西エスペラント連盟, 1984)
>p. 35は1948没としています。


ありがとうございます。
学者の没年を調べるのは難しくて閉口いたしますが、その書、探究書としたいと思います。



【923】
Re:没年不詳の人々
 後藤斉
 - 05/7/7(木) 11:14 -
----
>>>『北京官話文法』の何盛三は、p92に、1951年没、とある。


『エスペラント』誌(日本エスペラント学会)1949年2月号に何氏の死亡記事(1ページ)が掲載されており、1948年10月10日没の由です。「学者」というカテゴリーには納めがたい生涯であったようですが。

>学者の没年を調べるのは難しくて閉口いたしますが、その書、探究書としたいと思います。

現在、改訂版が準備中と聞いています。
http://www2.tokai.or.jp/esperanto/aprobita.html 【A-05-59】


時系列

【914】
時系列
 Yeemar
 - 05/6/29(水) 19:29 -
----
時系列、ということばが昔からうまく使えません。

「出来事を、起こった順に述べる」と言いたいとき、「時系列に沿って述べる」と言えばいいのか、それとも、「時系列に従って述べる」と言えばいいのか、「時系列順に述べる」と言えばいいのか、または単に「時系列で述べる」と言えばいいのか。いずれも、違和感があります。

辞書を見ると「時系列」とは「自然現象や社会現象の時間的変化を継続して観測して得た値の系列。」(大辞林 第2版)とあります。してみれば、「時系列」とは、「数値の連続」「数字のつらなり」というような概念でしょう。「数字の連なりに沿う」という言い方がおかしいのと同じく、「時系列に沿う」などの言い方も論理的でないように思われます。これは、私だけが感じることでしょうか。

文に書くときは、「時間を追って述べる」「起こった順に述べる」などと、別の言い回しに変えています。やむを得ぬ処置です。



【915】
Re:時系列
 UEJ
 - 05/7/1(金) 0:13 -
----
「時系列」は英語の「time series」の訳かと思います。
「time series」をランダムハウスで引くと、
「時系列:一定期間にわたって,通例,等間隔で得られる観測値,結果および他のデータの系列」
とあります。この意味ならばYeemarさんもしっくりくるのではないでしょうか?

ただ「時系列」が単に「時間順」「経時順」の意味で使われることがあり、
Yeemarさんが違和感を感じられるのはこちらのケースかと推察いたします。
英語で言えば「chronological」の方が近いかと思います。

私自身は後者のような使い方は慣れてしまっていて、あまり違和感を感じることはなかったのですが、
以上のようなことを知ってしまうと、明日からは「時系列順に…」という言い回しは
使えなくなってしまったな、と感じています。



【918】
Re:時系列
 畠中敏彦
 - 05/7/3(日) 11:55 -
----
▼UEJさん:
>ただ「時系列」が単に「時間順」「経時順」の意味で使われることがあり、


むつかしい議論はともかく、
私は、そのように解釈しており、「時系列に述べると・・・」あるいは「時系列に挙げると・・・」で何ら違和感はありませんが。


曙と東雲のニュアンスについて

【851】
曙と東雲のニュアンスについて
 鈴木ともうします。
 - 05/5/23(月) 14:21 -
----
はじめてメールさせていただきます。
わたくしは、茨城県在住の高校2年生で
鈴木ともうします。
 
ところで、きっとご多忙であられよう中
突然のお願いで恐縮ですが
もし、少しでもお時間のございますようでしたら、
お知恵を拝借できませんでしょうか?

1.古語的表現の中に“曙”と“東雲“というのがございますが、
厳密にはどのような違いがあるのでしょうか?
2.「わずかに 白んできた 明け方の情景」
というこのキーワード・表現だけでどちらのことを指しているのかを限定することは
学識者の方からご覧になって、可能でしょうか?

こちらにまいりまして、はじめてインターネット大辞林という便利な物の存在を知りまして、
早速ありがたく行ってまいりました。
ありがとうございました。
もちろん他に自分でも、広辞苑・広辞林・古語辞典・国語辞典(三省堂/金田一京助・春彦氏他)・日本国語大辞典などを調べてみましたが、
これだけの表現では、言葉足らずで判別できないように思いました。
不躾とは存じますが、特に2.についてのご見解をただ一言結論だけでも結構です。
お教えいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願い申し上げます。



【853】
Re:曙と東雲のニュアンスについて
 道浦俊彦
 - 05/5/23(月) 20:52 -
----
学識者ではないですが・・・語感から言って、「曙」は昇る「朝日」つまり「太陽」を、「東雲」その太陽の光を浴びた東の空の雲・・と言うか、ほのぼのと明けてくる状況を言うのではないでしょうか?

「春は曙」と言われる時の「曙」は、やはり朝日かなあ。
「東雲」の方が、まだ朝日が顔を出す前、雲の下の方から明るくなってきたような感じを受けますが。
まだ朝日が顔を出していない「あさぼらけ」の全体の情感を出すのなら「東雲」、顔を出し始めた「朝日」も含めて言うなら「曙」で、いかがでしょうか?

でも高校二年生で、こんなことに気づくなって、偉いですねえ。



【854】
Re:曙と東雲のニュアンスについて
 岡島昭浩
 - 05/5/23(月) 22:49 -
----
▼鈴木ともうします。さん:

>1.古語的表現の中に“曙”と“東雲“というのがございますが、
>厳密にはどのような違いがあるのでしょうか?


「あけぼの」と「しののめ」ですね。


>2.「わずかに 白んできた 明け方の情景」
>というこのキーワード・表現だけでどちらのことを指しているのかを限定することは
>学識者の方からご覧になって、可能でしょうか?



>もちろん他に自分でも、広辞苑・広辞林・古語辞典・国語辞典(三省堂/金田一京助・春彦氏他)・日本国語大辞典などを調べてみましたが、
>これだけの表現では、言葉足らずで判別できないように思いました。


そうですね。表現者(出題者?)の意図を推し量れば、「わずかに」という言葉で
、「あけぼの」ではなく「しののめ」を答えて欲しい、というところでしょうか。「白んできた」ので「あかつき」でもない、と。

『日本国語大辞典』を御覧になったと言うことですが、「あかつき」の語誌欄も御覧になりましたでしょうか。「あけぼの」「あかつき」「しののめ」は、もともと混同されそうな時間帯ですが、「しののめ」は男女の別れを含意する言葉としてよく使われることにより、時間帯よりもその方面でのニュアンスの差を持つことになったものでありましょう。



【855】
Re:曙と東雲のニュアンスについて
 Yeemar
 - 05/5/23(月) 23:46 -
----
▼鈴木さん:

これは、もともとは試験問題か何かの文章でしょうか。もしよろしければ、疑問が出て来るまでのいきさつとか、もとになった文とかを教えてくださいませんか?



【888】
Re:曙と東雲のニュアンスについて
 岡島昭浩
 - 05/6/11(土) 0:38 -
----
▼Yeemarさん:

>これは、もともとは試験問題か何かの文章でしょうか。もしよろしければ、疑問が出て来るまでのいきさつとか、もとになった文とかを教えてくださいませんか?


某テレビ番組関係者から、質問を受けました。これが偶然にも曙・東雲だったので驚きました。

「わずかに白んできた明け方の情景」を表す言葉として、「曙」を不正解とし、「東雲」を正解としたが、それでよかったのだろうか、と。収録はしたけれどまだ放送していない段階。

選択肢があるわけではなく、これを表す言葉を答えよ、という問題だったとのこと。

私は、この問題だけで、「あけぼの」を排除し、「しののめ」でなければならないとするのは、無理だろうと答えました。理由を説明しましたが、どうもあまり真面目に聞いている風ではなく、おそらくは、「東雲でなければならない」と答えてくれる人が居るまで、大学宛に電話して質問を続けて行くのだろうと思ったことでした。

鈴木さんは、出場者だったのでしょうか。それとも応援団でしょうか。そして番組相手に抗議をなさったのでしょうか。



【890】
Re:曙と東雲のニュアンスについて
 skid
 - 05/6/11(土) 7:47 -
----
>「わずかに白んできた明け方の情景」を表す言葉として、「曙」を不正解とし、「東雲」を正解としたが、それでよかったのだろうか、と。


『枕草子』の「春はあけぼの。やうやうしろくなり行く、山ぎは少しあかりて……」からすれば、やっぱり「曙」も正解にしないと変でしょうね。

『角川古語大辞典』によると「あかつき」「しののめ」「あけぼの」「あした」の順になるそうですが、はっきり境界があるわけではなく、けっこう重なっているのではないかと思います。



【896】
Re:曙と東雲のニュアンスについて
 岡島昭浩
 - 05/6/16(木) 23:08 -
----
今日、放映だったようです。

http://www.tv-tokyo.co.jp/tvchamp/result/result.htm

> 今回の決勝の最後の問題について、番組収録後に改めて専門家に見解を求めたところ、「東雲」が正解として最適ですが、「曙」を不正解とは言えないという意見が多く寄せられました。
> よって、鈴木翔子さんには優勝と同等の表彰をさせて頂きます。


それはそれは。
「しののめ」でなければならない、とする専門家を捜しているのではないかという私の予想は邪推だったことになります。お見それいたしました。

ところで、番組制作者側からFAXで示された資料によれば、「しののめ」の説明には、多く「しらむ」という表現が使われているのに、「あけぼの」には使われていない、ということでした。これは、国語辞典の不備と言いますか、横並び性と言いますか、問題を残すところですね。skidさんの御指摘にもあるように、「やうやう白くなりゆく」曙があるわけですから。



【897】
Re:曙と東雲のニュアンスについて
 skid
 - 05/6/17(金) 1:44 -
----
信じがたいヒット数になっていますね。
もっと早くに『新明解古語辞典』補注版第二版の引用をもとに説明しようとしたのですが、誤って消してしまいました。
いまさらですが、小学館の『古語大辞典』から。

しののめ【東雲】(語誌欄)
「あけぼの」との違いは、「あけぼの」は明るんできたとき、「しののめ」はまだ明けやらぬ間、という説もあるが、時間的な違いはなく、歌語と散文語との違いとみる説に従うべきであろう。(木之下正雄)



【898】
黎明でいいんじゃない?
 家電王
 - 05/6/17(金) 14:26 -
----
[本文なし]



【901】
Re:黎明でいいんじゃない?
 岡島昭浩
 - 05/6/18(土) 14:06 -
----
▼家電王さん:
>黎明でいいんじゃない?


黎明でも、いいでしょうね。
「やまとなでしこ」だからといって、「漢語はだめ」というルールがあるわけではないでしょうから。

嚮明・暁明・昧爽あたりもよいでしょうか。

「しののめ」が「東雲」という漢字表記と結びついた経緯も知りたいところです。



【909】
Re:曙と東雲のニュアンスについて
 岡島昭浩
 - 05/6/21(火) 9:01 -
----
こちらこちらにも関連記事があります。

なお、スレッドを続けるには、「返信」をクリックして下さい。



【912】
Re:曙と東雲のニュアンスについて
 kara
 - 05/6/29(水) 6:45 -
----
はじめまして、今更ながらですが、私もこのスレッドの発端になっている鈴木さんの出演していらっしゃるTV番組を観て、この2つの言葉のニュアンスの違いに興味を持った者です。それで、曙、東雲で検索していてここにたどりつきました。

 >しののめ」は男女の別れを含意する言葉としてよく使われること
 >により、時間帯よりもその方面でのニュアンスの差を持つことに
 >なったものでありましょう。

このくだりを見て、なんとか疑問が解けたようなきがしました。実は私は 東雲 というのは時間帯をさすより、朝、東の空の棚雲に下から光があたって照らされている情景そのものを言うのだと思っていたのです。あけぼの、というとむしろ湿度の高い季節に東の空全体がぼんやりと一面明るくなる情景を言うのだと思っていました。

このことに興味を持ってから下に書くようなことに気付きました。一つは

あけぼの
あけ
あさ
あさぼらけ
あかつき
あした

など、朝を表すやまとことばの中で、しののめだけが音として異質であること。もう一つはこれまで知らなかったこと、東雲の語源、「篠の目」です。

もう一つ、ここに来て(恥ずかしながら)「東雲」という言葉が男女の別れというニュアンスを持つことを知り、この言葉が生まれた状況が想像できるようになりました。

まったく素人の想像ですから笑止なものかもしれませんし、あるいは実は良く知られているのかもしれませんが、その想像を書きます。

東雲という言葉は後朝の別れの時、床の中で見た蔀を通した光の印象が男女の頭の中にあって、東の空の棚雲をそれに見立て生まれたのだと思います。

以下、よろしければ質問ですが、

あけぼの、しののめ、それぞれ使われ始めた時代はいつごろなのでしょうか。

平安の頃の後朝の別れは、どのくらいの時間が一般的だったのでしょうか。



【913】
Re:曙と東雲のニュアンスについて
 Yeemar
 - 05/6/29(水) 18:39 -
----
▼karaさん:
>あけぼの、しののめ、それぞれ使われ始めた時代はいつごろなのでしょうか。


以下、皆さんのご発言を踏まえつつ、私見を入れます。

両語が盛んに使われ始めたのは同時期で、平安時代ころでしょう。

『日本国語大辞典』では、「あけぼの」の初出は「日本書紀」前田本訓の例が挙がっており、「720」(年)とあります。しかし、前田本は平安時代のものです(田島さんご紹介の東みづほ氏の論文はそれを指摘か)。その次に載っている「蜻蛉日記」(974頃)の例のほうがより確実でしょう。

「しののめ」は古今和歌集(905-914)の例が挙がっています。

千何百年の日本語の歴史からいえば、十年、何十年は誤差の範囲としかいいようがありませんから、どちらが時代的に早いとも言えませんね。


>平安の頃の後朝の別れは、どのくらいの時間が一般的だったのでしょうか。


スタンダードはあったのでしょうか? 「あかつき」「しののめ」の別れを詠んだ歌は、ともに多くあります。とりあえず、「あかつき」はまだ暗いころ、「しののめ」は夜が明け始めたころと考えていいでしょうが、それぞれの歌がどの時間帯のつもりで詠まれているのか、それは堀井令以知氏の文章(田島さんご紹介)にあるとおり、見極めがむずかしそうですね。

「あけぼの」「あさぼらけ」は、ことさら、きぬぎぬの別れに使われるというわけでもないようですが、例はあります(少ないか?)。以下に、きぬぎぬを詠んだ例を挙げます。
・有明のつれなくみえし別れよりばかりうきものはなし 壬生忠岑(古今集)
しののめのほがらほがらと明けゆけばおのがきぬぎぬなるぞかなしき よみ人知らず(古今集)
・明けぬればくるるものとはしりながらなをうらめしきあさぼらけかな 藤原道信(後拾遺和歌集)
・暮にとも契りてたれか帰るらむ思ひたえたるの空 藤原家隆(千載和歌集)




【917】
Re:曙と東雲のニュアンスについて
 kara
 - 05/7/1(金) 1:05 -
----
▼Yeemarさん:

お答え、ありがとうございました。用例を出していただいて、あらためて気付きましたが、自分で興味を持ったことなら、人に聞く前にできる範囲で自分でも調べてみるべきでした。そう思って、本棚をひっくり返したら、古今と新古今は出てきたのであらためてそういう興味で恋歌のところを読んでみて、Yeemarさんにあげていただいた用例以外のものをいくつか見つけましたので書いておかせて下さい。

古今和歌集649
題しらず 寵
しののめのわかれををしみ我ぞまづ鳥よりさきになきはじめつる

夜明け前の鳥の声が最も盛んなのは初夏の頃で、空がまだ暗いうちからアカハラなどがさえずり初め、空が白み始めたころに最高潮に達しますから、この人の意識はまだ白み始めた頃を「しののめ」としててらしているのですね。この時点でこの人の思っていたのは「篠の目」なのでしょうか「東雲」なのでしょうか。

新古今和歌集1184
二條院御時、あかつきかへりなんとする恋といふ事を 二條院讃岐
あけぬれどまだきぬぎぬになりやらで 人のそでをもぬらしつるかな

夜があけても、未練があればまだ帰らないこともあったようです。

新古今和歌集1186
後朝恋のこころを 摂政太政大臣
又もこん秋をたのむのかりだにも鳴きてぞ帰る 春の曙

新古今和歌集1189
三條関白女後入内のあしたにつかわしける 花山院御歌
朝ぼらけおきつる霜の 消えかへり 暮れ待つ程の袖をみせばや

このあたりはあまり参考になりませんでしたが、

新古今和歌集1193
 西行法師
有明は思ひいであれや よこ雲の だたよはれつるしののめの空

この歌あたりが、「しののめ」という言葉が男女の別れを暗示しつつ朝の情景を指すようになった機微を明らかにしているように思いました。そういえば、昔の駆逐艦に「東雲級」っていうのがありましたが、こうしてみるとちょっと弱そうな名前ですね。


東雲と曙のニュアンスの違いについて

【903】
東雲と曙のニュアンスの違いについて
 鈴木と申します。
 - 05/6/19(日) 17:35 -
----
ご迷惑をおかけしましたのに、最後まで丁寧にご親切にありがとうございました。
ただ未だに返信の仕方が分からず、とうとうツリーの中には入れませんでした。
ごめんなさい。

[管理者追記]
曙と東雲のニュアンスについてに続くべきもの



【905】
Re:東雲と曙のニュアンスの違いについて
 田島照生
 - 05/6/20(月) 3:17 -
----
返信が遅くなってしまいました。
すでにご覧になったかもしれませんが、堀井令以知『ことばの由来』(岩波新書,2005)に、「曙としののめ」(p.164-66)という文章が収めてあります。そこで堀井氏は、

夜が明ける少し前のシノノメ、薄明るくなる時分のアケボノとおよそいうことはできても、では、アケボノとシノノメはどのように違うか。これは難しい。まず、今ではこの二つと同じように使われているアカツキ(暁)という語について述べておかなくてはならない。明け方のやや明るくなった時分をあかつきという。奈良時代にはアカトキといった。明時(あかとき)という意味で、夜明け前のまだ薄暗いときである。夜中に続く部分という意識があった。平安時代にはアカツキというようになった。
アカツキの終わりごろがアケボノである。アケボノはアサボラケに先立つ時間をさすといわれる。アサボラケはアケボノよりも、少しばかり明るくなったころといわれるけれども、もちろん明瞭な区分があるわけではない。これらの語に混同が生じて、アカツキもアケボノもシノノメもアサボラケも同じ空が薄明るくなるころ、東の空に少しばかり明るさが感じられるころについて使われるようになった。語の意味と分化と統合の過程を明らかにすることはなかなか骨の折れる仕事である。その語の起源を踏まえた使い分けの痕跡が、どこまで残っているかを見分けなくてはならないからである。(p.164-65)

と書いておられます。ご参考までに。



【906】
Re:東雲と曙のニュアンスの違いについて
 道浦俊彦
 - 05/6/20(月) 17:33 -
----
「暁の超特急」と呼ばれた、陸上男子100メートルの吉岡隆徳選手のニックネームについて、読売新聞のコラム「新日本語の現場」で今年の5月12日から14日まで3回取り上げていましたね。
その中の13日の記事には「夜明け」と「暁」はどう違うのかを説明、「暁」は「夜明け」以前の時間帯を指す、とありました。ご参考までに。



【907】
Re:東雲と曙のニュアンスの違いについて
 田島照生
 - 05/6/21(火) 2:58 -
----
▼道浦俊彦さん:
>「暁の超特急」と呼ばれた、陸上男子100メートルの吉岡隆徳選手のニックネームについて、読売新聞のコラム「新日本語の現場」で今年の5月12日から14日まで3回取り上げていましたね。


それは存じませんでした。讀賣新聞は読んでいるのですが、ついうっかりしておりました。
今日、図書館の『国語学論説資料』で論文を探しておりますと、たまたま、石田穣二「『あけぼの』と『朝ぼらけ』」という論文を見つけました。第3分冊(1964年度)に載っており、初出誌は『学苑』二九〇-二です。石田氏は、

吉沢義則博士の源語釈泉巻頭に「アカツキ」「シノノメ」「アケボノ」なる論文の置かれてゐる事は広く知られてゐる事柄であらう。その所説は「子刻過ぎて後、朝になるまでが「あかつき」であり、その「あかつき」が明け方に近づきながら、未だ明けやらぬ間が、「しののめ」であり、「あかつき」が明るんできた時が「あけぼの」であり、「あけぼの」過ぎて「朝」がおとづれる。」とされるのに要約されよう。今、論証の経過を省いて私見のみを記せば、「しののめ」は歌語である事いちじるしい。博士の用語を拝借すれば、「あかつき」の語を「分断」したのは、「あけぼの」と「朝ぼらけ」の両語であった。そして「朝ぼらけ」の次に「朝」がおとづれる(ちなみに中古語の散文用語では「あした」と言ふ)。そして歌語「しののめ」に対応する散文用語がもしありとすれば、それは「あけぼの」の語を以てそれにあてるべきであらう。

と書いておられます。その「確実な例証」として、『源氏物語』や『能因歌枕』を引いています。
また、ちょっと話はそれますが、東みづほ「『あけぼの』考」(『学習院大国語国文学会誌 一九』1975)で東氏は、
(1)日本書紀の用例が「あけぼの」存在の確証とはなり得ない。
(2)万葉集に「あけぼの」を詠んだ歌が一首もない。
(3)その他の資料からも「あけぼの」の古い例証を見つけられなかった。
というみっつの理由から、

私は「あけぼの」が平安時代に入ってからの造語であり、少なくとも万葉時代には存在しなかった語であると推論する。

と結論しています。つまり、「あけぼの」という訓は後世になってから附されたもので、『日本書紀』にみえる「味爽」「味旦」「会明」は、当時漢語として使用されており、音読されていたのではないか、という見方です。


曙と東雲のニュアンスについて

【900】
曙と東雲のニュアンスについて
 鈴木と申します。
 - 05/6/18(土) 1:49 -
----
先日は突然の質問に大変丁寧にお教えいただきまして、ありがとうございました。
投稿させていただいたその日の内に参りまして、まず道浦先生の書き込みを拝見させていただきましたときに、コレに返信するにはどうしたらいいのかがよく分からなくて、マウスをうろうろさせたあげく、結局何も出来ずに帰ってしまいました。
ところが、教えてくださる方がおられまして、今日久々にお邪魔しましたところ、
あの後、さらにこんなたくさんのコメントを書いて頂いた事を初めて知り
知らなかったとは言え、大変な失礼をしていたことに驚いております。
道浦先生、岡島先生、skid先生皆様にお詫び申し上げます。
本当に申し訳ありませんでした。
これからはこういうことのないよう気をつけますので、これからも寄らせてください。

質問以前に私なりにこの二つの言葉を調べてはみましたが、いくらたくさんの大辞書を見ても、やはり詳しいしかも複数の方から直接伺うのには及ばないなと、つくづく思いました。目に浮かぶように教えていただきました。ありがとうございました。


[管理者追記]
曙と東雲のニュアンスについてに続くべきもの



【902】
Re:曙と東雲のニュアンスについて
 岡島昭浩
 - 05/6/18(土) 14:23 -
----
▼鈴木さん:

>質問以前に私なりにこの二つの言葉を調べてはみましたが、いくらたくさんの大辞書を見ても、やはり詳しいしかも複数の方から直接伺うのには及ばないなと、つくづく思いました。目に浮かぶように教えていただきました。ありがとうございました。


辞書を引き比べたりして、人の助けを借りずに、自分自身で「目に浮かぶ」ようになるのを目指すが、「日本語王」への道だと思います。

私たちも、「あかつき」「あけぼの」「しののめ」「ありあけ」といった言葉に、日頃から重大な関心を抱いているわけではなく、いくらかの辞書を見比べるところからスタートしているわけです。

鈴木さんが、このまま、ことばに関心を持ち続けて下さることを期待いたします。「美しい言葉」という惹句にばかり心ひかれず、生き生きとした言葉すべてに目を向けられるよう、望みます。


言葉の意味変化について

【891】
言葉の意味変化について
 山田慎也
 - 05/6/12(日) 1:06 -
----
初投稿ですがよろしくお願いします。
今日「役不足」という言葉の意味について思い違いをしていたことを知り
ふと下記のようなことを思ったので、書き込みをさせていただく次第です。

ある言葉の意味内容が時を経るにしたがって変化していくということは
しばしばあることだと思いますが、みなさんはこのような変化に対して
どのような感情を抱くのでしょうか。

私に関して言えば、例がちょっとおかしいかもしれませんがホームページという
言葉をWebページと同義として使用しているのを目にすると、どうも違和感を
覚えざるを得ずちゃんとした使い方をしてくれないかなと思ってしまいます。
このとき抱く感情は歓迎とは程遠いものなのですがみなさまはどうなのでしょう。

必然であるはずの言葉の用法変化、これを歓迎しているのかしていないのか、
それともまた違う感情を抱くのか御意見を聞かせていただければ幸いです。



【893】
Re:言葉の意味変化について
 岡島昭浩
 - 05/6/12(日) 21:26 -
----
▼山田慎也さん:
>ある言葉の意味内容が時を経るにしたがって変化していくということは
>しばしばあることだと思いますが、みなさんはこのような変化に対して
>どのような感情を抱くのでしょうか。
>
>私に関して言えば、例がちょっとおかしいかもしれませんがホームページという
>言葉をWebページと同義として使用しているのを目にすると、どうも違和感を
>覚えざるを得ずちゃんとした使い方をしてくれないかなと思ってしまいます。
>このとき抱く感情は歓迎とは程遠いものなのですがみなさまはどうなのでしょう。
>
>必然であるはずの言葉の用法変化、これを歓迎しているのかしていないのか、
>それともまた違う感情を抱くのか御意見を聞かせていただければ幸いです。


自分とは違う使い方を目にすると(耳にすると)、もちろん、違和感を感じます。

そして、それが、変化なのか、臨時的な誤用であるのか、あるいは自分の方がずれているのか、などを見定めたいと思います。

臨時的な誤用であっても、それが複数の人にのぼっているのであれば、変化の兆しを感じるわけですし、たとえそれが変化であっても、同時代人に違和感を感じる人物が居ることをわかって欲しいと思っています。
そういう意味で言葉とがめをしますが、それは「間違っている」という指摘の仕方ではなく、「私には違和感があるし、おそらく私よりも上の世代にとってもそうだろう」という指摘の仕方をしたいと思っています。

翻って、自分のことばも、人に違和感を与えているかも知れません。それで、なるべく違和感を与えないように話さなければならない、と思います。しかし、一方で、違和感を表明するやり方に違和感を感じることもあるので、違和感を表明されるかどうかを確かめるように、わざとことばを選ぶこともあるように思います。

その違和感が、本心から出た違和感ではなく、いわば迷信のような、作られた違和感であることもあり(例えば「語源がこうだからこう使うべきだ」など)、その場合には、そこに違和感を感じなくて済むようになって欲しいと思います。

うまく、言えませんが、そんなところです。

なお、
「ホームページ」については、私も違和感を持っておりましたが、慣れて参りました。「webページ」という言い方を選んでおりましたが、多くはどっちつかずの「ページ」という言い方でお茶を濁しているのが現状です。



【895】
Re:言葉の意味変化について
 道浦俊彦
 - 05/6/13(月) 16:14 -
----
言葉の変化とそれに対する対応の問題は、言葉を考える上で、根本的な問題だと思います。
言葉はその使い手が人間である以上、当然変っていきます。

「放送で使う言葉」に限定しての私見としては、その変化した言葉を使う人々が全体の「9割」を超えた時点で、軸足を新しい言い方に移すべきではないかと考えています。

どうやって9割かどうかを調べるかについては、たとえば文化庁やNHK字放送文化研究所の調査を参考にすればいいのではないでしょうか。



【899】
Re:言葉の意味変化について
 畠中敏彦
 - 05/6/17(金) 17:05 -
----
ある方が、ことばは、1)誤用→ 2)ゆれ→ 3)慣用→ 4)常用の過程で変化する、と書いておられたことを、なにかで見たことがあります(3)、4)は別な表現だったかもしれません)。
つまり、2)、3)の段階においては、違和感を持つなど主観が入り込む余地があるが、常用化することにより一般化するということを言っておられたようです。
山田さんが、違和感を持っておられるのも、その言葉が2)、3)の段階にあるのかもしれませんね。
かって、この会議室でも、「全然」の後は否定でなく肯定のことば(たとえば、全然おいしいなど)に大変、違和感を持つとする意見に対し、そうでないとする意見も相当数あったような気がいたします。
(そういう意味でも、「全然+肯定」は、一般化しているのかもしれません)
気になりましたので、久しぶりに書き込みせさせていただきました。


専門用語はおもしろい # 「一時間に○○の速さで」

【479】
専門用語はおもしろい # 「一時間に○○の速さで」
 佐藤
 - 04/10/20(水) 11:16 -
----
こちらの続きです。
また台風(トカゲ)ですね。ニュースなどで、以前はたしか「時速○○kmで」と言っていたのを、「一時間に○○kmの速さで」と改めたようですが(NHKだけでしょうか)、なぜ改めたのか知りたいことです。
専用の装置・機器で厳密に計測したわけではないので(柔らかめな表現がふさわしい)、ということかなどと想像しています。あるいは「一時間に○○ミリの雨量」などと合わせたものか。



【485】
Re:専門用語はおもしろい # 「一時間に○○の速さ...
 岡島
 - 04/10/21(木) 23:34 -
----
▼佐藤さん:
>また台風(トカゲ)ですね。


私の耳に飛び込んできたのは、「近畿地方では、一部の地域が暴風圏に入り始めています」です。

この場合の「一部の地域」は、気象庁などの観測の単位なのでしょうか。そうでなければ、近畿地方の一部が暴風圏に入れば、それで「一部の地域が暴風圏に入っています」といいうると思うのです。
そして、その「一部」が次第に大きくなって行く、と捉えるのですが、「一部の地域」が「和歌山県南紀地方」などの単位であれば、〈南紀地方の一部分が暴風域に入り、その暴風域には行った部分は拡大している〉、というのを、〈南紀地方が暴風域に入り始めている〉と言って違和感を感じない訳です。

考えすぎでしょうか。



【499】
Re:専門用語はおもしろい # 「シリコン雰囲気」
 佐藤
 - 04/10/25(月) 8:25 -
----
周囲に塵埃、硫化ガス(SO2、H2S)や有機ガスの雰囲気のある場合は密封型(プラシール型)リレーをご検討ください。
プラスチックの呼吸作用がありますので、シリコン雰囲気でのご使用はお避けください。
http://www.naisweb.com/j/relayj/mech_jpn/mech_jpn_mr9/idacn5w.html

少々びっくりしました。「シリコン(の揮発ガス)を含んだ空気環境」ということなのでしょう。「何となくシリコンが漂っている感じでも危ないよ」のような、注意を喚起するニュアンスも感じられて面白く思いました。英語にでもある表現を、直訳したものでしょうか。



【511】
Re:専門用語はおもしろい # 「シリコン雰囲気」
 KS
 - 04/10/28(木) 16:04 -
----
▼佐藤さん:
>
周囲に塵埃、硫化ガス(SO2、H2S)や有機ガスの雰囲気のある場合は密封型(プラシール型)リレーをご検討ください。
>プラスチックの呼吸作用がありますので、シリコン雰囲気でのご使用はお避けください。
>http://www.naisweb.com/j/relayj/mech_jpn/mech_jpn_mr9/idacn5w.html

>少々びっくりしました。「シリコン(の揮発ガス)を含んだ空気環境」ということなのでしょう。「何となくシリコンが漂っている感じでも危ないよ」のような、注意を喚起するニュアンスも感じられて面白く思いました。英語にでもある表現を、直訳したものでしょうか。


 機械学論文の中に「ふん囲気圧力」「ふん囲気温度」「超臨界ふん囲気中における液体燃料の蒸発」とかの記述があります。雰囲気の語源は学術用語でしょうか。?



【513】
Re:専門用語はおもしろい # 「シリコン雰囲気」
 岡島昭浩
 - 04/10/29(金) 1:25 -
----
▼KSさん:
雰囲気の語源は学術用語でしょうか。?

地球のまわりを取り囲む大気を「雰囲気」としたのが、最初ではないかと思います。地学でしょうか。『言海』では「物理学の語」としています。意味は「空気に同じ」。



【521】
Re:専門用語はおもしろい # 「一時間に○○の速さ...
 NISHIO
 - 04/10/31(日) 22:00 -
----
▼岡島さん:
>この場合の「一部の地域」は、気象庁などの観測の単位なのでしょうか。そうでなければ、近畿地方の一部が暴風圏に入れば、それで「一部の地域が暴風圏に入っています」といいうると思うのです。


予報の対象となる「予報区」は以下のように規定されています。

全国予報区:日本全域

地方予報区
  北海道、東北、関東甲信、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州北部、九州南部、沖縄の11地方予報区。

近畿地方予報区の細分区域(大阪管区気象台)
  近畿北部…………京都府北部、兵庫県北部、滋賀県北部(寒候期)
  近畿中部…………京都府南部、兵庫県南部、滋賀県北部(暖候期)、滋賀県南部、奈良県北部、和歌山県北部、大阪府
  近畿南部…………奈良県南部、和歌山県南部
  近畿太平洋側……近畿中部・近畿南部(季節予報で使用)
  近畿日本海側……近畿北部(季節予報で使用、滋賀県北部は通年日本海側)

府県予報区:1府県の区域又はこれに相当する区域。
          (ただし、北海道は7府県予報区、沖縄は4府県予報区)
  府県予報区:  一次細分区域……二次細分区域
  京都府:(京都地方気象台)
          京都府北部………丹後、中丹東部、中丹西部
          京都府南部………京都・亀岡、南丹、山城中部、山城南部
  滋賀県:(彦根地方気象台)
          滋賀県北部………近江西部、湖北、近江東部
          滋賀県南部………近江南部、近江南東部、甲賀
  兵庫県:(神戸海洋気象台)
          兵庫県北部………但馬北部、但馬南部
          兵庫県南部………阪神、北播丹波、播磨北西部、播磨南東部、播磨南西部、淡路島
  大阪府:(大阪地方気象台)
          大阪府……………大阪市、北大阪、東部大阪、南河内、泉州
  奈良県:(奈良地方気象台)
          奈良県北部………北西部、北東部、五條・北部吉野
          奈良県南部………南東部、南西部
  和歌山県:(和歌山地方気象台)
          和歌山県北部……紀北、紀中
          和歌山県南部……田辺・西牟婁、新宮・東牟婁


>そして、その「一部」が次第に大きくなって行く、と捉えるのですが、「一部の地域」が「和歌山県南紀地方」などの単位であれば、〈南紀地方の一部分が暴風域に入り、その暴風域には行った部分は拡大している〉、というのを、〈南紀地方が暴風域に入り始めている〉と言って違和感を感じない訳です。


「近畿地方の一部」といえば上記の「近畿南部」か「和歌山県」あたりでしょうか。
もっと狭い区域なら「和歌山県南部」とか「田辺・西牟婁地方」などと言うかもしれません。



【522】
Re:専門用語はおもしろい # 「一時間に○○の速さ...
 NISHIO
 - 04/10/31(日) 22:36 -
----
▼佐藤さん:
>また台風(トカゲ)ですね。ニュースなどで、以前はたしか「時速○○kmで」と言っていたのを、「一時間に○○kmの速さで」と改めたようですが(NHKだけでしょうか)、なぜ改めたのか知りたいことです。


風速や台風の移動速度を専門家は「knot」(1852m/h)で表すようです。船舶・航空関係向けにはそのまま。一般向けや放送用については、各種気象用語事典には見当たりませんでした。『NHKことばのハンドブック』にもありません。『NHK気象ハンドブック』には載っているかもしれません。

>専用の装置・機器で厳密に計測したわけではないので(柔らかめな表現がふさわしい)、ということかなどと想像しています。


台風の移動速度は、気象用ドップラーレーダーで雨滴に反射した電波の周波数変化を測定すれば正確に把握できるはずです。ただ、刻々変化するでしょうし、太洋上の移動速度に細かい数字を挙げてもあまり意味がないですね。。



【724】
専門用語は〜「好感する」
 佐藤
 - 05/2/9(水) 18:11 -
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自動車関係のHPを見ていたら「好感する」という動詞に出会いました。
さんざんな評判だったCVTだが、制御の細やかさが増したこともあって、受け入れられるようになった。むしろシフトショックのないスムーズさを好感する向きも多くなったようで、
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000016342.html

自動車関係では多用するのかと、「"好感する"」でググれば「約 892 件」あったものの、多くは経済関係(ことに株取引)での用例らしい。

国会会議録検索システムで見ると昭和28年までさかのぼってしまいました。
そこでわれわれとしては、肥料業界が急によくなるということは考えてないのでありますが、いろいろの立場から漸次よくなつて行くだろう。それにつれて資本の膨脹を招来する。資本の膨脹には収益の裏づけを必要としますから、今回いろいろの立場からはつきりした政策を立てられて、安定の方向に進められたということを非常に好感している。そういうわけであります。(参考人:瀬川美能留。- 衆 - 農林委員会 - 4号 昭和28年12月15日 )
 
さすがに『日国2』にはブランチがありますが、用例はなし。一般の辞書では動詞用法は認めていないことでしょう。



【725】
Re:専門用語は〜「好感する」
 益山 健
 - 05/2/10(木) 4:18 -
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株関係だと「嫌気する」という語があって, それと対になることばとして「好感する」ができたのだろうかとおもっていましたが, 株式以外でもつかうのですね。



【726】
Re:専門用語は〜「好感する」
 Yeemar
 - 05/2/11(金) 17:14 -
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新聞は、データベース検索すればたくさん出てくるかもしれませんが、手元にあるもののうち、株用語以外では次のようなものがあります。
政・官・財癒着の自民党政権を野に追いやった細川護煕首相率いる連立政権の洗練イメージを国民が好感したのもつかの間だった。〔無職・小島正吉・75・栃木県足利市〕(「毎日新聞」1995.03.20 p.5)

ノモ〔野茂英雄投手〕のビジネスライクな態度を好感している。日本人にありがちな照れ笑いとか、すまなさそうなしぐさがまるでなく、無理に好かれようというところもない。〔船橋洋一〕(「朝日新聞」1995.07.29 p.4)
書物の例がほしいですね。



【747】
Re:専門用語は〜 「室礼」
 佐藤
 - 05/2/28(月) 14:15 -
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「室礼」という表記を見かけました。礼法・建築関係では現代でも使われているようです。
http://web.kyoto-inet.or.jp/org/gakugei/umape/09.html

和語シツラフからでたシツラヒ(イ)への宛字。類例は他にもあることでしょう。室町ごろには存在した表記らしいのですが、商標登録されているとか。んん。
http://www.shitsurai.com/menu.html



【797】
Re:専門用語 「(生きている動物を)展示する」
 佐藤
 - 05/4/15(金) 13:52 -
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動物園では、飼育している動物を人に見せる(ようにする)のを「展示する」というのですね。
http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&inst=ueno&link_num=2435

剥製・標本なら「展示する」で違和感はないのですが(「標本を展示する」は別の意味でかすかに抵抗感あり?)、まだ生きているとなると、ちょっと。



【882】
Re:専門用語はおもしろい # 「有対他動詞」
 佐藤
 - 05/6/9(木) 19:29 -
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「乾く/乾かす」のようにペアを組みうる自動詞・他動詞のことを有対自動詞・有対他動詞と呼ぶことがありますが、この場合「対」をツイと読むかタイと読むか。正誤の判定はつかないと思うので、純粋にどちらが好みかをお教えください。どちらも使うという方もいらっしゃいますか。また、初めて目にした方でも(かえってその方がいいかも)、どちらの方が好きな読みか、お教えください。
私はツイと言ってしまいます。



【883】
Re:専門用語はおもしろい # 「有対他動詞」
 道浦俊彦
 - 05/6/10(金) 7:20 -
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初めて目にしました。意味の上からは「ツイ」と読むべきでしょうね。何も予備知識がなければ「タイ」と読んでしまいそうです。



【884】
Re:専門用語はおもしろい # 「有対他動詞」
 Yeemar
 - 05/6/10(金) 7:28 -
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▼佐藤さん:
>「乾く/乾かす」のようにペアを組みうる自動詞・他動詞のことを有対自動詞・有対他動詞と呼ぶことがありますが、


恥ずかしながら、この用語を意識したことがありませんでした。はじめ、「対(つい)になるものが有る」ということで、「ゆうつい」か、と思いましたが、「ゆうたい」のほうが言いやすいような気もします。

別スレッド「この人が作った」ではありませんが、この用語を一般化させたのは早津恵美子氏でしょうか。手元の須賀一好・早津恵美子編『日本語研究資料集 動詞の自他』(ひつじ書房1995)巻末には研究文献一覧があり、タイトルに登場するのは、どうやら早津氏(1989)の「有対他動詞と無対他動詞の違いについて」以後のようです。同論文の冒頭には、
 日本語の他動詞は,対応する自動詞があるか否かという点で二つの類に分けられる〔略〕本稿では,前者に対して「有対他動詞」,後者に対して「無対他動詞」という用語を用いる。
など、語を定義する部分があります。その前の早津氏論文(1987)のタイトルは「対応する他動詞のある自動詞の意味的・統語的特徴」であって、少なくともタイトルに使われていません(論文中に出てくるかどうか、未見)。

ページを繰っていると、「ゆうたい、ゆうたい」と頭で繰り返す自分に気づきます。早津氏の定義では「応する自動詞のある他動詞」ということなので「ゆうたい」のつもりでしょうか。



【889】
Re:専門用語はおもしろい # 「有対他動詞」
 NISHIO
 - 05/6/11(土) 3:22 -
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「ユウタイ」と読んでしまいました。
「対」は「タイ」と読むことが圧倒的に多いという経験則が働いたのかもしれません。

広辞苑、大辞林で「対」を先頭又は末尾に含む語のうち、「ツイ」は以下の語しかありませんでした。
対す、対句、対語、対合、対軸、対丈、対雛、対幅、対待、対聯、不対電子
一対、好一対、二六対、二幅対、三幅対、句中対、順序対、塩基対、電子対、熱電対


通俗字源もしくは道学的字源

【53】
通俗字源もしくは道学的字源
 岡島昭浩
 - 04/5/6(木) 22:17 -
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「人」という字は左右で支え合っておらんと倒れてしますのであります。二人でなければ「人」ではないのであります。

というような、道学的字源説。いつからあるのかと思っていましたが、杉山茂丸『百魔』にありました。講談社学術文庫の上巻175頁、
元来支那の太古に文字を拵えた人は皆禅哲である。それが「人」と云う字を拵える時に「|」この様な棒のような「人」と云う字は拵えなかった。「丿」かような画と「\」かような画の二つを寄せて、人と云う字を拵えたのである。一人より外 人がいなかったならば「|」こんな字を人と読ませたであろうが、……


「道学的」と書きましたが、江戸の道学にもあるのでしょうか。



【68】
Re:通俗字源もしくは道学的字源
 田島照生
 - 04/5/13(木) 22:17 -
----
ツリー型になって、書き込ませていただくのは初めてです。
今後とも宜しくお願い申し上げます。

「人」の通俗字源については、四、五十年まえの邦画かなにかで観たおぼえが
あり、戦後に生じたものだろうと漠然と考えておりました。
しかし、杉山茂丸の生きた時代に存在していたとはつゆ存じませんでした。

「通俗字源」といわれて私がすぐに思い浮かべるのは、「戈を止むる『武』」と、
「厶に背くを公と爲す」(『韓非子』五蠹篇)くらいですが、説文の成立時にも、
すでに「虫なる者は中を屈するなり」などといった通俗字源があったようです。

つぎに引用するものは、「通俗字源」とはまったく関係がありません。
ちょっと下品なのですが、おもしろい(?)発想なので引用します。

「…例えば“匂”は字の形を見ていると、小箱の中に花びらが一枚入っている
ような感じを連想させるし、一方、“臭”は字を解体すると『自らの大』なん
てことになるので、うへーこれはもうクサイに決まってるああ嫌だ嫌だ、とい
った感想を抱かせる。」
(原田宗典『スバラ式世界』集英社文庫,p.30)

いわゆる「字割り」「字詰め」にありがちな発想ですが、「臭」については、
下方を「犬」に作る旧字体を無視してしまっています。



【885】
Re:通俗字源もしくは道学的字源 「聴」
 岡島昭浩
 - 05/6/10(金) 10:43 -
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「聴」は、「十四の心で」(耳だけではない)というものがあるようです。(「聽」の「一」「王」はどこへ行ったのか、とも思いますが、まあよいでしょう。)

ググって見ると、「十四」を、心の数とするものの他に、十四歳の心で、とするものがありました。
「七つの子」を思い出したことでした。


ミン・ポン・ピー #

【878】
ミン・ポン・ピー #
 佐藤
 - 05/6/5(日) 23:54 -
----
旧会議室からの続き。「愛称の造語法・今昔」とかでもした方が良かったかもしれませんね。

6月4日放映の「出没! アド街ック天国」は八王子の特集だったのですが、松任谷由美の実家の荒井呉服店も出てましたね。その一室に、美大を目指していたころに書いた自筆スケッチがあり、「Yuming / 1972」とのサインがあったように見えたのですが、僻目でしょうか。1972年からユーミンを名乗っていた(らしい)ことになるのですが。


つい言ってしまう! #

【803】
つい言ってしまう! #
 Yeemar
 - 05/4/25(月) 18:45 -
----
つい言ってしまう!
の続きです。

自分はどういう言い間違いをするものか、しばらく前に、いちいち記録してみたことがあります。数日でやめました。寺尾康『言い間違いはどうして起こる?』(岩波書店 2002)のことが多少、念頭にありました。

振り返ってみると、語彙的な間違いが多く、音の間違いは少なかったように思います。

2005.04.07
「中野」を「早稲田」と言った/「押し入れ」を「たんす」/「手元」を「手前」/「たしか」を「ただし」/「一段落」を「いと……」(「いちだんらく」と「ひとだんらく」の混淆)/「あたたかい」を「あかるい」/「つかれる」ないし「しんどい」の意を表明しようとして「あつい」
2005.04.09
「冬」を「春」
2005.04.10
「汗をかかぬ」を「汗をきかぬ」/「電車」を「バス」
2005.04.11
「しだれざくら」を「しらぜだくら」

上は、「sidarezakura」→「sirazedakura」ですから、なかなか複雑な音位転倒と思います。

しばらく間が開き、2005.04.19に「まんぞく」を「まんぼく」と言ったのを記録したあたりで、やめてしまいました。

7日に間違いの数が多かったのは、発言量が多かったせいでしょう。



【806】
Re:つい言ってしまう! #
 satopy
 - 05/4/27(水) 1:50 -
----
▼Yeemarさん:
>「しだれざくら」を「しらぜだくら」
>上は、「sidarezakura」→「sirazedakura」ですから、なかなか複雑な音位転倒と思います。


 位置だけみると、母音はそのままで、子音のdrzがrzd。rzがセットで先に来たのですね。そのきっかけを考えてみて、ひょっとすると言語形成期の方言はdとrの交替(たとえば「角のうどん屋→かろのうろんや」)が見られる方言でしょうか?
 岡島さんご子息の「pato」以来の興味深い例で、ついついレスしてしまいました。お許しを。
 以前、講義で「変化のプロセス」というべきを、「変化のプロレス」と言ってしまい、ウケてしまいました。たしかに言語変化の過程はそういうものかもしれません。



【807】
Re:つい言ってしまう! #
 Yeemar
 - 05/4/27(水) 19:51 -
----
▼satopyさん:
>ひょっとすると言語形成期の方言はdとrの交替(たとえば「角のうどん屋→かろのうろんや」)が見られる方言でしょうか?


私は香川県高松市で育ちましたが、周囲では「うどん」を「うろん」のように言っていた記憶はありません。自省では、方言的な要素のために「シラゼダクラ」になったという感じはありません。

ただし、脇田順一『讃岐方言の研究』(1938、1975復刻 国書刊行会)によれば、どうも郡部を中心に(1)ザ行→ダ行、(2)ザ行→ラ行、(3)ザ行→ダ行、(4)ダ行→ザ行、(5)ダ行→ラ行、(6)ラ行→ザ行の例があったようです。

〔例〕
(1)「雑炊」を「ドースイ」
(2)「雑炊」を「ロースイ」、「人力車」を「リンリキシャ」(これは「県下全体」とのこと)、「涼しい」を「スルチイ」、「水」を「ミル」(これも知りませんが、朝鮮語「mul」と響きあって面白い)
(3)「簪」を「カンダシ」、「座敷」を「ダシキ」
(4)「戸棚」を「トザナ」、「綽名」を「アザナ」(後者の例は私にも聞き覚え・言い覚えがあります。ただし「あざな=字」との混同か)
(5)「大根」を「ライコン」
(6)「利巧な」を「ジコーナ」、「軽業」を「カジワザ」、「鈴」を「ジン」、「龍吐水」を「ジュートスイ」

上のほとんどは、私には馴染みのないものです。

ただし、(6)は、私も観察したことがあります。高松市内では「今切っている」の意で「キッリョル」と言いますが、人によっては「キッジョル」と言います。「今走っている」は「ハシッリョル」ですが、人によって「ハシッジョル」になります。

また、私が2002.05.03-04に香川県西部海上の伊吹島で聞いたところでは、「ジンザ」(甚三郎)を「ジンダ」、「理事会」を「リディカイ」というなど、ザ行→ダ行の例がいくつかありました。

縷々述べましたが、私自身の方言は、母方の埼玉方言などがまじり、あやしいことを申し添えます。基本語のアクセントも自省できないものがあります。両親、近所の人が元気なうちにアクセント調査して、私自身のアクセントとどうずれているか、いないか、確かめておかなければならないと思います。



【808】
Re:つい言ってしまう! #
 Yeemar
 - 05/4/27(水) 19:53 -
----
>ただし、脇田順一『讃岐方言の研究』(1938、1975復刻 国書刊行会)によれば、どうも郡部を中心に(1)ザ行→ダ行、(2)ザ行→ラ行、(3)ザ行→ダ行、(4)ダ行→ザ行、(5)ダ行→ラ行、(6)ラ行→ザ行の例があったようです。


(1)と(3)は重複ですね。



【826】
Re:つい言ってしまう! # (いつどとなく)
 Yeemar
 - 05/5/15(日) 19:11 -
----
「混淆」の例です。

2005.05.09、タレントの藤井隆さん・乙葉さんが婚約会見を行い、その席で「いつ結婚を決意したか」(というようなこと。または、「いつから相手を意識しだしたか」)を問われた藤井さんが「いつどとなく……」と答えていました。字幕にも「いつどとなく」と出ました。思うに「いつとなく」と「いくどとなく」の混淆でしょう。

放送局も正確なやりとりも記録していませんでしたが、捨て去るには惜しいのでこちらに報告します。芸能ニュースのサイトでもこのやりとりは記録されていないようです。



【877】
Re:つい言ってしまう! # 「地本問屋」
 岡島昭浩
 - 05/6/5(日) 14:58 -
----
「的中地本問屋」の「地本問屋」を「じほいどんや」と言ってしまいます。

おそらく、素直に読んでしまうと「じほや」なのを「じほや」に訂正しようとして、訂正個所を間違えてしまうのでしょう。


東・西・南・北 #

【870】
東・西・南・北 #
 佐藤
 - 05/5/31(火) 20:21 -
----
東・西・南・北
の続きです。

Yeemar さんからのコメント ( Date: 2003年 03月 28日 金曜日 08:13:04)
> これについて小野正弘氏は「日本語学」2002.11増刊「日本語あれこれ事典」の中で「南東・南西・北西・北東」などは〈方角〉、「東南・西南・西北・東北」などは〈地域〉であると意味の違いを説明しています。

原則的にそうであろうと思います。それはそれとして、最近目にした次の例はちょっと面白い。
ちなみに、京都の四方に現れる雲に名前がついている。東北は近江小太郎、北西は丹波太郎、東南は奈良次郎、西南は和泉三郎である。
岡田有立「京・祭詩画 水無月は水の気《季》節」『フルフル』vol.8 2005.5.1

雲の現われる方位をいうのだから方角系(南北主体)かと思いきや、地方系の「東北・東南・西南」を主に使っている。雲の名前に旧国名等が使われたために、一種のコンタミネーションのような状況になったのかもしれません。
このなかで「北西」が仲間はずれ。単に新旧の言い方が入り交じったということでもよいのですが…… 方位をいうのに「東→北→西→南」(反時計周り? 麻雀の裏返し?)の順に優先的に使うという規則があるのなら「東北・東南・北西・西南」(東西・北南は無内容)となり、岡田さんの言い方がぴったりあてはまります。
こうした序列は他の人(時代?)にも見られるかどうか、知りたくなります。


3ガイ、4カイ

【874】
3ガイ、4カイ
 道浦俊彦
 - 05/6/3(金) 10:08 -
----
最近の若者は、時間の「3分、4分」を、「3プン、4プン」と半濁音ではなく、清音で、「3フン、4フン」と言うようですが、助数詞の連濁に関して伺います。

階数の「3階、4階」は「3ガイ」「4カイ」ですが、同じ「ん」のあとにくるのに、なぜ「3階」は「ガイ」と濁り、「4階」は「カイ」と濁らないのでしょうか?
「3階」の方が、「4階」よりも良く使われるからでしょうか?
また、「13階」は濁りますか?濁りませんか?「23階」はどうですか?「103階」は??

「3階」は濁るのに「3回」は濁らないので、前に「ん」がくると連濁するということでもないようです。 

もう一つ、「3件」は濁らないのに、「3軒」はなぜ濁るのでしょうか???

ご教示ください。よろしくお願いします。



【875】
Re:3ガイ、4カイ
 Yeemar
 - 05/6/4(土) 14:33 -
----
▼道浦俊彦さん:

私は、このことについて論文などを読んでいるわけではありませんが、頭を整理するために返信させてください。

「三階」と「三回」、「三軒」と「三件」の連濁の有無の違いは、語の新古、それに使用頻度によると思います。「三階」と「三回」の違いはアクセントも関係しているのでしょうか。

・文献について
最近では
 田野村忠温「「さんがい(三階)」と「よんかい(四階)」」(『いずみ通信』16 1992.08)
といった論文があるようですね(ちょっと入手しがたいものです。いずれ読みたい文章です)。

・三階と三回
「○階」のほうは、古くから使われています。(意味を無視すれば)すでに日本書紀に冠位十二階などに関する記述があります。日本古典文学大系(旧)の『今昔物語集』に「三階(サンカイ)ノ仏法」と清音表記があり、校注者がそう読んだと思われます。「平家物語」や元禄の西鶴作品では「三階」は「〜がい」と連濁しています(これは原典にそうあるのでしょう)。

いっぽう、「○回」は、古い例はあるものの、一般化したのは、江戸時代後期に物語の回数で「第一回」「第二回」「第三回」と使われるようになってからではないでしょうか。「階」に比べ、よく使われるようになったのが遅かったと見ます。

・三軒と三件
「○軒」のほうは、江戸時代に入ってからはよく使われたようで、たとえば「好色一代女」に「三軒(げん)」とあるなどこの時期以降の例は多数あります。

いっぽう、「○件」は、江戸後期以降でしょうか? 用例も少ない模様。「春色辰巳園」に「御連中の時の一件かへ」とあり、「孔雀樓筆記」に「漁具六件」とあるような使われ方です。

これらを見るかぎり、「三階」「三軒」のほうが「三回」「三件」より歴史が古く、かつまた、古くからよく使われているようです。

・「三階=さんがい」と「四階=よんかい」
「四階」が「よんがい」にならないのは、「四」を「よん」と読むのがずいぶん新しいからでしょう。『日本国語大辞典』の「よん」の項には、1917年の『口語法別記』の例しか載っていません。もちろん、これ以前にもこの読み方はあったでしょうけれども。古くは「しかい」でしょうか。

・「三階=さんがい」と「十三階=じゅうさんかい」
私は後者は濁らずに発音します。13階以上のビルは新しいため、濁りにくいのでしょうか。浅草十二階ができたのは明治ですね。

これと似ているかどうか、「十四日」「二十四日」が「〜よっか」であるのに対し、「三十四日」「百四日」などは「〜よ(ん)にち」と言いたくなります。前者は暦にあってよく使うのに対し、後者はあまり使う機会がないからだと思います。

・若い人の「三分(さんふん)」「四分(よんふん)」は気づきませんでした。いつごろから指摘されているのでしょうか。


辞書にないことば ###

【187】
辞書にないことば ###
 Yeemar
 - 04/6/29(火) 15:28 -
----
辞書にないことば ##
の続きです。

補入ということばをワープロで打とうとして辞書にないことを知りました。小型辞典にも(三省堂・新選・集英社)、『大辞林』にも『日本国語大辞典』にもない。

ごくふつうのことばだと思っていました。「メルマガに追加原稿を補入する」などと例文も思い浮かびます。一般には言わないのでしょうか。

さては学術用語、というのが大げさならば、日本語学関係の論文などに特有の用語であって、私はそれを本や何かでしらずしらず覚えたのでしょうか。「この部分は後人の補入だ」などという言い方は思い浮かびますが、それにしても専門語という意識はありません。

論文タイトルとしては
東辻保和「旧尾州家蔵河内本源氏物語の表記について―東屋巻のミセケチと補入と―」(高知大学学術研究報告17、1969.2)
などとあります。国文学論文目録データベースで11件です。

『国語学大辞典』の索引では「ポナペ語」のつぎは「骨組み語」であって「補入」はありません。

手元のデータでは『厚生新編』(1811〜39年ごろ成立)に「本説を訳して聯か此内に補入するも有り。」とかろうじてありました。「聯か」はOCRが「聊か」を読み取りそこなったものでしょうか。



【188】
Re:辞書にないことば ###――「補入」
 岡島昭浩
 - 04/6/29(火) 17:26 -
----
ググってみますと出て参ります「鉄道補入」というのは、鉄道用語かと思ったら、地図の用語のようですね。
http://www.gsi.go.jp/MAP/HISTORY/yougo.html

日本語学用語、というよりも書誌学用語、という気がいたします。
検索してみると、凡例ばっかりヒットします。

文学作品類で探してみますと、森鴎外のものに何回か使われています。書誌学に直結する「伊沢蘭軒」では百五「冬の詩が四首あるが、其中には伝記に補入すべきものを見ない。」など。「礼儀小言」でも、その十「門人伏見道太がこれを書し、歿後月日を補入したものである。」

なお、
『国語学』全文検索
http://jcs.aa.tufs.ac.jp/SJL/DB/cgi/f_SJL_index.cgi
では、32論文、96件ヒット致しました。



【192】
Re:辞書にないことば ###
 道浦俊彦
 - 04/6/30(水) 10:31 -
----
「補入」、初めて聞きました!やはり専門用語では?



【193】
Re:辞書にないことば ###――移換
 Yeemar
 - 04/6/30(水) 18:31 -
----
移換
資産をある制度から別の制度に移しかえること、でしょうか。
既存の企業年金や退職手当等の資産の全部または一部を確定拠出年金に移換する
(住友信託銀行・すみしん確定拠出年金ネットサービス「用語解説・移換」)
などと使うようです。
『大辞林』『広辞苑』になし。中辞典には載せる必要なしでしょうか。『日本国語大辞典』には「取りかえること。入れかえること。」で新聞雑誌-一二号「風俗なる者移換以て時の宜しきに随ひ、国体なる者不抜以て其勢を制す」が載っています。この用例の「移換」は「移り変わる」という意味では?

金融用語(?)としての「移換」は載っていません。



【198】
Re:辞書にないことば ###――移換
 岡島昭浩
 - 04/6/30(水) 21:12 -
----
▼Yeemarさん:
>移換
>資産をある制度から別の制度に移しかえること、でしょうか。
既存の企業年金や退職手当等の資産の全部または一部を確定拠出年金に移換する
>(住友信託銀行・すみしん確定拠出年金ネットサービス「用語解説・移換」)
などと使うようです。


「移管」と重なりそうな気がしますが、違うような気もしますね。



【201】
Re:辞書にないことば ###――律束・律速
 skid
 - 04/7/1(木) 0:37 -
----
先日、知人から「律束」を載せている辞典があるかどうか尋ねられました。
コンピュータ関係の仕事をしている彼は、大学工学部の頃から二十数年の間、何の疑いもなく「律束」を使ってきたそうです。
ところが、取引先に提出した文書に「律束」を使ったら、どういう意味なのか質問され、的確に答えられず、手元の辞典を引いても無かったのだ、と。

幸い、旧会議室で「律速」を目にしていたお陰で、「律束」は「律速」のことではないかと答えることができました。
「律速」は以下の辞典にあります。
●【律速段階】
『大辞林』第二版(三省堂)
『新辞林』(三省堂)
『国語大辞典 言泉』(小学館)
『集英社国語辞典』第二版(集英社)
『岩波理化学辞典』第三版(岩波書店)
●【律速因子】
『岩波生物学辞典』第三版(岩波書店)

しかし、ネット検索をすると「律束」もかなり使われています。
理工系で速度を律することならば「律速」のはずですが、法律関係でも「律束」が使われているようです。
法律・規律に拘束・束縛されるといった意味合いでは「律束」がふさわしいですね。



【206】
Re:辞書にないことば ### 賦存
 益山
 - 04/7/2(金) 1:53 -
----
ニュースグループ sci.lang.japan で話題になってました。

賦存?
http://groups.google.com/groups?th=7874c1513e5e703d



【208】
Re:辞書にないことば ### 賦存
 岡島昭浩
 - 04/7/2(金) 16:37 -
----
衆議院速記部『国会のことば』 (昭和27.3 日本速記協会)322頁に、「賦存 鉱物が−−する」と載っていました。
http://www.let.osaka-u.ac.jp/~okajima/PDF/kokkainokotoba.pdf
これは、
この本は、昭和二十五年七月から翌二十六年八月に至る約一箇年間に開かれた第八回ないし第十一回国会において、衆議院の本会議及び委員会で発言せられた一切の言葉を集めたものである。

というものです。

そこで、
http://kokkai.ndl.go.jp/
ここで検索してみました。
古くは、昭和22年09月27日 の衆議院本会議で使われていました。発言者は山口六郎次君。

亞炭の埋蔵量は、私の推定によりますれば、おおむね全國に賦存いたしまして、実に百億トン、



>http://groups.google.com/groups?th=7874c1513e5e703d

#eamerさんとおっしゃる方がいらして、Yeemarさんと似た名前だと思ったことでした。



【209】
Re:辞書にないことば ### 賦存
 Yeemar
 - 04/7/2(金) 21:57 -
----
同姓の方でしょうか?



【370】
Re:辞書にないことば ###「校正」の意味
 佐藤
 - 04/9/14(火) 20:12 -
----
専門用語なのでしょうが、pHをはじめ、広く諸々の測定値を、本来あるべき範囲におさめるための行為をいうのに使うようです。あるいは下記3番目の例のように測定器具自体の誤差調整とかにも。『日国2』にもブランチなく、これを覆うような語釈の工夫もありません。
http://www.kdwan.co.jp/products/beamex/ (圧力測定用??)
http://www.tscom.co.jp/products/sanki/ca100.html
http://www.millipore.com/nihon/labwater/labwsite.nsf/docs/term#こ (用語辞典)



【372】
Re:辞書にないことば ###「校正」の意味
 岡島昭浩
 - 04/9/15(水) 17:13 -
----
「較正」が元だろうと思いまして見てみますと、併記してあるページ(3番目など)もありますね。

「較正」では、「かくせい」と読まれてしまうので、字を変えたのだろうか、などと思いましたが、真相はどうなのでしょう。



【765】
Re:辞書にないことば ###「白飯」
 Yeemar
 - 05/3/22(火) 11:03 -
----
「白飯」ということばは、私は「はくはん」と読みます。ところが、日本語入力ソフトのATOK17やMicrosoft IME Standard 2003には「はくはん」は「白斑」しかない模様です。

「しろめし」と入れると、ATOKでは「白飯」、MS-IMEでは「白目氏」。ATOK辞書では「しろめし」として収録されているものと思われます。

むかし、セブン‐イレブンの弁当の棚で、炊いたごはんだけを「シロメシ」と表示して売っているのを見て(今もあるでしょう)、「あれは『はくはん』と言うべきものだ。『しろめし』では身もふたもない」と思ったことがあります。

辞書ではどうか。

*「しろめし」を――
 載せる辞書 a『日本国語大辞典』第2版(用例なし)
 載せない辞書 b『三省堂国語辞典』第5版 c『新明解国語辞典』第6版 d『岩波国語辞典』第6版 e『新選国語辞典』第8版 f『明鏡国語辞典』初版 g『小学館日本語新辞典』初版 h『集英社国語辞典』第2版 i『広辞苑』第5版 j『講談社カラー版日本語大辞典』第2版 k『大辞林』第2版

*「はくはん」を――
 載せる辞書 a(古い用例あり) k
 載せない辞書 b c d e f g h i j

*青空文庫の用例
 後の業平文治(三遊亭圓朝)「白飯(しろめし)のお手当がないのじゃ」
 河明り(岡本かの子)「カレー汁の外に、白飯に交ぜる添菜が十二三種も」

*現代の用例〔読み方不明〕
 御食事 三種をどうぞ/ 白飯 味噌汁/ もずく雑炊/ 山菜蕎麦/ 香の物(ホテルリゾーピア熱海「遊楽御膳」品書 2005.03.20採集)



【766】
Re:辞書にないことば ###「白飯」
 岡島昭浩
 - 05/3/22(火) 14:49 -
----
柴田武『生きている日本語』講談社学術文庫のp155に「白めし」あります。『生きている方言』筑摩新書では、p99に写真あり。

私がその本に貼ってあるのが、レシートで「シロゴハン」とある。(1988-08-04)、熊本の中華料理屋でもらったもの。\170。

ちなみに、
 小計  750
 預り 1,000
 釣り  250
とある。丁度払っていたらどうなっていただろうと思う。昔のレシートが出てきたらよく見てみようと思います。



【771】
Re:辞書にないことば ### ――釣札
 NISHIO
 - 05/3/27(日) 17:26 -
----
都営地下鉄線の券売機で5千円札を入れて3千円のストアドフェアカードを購入したときのこと。

 「ツリサツが出ます。ツリサツをお忘れなく」

「釣銭」ならぬ「釣札」のことだろうと推測できますが、辞書にはありません。
広辞苑(5版)、大辞林(2版)、新辞林(2版)、岩波国語辞典(6版)、日本国語大辞典(2版)で確認。

googleでは
 → 釣札 の検索結果のうち 日本語のページ 約 103 件

用例は「自動釣札機」「自動釣銭釣札機」「釣札払出機能」「紙幣釣札機能」「釣札補給方式」など。業界では一般的に用いられているのかもしれません。



【859】
Re:辞書にないことば ### (立ちそば)
 Yeemar
 - 05/5/27(金) 4:00 -
----
「立ち食い蕎麦」を「立ち蕎麦」と言うのは、定着しているのでしょうか? 「若者ことば」という気もしますが、よく分かりません。

テレビで耳にし、Webで検索してみると、意外に多く拾われます。
華原朋美 この〔丼つゆの〕匂いをね、駅前とかで嗅ぐと、いつも一人で入ってっちゃったりとかするんですよ。
勝俣州和 それ立ちそばでしょ。
(日本テレビ〔よみうりテレビ〕「新どっちの料理ショー」2005.05.26 21:30放送)
字幕には「立ち食いソバでしょ」とありました。



【862】
Re:辞書にないことば ### (立ちそば)
 道浦俊彦
 - 05/5/27(金) 10:52 -
----
▼Yeemarさん:
>「立ち食い蕎麦」を「立ち蕎麦」と言うのは、定着しているのでしょうか? >勝俣州和 それ立ちそばでしょ。
>(日本テレビ〔よみうりテレビ〕「新どっちの料理ショー」2005.05.26 21:30放送)</blockquote>字幕には「立ち食いソバでしょ」とありました。



昨日の「どっち」は見ていませんが、そんな発言がありましたか。私は言いませんし、字幕で「立ち食いそば」としていたのであれば、少なくともまだ「認められていない」と判断したのだと思います。もちろん俗語ですよね。
驚いたことに、Google検索で、3340件も出てきました!



【863】
Re:辞書にないことば ### (立ちそば)
 後藤斉
 - 05/5/28(土) 14:37 -
----
>驚いたことに、Google検索で、3340件も出てきました!


そのうち、2500件以上は特定のサイト(http://www.2ch.net)に集中しており、
しかも、同一の例が432件と数えられています。
http://www.google.com/search?q=%E7%AB%8B%E3%81%A1%E3%81%9D%E3%81%B0+inurl%3Afood3.2ch.net%2Ftest%2Fread.cgi%2Fjfoods%2F1078317899%2F&filter=0



【864】
Re:辞書にないことば ### (立ちそば)
 Yeemar
 - 05/5/28(土) 16:22 -
----
▼後藤斉さん:
>そのうち、2500件以上は特定のサイト(http://www.2ch.net)に集中しており、


私も、「Google」の3千何百件という表示を念頭に、「意外に多く拾われます」と申しました。しかし、むしろ、「Google」のリストのいちばん最後に出てくる
最も的確な結果を表示するために、上の274件と似たページは除かれています。
に注目した方がよさそうですね。274件ならば、「意外に多く」というほどではないかもしれません。

検索結果の数字の危うさについては、後藤さんがつとに警告されていることですね。



【866】
Re:辞書にないことば ### (立ちそば)
 後藤斉
 - 05/5/29(日) 22:52 -
----
>検索結果の数字の危うさについては、後藤さんがつとに警告されていることですね。


幸月庵というお店は立ち食い蕎麦屋ではないようですが、Googleでは「立ちそば」で100件ほども
ヒットしてしまいます。
http://www.google.com/search?num=100&hl=ja&q=%E5%B9%B8%E6%9C%88%E5%BA%B5+%22%E7%AB%8B%E3%81%A1%E8%95%8E%E9%BA%A6%22

Googleの「(立ち蕎麦 OR 立ちそば)」の検索結果7530件のうち有効な用例はせいぜい数百であると
思われますが、まだそれほど多くないだけに、丹念に見ればこの語の広がり始めの様子が
捉えられるかもしれませんね。



【868】
Re:辞書にないことば ### (立ちそば)
 道浦俊彦
 - 05/5/30(月) 10:18 -
----
▼後藤斉さん:
>>驚いたことに、Google検索で、3340件も出てきました!

>
>そのうち、2500件以上は特定のサイト(http://www.2ch.net)に集中しており、
>しかも、同一の例が432件と数えられています。



いつもご指摘を受けているのに、そのままの数字を書いてしまいました・・・。
キーワードを「 」でくくったので、安心してしまいました。



【1079】
Re:辞書にないことば ###――移換
 通りすがり
 - 05/10/17(月) 17:02 -
----
確定拠出年金を日本語訳にした一番初めの人が"お馬鹿"だったからだと思う。
「勝手に日本語作るなよ〜。漢字にはちゃんと意味があるんだから。」とツッコミ入れたい。。。

なぜなら、漢字には下の意味がある。
  ア.「換え」=AとBを交換する
  イ.「替え」=AをやめてBにかえる。

「移しかえること」であるなら
「預け替え」の意味を持つイが正しい。
「交換」するわけではないからね。

てか、
解かり易い日本語の「移し替え(うつしかえ)」もしくは「移管(いかん)」にしてほしい。

「移換」が一発変換できないから、
めんどうでしょうがない。。。

「さおやー、さおだけー」の掛け声

【856】
「さおやー、さおだけー」の掛け声
 道浦俊彦
 - 05/5/26(木) 11:16 -
----
「さおだけ屋」さんの掛け声の「さおやー、さおだけー」というのを聞きますが、この前半部分の「さおやー」の「や」は、「屋」でしょうか?それとも終助詞の「や」でしょうか?



【857】
Re:「さおやー、さおだけー」の掛け声
 岡島昭浩
 - 05/5/26(木) 13:50 -
----
▼道浦俊彦さん:
>「さおだけ屋」さんの掛け声の「さおやー、さおだけー」というのを聞きますが、この前半部分の「さおやー」の「や」は、「屋」でしょうか?それとも終助詞の「や」でしょうか?


終助詞でもなく、「金魚えー金魚」の「えー」のようなものだと私は思っておりました。あまり意味のない掛け声のような。


他の物売りの声を、いろいろ見てみれば分かることもあろうかと思いますが、「〜屋」というのは、「〜屋でござい」のような形になるのではないかと思っていますがどうなのでしょうか。

「くずい、くず」というのもありましたっけ。



【858】
Re:「さおやー、さおだけー」の掛け声
 kpoint
WEB
 - 05/5/26(木) 16:31 -
----
▼道浦俊彦さん:
>「さおだけ屋」さんの掛け声の「さおやー、さおだけー」というのを聞きますが、この前半部分の「さおやー」の「や」は、「屋」でしょうか?それとも終助詞の「や」でしょうか?


「たけや〜ぁ〜 竿竹!」だと思いましたけれど。
「さおや〜」は覚えがないです。



【860】
Re:「さおやー、さおだけー」の掛け声
 道浦俊彦
 - 05/5/27(金) 5:13 -
----
▼kpointさん:
>▼道浦俊彦さん:

>>「さおだけ屋」さんの掛け声の「さおやー、さおだけー」というのを聞きますが、この前半部分の「さおやー」の「や」は、「屋」でしょうか?それとも終助詞の「や」でしょうか?

>
>「たけや〜ぁ〜 竿竹!」だと思いましたけれど。
>「さおや〜」は覚えがないです。


その場合の「たけやぁー」の「や」は何ですか?というのが質問なんですが・・・。どうでしょうか?



【861】
Re:「さおやー、さおだけー」の掛け声
 kpoint
 - 05/5/27(金) 8:28 -
----
>その場合の「たけやぁー」の「や」は何ですか?というのが質問なんですが・・・。どうでしょうか?


お役に立てず申し訳ありません。
知りません。
今まで「竹だよ〜」の意味にとらえていました。



【865】
Re:「さおやー、さおだけー」の掛け声
 Yeemar
 - 05/5/28(土) 17:51 -
----
▼道浦俊彦さん:
>その場合の「たけやぁー」の「や」は何ですか?というのが質問なんですが・・・。どうでしょうか?


宮田章司氏〔寄席芸で物売りの声色を得意とする人〕の『江戸売り声百景』(岩波アクティブ新書2003)から、「や」のつくものを拾ってみます。「や」「屋」は原表記のままです。〔 〕内は私の補いです。

 a. とんがらし〔唐辛子〕やーい、とんがらしやぃ(p.40)
 b. はりいた〔張り板〕やー、はりいた。はりいたやー、はりいた(p.49)
 c. あーーあめー〔飴〕あーぁぁ、よかぁよーかぁ、よかぁよーかぁあめーや(p.56)
 d. えー、研ぎ屋ー。はさみにほうちょう研ぎおまへんか(p.62)
 e. でんでごでごでごでごでごでごでーーぇおでんや。あたぁりやぁおでん〔当たり屋おでん?〕(p.62)
 f. えー、はなっ、花屋でございっ。(p.63)
 g. くずぅーい、屑やお払い〜(p.63)
 h. かに〔蟹〕やぁーい、おーがぁーによぉーい(p.74)
 i. うめぼしや〜、あおうめ(p.75)
 j. あさがおーぉのなえやーぁぁ、ゆうがおーのなえっ。へちまとーうがぁーん、しろうりのーなえっ(p.77)

こう見てくると、i・jあたりは「AやB」という構造、hは「AやA'」という構造のようです。「たけやーさおだけ」も、「AやA'」の構造ではないでしょうか。

山田真哉『さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学』(光文社新書)によれば、「さおだけ屋」という商売はないのだそうですね。



【867】
Re:「さおやー、さおだけー」の掛け声
 道浦俊彦
 - 05/5/30(月) 10:14 -
----
▼Yeemarさん:


>宮田章司氏〔寄席芸で物売りの声色を得意とする人〕の『江戸売り声百景』(岩波アクティブ新書2003)から、「や」のつくものを拾ってみます。「や」「屋」は原表記のままです。〔 〕内は私の補いです。


この本、買ったまま行方不明になっていて探していたのです!ありがとうございました!

>こう見てくると、i・jあたりは「AやB」という構造、hは「AやA'」という構造のようです。「たけやーさおだけ」も、「AやA'」の構造ではないでしょうか。


やはりそうですか!私もそうではないかと。ゆえに「さお屋」「竹屋」には疑問を持ったのです。

>
>山田真哉『さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学』(光文社新書)によれば、「さおだけ屋」という商売はないのだそうですね。


先日、家の近くを通った「さおだけ屋」は、
「物干し台も、各種ございます」
と拡声器で言っていました。この本を読んだのでしょうかね?その可能性はありますよね、ベストセラーだし。


辞書の語釈

【237】
辞書の語釈
 Yeemar
 - 04/7/9(金) 13:05 -
----
辞書の語釈を見て気づいたことを記したいと思います。「辞書にない語釈」ならば別スレッド「辞書にないことば」でも覆えるようですが、ここは、問題ある語釈とか、語釈の変遷とかいうことにまつわるスレッドというつもりです。

持つ
たまたま『集英社国語辞典』(第2版)を開いて「持つ」の項目を見ると、第1番目に
物を手に持って、離さないでいる。提げる。「荷物を――」「左手に本を――」
とあります。その「手に持って」が分からないから辞書を引くのではないか?

取る
どうも基本語の語釈があまいのではないか、という目つきでさがすと、「取る」の第4番目に
不要なものを取り除く。「草を―」「ふろに入って一日の疲れを―」
というのも、良いのだろうかと思われます。「取る」ということばを「取り除く」ということばで説明するのはゆるされるのでしょうか。



【241】
Re:辞書の語釈――「とる」「もつ」
 岡島昭浩
 - 04/7/10(土) 17:50 -
----
辞書の語釈は、説明しようとする語を使わず、出来るだけやさしい語で、ということが望まれますね。

私もたまたま机上にあった上田萬年『ローマ字引き国語辞典』(T4.4.24発行 T4.6.10 9版)で、

Motsu 持つ [自四] ながく,そのありさまを,つづける.久しく,たへる.―To wear, endure, last, bear.――[他四]1.手にとって,ささへる.はぢ(把持)する;所持する.―To have, hold.  2.もちゐる. 3.自分のものとする.有とする.―To owe, posess.  4.そなへ有する.所有する;所持する.―To have.  5.たもつ.まもる.―To keep.  6.うけもつ.たんにん(擔任)する.

「たもつ」「うけもつ」は、許されるところでしょうか。

Toru 取る [他四] 1.手にもつ.はぢ(把持)する.(執,把)―To take, hold, carry.  2.うばふ.だっしゅ(奪取)する;奪略する. 3.ぬすむ.せっしゅ(竊取)する. 4.ぶんどる.ろくゎく(鹵獲)する. 5.めしとる.とらへる.たいほ(逮捕)する;捕縛する. 6.とりあげる.ぼっしう(没収)する. 7.とりもちゐる.使用する.―To adopt.(以下略。37まであり)

「ぶんどる」「めしとる」「とりあげる」「とりもちゐる」……沢山出てきますね。



【242】
Re:辞書の語釈
 佐藤
 - 04/7/10(土) 19:34 -
----
▼Yeemarさん:
>辞書の語釈を見て気づいたことを記したいと思います。「辞書にない語釈」ならば別スレッド「辞書にないことば」でも覆えるようですが、ここは、問題ある語釈とか、語釈の変遷とかいうことにまつわるスレッドというつもりです。


以前、友人に教えてもらったのが、『明解国語辞典』(昭和18年初版)の語釈。

 つい-きゅう(0)[追及]ツヰキフ(名)おひおよぶこと。
 つい-きゅう(0)[追求]ツヰキウ(名)おひもとめること。
 つい-きゅう(0)[追究]ツヰキウ(名)おひきはめること。

あるいは有名な例で、どこかで読んで記憶にあったのかもしれません。コンパクトな辞典に多くの語を収載するので大変だとは思うのですが…… もちろん、昭和18年の社会情勢を考えれば、出版しただけで素晴らしいことかとも思います。現代のものは懇切な語釈になっています。



【849】
Re:辞書の語釈(アリバイ)
 Yeemar
 - 05/5/21(土) 10:49 -
----
「アリバイ」が「現場不在証明」(そこにいなかったことの証明)という意味ではなく使われている例です。「あとで言いわけに使うため、いいかげんに作った証拠。」という語釈でいいでしょうか。佐藤貴裕さんかどなたかがこの用法あることをご指摘になったと記憶しますが……
〔報告者は〕報告内容が聞き手に理解されようとされまいとどうでもいいと考えているらしい。舞台から会場のほうへ目を転じると、聴衆のほうも心得ているらしく、大方は鼻で舟を漕{こ}いだり、鼾{いびき}さえかいたりしている。〔略〕こんな時は、もしかしたら自分たち〔通訳者〕も、この会議が「国際的」なものであることのアリバイづくりのために雇われたのではないかと思ってしまう。(米原万里『不実な美女か貞淑な醜女{ブス}か』〔徳間書店1994.09〕新潮文庫 2003.03.30 8刷 p.253)




【850】
Re:辞書の語釈(補導)
 Yeemar
 - 05/5/21(土) 11:30 -
----
「補導」というのは、『三省堂国語辞典』第5版によれば「〔少年が〕まちがった ほうへ行かないように、忠告し指導すること。「―係・―歴・学生の―」」とあります。つまりは「教育・善導・訓導」などの類義語ですね。

ところが、ニュースでは「中学3年の少年らが逮捕、中学2年生が補導された。」などと、「検挙」の意味に使っています。もちろん、「検挙」も「補導」の一環でしょうが、本来の意味から考えれば、「中学2年生が教育された」とか「中学2年生が善導された」と言っているのと同じであり、おかしく感じます。補導の主たる部分は、検挙した時点以後に行われるものでしょう。

辞書に、「〔俗に、少年を検挙することの意で用いる〕」とでも添えておけばいいのかもしれません。

「補導」をなんとなく「捕導」と思っている人が多いということはないでしょうか。私も、不意に問われれば「捕導」と書くかもしれません。

ところで、次のような「補導」の使い方もあるようで、これは辞書にない語釈ではないでしょうか。
 突然話は変わるが、飼い犬を散歩の際に鎖に繋{つな}いで補導していた私は、自分が一方的に飼い犬の自由を束縛していると思っていたが、(米原万里『不実な美女か貞淑な醜女{ブス}か』〔徳間書店 1994.09〕新潮文庫 2003.03.30 8刷 p.307)



同音異義語

【847】
同音異義語
 Yeemar
 - 05/5/21(土) 7:58 -
----
橋梁談合問題で「鋼橋工事」という文字が新聞に出ていますが、耳で聞くと「公共工事」と区別できないだろうと思います。
 官公庁発注の橋梁{きょうりょう}(鋼橋)工事の入札をめぐり、二つの談合組織で03、04年度に幹事会社を務めた石川島播磨重工業など橋梁メーカー8社の大半が談合行為を認める方針であることが関係者の話で分かった。〔略〕 市場規模が年間約3500億円に上る鋼橋工事をめぐる過去最大級の談合事件に発展する。〔橋梁談合 8社の大半認める 公取委告発へ 受注調整を主導〕(「朝日新聞」2005.05.21 p.1)
NHKニュースおはよう日本 2005.05.21〔インターネット版音声で確認〕では、次のように言い直しています。
国土交通省が発注した鋼鉄製の橋の工事の入札をめぐって、談合が行われた疑いがもたれている問題です。




【848】
Re:同音異義語
 Yeemar
 - 05/5/21(土) 8:22 -
----
米原万里『不実な美女か貞淑な醜女{ブス}か』〔徳間書店1994.09〕新潮文庫 2003.03.30 8刷より、同音異義語の話題を。
そんなわけで、同音異義語が極めて多い日本語を商売道具の一つにしている通訳稼業{かぎょう}の宿命として、誤解を生まない言葉選びに細心の注意を払わなくてはならない。/ ある会議に出席していて、ベテランの英語通訳が「コウギョウ」と言って、すぐさま「カネヘン 金偏」とつけ加えたのに、いたく感動したことがある。「コウギョウ」には、工業も鉱業も興業もあるからだ。(p.92)

 さて、ある老人学シンポジウムで、当時はソ連であった国から長寿学の専門家が招かれて講演をした。一時間半におよぶ講演で、テーマは「ソウロウをいかに克服するか」。その通訳を依頼された私の友人は、無事その通訳をつとめ上げた〔中略〕「早老をいかに克服するか」というつもりで通訳していたのだが、その会場にいた百名近くの人々は、どうやら違う意味で受け取っていたということが、その〔主催者により〕文書化された訳文を見て、初めて分かったのだった。(p.93)



『砂の器』

【837】
『砂の器』
 岡島昭浩
 - 05/5/18(水) 17:23 -
----
ことば番組放送予定の一部や、誤植の一部で触れられた、都竹通年雄の「とだけ」については、新潮文庫の編集の方に一応連絡はしておきました。

小西いずみ「松本清張『砂の器』における「方言」と「方言学」」『都大論究』42号 2005.4

という論文を見ましたら、カッパノベルスから「とだけ」のルビが付けられている、ということでした。なお、小西氏は改版前の新潮文庫は見ておられないようです。

たしか、Yeemarさんが、『砂の器』における方言の話を書いてらしたと思うのですが、どこでしたっけ。

黒崎良昭「松本清張「砂の器」におけるズーズー弁の不思議」『園田学園女子大学論文集』38,2003.11

というのもあるそうです。



【840】
Re:『砂の器』
 Yeemar
 - 05/5/18(水) 21:49 -
----
▼岡島昭浩さん:
>たしか、Yeemarさんが、『砂の器』における方言の話を書いてらしたと思うのですが、どこでしたっけ。


方言の話というほどもない事ですが、

>ことば番組放送予定の一部


に少し書きました。黒崎氏・小西氏のご論文は、私の疑問にこたえてくれるかと思いますが、はたしていかが。



【845】
Re:『砂の器』
 岡島昭浩
 - 05/5/20(金) 23:44 -
----
▼Yeemarさん:
>黒崎氏・小西氏のご論文は、私の疑問にこたえてくれるかと思いますが、はたしていかが。


小西氏のものしか読んでいませんが、疑問を共有することになるのではないかと思います。


戦勝60周年

【820】
戦勝60周年
 道浦俊彦
 - 05/5/12(木) 5:11 -
----
5月9日、ロシアで対ドイツ戦勝60周年の式典が華々しく開かれましたが、疑問に思ったのは、
「なぜ50年ではなく60年なのか?」
ということです。私などの感覚では50年の方が「節目」だと思うのですが、何かロシアを始めとした欧米には「60年」を区切りと考えるようなものがあるのでしょうか?還暦?ではないですよね。
50年の時もこのような式典がロシアであったかどうかはわからないのですけど。単に10年ごとの式典なのでしょうか?それとも12進法、あるいは60進法との関連はあるのでしょうか?



【821】
Re:戦勝60周年
 面独斎
 - 05/5/12(木) 5:40 -
----
高知新聞社説より。

「10年前の50周年記念の式典もモスクワで行われた。」

http://www.kochinews.co.jp/0505/050508editor.htm



【827】
Re:戦勝60周年
 道浦俊彦
 - 05/5/16(月) 21:59 -
----
▼面独斎さん:
>高知新聞社説より。
>「10年前の50周年記念の式典もモスクワで行われた。」


そうだったのですか!じゃあ、特に60年を意識していないのでしょうか?
70年も80年も90年も、もちろん100年も、110年もやるのでしょうか?そこまで生きてないので、わかりませんが。

ただ、この高知新聞の中には、

>10年前の式典で軍事パレードには各国首脳も欠席した。ロシアがチェチェン
>の独立を抑える軍事介入を本格化させていたからだ。その情勢は大きく変わって>はいない。エリツィン政権を継いだプーチン政権は、旧ソ連圏への影響力を失う>まいと強権的な内外政策をとり続ける。


というふうに書かれています。
50周年の式典であるにも関らず、各国首脳は欠席したのですね。そしてチェチェンをめぐる情勢はその時と大きく変っていないにも関らず、今回の60周年は出席したのは、やはり50年より60年の方が重要視されているということとでは?
たまたまですかねえ・・・。



【832】
Re:戦勝60周年
 面独斎
 - 05/5/18(水) 6:28 -
----
>50周年の式典であるにも関らず、各国首脳は欠席したのですね。


式典には出席したが、式典の一部である軍事パレードには欠席した――と私は読みましたが……。



【834】
Re:戦勝60周年
 岡島昭浩
 - 05/5/18(水) 11:09 -
----
▼道浦俊彦さん:
>50年の時もこのような式典がロシアであったかどうかはわからないのですけど。単に10年ごとの式典なのでしょうか?それとも12進法、あるいは60進法との関連はあるのでしょうか?


西洋人は、われわれ日本人に比して、半ダースである6に「ちょうどよさ」を感じるようである、というような文章を、昔読んだ記憶があります。鈴木孝夫だったか、外山滋比古だったか。切手を買うとき、我々ならば五枚買うところを六枚買う、というような内容だったと思います。
それを思い出しました。



【835】
Re:戦勝60周年
 佐藤
 - 05/5/18(水) 12:51 -
----
▼岡島昭浩さん:
>西洋人は、われわれ日本人に比して、半ダースである6に「ちょうどよさ」を感じるようである、というような文章を、昔読んだ記憶があります。鈴木孝夫だったか、外山滋比古だったか。切手を買うとき、我々ならば五枚買うところを六枚買う、というような内容だったと思います。


柴田武先生ですね。「切手の五枚と六枚」(『日本語を考える』所収)。なにやら懐かしい。



【836】
Re:戦勝60周年
 岡島昭浩
 - 05/5/18(水) 17:06 -
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▼佐藤さん:
>▼岡島昭浩:

>>西洋人は、われわれ日本人に比して、半ダースである6に「ちょうどよさ」を感じるようである、というような文章を、昔読んだ記憶があります。鈴木孝夫だったか、外山滋比古だったか。切手を買うとき、我々ならば五枚買うところを六枚買う、というような内容だったと思います。

>
>柴田武先生ですね。「切手の五枚と六枚」(『日本語を考える』所収)。なにやら懐かしい。


おお、佐藤さん、どうもありがとうございます。実は、「ひょっとして柴田武かも」と書きかけて、なぜそう思うのだろうという自分の感覚が全く説明できないものだったので、消したのでした。

御情報をいただき、すごくすっきりした気分です。



【838】
Re:戦勝60周年
 道浦俊彦
 - 05/5/18(水) 17:24 -
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▼岡島昭浩さん:
>西洋人は、われわれ日本人に比して、半ダースである6に「ちょうどよさ」を感じるようである、というような文章を、昔読んだ記憶があります。鈴木孝夫だったか、外山滋比古だったか。切手を買うとき、我々ならば五枚買うところを六枚買う、というような内容だったと思います。
>それを思い出しました。


あ!確か鈴木孝夫です!私もそんな気がしてきました!確認してみます!



【839】
Re:戦勝60周年
 道浦俊彦
 - 05/5/18(水) 17:29 -
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>▼岡島昭浩さん:

>>西洋人は、われわれ日本人に比して、半ダースである6に「ちょうどよさ」を感じるようである、というような文章を、昔読んだ記憶があります。鈴木孝夫だったか、外山滋比古だったか。切手を買うとき、我々ならば五枚買うところを六枚買う、というような内容だったと思います。
>>それを思い出しました。

>
>あ!確か鈴木孝夫です!私もそんな気がしてきました!確認してみます!



すみません・・・最後まで読んでから書けばよかった・・・柴田武さんですね。読んでみます。ありがとうございました。



【841】
Re:戦勝60周年
 satopy
 - 05/5/18(水) 22:12 -
----
▼岡島昭浩さん:
>>柴田武先生ですね。「切手の五枚と六枚」(『日本語を考える』所収)。なにやら懐かしい。

>
>おお、佐藤さん、どうもありがとうございます。実は、「ひょっとして柴田武かも」と書きかけて、なぜそう思うのだろうという自分の感覚が全く説明できないものだったので、消したのでした。


いや、混線されるのも分かります。1980〜90年ごろって、日本文化論、比較文化論みたいなものがけっこう流行ってましたよね。何か一語で象徴して語らせようというのから始まって(大和魂・間・甘え…… ちょっと懐かしい)。「切手の五枚と六枚」もそのころが初出だったように思います。



【844】
Re:戦勝60周年
 NISHIO
 - 05/5/19(木) 17:45 -
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▼岡島昭浩さん:
>西洋人は、われわれ日本人に比して、半ダースである6に「ちょうどよさ」を感じるようである、というような文章を、昔読んだ記憶があります。鈴木孝夫だったか、外山滋比古だったか。切手を買うとき、我々ならば五枚買うところを六枚買う、というような内容だったと思います。


洋食器は6客揃え、和食器は5客揃えが基本ですね。奇数を吉とする陰陽思想の影響でしょうか。仏教では「六」も重要な数のようですが。


感動詞

【842】
感動詞
 Yeemar
 - 05/5/19(木) 1:10 -
----
なんというスレッドを立てればいいのかよく分かりませんので、「感動詞」としておきます。

道浦俊彦さんの「平成ことば事情」ことばの話2072の「『ごくせん』と『こるああっ』」で、漫画「ごくせん」の主人公が「こるああっ」と怒ることについて書かれています。「2ちゃんねる」では半角カタカナの「ゴルァ」ですね。

山口瞳『江分利満氏の優雅な生活』(新潮文庫 平成15年8月5日41刷 p.68)では、「ク、ラアー」というのが出て来ます。
松本上等兵はクスッと笑って、「おい、江分利よ、初年兵さんよ、おめは片目がつぶれねえのかよ」江分利は答えない。「なんとか言わねえかよ」江分利は目の前の蟻{あり}の動きを追った。「ク、ラアー(コラ!)」ときた。笑いからすぐ激怒に変る軍隊演技というものがある。
おそろしさを感じさせるため、「こら」をさまざまに変化させるのですね。



【843】
Re:感動詞
 道浦俊彦
 - 05/5/19(木) 15:26 -
----
▼Yeemarさん:
>おそろしさを感じさせるため、「こら」をさまざまに変化させるのですね。


そういう意味では、外国語や擬音語みたいに、聞き取りようによって、表記が変るとも言える気がしますね。


オヤジギャグの初出は?

【828】
オヤジギャグの初出は?
 道浦俊彦
 - 05/5/16(月) 22:03 -
----
「オヤジギャグ」という言葉は、『日本俗語大辞典』(米川明彦編)だと1998年版の『現代用語の基礎知識』の用例が出ていますが、もっと古くから使われていたような気もします。いつ頃から使われていたのでしょうか?どなたかご存知の方はいらっしゃいませんか?



【829】
Re:オヤジギャグの初出は?
 Yeemar
 - 05/5/16(月) 23:44 -
----
▼道浦俊彦さん:
>「オヤジギャグ」という言葉


とりあえず、新聞の用例ですが、「朝日新聞」1990.01.23 p.18に中尊寺ゆつこさんの談話が載っています。
「コースに出る時は、おじさんの中に紅一点、なんてことも。オヤジギャグをとばして、昼間からビール飲んで……。“オヤジギャル”って、ゴルフ場で思いついたんです」
ある範疇の人々を「オヤジ」というくくり方をするのは、そういえば、このころからかなあ、と思いますが、いかがでしょうか。



【833】
Re:オヤジギャグの初出は?
 道浦俊彦
 - 05/5/18(水) 7:51 -
----
▼Yeemarさん:
>とりあえず、新聞の用例ですが、「朝日新聞」1990.01.23 p.18に中尊寺ゆつこさんの談話が載っています。
「コースに出る時は、おじさんの中に紅一点、なんてことも。オヤジギャグをとばして、昼間からビール飲んで……。“オヤジギャル”って、ゴルフ場で思いついたんです」
ある範疇の人々を「オヤジ」というくくり方をするのは、そういえば、このころからかなあ、と思いますが、いかがでしょうか。


やはりそうでしたか!私も中尊寺ゆつこさんの「オヤジギャル」から派生したのではないかと思っていました。それだと1987〜8年頃にさかのぼれるのではないかと思っていました。語感も似ているし。この記事を読むと、「オヤジギャル」よりも古いかもしれませんね。


せーの#

【831】
せーの#
 岡島昭浩
 - 05/5/17(火) 0:48 -
----
せーのの続き。

江国滋『男女驚愕』旺文社文庫に「いっせのせ」という文があるようです(旺文社文庫目録による)


親が…… #

【830】
親が…… #
 Yeemar
 - 05/5/16(月) 23:58 -
----
親が……
の続きです。

自分の親のことを人に言うとき「親が」と表現することに違和感を抱いていましたが、あまり、世間ではあまり話題になっていないようです。

ただし、道浦俊彦さんが旧会議室の「自分のことを「女性」「男性」」で「「ボクの父親が」「私の母親が」と「親」をつけて言う傾向」を指摘されています。

西谷元夫『よけいなお世話』(有朋堂 1996.01.31)p.29「親が〜」に、この語をとがめている記述を見つけました。
〔新聞の29歳の女性歌手の談話に触れ〕このように「父親」を「親」「父親」「お父さん」と言っている。他人に対して両親を「親」というのは最近の若い人たちの傾向らしい
この件に関し、この著者の感覚と私の感覚は同じであるようです。


辞書の使用証言(戦前まで)

【414】
辞書の使用証言(戦前まで)
 佐藤
 - 04/9/30(木) 0:15 -
----
「私はこういう辞書を使っていた(持っていた)」などという例がありましたらお教えください。あるいは逆に「そんな辞書は知らん!」というのも。その時代その時代で、どんな辞書が人々にどのように受け取られていたかが分かるものなら何でもありがたいです。実体験がいいのですが、それに準ずる自伝的な小説でもよいと思います。たとえば、中野重治からの連想で『梨の花』。なぜか辞書の叙述が長く続くのですが、とりあえずはちょっとだけ。某F氏より御教示いただいた例です。
「……カナザワのジリン、持ってる……」
「僕のは、オオツキのゲンカイさ……」
 いかにも自慢たらしくそれが良平に聞えた。「ジリン」、「ゲンカイ」、それが国語辞書のことなのは良平にもよくわかった。その前に、何やらちょっと口々にいったものがあって、もう忘れたがそのことでそれはわかっていた。そしてたぶん、「オオツキ」、「カナザワ」というのは、辞書をこしらえた人の名だろうということもわかっていた。しかしそんなものは、良平は見たこともない。本の名を聞いたこともない。(略)大人のほうで買って子供にくれたのだったかも知れない。(略)子供の教育ということを、その子供というのは良平の同級生のことなのだが、家のもののほうで考えていてやるといったふうな家庭が、福井の町にはあるのだな……(筑摩書房『中野重治全集』第六巻より)




【415】
Re:辞書の使用証言 大宅壮一
 岡島昭浩
 - 04/10/2(土) 15:31 -
----
大宅壮一『青春日記(上)』中公文庫。当時、茨城中学の一年生から二年生。
(大正四年)十月二十七日 水曜日 晴
……帰途虎谷にて先日父に頼みて許を受けし『漢和大辞林』を購い実に嬉し。僕が今迄持てる辞書等とは比較にならず……
十一月三十日 火曜日 晴
……帰途虎谷で銭を払った。今月は『漢和大辞林』を買ったので約二円あった。

『漢和大辞林』は郁文舎のものでしょうか。また、
(大正五年)四月三日 月曜日 晴
……大阪の西村直之助君来る。雑談に時を移す。『作歌新辞典』『日記文練習法』の二書を貸して『新世界』の三・四月号を借る

『作歌新辞典』は、金子薫園のものでしょう。四月三十日に返却記事あり。四月十七日の記事、
 漢文の時間、読本附属字引の不必要より起りて予習の利益、方法を説き、殊に復習の易くて得る所多きを教える。……教室を出づれば寄気君は無言にて我に小さき本を握らせたり。見れば漢文の字引なり。先生の言に感じたるならん。……夜、漢文の復習をなしついでに次の頁を読みしに知らぬ字あり。大字引を引くもじゃまなり。ふと此の時目に映りし寄気君より預りし字引なり。早速手を取らんとせしに思わずはね返りたり。我がこれを使えば寄気君を欺きて盗用せるなり。此に於て我はこれを絶対に開かざるように封せり。




【426】
Re:辞書の使用証言(戦前まで) 林芙美子
 岡島昭浩
 - 04/10/4(月) 21:45 -
----
『林芙美子随筆集』岩波文庫から「生活」。昭和十年前後の随筆らしい。

書いていて一番|厭《いや》なのは、あふれるような気持ちでありながら、字引を引いて一字の上に何時までも停滞していることが、一番なさけない。私の字引は、学生自習辞典と云うので、これは、私が四国の高松をうろうろしていた時に七拾五銭で買ったもの、もう、ぼろぼろになってしまっている。何度字引を買っても、結局これが楽なので、字が足りないけれどこれを使っている。(p158)




【438】
Re:辞書の使用証言 青空文庫で"言海"
 佐藤
 - 04/10/5(火) 22:45 -
----
9件ありました。こちらから



【441】
Re:辞書の使用証言 言海の不使用
 岡島昭浩
 - 04/10/7(木) 0:31 -
----
森鴎外の『鸚鵡石』(参照

楽文館は僕の書く字を直さうとするのだから言海位は開けて見たつて好いではないか。




【442】
Re:辞書の使用証言 "言海"
 岡島昭浩
 - 04/10/7(木) 0:47 -
----
直接ではないのですが、メモまで。
丸谷才一『文章読本』中公文庫の「第六章 言葉の綾」から。

北原白秋が暇さへあれば『言海』をのぞいてゐたといふのはよく聞く話だけれど、あれだつて、上代歌謡から『隆達小歌集』『松の葉』まで、よく親しんでゐたからこそ霊験あらたかなことになる。(p130)


白秋が言海を食べたというのは、辞書を食べた人々



【443】
Re:辞書の使用証言 青空文庫で"言海"
 岡島昭浩
 - 04/10/7(木) 0:53 -
----
▼佐藤さん:
>9件ありました。こちらから


青空文庫には、漱石の『明暗』もはいっているのですが、なぜかひっかかりません。
筆を擱(お)いた彼女は、もう一遍自分の書いたものを最初から読み直して見た。彼女の手を支配したと同じ気分が、彼女の眼を支配しているので、彼女は訂正や添削(てんさく)の必要をどこにも認めなかった。日頃苦にして、使う時にはきっと言海(げんかい)を引いて見る、うろ覚えの字さえそのままで少しも気にかからなかった。てには違のために意味の通じなくなったところを、二三カ所ちょいちょいと取り繕(つくろ)っただけで、彼女は手紙を巻いた。




【444】
Re:辞書の使用証言 青空文庫で"言海"
 岡島昭浩
 - 04/10/7(木) 0:57 -
----
千曲川のスケッチも、ひっかかりませんね。

近所での物識(ものしり)と言われている老農夫である。私はこの人から「言海」のことを聞かれて一寸驚かされた。




【445】
Re:辞書の使用証言 青空文庫で"辞林"
 佐藤
 - 04/10/7(木) 20:26 -
----
岡島さん、いろいろ御指摘いただきありがとうこざいます。青空文庫のデータは、パソコン雑誌の付録として収録されることもありますね(最近買ってないので分かりませんが)。それでGREP懸ける方が正確かもしれませんね。

といいつつ、つい便利なのでweb上で。「辞林」は4例のみ。うち2例が太宰。



【476】
Re:辞書の使用証言 青空文庫で"辞林"
 岡島昭浩
 - 04/10/17(日) 20:10 -
----
最近、「Namazu による『青空文庫』全文検索システム」というのが、始まりました。そこによれば、
宮本百合子「獄中への手紙 一九三八年(昭和十三年)」に、「広辞林」が見えます。

なお、辞書に「辞林」が入っていないようなので、申請しておきました。



【825】
Re:辞書の使用証言(戦前まで) 辞林
 岡島昭浩
 - 05/5/15(日) 2:28 -
----
安藤鶴夫「辞書について」(旺文社文庫『ごぶ・ゆるね』p152)
金沢庄三郎の“辞林”であった。少し、細長い辞書で、その時の表紙の手ざわりさえおぼえている。鬼の首をとったという形容が、そのままぴったりする喜びのようであった。それにその1冊〈ママ〉の辞書を持ったために、わたしは天下の秀才になったような、誇りかな気持ちになった。

(「辞書」昭和39年2月号)


blog

【732】
blog
 岡島昭浩
 - 05/2/20(日) 22:15 -
----
blogというのが流行りだして、暫く経ちますが、掲示板との違いはなんだろうと思っていて、やはりトラックバックであろうと思いました。

トラックバックは、引用・被引用の幸福な関係が築けるかも知れません。

日本語史資料の連関

blogのサービスが大容量化してきました。
うわづらをblogで



【824】
Re:blog
 岡島昭浩
 - 05/5/14(土) 14:52 -
----
ASAHIネットが会員向けに、blogサービスを始めたので、作ってみました。

http://kokugogaku.asablo.jp/blog/


本の電子化

【121】
本の電子化
 岡島昭浩
 - 04/5/30(日) 22:07 -
----
http://www.rr.cs.cmu.edu/mbdl.htm
The Million Book Digital Library Project
だそうです。



【122】
Re:本の電子化
 Yeemar
 - 04/5/31(月) 12:21 -
----
100万冊の本を電子化して自由に閲覧、検索ができるようにしようというプロジェクトで、米カーネギー・メロン大学が主唱しているということですね。

すべての書物は電子化されるべきである。そんなことは不可能だという人のために、まず2005年までに100万冊を電子化してみせる。

「100万冊と言やあ、本学の総合図書館に匹敵する規模ですよ」というのですが、著作権問題はどう解決されるのでしょうか。ざっと読むと、「紙の本なんてすぐ市場から消えてしまうのだから、著作権なんて持っていてもしかたがない、デジタル化に提供したほうが得ですよ」というようなことを言っているようです。つまりはまだ著作権問題は解決されていないということと思います。しかし、この鼻息からすると早晩解決されてしまうのかも知れません。

日本語の本もこのような感じで何百万冊がオンラインで自由に読めるようになるとどうなるか。書店や著者の対応はともかくとして、日本語研究はらくになります。

しかし、「一般に電子テキストが流通していないものを私的にテキスト化し、独自のアーカイブスを作りたい」などと思っている私にとっては、がっくり来る話です。しこしことe.Typist ver.9.0(最近これにかえたところ、すこぶる性能よくびっくり)を操作してちびちびと校正をしているのがばかばかしくなります。

OCRソフトの話は旧会議室の「OCR」で議論されていました。「「さようなら」はいつ使いますか?」でもふれました。



【474】
Re:本の電子化
 岡島
 - 04/10/16(土) 18:39 -
----
近代デジタルライブラリーが、約700冊追加、ということですが、何が追加されたのか わからないのが、やや、残念です。
http://kindai.ndl.go.jp/news.html



【622】
Re:本の電子化 Google
 岡島昭浩
 - 04/12/27(月) 16:24 -
----
Googleが、米国の図書館の資料を電子化するのだそうです。

「1500万冊以上の書籍や文書をデジタル化」とのこと。



【752】
Re:本の電子化 『安藤昌益全集』
 佐藤
 - 05/3/3(木) 17:18 -
----
『安藤昌益全集』「資料篇五上」の付録が「CD-ROM版 安藤昌益全集(全文テキスト篇)」。
http://www.ruralnet.or.jp/zensyu/syoeki2.htm



【753】
Re:本の電子化 「戸坂潤文庫」
 佐藤
 - 05/3/3(木) 17:27 -
----
戸坂潤文庫。既知の情報かもしれませんが。
http://pfeil.hp.infoseek.co.jp/



【769】
Re:本の電子化 国立公文書館
 岡島昭浩
 - 05/3/23(水) 16:04 -
----
国立公文書館で、4月から180万画像が無量公開されるそうです。
http://news.www.infoseek.co.jp/topics/society/history.html?d=22yomiuri20050322i415&cat=35&typ=t

国立公文書館のページにはまだ、その情報はないようです。ただ、官房長官に提出した、と言う報告書はあります。

「歴史上重要な資料」を撰んで載せるらしいのが、やや気がかりですが。

内閣文庫の古典籍類で載せられるのは、どのようなものでしょうかね。



【770】
Re:本の電子化 国立公文書館
 岡島昭浩
 - 05/3/25(金) 1:05 -
----
▼岡島昭浩さん:
>国立公文書館で、4月から180万画像が無量公開されるそうです。


>国立公文書館のページにはまだ、その情報はないようです。


出ました。
典籍類は無い模様です。



【823】
Re:本の電子化 国際子ども図書館
 岡島昭浩
 - 05/5/14(土) 12:04 -
----
これ、知りませんでした。

http://kodomo4.kodomo.go.jp/web/ippangz/html/TOP.html
国際子ども図書館 児童書デジタルライブラリー


上杉謙信

【146】
上杉謙信
 岡島昭浩
 - 04/6/13(日) 23:00 -
----
「掘った芋はどこに」の、上杉謙信の話。「耳で聞いたとおりに発音すればよいのか」にも関連。

石山輝夫『英語辞書活用術』講談社オレンジバックス(s59.7.10)に、
むかしからよくいわれることだが、アメリカのPhikadelphia市を、カタカナのフィラデルフィアといっても絶対に通じない。かわりに古豆腐屋《ふるどうふや》といえば通じる。(中略)また、ロンドンのKensingtonをカタカナ語のとおりにケンジントンといってもわかってもらえない。かわりに上杉謙信の謙信《けんしん》といえば通じるという。これもよく聞く話である。
 笑い話だろうが、このことを聞いた日本人が、ロンドンへ行ったとき、謙信というつもりが、つい口がすべって信玄《しんげん》(武田信玄)といってしまい(後略)

とありました。(43頁)

他に、「Not at all」を「鉈取る」、「Come again」を「鎌源」なども書かれています(56-57頁)



【157】
Re:上杉謙信
 畠中敏彦
 - 04/6/17(木) 18:08 -
----
▼岡島昭浩さん:
>石山輝夫『英語辞書活用術』講談社オレンジバックス(s59.7.10)に・・・


石山輝夫先生に、
私がサラリーマン時代、「ビジネス英文の書き方」について、数回教わりました。
既成にとらわれない大変ユニークな講義で、退屈しなかったのを覚えております。
「英語辞書の和訳は、誤りが多いから参考程度に」と、よく言っておられました。

すみません、本題と関係なくて。



【185】
耳からの英語(Re:上杉謙信)
 岡島昭浩
 - 04/6/28(月) 11:34 -
----
谷譲次『テキサス無宿』に、いくつかあります。現代教養文庫で見ているのですが、この本が、いつのものか、などの解説がありません。著者の没が1935年ですから、それ以前ということになり、本文冒頭には、「一九二〇年」とあり、その時代の話です。

サンドウィッチ――これがめりけん人が鼻声でいうとセミチと聞える。簡単でいい。(31頁)

先方が|御めんなさい《ベッグ・パアドン》って言ったら、おまえさんなんと挨拶なさる?」
「Certainly! って。」
「そうそう、そうだろ、セツニって言うだろ。見えねえな、そのセツニは日本語の切にじゃねえか。言い方もこころも同じこった……(81-82頁)

141頁にもいくつか。「弗府《フィラデルフィヤ》が古豆腐屋《フルドウフヤ》」「what's the matter? がスマラ?」など。

古豆腐屋の古例といえましょうか。

青空文庫には『踊る地平線』がはいっていますが、これには何かあるでしょうか。
http://www.aozora.gr.jp/index_pages/person272.html



【309】
Re:上杉謙信
 岡島昭浩
 - 04/8/20(金) 14:17 -
----
West Kensington の上杉謙信は、城生佰太郎・松崎寛『日本語「らしさ」の言語学』(講談社1995.1.9)にもありました(「武田信玄」と間違えたのは無し)。「揚げ豆腐」もあって、こちらは「焼き豆腐」と間違えたと。



【408】
揚げ豆腐(Re:上杉謙信)
 岡島昭浩
 - 04/9/27(月) 21:18 -
----
石射猪太郎『外交官の一生』中公文庫のp94。
降りたいときには、“揚げ豆腐ひや”(I get off here の意)と言えば車掌がおろしてくれますしね」と老夫人は笑うのであった。

ほかにも、「ボルチモア」が「ボルモル」など、耳から英語の例あり。

昭和25年に読売新聞社から刊行されたものに、「新たに発見された原稿を追加し」昭和47年に太平出版社から刊行されたのが、親本とのことです。著者は昭和29年没。



【822】
Re:上杉謙信
 岡島昭浩
 - 05/5/14(土) 0:22 -
----
比較的古い例。
和田垣謙三の『兎糞録』大正2.7.14発行(大正2.12.2 16版による)のp253、
West Kensington と云ふ英国の地名を「上杉謙信殿」と覚ゆる等は、類似連想を基礎とする一種の記憶法にして斯かる例は他にも多し。



役割語辞典見出し候補一覧

【819】
役割語辞典見出し候補一覧
 岡島昭浩
 - 05/5/9(月) 23:00 -
----
http://www.let.osaka-u.ac.jp/~kinsui/zyugyou/handaigakubu05.htm
金水敏氏による「役割語辞典見出し候補一覧」(授業資料)があります。

お目通しの価値があると思います。


「散灰・遺灰」によせて # ケイソン(鮭鱒)

【815】
「散灰・遺灰」によせて # ケイソン(鮭鱒)
 Yeemar
 - 05/5/7(土) 2:41 -
----
「散灰・遺灰」によせて
の続きです。とりわけ、「ケイソン」(鮭鱒)に関してです。

武田泰淳の「ひかりごけ」に出てきました。
 漁業の話の中に、ときどき「ケイソン」という単語がまじるのを、私は急には理解できませんでした。
ケイソンだけを相手にしていると、漁業も不安定ですが、ここではさいわいコンブやイカなどもありますから」
「ですから、ケイソンばかりに重点をおかずに、牧畜も奨励するようにしています」
 ケイソンとは、「鮭鱒」の漢音でした。(武田泰淳「ひかりごけ」〔1954年発表〕『北海道文学全集16』立風書房 1981 p.38 下l.1)
本文は全集や文庫本によったほうがよかったのでしょうが、たまたま目にした本を引用しました。

奇しくも、「言語生活」の例とわずか1年違いです。

一方、私が目にしたと思った「鰹鮪」を「けんゆう」と読む例は、ほかにいっこうに目にせず、しかも字音としてもおかしいようなので、目の迷いか、それとも……と気になったままです。


ディスクジョッキーが使う「世界観」#

【814】
ディスクジョッキーが使う「世界観」#
 岡島昭浩
 - 05/5/7(土) 0:29 -
----
ディスクジョッキーが使う「世界観」で言及されていたと思われる用法に、3年を経てようやく触れることが出来ました。

ラジオで、「この曲の世界観は……」というようなことを歌い手らしき人がいっていました。「この曲の表している世界は……」というような意味合いのようでした。

「この曲の世界観は切ないんです」だったかな、たしか。


JEUGIYA #

【138】
JEUGIYA #
 UEJ
 - 04/6/8(火) 0:00 -
----
JEUGIYAの続きです。

島津製作所の英語名は「Shimadzu」となっています。
「しま」ではなく「しま」であることを意識しているのでしょう。
ローマ字で書くと一文字違いとなってしまう「清水(Shimizu)」と区別したいという意図もあるかもしれません。



【140】
Re:JEUGIYA #
 Yeemar
 - 04/6/8(火) 18:31 -
----
マガジンハウス社発行の雑誌(隔月刊)の「ku:nel[クウネル]」(ホームページ)は、「食う寝る」を 発音記号で書いたようなタイトルですが、日本語ふうに[ku:neru]でないので、これはJEUGIA(JEUGIYAに非ずとのこと)やmazda、Shimz(hとiの合字)、NISSAYなどと同様、英語発音を意識した例に加えられるでしょう。



【142】
Re:JEUGIYA #
 UEJ
WEB
 - 04/6/10(木) 23:30 -
----
コカコーラ社のウーロン茶の商品名「shinoa」は
フランス語「chinois」をローマ字で表記したものです。

このように西洋の単語をローマ字風に表記しているブランドあるいは店の名前を
他にも最近2、3見かけたのですが、メモを取るのを忘れていました。

新しい傾向でしょうか。



【399】
Re:JEUGIA #
 Yeemar
 - 04/9/25(土) 1:25 -
----
佐藤さんがご指摘の「mizkan」も。

「母音がないのが気になる」とのことですが、「mizukan」ならば「水缶」と読みそうです。「mizkan」はドイツ語ふうならミツカンと読めますね。「mazda」(マツダ)は拝火教の神mazdaにもちなむそうですが、これは何語ふうでしょうか。

マガジンハウス「ku:nel」(クウネル=食う寝る)という雑誌あり。英語ふうの発音記号のタイトル。



【403】
Re:JEUGIA # 「mizkan」
 佐藤
 - 04/9/26(日) 2:04 -
----
▼Yeemarさん:
>佐藤さんがご指摘の「mizkan」も。


こちらでしたね。誘導方、痛み入ります。

>「母音がないのが気になる」とのことですが、「mizukan」ならば「水缶」と読みそうです。


んん、日本語一般のありようとして母音がないのが気になる、つまりは母音を省いた理由が知りたい、というのが主なんです。ですから「水缶」の字面を見て少々びっくり。鯖の水煮の缶詰を連想。

>「mizkan」はドイツ語ふうならミツカンと読めますね。


なるほど。それを頼りに(?)母音省略に踏み切ったのかもしれませんね。大文字で始めれば趣旨も明らかですが、とげとげしい形(M)を嫌ったか。

>マガジンハウス「ku:nel」(クウネル=食う寝る)という雑誌あり。英語ふうの発音記号のタイトル。


この手の表記を見ると一世を風靡したブランド[ix:iz]を思いだします。歳がばれますね。



【404】
Re:JEUGIA # 「ixi:z」
 Yeemar
 - 04/9/26(日) 21:09 -
----
▼佐藤さん:
>この手の表記を見ると一世を風靡したブランド[ix:iz]を思いだします。歳がばれますね。


そのイクシーズを思い出そうとして、思い出せませんでした(表記は[IXI:Z]ですね)。

これが[iksi:dz]でないのはおかしい、と、どなたかが論難されていたのを読んだ記憶があります。何で読んだのか……と調べてみると、[ix:iz]関連のひとつは佐藤さんのサイトでした(気になることば20000131「音声記号の認知度」)。

もっと強い調子で「これは明らかな誤りである。これではせいぜい[イヒーズ]としか読めない。」と批判するのは「NICK 日本国際青年クラブ関西」の「編集長の独り言」。

「イヒーズとしか読めぬ」という意見を書籍か何かで読んだ記憶があるのですが、思い出せません。このサイトだったとは思えません。マーク・ピーターセン氏とかそのあたりだったか? 折々にメモは取れども、欲しと思うもののみなどか漏らしつるらん。



【405】
Re:JEUGIA # 「ixi:z」
 佐藤
 - 04/9/26(日) 23:29 -
----
▼Yeemarさん:
>そのイクシーズを思い出そうとして、思い出せませんでした(表記は[IXI:Z]ですね)。


ああ、大文字でしたか。失礼しました。

>これが[iksi:dz]でないのはおかしい、と、どなたかが論難されていたのを読んだ記憶があります。何で読んだのか……と調べてみると、[ix:iz]関連のひとつは佐藤さんのサイトでした(気になることば20000131「音声記号の認知度」)。


んん、論難とまでは…… 「気になる」くらいかな。



【429】
Re:JEUGIA # 「ixi:z」
 岡島昭浩
 - 04/10/5(火) 10:41 -
----
▼Yeemarさん:

>「イヒーズとしか読めぬ」という意見を書籍か何かで読んだ記憶があるのですが、思い出せません。


新潮の『最新日本語読本』での対談で丸谷才一氏が発言しているのを、見かけました。
文庫本では114頁。これから出かけますので、引用はご容赦を。



【434】
Re:JEUGIA # 「ixi:z」
 Yeemar
 - 04/10/5(火) 21:30 -
----
▼岡島昭浩さん:

>新潮の『最新日本語読本』での対談で丸谷才一氏が発言しているのを、見かけました。


ありがとうございます。雑誌増刊のほうを持っていますが、いざというときに思い出さないのでは、本棚の肥やしです。こういうものもテキスト化すべきか、悩みます。やはり、本をばらしてオートドキュメントフィーダでOCRしかないのか……
中村〔雄二郎〕 最近、CI(コーポレイト・アイデンティティ)、企業イメージ統合戦略というのかな、そのせいでむやみに社名をカタカナにしたり横文字にしたりしていますね。
〔略――「シーコム」「エス・バイ・スル」「マクロス」「トキメック」「エル カクエイ」「エクソン」「セゾングループ」「セゾン・ミュージアム」(SAISONとSEZON)などの例が出て〕
それから、マツダのクルマの「アンフィニ」というのも、すごいね。
井上〔ひさし〕 意味もわからない。おまけに文字は発音記号になっているんですね。
丸谷〔才一〕 他にもあったね。「イクシーズ」だったかな、あれも正式の発音記号の使い方じゃない。
中村 文房具のメーカーでしたっけ。
井上 そうじゃないんですか。
丸谷 あの発音記号だったら、イーヒーズになっちゃう。
〔このあと、「スバル」(自動車・雑誌名)の話。以上 p.68-69〕
ネットオークションに出品されている「アンフィニ」後部の写真を目視して確認したところ、フランス語の発音記号そのまま(ただし[ ]はなし)ですね。



【435】
Re:JEUGIA # 「ixi:z」
 Yeemar
 - 04/10/5(火) 21:33 -
----
正誤
×「エス・バイ・スル」 ○「エス・バイ・エル」



【436】
Re:JEUGIA # 「ixi:z」
 岡島昭浩
 - 04/10/5(火) 22:00 -
----
▼岡島昭浩さん:
>新潮の『最新日本語読本』での対談で丸谷才一氏が発言しているのを、見かけました。
>文庫本では114頁。

〈座談会〉名前のつけ方教えます
丸谷才一・中村雄二郎・井上ひさし

親本(新潮四月号臨時増刊 平成4.4.20)ではp69

中村 マツダのクルマの「アンフィニ」というのも、すごいね。
井上 意味もわからない。おまけに文字は発音記号になっているんですね。
丸谷 他にもあったね。「イクシーズ」だったかな、あれも正式の発音記号の使い方じゃない。
中村 文房具のメーヵーでしたっけ。
井上 そうじゃないんですか。
丸谷 あの発音記号だったら、イーヒーズになっちゃう。




【437】
Re:JEUGIA # 「ixi:z」
 岡島昭浩
 - 04/10/5(火) 22:02 -
----
と、Yeemarさんとダブってしまいました。



【496】
Re:JEUGIA # 「ixi:z」
 岡島昭浩
 - 04/10/24(日) 21:49 -
----
『言語生活』347(1980.11)p83の「目」。沢木幹栄氏の報告により、ありました。

「目子」によるコメントとして、「かなで表すとイヘィーズとでも書くか」

単行本では473ページ。



【804】
Re:JEUGIA #
 Yeemar
 - 05/4/26(火) 10:30 -
----
「ku:nel」に似た誌名で、「kraso[クラソ]」(フェリシモ)、「ano:ne[アノ:ネ]」(同)というカタログ誌があります。

「クラソ」は「かわいい雑貨と暮らしのカタログ」、「アノ:ネ」は「こどものおしゃれおかいものカタログ」。

カタカナの中で長音を「:」とするのはめずらしい。「アノーネ」と書くと「へんな外国人ことば」のようになってしまうので「アノ:ネ」となったのでしょうか。いずれにせよ、発音すればおなじです。「アーノネ」とすれば高勢実乗になります。

なお、フェリシモでは「Tatte[タッテ]」、「kus・kus[クス クス]」というカタログを計画中のようです。前者は「ベビーとママのおしゃれ服うんぬん」とあるので、「立って」から、後者は「家族で記憶に残る経験をしよう!」とあるので、笑い声からでしょうか。



【805】
Re:JEUGIA #
 道浦俊彦
 - 05/4/26(火) 19:15 -
----
「フェリシモ」という通信販売の会社には、以前取材に行きましたが、そのときは「左利きの人専用グッズ」についての取材でした。
担当の人や会社の雰囲気は、みんな若くていろいろ自由な発想で、楽しく仕事をしているなぁという感じでしたよ。おそらくネーミングにも、そういう「遊び心」が反映されているのではないでしょうか。


辞書を食べた人々

【423】
辞書を食べた人々
 岡島昭浩
 - 04/10/4(月) 14:44 -
----
佐藤さんが気になることば39にお書きの、辞書を食べる話、ここにもありました。

小林信彦『おかしな男 渥美清』(新潮文庫2003.8.1)の「対談 渥美清と僕たち」(小沢昭一と。「波」2000.4月号より)から。
小沢 私は台詞の覚えが悪い方ですから、沢村貞子さんによく叱られるんです。「(古川)緑波《ロッパ》さんは単語を覚えようとして、辞書を端から食べたんだ。食べると覚えられるんだから、あんたも台本食べなさい」って。(p474)




【424】
Re:辞書を食べた人々
 佐藤
 - 04/10/4(月) 16:33 -
----
▼岡島昭浩さん:
>佐藤さんが気になることば39にお書きの、辞書を食べる話、ここにもありました。


御教示ありがとうございます。私のところからのリンク先が消えたようなので、別のところをリンクします。朝河貫一のほか西依成斎にも言及するので(その節はお世話になりました!)便利かと思います。

http://www.21ccs.jp/soso/gyakujun/gyakujijunji_01.html




【440】
Re:辞書を食べた人々
 岡島昭浩
 - 04/10/6(水) 22:35 -
----
『60年代 ことばのくずかご』から。

彼〔白秋〕の少年時代、「言海」を二冊買って、その一冊は毎日少しずつ切り取って学校への往復にそれを暗記した。そして、すっかり覚えてしまうと、帰りにそれを家の近くの堀にすてた。白秋はこの話をして、「ぼくは、言葉をたべた」といった。(「朝日新聞」2月2日朝9「辞書をたべる」「きのうきょう」欄佐藤達夫)


辞書の使用証言を探していて、見つけました。

伝説としての記載は、黒田龍之助『外国語の水曜日』現代書館 2000のp210に、
辞書を食べて単語を覚えた、という伝説を聞いたことがある。語学の教師として意見をいわせていただければ、まったく無意味な行為だと思う。栄養学の先生からは、また別の理由からやめることを勧められるだろう


また、日本の名随筆『別巻74辞書』に、杉浦明平「辞書を食べる」がはいっています。



【446】
Re:辞書を食べた人々 南方熊楠
 佐藤
 - 04/10/7(木) 20:33 -
----
南方熊楠。これは有名な話なのでしょうか。杉浦明平「辞書を食べる」、不精して未確認ですが(一読してはいるはず)、触れられているかもしれませんね。



【802】
Re:辞書を食べた人々
 岡島昭浩
 - 05/4/24(日) 15:18 -
----
ページが移動しているようです。
http://www2.big.or.jp/~yabuki/soso/so8507b.htm


来沢、来広 # 「来宰」

【719】
来沢、来広 # 「来宰」
 岡島昭浩
 - 05/2/6(日) 14:07 -
----
来沢、来広の続きです。

福岡の太宰府で、「来宰」という表示がありました。歴史資料館のようなところでの説明文でした。



【731】
Re:来沢、来広 # 「来水」
 岡島昭浩
 - 05/2/18(金) 17:38 -
----
集中講義のために来水されたようだ。


矢須恵由「思い出すままに」(『山本正秀先生追悼文集 言文一致研究に生きる』追悼文集刊行会 昭和57.8.10)p109

水戸に来ること。



【793】
Re:来沢、来広 # 「来松」
 岡島昭浩
 - 05/4/8(金) 3:49 -
----
笑福亭鶴瓶『哀しき紙芝居』(新興楽譜出版社 昭和57.8.8)
さて、先月来松された時の、結婚申し込みに付き、お返事いたします。(p184)

愛媛県松山市に、著者が結婚を申し込みに行った後に来た手紙。



【801】
Re:来沢、来広 # 「来仙」
 田島照生
 - 05/4/19(火) 1:36 -
----
「来仙」「帰仙」もありました。
以下はいずれも、金子務『アインシュタイン・ショックII』(岩波現代文庫,2005)より。
東北帝国大学で、アインシュタインの来仙を機に、一年間講師として招聘したいという意向のあることが、仙台行きの当日、大きく報道された。(p.36)

この中にはア博士と同じ列車で帰仙し、のちに東大人類学教室の創立教授となる長谷部言人(ことんど)東北大医学部教授もいた。(p.45)

それから熊本でも、「帰熊(きぐま)」が有名です。


平安時代以前のことば

【799】
平安時代以前のことば
 すずき
 - 05/4/17(日) 7:59 -
----
はじめまして、

私はフィンランドの大学で勉強しているものです。

こちらの文献のなかで、何人かが700年ー800年には日本では中国語が公用語として話されていた。女性はそれを使うことができなかったため、特別な言葉を使っていた。その結果生まれたのが、源氏物語等の女流作家の本だという理論を出しています。

この理論に反論したく、これについての情報をお待ちしております。

よろしくお願い致します。



【800】
Re:平安時代以前のことば
 Yeemar
 - 05/4/17(日) 21:15 -
----
すずきさん、こんにちは。
いくつか、論点がありますね。

(1)700年―800年には日本では中国語が公用語として話されていた
(2)女性はそれを使うことができなかった
(3)当時の女性は特別な言葉を使っていた
(4)その結果生まれたのが、源氏物語等の女流作家の本だ

まず論じやすいのは(4)でしょう。「源氏物語」など11世紀の女流文学の文章を、300年隔たった8世紀ごろの言語状況とを直接結びつけるのは飛躍があります。

(3)について、日本女性は8世紀ごろから11世紀ごろにかけて「特別な日本語」を使っていたか? 「源氏物語」をはじめ、平安朝の文学に描かれた男女の会話を見るかぎりでは、基本的に同じことばを「話して」いたようです。

(2)女性は中国語を理解できなかったか。そんなことはなく、紫式部も清少納言も漢籍をよく理解したということは「紫式部日記」「枕草子」のエピソードなどから分かります。

(1)の中国語が公用語だったというのは、正式の公文書は漢文(中国語)で書かれたという意味ではそのとおりでしょう。ずっと後世まで正式の文書は漢文でした。しかし、日本人同士の会話で「話されていた」のは日本語だったでしょう。漢文は、日本語の語順に従って読まれる(つまり訓読される)ことが多かったでしょう。訓読のための点を記入した書物はすでに8世紀のものから残っています。

私は、「古代の日本人は公の場では何語を話していたか」という問題設定で書かれた本を知りませんが、上に述べた理由から、(1)〜(4)の論には従うことができません。


くわんくわん

【394】
くわんくわん
 道浦俊彦
 - 04/9/23(木) 16:02 -
----
9月5日の日経新聞のコラムで、作家の川上弘美さんが、
「くわんくわん」
という擬態語を使っていたのですが、これは方言なのでしょうか?辞書では見当たらないようなのですが。「口の周りがくわんくわんだよ」というふうに使い、意味は「口の周りに食べ物のカスが付いているような状態を指す」らしいのですが。



【395】
Re:くわんくわん
 岡島昭浩
 - 04/9/23(木) 17:18 -
----
▼道浦俊彦さん:
>9月5日の日経新聞のコラムで、作家の川上弘美さんが、
>「くわんくわん」
>という擬態語を使っていたのですが、これは方言なのでしょうか?辞書では見当たらないようなのですが。「口の周りがくわんくわんだよ」というふうに使い、意味は「口の周りに食べ物のカスが付いているような状態を指す」らしいのですが。

旧会議室で話題になりました。



【397】
Re:くわんくわん
 道浦俊彦
 - 04/9/24(金) 8:30 -
----
岡島さま

ありました!2年前に私もコメントしているではありませんか!全く忘れていました。面目ない。ありがとうございました。「平成ことば事情」に反映させます。



【794】
Re:くわんくわん
 Yeemar
 - 05/4/10(日) 22:21 -
----
柳田國男「方言と昔」(ちくま文庫『柳田國男全集』22 p.324、もとは「アサヒグラフ」昭和2年4月-10月)に
 和尚と小僧との昔話は、中田千畝君が一冊の本を著わしたほどたくさんの種類があって、久しい間日本の児童文学を賑わしていた。今でもクワンクワンの話や、切りたくもあり切りたくもなしの連歌などは、親から聴いてまだ知っている者が多いのである。
とあります。中田千畝著・鈴木棠三編『きっちょむ話・和尚と小僧』(未来社 1975.6)というのがありますが、原著はもっと古いものでしょう。


日本語の歴史

【774】
日本語の歴史
 齋藤
 - 05/4/1(金) 6:04 -
----
はじめまして。バンクーバーの大学で言語学コースを取っています(専攻は言語学ではないのですが)。先日、インド・ヨーロピアン言語の講義があり、ふと我が母国語の日本語はどこから来たのかと疑問に思いました。岡島先生の他のWebページも見ましたが、それにあたるリンクが見つけられませんでした。また、古典的な言葉のリンクもあり、読むのが大変!と思ってしまいました。日本語がどこから来たのか、そして日本語の母体となった言葉(中国語なのでしょうか?)、アジアには日本語と同じグループに属する言語があるのか、教えていただけますか?



【775】
Re:日本語の歴史
 Yeemar
 - 05/4/1(金) 13:33 -
----
▼齋藤さん:
>先日、インド・ヨーロピアン言語の講義があり、ふと我が母国語の日本語はどこから来たのかと疑問に思いました。


この会議室の前身にあたる「ことば会議室」の「日本語の起源についての研究」をご参照ください。なお、このはじめにある「インド・ヨーロッパ語が起源であるという説」は、根拠がないといえるでしょう。

根本的なことだけ記しますと:

> 日本語の母体となった言葉(中国語なのでしょうか?)


日本語の祖先にあたる言語は、今のところ不明です。中国語ときょうだいでないことは明らかです。文法も、基本となる単語も大きく違います。

> アジアには日本語と同じグループに属する言語があるのか


日本語がどのグループに属するかが不明のため、分かりません。アルタイ諸語などと似た性格はもっているものの、それがただちにきょうだいの証明とはなりません。

電子テキストの藤岡勝二「日本語の位置」は読めなくなっていますね。



【778】
Re:日本語の歴史
 岡島昭浩
 - 05/4/1(金) 15:16 -
----
齋藤さん
ようこそ。

Yeemarさん、ありがとうございます。


▼Yeemarさん:
>電子テキストの藤岡勝二「日本語の位置」は読めなくなっていますね。



こちらに置きました。



【791】
Re:日本語の歴史
 齋藤
 - 05/4/6(水) 5:13 -
----
Yeemarさん、岡島先生、お返事有り難うございました。日本語もどの言語も歴史や人類学と密接に関わっていて奥が深いのですね。

またわからないことが出てきましたら、ここに書かせていただきます。

齋藤

▼岡島昭浩さん:
>齋藤さん
>ようこそ。
>
>Yeemarさん、ありがとうございます。
>
>
>▼Yeemarさん:

>>電子テキストの藤岡勝二「日本語の位置」は読めなくなっていますね。

>
>
>こちらに置きました。




「タメ」の意味 #

【787】
「タメ」の意味 #
 Yeemar
 - 05/4/4(月) 18:23 -
----
「タメ」の意味
の続きです。
タメは対面からきているのかと思われる。タイマンというのがあって、一対一の決闘をするということを意味する。タメをハルというのは、同格、同等であるということになる。/ そこから、同等な人のように親しげな調子で話すことを、タメグチをきく、という。(金田一秀穂『新しい日本語の予習法』角川oneテーマ21 2003.04.10初版 p.93)
「対面」説は、旧会議室でもすでに出ていましたが、世間的には、(米川明彦氏らの支持で)「同目」説が広まっている状況ではないかと思います。「同目」か「対面」か。タイマンや対馬との関係は。どの説がよりよいか、私には判断がつきません。


「終える」と「終わる」

【786】
「終える」と「終わる」
 畠中敏彦
 - 05/4/4(月) 11:54 -
----
けさの新聞のスポーツ欄で「イチロー最終戦無安打で“終える”」(オープン戦)
とありました。
これが“終わる”であれば、目にとまらなかったのですが、ちょっと気になりました。
考えるに、“終える”はオープン戦が終了しましたと客観的事実の記述であるが、
“終わるは”最終戦も期待したが結局、無安打で終了しましたとする「評価(主
観)」が介入しているのではないか、と感じますが。

以上は、僕の個人的な印象ですが、みなさまのお考えはどうでしょうか?


♪ロンドン橋落ちた

【754】
♪ロンドン橋落ちた
 道浦俊彦
 - 05/3/4(金) 7:26 -
----
♪ロンードンばーしー落ーちーた・・・という曲の最後は、なんと言うのかご存知の方いらっしゃいますでしょうか?「ローンドーンばし」と終わるのでしょうか?
またこの曲の元歌、英語の歌詞だと、「My Fair Lady」と終わるのを聞いたことがありますが、これはどういう意味なのでしょうか?呼びかけているのでしょうか?「マイ・フェア・レディー」って誰でしょう?女王?



【755】
Re:♪ロンドン橋落ちた
 Yeemar
 - 05/3/4(金) 13:58 -
----
▼道浦俊彦さん:
>♪ロンードンばーしー落ーちーた・・・という曲の最後


マザーグースですね。これは、訳詞によって、とか、地域によって、とかで、違うものなのでしょうか。

わたしは「ロンドン橋落ちる…… さあどうしましょう」と覚えました。

北原白秋訳の「まざあ・ぐうす」(角川文庫)では「ロンドン橋がおちた。/ロンドン橋が落ちた。」だけで1番は終わりです。

NHK教育テレビ「人間講座」で、最近まで鷲津名都江さんの「ようこそ「マザーグースの世界へ」をやっていました。ついきのう、書店でテキストを買おうかどうか迷いました。第4回が「ロンドン橋おちる!」です。



【756】
Re:♪ロンドン橋落ちた
 佐藤
 - 05/3/4(金) 14:05 -
----
>またこの曲の元歌、英語の歌詞だと、「My Fair Lady」と終わるのを聞いたことがありますが、これはどういう意味なのでしょうか?呼びかけているのでしょうか?「マイ・フェア・レディー」って誰でしょう?女王?


「そもそもこの「My fair lady」という言葉は意味不明」とするサイトがありますが、研究者なのかどうか。
http://www.ffortune.net/symbol/poem/goose/londonbridge.htm



【757】
Re:♪ロンドン橋落ちた
 後藤斉
 - 05/3/4(金) 14:33 -
----
いろいろ説はあるでしょうが、Founder, The London Bridge Museum and
Educational Trustという肩書きの人の公式見解でしょうか。

http://www.gresham.ac.uk/event.asp?PageId=4&EventId=311

Later on, in Medieval times, this was altered to be “London Bridge is
Falling Down” because at the time it was falling down, and falling down
because Queen Eleanor who had charge of the rates on the bridge was
spending it on fine dresses and not on the bridge, and so when they say
“My fair lady”, it’s said in a very annoyed fashion. “My fair lady”
was Queen Eleanor who wasn’t doing her duty.



【785】
Re:♪ロンドン橋落ちた
 道浦俊彦
 - 05/4/4(月) 11:08 -
----
皆さん、ありがとうございます。お礼が遅れてすみません。


ことば番組放送予定表(?) #

【12】
ことば番組放送予定表(?) #
 Yeemar
 - 04/4/17(土) 19:01 -
----
ことば番組放送予定表(?)
の続きです。

今年度のNHKはたいへんことば関連番組が多くなり、「ことば放送局」の観があります。もともと、共通語を広めるに力あった放送局ですから当然ともいえますが。以下、まるでNHKの広報課のごとく、おもな「ことば番組」を一覧にしてみます。

にほんごであそぼ〔子ども向け〕(総合:月曜〜金曜 午前8:00〜8:10)
わかる国語 読み書きのツボ(新)〔小学校3・4年向け、光浦靖子・パペットマペットほか〕(教育:月・水曜 午前10:00〜10:15)
・あなたも挑戦!ことばゲーム(新)〔語源の旅なども〕(総合:金曜 午後8:00〜8:45)
気になることば〔関東など一部地域。こちらに要点メモ〕(総合:月曜〜金曜 午後4:45〜4:55ごろ)
・NHK日本語講座・新にほんごでくらそう〔外国人向け〕(教育:金曜深夜0:30〜0:50)

そして
日本語なるほど塾(教育:金曜 午後11:10〜11:30)
これは、狭い意味での日本語学の守備範囲を軽々と超えようとする趣。日本語とわれわれの生活の関わりを考えようとする番組と思います。4月は齋藤孝氏を招き、ことばと身体だとか、コミュニケーションの方法だとかいうことについて考えているようです。ゲストに玉石ありそうですが、ときどきは見てみようと思います。テキストもあるようですから、せっせとメモを取らなくてもよさそうです。



【27】
Re:ことば番組放送予定表(?) #
 Yeemar
 - 04/4/24(土) 1:10 -
----
NHKラジオ第1 2004.05.03 13:00〜16:00
「特集・気になることば」
が放送されます。

ことばについて3時間も特集番組を組むというのはラジオならではのことでしょうか。



【163】
Re:ことば番組放送予定表(?) #
 岡島昭浩
 - 04/6/20(日) 16:44 -
----
▼Yeemarさん:
>・わかる国語 読み書きのツボ(新)〔小学校3・4年向け、光浦靖子・パペットマペットほか〕(教育:月・水曜 午前10:00〜10:15)


子供と一緒に、この番組を見ていたら、「国語学者 飯間浩明さん」が出てきて、パペトマペットのコントを「没だ!」と断じている場面が出てきて、ちょっとびっくり致しました。

「視聴記録」のスレッドを立てた方がいいとは思いましたが、とりあえず、こちらに繋げます。



【165】
Re:ことば番組放送予定表(?) #
 岡島昭浩
 - 04/6/20(日) 21:18 -
----
▼岡島昭浩:
>▼Yeemarさん:

>>・わかる国語 読み書きのツボ(新)〔小学校3・4年向け、光浦靖子・パペットマペットほか〕(教育:月・水曜 午前10:00〜10:15)

>
>子供と一緒に、この番組を見ていたら、


厳密に言えば、「この番組の「増刊号」を見ていたら」です。本日の夕刻に1時間程度の長さでありました。

ホームページを見ますと、飯間浩明さんは、この番組に深く関わってらっしゃるように見えます。



【166】
Re:ことば番組放送予定表(?) #
 Yeemar
 - 04/6/20(日) 22:19 -
----
飯間ことYeemarです。

ご覧いただき、ありがとうございます。番組アドバイザーなるものをさせていただいています。この際、私のホームページからNHKのページにもリンクしておきました。
ことばをめぐるひとりごと

番組は多くの手を経て完成に至り、責任の所在が不明確です。ご覧になって、「えっ、その展開は無理だろう」「その説明や例はまずいだろう」という所にお気づきかと思いますが、それは私の力が至らなかったところです。「これはなかなか良い」「ここは効果的な説明である」という所も多いかと思います。それはいずれもスタッフの方々のお力によるものです。

番組ホームページの文法教室、これは私が100%責めを負うことになります。「文法の説明にご批判を」というスレッドでも立てて、ご意見を仰ぎたいところです。



【780】
Re:ことば番組放送予定表(?) #
 Yeemar
 - 05/4/2(土) 19:28 -
----
>・あなたも挑戦!ことばゲーム(新)〔語源の旅なども〕(総合:金曜 午後8:00〜8:45)


このホームページに、語源をたずねて旅をする「ことばの場」のページがありましたが、番組終了と同時に消えゆく運命のようです。大急ぎでファイルを保存しましたが、もう今年1月以前のものについてはページが表示されなくなっています。文章についてはGoogleのキャッシュから取り込むことはできます。

記録として、取り上げられたことばを、以下に五十音順に並べておきます。

●あいづち(3月11日放送)●あこぎ(4月2日放送)
●油を売る(7月16日放送)●急がば回れ(5月14日放送)
●板につく(3月18日放送)●一目おく(1月28日放送)
●一張羅(2月4日放送)●いとめ(1月7日放送)
●いなせ(9月10日放送)●うだつ(4月23日放送)
●打ち合わせ(6月11日放送)●うんともすんとも(7月2日放送)
●縁の下の力持ち(4月16日放送)●大わらわ(2月18日放送)
●おしきせ(7月30日放送)●お払い箱(9月3日放送)
●折り紙つき(2月25日放送)●ぐれる(12月10日放送)
●黒幕(3月18日放送)●くわばらくわばら(4月9日放送)
●けんもほろろ(3月4日放送)●さしがね(4月30日放送)
●じだんだを踏む(10月22日放送)●しのぎを削る(7月9日放送)
●すっぱぬく(10月15日放送)●図星(10月8日放送)
●関の山(5月28日放送)●駄目(1月21日放送)
●千鳥足(6月25日放送)●手ぐすねをひく(1月14日放送)
●二の句が継げない(6月4日放送)●はで(9月17日放送)
●はめをはずす(7月23日放送)●ひっぱりだこ(9月24日放送)
●ひとしお(11月19日放送)●ひのき舞台(3月18日放送)
●火ぶたを切る(3月25日放送)●冷やかし(5月21日放送)
●へそくり(11月26日放送)


間髪・綺羅星・幽明境 #

【772】
間髪・綺羅星・幽明境 #
 岡島昭浩
 - 05/3/28(月) 22:25 -
----
間髪・綺羅星・幽明境の続きですが、『訓点語と訓点資料』114(平成17.3.31)のp7、
既に幽冥界を異にする諸先生各位のご冥福をお祈りし、
とあります。


わたしが作った #

【314】
わたしが作った #
 岡島昭浩
 - 04/8/22(日) 10:56 -
----
「わたしが作った」の続きです。

「この人が作った」の姉妹編。

岩波文庫『戊辰物語』所収の「五十年前」は大正十五年の「東京日日新聞」に連載されたものとのこと。164頁。
今の柔道というのは真揚流と起倒流とを折衷したもので、わしが初めて柔道と名称《なづ》けて、この一派を開いたのさ。(中略)柔道に初段とか二段とか段を設けたのも、わしの創案で、この頃は剣術でも弓術でも道の字を用いて段をつけるのはわしの専売特許を侵すものだよ。

(加納治五郎翁談)



【384】
Re:わたしが作った # 「貢献」
 岡島昭浩
 - 04/9/19(日) 17:01 -
----
『新公論』 大正3年4月号「言語に依て知らるゝ文明と外国関係」上田敏(「新布教」4号よりの転載)
 新聞記者、翻訳者なども盛んに新しい言葉をこしらへます。「少なくとも」「我輩は」「社会」「哲学」などゝ云ふ語は皆新しく作られた言葉です。英語のコントリビユート(contribute)と云ふ語は「寄付する」「捧げる」と云意味であるが、私はそれを貢献すると譯してからは、此頃では盛に使はれて居る様です。又「體讀」と云ふことも、慥か高山樗牛氏が造られた語だと覚えて居ます。




【386】
Re:わたしが作った #「野鳥」「探鳥」
 岡島昭浩
 - 04/9/22(水) 10:44 -
----
『人・その世界 スタジオ102土曜インタビュー』日本放送出版協会 昭和52.8.20。

中西 さんざん雑誌の名前を考え、苦労しましてね。結局「野鳥」という言葉を考えだした。−−野のものは野に置けという姿勢です。それまで野鳥という言葉はなかったんですよ。初めて私が考え出した。
高梨 いま“野鳥を愛しましょう”なんてさかんに野鳥という言葉を使うけれども、これは中西さんがおつくりになったんですね。
中西 まったく私の造語。このごろやっと社会に定着した……。
高梨 そうですか。長年知らずにただで使わせていただいておりました。
中西 いや、どういたしまして。やっと国語になりました。
 それから「探鳥会」ね−−山野に鳥を探る。この探鳥会という言葉もね、あんまりいい言葉じゃないけれども、やっと定着しましてね。(中略)探鳥という言葉と、西洋でいっているバードウォッチングという言葉を結びつけたのが私という意味です。(中略)私の主張が四十年かかってやっと通りました。(p169-170)

聞き手は高梨英一アナウンサー。昭和五十一年五月の談話。



【387】
Re:わたしが作った #「野鳥」「探鳥」
 岡島昭浩
 - 04/9/22(水) 11:42 -
----
実際には、「野鳥」は日葡辞書にもあることば。



【388】
Re:わたしが作った #「探鳥」
 岡島昭浩
 - 04/9/22(水) 12:07 -
----
「探鳥会」が中西氏によるものであることついては、『60年代ことばのくずかご』で指摘されています。また、『最近日本語事情』にも。



【389】
Re:わたしが作った #「野鳥」「探鳥」 余談で失礼
 佐藤
 - 04/9/22(水) 20:39 -
----
>中西 いや、どういたしまして。やっと国語になりました。


中西悟堂ですね。日本野鳥の会の産みの親。この文脈なら現代ではまず「日本語」となるところでしょうが、当時の中西あたりの年齢の人だと「国語」がさらりと出てくるのでしょうね。

日本で最初の探鳥会は悟堂が開いたのですが、金田一京助も参加したとか。
http://www.kissnet.ne.jp/fs/sdiary/sdiarys/547nobioka/2.html(2004/04/29分参照)



【390】
Re:わたしが作った #「野鳥」「探鳥」 余談で失礼
 岡島昭浩
 - 04/9/23(木) 0:13 -
----
▼佐藤さん:
>中西悟堂ですね。


あれま、失礼しました。アナウンサーだけ注釈して、肝心の人の名を書き忘れていました。

>日本で最初の探鳥会は悟堂が開いたのですが、金田一京助も参加したとか。
>http://www.kissnet.ne.jp/fs/sdiary/sdiarys/547nobioka/2.html(2004/04/29分参照)


ほおぉっ(感嘆)。柳田国男もですか。調べて見ると、新村出も発起人に名を連ねていますね。



【420】
Re:わたしが作った # 「大衆・大衆文芸」
 岡島昭浩
 - 04/10/2(土) 23:47 -
----
小林信彦『面白い小説を見つけるために』(光文社知恵の森文庫 2004.5.15。『小説世界のロビンソン』の改題)の第十八章(p202)。そこに、白井喬二『さらば富士に立つ影』(六興出版)からの引用があります。
 雑誌『大衆文藝』の「大衆」の語であるが、これを民衆の意味におきかえたのはぼくであった。元来、この語は昔からあるけれど、それは仏教語として存在するだけだ。多くの信徒のことをダイス、ダイジュウと濁って発音して単なる民衆の意味はなかった。それをタイシューと清く読んで民衆の意味に用いた。一種の新造語である。(中略)「大衆文芸」と四字にまとめたのは恐らくマスコミであろう。




【556】
Re:わたしが作った #「民間学」
 岡島昭浩
 - 04/11/23(火) 17:37 -
----
「民間学」という言葉は、鹿野政直がその著書の題名にはじめて使った。それまでに「民間史学」という言葉はあったが、鹿野は、その考え方を史学よりも広くとり、柳田国男らの民俗学、柳宗悦らの民芸研究、今和次郎の考現学にあらわれた共通の学風としてとらえた。

『民間学事典』1997.6.10三省堂「刊行のことば」。「鶴見記」とあるが、「鹿野政直・鶴見俊輔・中山茂」の三名の連署もあるので、「わたしが……」としました。



【557】
Re:わたしが作った #「民間学」
 佐藤
 - 04/11/23(火) 19:42 -
----
たまたま私の背後の書棚に雑誌があり、また、語の起源から現在までを造語者本人が語るという面白い例でもあるので掲げてみます。
 面はゆいことながら、「民間学」とはわたくしの造語である。在野の学問つまりアカデミーのそとに一定の体系性を打ち立てつつ結実した学問を意味し、家永三郎が、山路愛山らの史学を「民間史学」と呼んだのにならって、提出してみた呼称である。一九七〇年代半ばから使いはじめ、そのなかでだんだん形をなしてきた考えを、八三年、『近代日本の民間学』(岩波新書)としてまとめた。日本語として定着したとは、とてもいえないだろうが、学問を考えるに当っての一つの軸としては、不安定ながら認知されてきたようにも観測される。(鹿野政直「「民間学」とは何か」『国文学 解釈と鑑賞』1992−1)




【558】
Re:わたしが作った #「野鳥」「探鳥」 余談で失礼
 佐藤
 - 04/11/23(火) 20:16 -
----
▼岡島昭浩さん:
>>日本で最初の探鳥会は悟堂が開いたのですが、金田一京助も参加したとか。
>>http://www.kissnet.ne.jp/fs/sdiary/sdiarys/547nobioka/2.html(2004/04/29分参照)

>
>ほおぉっ(感嘆)。柳田国男もですか。調べて見ると、新村出も発起人に名を連ねていますね。


中西悟堂は歌人・詩人だったんですね。それで、文系の学者に人脈があったのでしょうね。
http://www.city.kanazawa.ishikawa.jp/bungaku/writers/nakanis/nakanisJ.htm



【767】
Re:わたしが作った # 「活動写真」
 岡島昭浩
 - 05/3/22(火) 16:26 -
----
『明治事物起原』遊楽部、「活動写真の始め」
愈々興行するにしても、原名のバイタスコツプでは覚えにくいから、日本風に誰にも分る名にしたが好いと茲で三人が、活動幻灯が好からう、イヤ活動写真が好からうなど相談したが、トゞの詰り活動写真と銘打つ事に極つた。実に活動写真といふ名称の名付け親は、私(杉浦誠言)と、柴田と福地(桜痴)とこの三人なのです。

柴田は、「新井商会の主人の友人に米国に帰化した柴田といふ人が、バイタスコツプと称する機械と其機械の技師米国人シツクといふ者を連れて渡来した、このバイタスコツプ今日の活動写真なのである。」

その少し後に、
 (四)活動写真の命名者 活動写真の名付け親は誰かといふに、福地桜痴といふ説、もつとも普通なるも、杉浦誠言は、杉浦、柴田、福地の三人なりといひ、十文字大元は、自分の命名なりといひ、荒木和一も、福地氏はこれを自動写真と命名してゐたれど、予は、生きて動くものを見るものなれば、活動写真機と命名したりといひ、命名者はいまに確認せざるがごとし。四十年冬脱稿の、著者の『事物起原』には、全部活動写真幻灯の名にて記載したりき。



加茂正一『新語の考察』では、福知桜痴の造語とするが、米川明彦氏の『新語と流行語』南雲堂の「新語の作り手」には継承されていません。


僕とおれとわたしと… #

【459】
僕とおれとわたしと… #
 Yeemar
 - 04/10/12(火) 7:51 -
----
僕とおれとわたしとどうちがうんでしょうか。
の続きです。

「あなた」と「君」の混ざっている歌はほかに西條八十作詞・神楽坂はん子歌「こんな私じゃなかったに」(1952年)。
ひろい世界に ただひとり/なぜにあなたが こう可愛/の寝顔に 頬あてて/女ごころの しのび泣き/こんな私じゃなかったに




【760】
Re:僕とおれとわたしと… #
 岡島昭浩
 - 05/3/11(金) 1:03 -
----
旧会議室で、沢木耕太郎「ワシの研究」と丸谷才一氏によって書かれていたのは、「奇妙なワシ」(『バーボン・ストリート』新潮社、1984)であることがわかりました。

金水敏「わしは役割語を研究しておるのじゃ」(『文藝春秋特別版 言葉の力』平成17.3.15)に引用されていたからです。



【764】
Re:僕とおれとわたしと… #
 岡島昭浩
 - 05/3/19(土) 3:09 -
----
池辺良『オレとボク 戦地にて』(中公文庫)は、何故、この題名なのか、よくわかりません。

「貴様、地方語なんかつかうな」
(中略)
「地方語って、なんですか」
と訊いたら、
「地方語ってのは、地方語だ。非国民だぞ」
(中略)
「非国民とはなんだ、僕のどこが非国民だ」
と、中腹《ちゅうっぱら》で言ったら、
「僕というのが地方語だ」
ときた。(P19-20)

という部分はあるのですが……
なお、「地方語」の「地方」は「非軍隊」のこと。


人名謎解き# 一青(ひとと)

【758】
人名謎解き# 一青(ひとと)
 岡島昭浩
 - 05/3/6(日) 22:08 -
----
人名謎解きの続きです。

寺西五郎『語理語源』(雪華社1962.7.5)に「一青さんと万年青」p64-70があって、「ひとと」と「おもと」の関係から説き起こすが、
「一青」、ただ一羽のアオジが林間にとまっている絵画的な印象から出た言葉ではないかと思う。
としていました。


古文を書いてみる

【750】
古文を書いてみる
 Yeemar
 - 05/3/2(水) 1:18 -
----
「童話を古文訳してみよう」という発表が、北海道石狩翔陽高校3年次生の行う「課題研究発表会」(〔2004.〕12.22)の1つにあったそうです。
 → 校長室の窓から 第7話

おもしろい試み。どんなのか見てみたい気がします。

「古典を味わうためには、自分が書かなければならない。英語を理解するためには自分が話せなければならないのと同じだ」――これは、私のかねての珍論です。その話は「ことばをめぐる・古文を書いてみよう」にも。もっと言えば、高校で古文を書く授業を何時間か設けてはどうかと考えます。

旧会議室「「なぜ、古文を……」」とも関連します。このスレッドの私の文章は、思考の流れのままに書いており、はなはだ読みにくい。



【751】
Re:古文を書いてみる
 岡島昭浩
 - 05/3/2(水) 1:56 -
----
出雲路修『古文表現法講義』(岩波書店 2003)というのがあるのを、数日前に、『北陸古典研究』19に載った書評(久保田啓一氏)で知りました。大学での実践のようです。


古文を書いてみる

【750】
古文を書いてみる
 Yeemar
 - 05/3/2(水) 1:18 -
----
「童話を古文訳してみよう」という発表が、北海道石狩翔陽高校3年次生の行う「課題研究発表会」(〔2004.〕12.22)の1つにあったそうです。
 → 校長室の窓から 第7話

おもしろい試み。どんなのか見てみたい気がします。

「古典を味わうためには、自分が書かなければならない。英語を理解するためには自分が話せなければならないのと同じだ」――これは、私のかねての珍論です。その話は「ことばをめぐる・古文を書いてみよう」にも。もっと言えば、高校で古文を書く授業を何時間か設けてはどうかと考えます。

旧会議室「「なぜ、古文を……」」とも関連します。このスレッドの私の文章は、思考の流れのままに書いており、はなはだ読みにくい。



【751】
Re:古文を書いてみる
 岡島昭浩
 - 05/3/2(水) 1:56 -
----
出雲路修『古文表現法講義』(岩波書店 2003)というのがあるのを、数日前に、『北陸古典研究』19に載った書評(久保田啓一氏)で知りました。大学での実践のようです。


方言で翻訳する

【738】
方言で翻訳する
 岡島昭浩
 - 05/2/27(日) 22:24 -
----
外国語などを方言で訳すのは、「役割語」に限らず、いろいろとあると思います。

『青春の和辻哲郎』所引、谷崎潤一郎が和辻の脚本「夜の宿」を評した文(『新思潮』第5号)で、

露西亜の下層社会の語を訳すのに、日本のべらんめえ言葉を以てしたのは、甚適当なことである。(p128)


としています。

和辻哲郎の劇は、明治文学全集の75にも入っていますが、これではないですね。



【749】
Re:方言で翻訳する
 岡島昭浩
 - 05/3/1(火) 11:40 -
----
日本語倶楽部『【方言】の不思議』青春BEST文庫1993.1.5のp212-213の「『ヴェニスの商人』のシャイロックが関西弁を喋るわけ」を見ると、『ヴェニスの商人』(中野好夫訳)で、中野好夫氏がシャイロックに関西弁を喋らせているかに見える。

中野好夫訳『ヴェニスの商人』は、『シェイクスピア大全』にも入っていて、読むことが出来るが、ここでは関西弁は使われていない。

『方言の不思議』巻末の参考文献にある、木津川計『上方の笑い』(講談社現代新書 S59.1.20)が、その出典であるようだ。p53-54に見える。

これは、中野好夫『シェイクスピアの面白さ』(新潮選書)の中で書かれているもので、
ネチネイと悪がらみするように吐露していくこの件り、著者にはどうも東京弁の標準語でいくよりも、あの関西弁の上方人金貸しという映像でひそかに描いてみる方が、はるかにぴったりくるような気がするのである。
とのこと。木津川氏は「大阪弁はいたく傷つけられた」と書いておられる。


1ドル365円

【739】
1ドル365円
 つる
 - 05/2/28(月) 1:23 -
----
1ドル365円と覚えています
いつも頭の中で独り言をつぶやきながら電卓たたきます
ずーーとなぜ365円になったのかが疑問でした
おしえていただくと「すっきり」すると思います



【740】
Re:1ドル365円
 岡島昭浩
 - 05/2/28(月) 2:03 -
----
▼つるさん:
>1ドル365円と覚えています
>いつも頭の中で独り言をつぶやきながら電卓たたきます
>ずーーとなぜ365円になったのかが疑問でした
>おしえていただくと「すっきり」すると思います


かつて1ドルは360円でした。戦後、円の切り上げから昭和46年頃までですね。
なぜ、そのレートになったのか、というのは、ことばの問題ではなく、国際経済の問題だと思いますので、この会議室で話題にするよりも、それに相応しいところでしていただければと思いますが、ことばに関連することで言えば、「なぞなぞ」で「ハンドルはいくら?」というのがありました。答えは「180円」。それが154円になり、時価になりました。

360円であるはずのものを365円と覚えてしまわれたのだとすると、それは一年365日に引かれたものではないでしょうか。

そういえば、円を360度にするのは、1年360日と考えたからだ、と聞いたことがありますが、360という数字は、約数がたくさんあって便利ですから、そういう側面もあるでしょう。

多分、すっきりとはなさらないと思いますが。



【743】
Re:1ドル365円
 道浦俊彦
 - 05/2/28(月) 11:22 -
----
「円」の角度(?)が360度だから、360「円」にした、という語呂合わせ説聞いた事がありますが、俗説でしょうか?
いずれにせよ第二次大戦後、日本が独立したサンフランシスコ講和条約締結のあとに決まったのでは?
戦前は「1ドル=2円」だった時期があると聞いたこともあります。(ちゃんと確認していません。ゴメンナサイ)



【744】
Re:1ドル365円
 岡島昭浩
 - 05/2/28(月) 11:29 -
----
▼道浦俊彦さん:
>「円」の角度(?)が360度だから、360「円」にした、という語呂合わせ説聞いた事がありますが、俗説でしょうか?


だとすると、日本語を解する人によって決められた、ということになり、「ことば会議室」の話題に沿うものとなりますね。



【746】
Re:1ドル365円
 道浦俊彦
 - 05/2/28(月) 14:12 -
----
やはり「俗説」のようですね。こんなサイトも4月23日は「360円の日」だそうです。以下、そのサイトからの引き写しです。
*************************************
1949年4月23日、GHQは日本円とアメリカドルの交換レートを1ドル=360円と定めました。このレートは「スミソニアンレート」が採用された1971年まで22年間にわたって維持されました。

日本円とドルの交換比率は、明治初期には最初1ドル=1円と定められていま
したが、その後実際にはドルのほうが力があるため次第に円安に動き、昭和
初期には1ドルが3〜4円程度になっていたようです。それが戦後の超インフレ
で円の貨幣価値が大幅に下落したため、GHQとしては当時の実勢状況から、
この程度であろうということで定めたようです。

360円という数字が選ばれた根拠についてはよく分かりません。「円」だから
円周の度数というのはさすがに俗説と思いますが、やはりキリのいい所で
選ばれたのではないでしょうか。

-----------
「ことばについての会議室」管理人が、下に元ページへのリンクを張り、また、話題に必要な部分の引用にとどまるよう、一部、削除しました。
元ページ



【748】
Re:1ドル365円
 道浦俊彦
 - 05/2/28(月) 14:26 -
----
こんな記述も見つかりました。
*************************************

1971年以前において、円レートは1ドル=360円と設定された、固定相場制であった。このレートは、1949年4月25日に連合国軍総司令部(GHQ)が設定したものだが、これがどのようにして決まったのかについては様々な説がある。

「1 『円は360度だから』
 2 日本に進駐した米軍のえらい人が、熊手を売っているのを見て買った。その熊手の値段からはじき出した。」(朝日新聞経済部編 『円とドル』)

「日本の場合、昭和10年から23年までの間に卸売物価は約208倍になっている。同じ期間に米国の卸売物価は約2倍だったから、日本の卸売物価の上昇率は米国の約104倍である。昭和10年の円為替レートは1ドル=約3.5円だったから、これを104倍すると約364円、端数を切り捨てて1ドル=360円とした。」(力祢館正久著 『円の100年−日本経済側面史』)

--------
「ことばについての会議室」管理人が、下に元ページへのリンクを張りました。
元ページ



ばびぶべぼ遊び# ノサ言葉

【326】
ばびぶべぼ遊び# ノサ言葉
 岡島昭浩
 - 04/9/1(水) 21:23 -
----
ばびぶべぼ遊びの続きです。

中村真一郎『頼山陽とその時代 上』中公文庫p23、
「尾氏子供、マメ也、皆ドサ言、ヲカシク御座候」
と、彼は母に報じている。
「ドサ言」とは多分「久太郎《ひさたろう》さん」というのを「ヒのサさたろうさん」という風に呼ぶ、子供の遊び「ノサ言葉」のことだろう。尾藤教授の腕白小僧たちは、山陽が判らないような顔をするのに、得意になって一日中、やかましくこの「ドサ言」で囃したてたものと思われる。

「ヒのサさたろうさん」は「ひノサさたろうさん」という積もりではないのでしょうか。



【359】
Re:ばびぶべぼ遊び# ノサ言葉
 岡島昭浩
 - 04/9/13(月) 10:56 -
----
川本崇雄『縄文のことば、弥生のことば』岳書房、昭和63.6.30に、
接中辞と言えば、子供の時の言葉遊びを思い出す。「ばかやろう」の代りに「ばのさかやろう」(中略)と言いかえる遊びだ。この「のさ」は接中辞の一種だと思うが、こういうことを言うと、日本の学会では不真面目だと叱られる。(p163)
とありました。川本氏は、大正14年、群馬県安中町生まれ。



【383】
Re:ばびぶべぼ遊び# ノサ言葉+パ行挿入
 岡島昭浩
 - 04/9/17(金) 23:54 -
----
『言語生活の耳』に、パ行挿入の遊びが紹介され、その連想で「ノサ言葉」が紹介されていました。
忘れぬうちに書いておき、後で補う予定です。



【736】
Re:ばびぶべぼ遊び# りしゃご
 Yeemar
 - 05/2/27(日) 1:58 -
----
若い人のことば」で田島さんが報告されている「りしゃご」の話を別資料で見ました。「ACROSS」1995.8 p.22-29「ことば言い切り、“なまり”イントネーションが蔓延する 女子中高生の話しことば」〔村松美賀子〕。
〔よく使う言葉を問われ〕りしゃご。ふつうのことばに入れて使うの。電車の中で前に座ってるおばさんの悪口言う時におりばしゃごさん、むかつく≠ニか。悪口言ってもバレない。あと、ばびぶべぼを(同じように)入れる。〔17歳/私立高3年/23区内在住〕
また、
りきしゃ≠言葉の中に入れる。むりかきつしゃよ=kママ〕。電車で、目の前にやなおばさん座ってたりすると便利。何言ってんの?≠ニ冷たい視線で見られるけど。〔17歳/公立高3年/神奈川在住〕
使われていた場所は電車内がもっぱらでしょうか。


古本屋めぐり

【17】
古本屋めぐり
 岡島昭浩
 - 04/4/18(日) 12:17 -
----
「あれこれ会議室」を別立てにしていないので、ここに書きます。

OAP古書市に行けなかったのは残念。
早稲田の古書市が、日本語学会と一週間ずれているのは、まことに残念。

四天王寺古書市に、初日に行けないのが残念。
4/24午後の語彙史研究会に参加される方、午前中は四天王寺へ行かれてはどうでしょう。


京都春の古書市の情報が私の手許に伝わってこないのも残念。



【23】
京都春の古書市
 skid
 - 04/4/21(水) 0:43 -
----
▼岡島昭浩さん:
>京都春の古書市の情報が私の手許に伝わってこないのも残念。


京都古書組合の目録は、いつも比較的重厚なものですが、同じやつが3冊も4冊も届くのには困ります。
名簿を統一管理せず、各店がバラバラに送っているから、相当むだが出ているはず。
それで、多くの人に行き渡らないことにもなるようです。



【30】
Re:古本屋めぐり
 岡島昭浩
 - 04/4/25(日) 23:14 -
----
5/1から5/5とお教えいただきました。
http://www1.kcn.ne.jp/~kosho/koshoken/event.html



【33】
ようやく天王寺
 岡島昭浩
 - 04/5/1(土) 0:07 -
----
ようやく四天王寺の古書市へ行ってきました。

例によって屑本中心に買って参りました。

先日、旧会議室に、その後20年買っていないというようなことを書いた、窪田空穂訳の改造文庫源氏物語を2冊、四・六と100円で買いました。



【48】
京都春の古書市
 岡島昭浩
 - 04/5/5(水) 22:43 -
----
勧業会館での古書市は、あまり私向きではないような気がいたします。行儀が良くて屑本が少ない感じがするからです。何よりも百円均一コーナーがないのは寂しい限りです。

それで今回もなかなか足が向かなかったのですが、雨で研究室ハイキングが中止になったのを機に出かけて参りました。

勧業会館での古書市に行くのは何年ぶりでしょう。
福井に異動する直前には勧業会館は改装中で、どこかのお寺の境内で行われていたように思いますので、多分十年以上、間があいていると思います。

会場が広くなって、会計が店ごとではなくなっていました。

でも、あまり食指が動く本がありませんでした。

『唐詩作加那 第二篇』という明治二年序の本を買いました。六百円。

帰りに貰った『京古本屋往来』、百号で休刊号だったとは知りませんでした。以前は購読していたのですが。



【51】
京都春の古書市で買った本
 岡島昭浩
 - 04/5/6(木) 12:30 -
----
>『唐詩作加那 第二篇』という明治二年序の本を買いました。六百円。


初篇は、新大系明治篇『和歌俳句歌謡音曲集』に入っていたけれど、二篇は入っていなくて嬉しい。



【66】
Re:京都春の古書市
 佐藤
 - 04/5/12(水) 22:08 -
----
▼岡島昭浩さん:
>勧業会館での古書市は、あまり私向きではないような気がいたします。行儀が良くて屑本が少ない感じがするからです。


御意。買ってほくほく、といった買い物をした記憶がありません。今シーズンでいえば、天王寺の方が漁りがいがありましたね。とはいえ、買い物はありませんでしたが、楽しかった。
今後、京都は真夏と秋にありますが、これはどちらとも、そこそこの買い物がいつもあります。いまから楽しみなことです。



【67】
Re:京都春の古書市
 岡島昭浩
 - 04/5/13(木) 2:32 -
----
▼佐藤さん:

>今後、京都は真夏と秋にありますが、これはどちらとも、そこそこの買い物がいつもあります。いまから楽しみなことです。


はい。京都にいた頃には、秋の古書市には会期中何度も足を運んだものでした。今は時間も体力もありませんが。

目下の楽しみは来週末、東京での日本語学会の空き時間に行くであろう古書会館です。



【78】
新本屋で岩波の品切れ本を買っていた頃
 岡島昭浩
 - 04/5/17(月) 13:19 -
----
旧会議室では、「楽しい本屋めぐり」だったのに、こちらでは「古本屋めぐり」にしてしまったことを後悔していますが、かつて、岩波書店の品切れ本が思わぬ新本屋さんに売っていることが、よくありました。
岩波の本は買いきりなので、一旦仕入れると返品できず、本棚に残っていたのでした。

今、岩波文庫の『毛吹草』を手に取ってみると、「Books赤坂」と書き込んであり、それで思い出したのです。これは福岡の赤坂にあった書店であろうと思いますが、よく覚えていません。調べてみると、明治通りに面している照明のヤマギワの下にあった店と、薬院に向かう道に面した本店とがあったらしい(1980の『ザマップ』シティ情報フクオカによる)。
1980年から82年頃までに買ったのだと思いますが、刊記は1976年5月20日 第4刷。

岩波文庫の古典モノの品切れ本を買った記憶が他に残っている新本屋は、九大教養部の生協、箱崎・網屋町の大学通に面した書店……金進堂でした。

そういえば橋本進吉著作集の『国語音韻史』か『国語音韻の研究』かを、久留米の新本屋さんで買ったこともありました。多分、82年の夏。



【80】
Re:新本屋で岩波の品切れ本を買っていた頃
 岡島昭浩
 - 04/5/18(火) 16:11 -
----
▼岡島昭浩:
>そういえば橋本進吉著作集の『国語音韻史』か『国語音韻の研究』かを、久留米の新本屋さんで買ったこともありました。多分、82年の夏。


『国語音韻史』を手にとって見ると、定価、久留米江頭、1982.5.27とありました。1976.11.20 第7刷。1700円。



【94】
東京での学会時の神田古書会館
 岡島昭浩
 - 04/5/22(土) 1:54 -
----
本日の古書会館での成果は、篠崎東海『和学辯』でも、多田南嶺のなんだっけ、でもなく、遠藤進吉『昭和十二年版 記号索典』です。表紙など一部を除き孔版。六十八頁。

辞書に二種あると思ふ。一は漢字辞書で画数及び部首が字の順位を決定する。他は音字母順辞書で世界の辞書といふ辞書がこれに属する。しかし漢字や字母などと似てゐる記号やマークの群が辞書なしで散在してゐる。
それで私は世界に通用する簡易な方法でそれらを辞書の中にとぢこめてしまった。(以下略。原文は旧漢字片仮名交じり)

それは四角号碼に似ていて、
本書は記号を次の十要素に分ち、記号要素の現はれる順(左より右へ、同時出現は上より下へ)に、その数字を並べて、最初に少数点(ママ)あるものとして配列したものである。

 ・●は「0」
 :‥は「00」
 ∴…は「000」
といった具合。



【96】
Re:東京での学会時の神田古書会館
 岡島昭浩
 - 04/5/22(土) 22:51 -
----




[添付]〜添付ファイル〜






・名前



: kigohanrei.png





・サイズ



: 7.3KB



▼岡島昭浩:
>遠藤進吉『昭和十二年版 記号索典』

添付画像
【kigohanrei.png : 7.3KB】


【104】
東京での学会時の西早稲田
 岡島昭浩
 - 04/5/24(月) 22:19 -
----
西早稲田の古書店街に行くのは何年ぶりでしょう。15年ぶりぐらいかもしれません。
なんとなく足が遠のいていたけれど、30円均一文庫があるなど、嬉しい古書街です。

思っていたよりも、古書店が多かったように思いました。五十嵐書店がきれいでびっくり。

神保町では、自分に関係のありそうな店にしか入らないけれど、早稲田では、いちおう店内に入って眺めます。

新村猛『「広辞苑」物語』150円を保護。誰に進呈しようかな。



【112】
Re:東京での学会時の西早稲田
 岡島昭浩
 - 04/5/25(火) 18:55 -
----
渥美書店は昔から好きなところです。
今回も、面白いものを見つけ、私のよく買う値段よりはやや高いけれど購入しました。

佐藤寛『[まいらせそろ]文範』明治26年
「まいらせそろ」は、
http://www.aozora.gr.jp/gaiji0213/kigou/mairasesoro.gif
 「おのれ曩に、候文範を著して」だそうですが、これも見たいところです。

古書現世は、最近は目録を送ってもらっていませんが、ここも面白いところで、店の方も、書誌関係の本が集めてあって、楽しめました。紀田順一郎『本の環境学』のカバーなしを100円コーナーに転がしてあるのが(カバー付きはそれらしいところにあり)、好もしく感じました。



【118】
Re:東京での学会時の神田古書会館
 岡島昭浩
 - 04/5/27(木) 21:33 -
----
▼岡島昭浩:
「篠崎東海『和學辨』でもなく」と書きましたが、よくよく見るとこれがよいものでした。

「伴氏所蔵」「伴印」の蔵書印を見落としていました。伴信友です。少ないながら、書き込みもあります。「此論取ニタラス」とか。



【210】
Re:古本屋めぐり
 岡島昭浩
 - 04/7/3(土) 9:17 -
----
しまった。昨日からOMMで古書市だった。
明日まで、ということで、行けるかな?
http://www.jade.dti.ne.jp/~kosho/2004/20040702_omm_top.htm



【211】
Re:古本屋めぐり
 佐藤
 - 04/7/3(土) 16:00 -
----
うう、日付だけはケータイにメモしたのに、忘れてました(意味がない……)。

>http://www.jade.dti.ne.jp/~kosho/2004/20040702_omm_top.htm

お店の数が半端じゃないですね。見取り図を見ると1店あたりの台数は少ないのかな。岡田書店の「和本大山よりどり均一」が気になりますね〜。うううん、どうしよう。(^^;)



【212】
Re:OMM古書市
 岡島昭浩
 - 04/7/4(日) 18:48 -
----
短い時間で、しかも子供連れですが、一応行って参りました。

昨年と同じ会場だと思うのですが、やや会場を余らせている感じでした。岡田書店の500円均一和本では、三冊のみ購入。うち2冊は明治本。

去年と違って、クラッシックが流れていました。「古本音頭」が流れていないのは寂しいな、と思ったのですが、一度流されました。いざ流れるとちょっとうるさいかも。「皆様からのご要望により発売が決定」とのことです。ステロタイプの古本屋像の資料としてはよいかもしれません。

太平洋クラブのユニフォーム姿の東尾修・加藤初が表紙という、週刊ベースボールに心動かされたのですが、2000円。ちょっとそこまでは。

#京都百万遍などの古書市のようには子供本コーナーがなく、ちと困りました。



【213】
Re:OMM古書市
 岡島昭浩
 - 04/7/4(日) 21:29 -
----
『国定常用新訂漢字 模範いろは辞典』というのを買いました。
表紙には、「文学士植松安監修」とあります。扉と本文冒頭には、「東京府立教育会 吉見文雄編」。刊記には「著者 大野隆吉」。
昭和二年拾月拾五日発行、大盛堂書店 746頁



【214】
Re:OMM古書市
 岡島昭浩
 - 04/7/4(日) 23:11 -
----
刊記はないけれど、宝暦の『謡字引』中本。500円。

最新法律経済熟語大辞典 昭和三年七月十五日 五版発行。東京法曹閣編輯部(刊記)、法曹閣編纂部(背表紙)。
『辞書解題辞典』にみえる編者、長沢光夫の名なし。



【219】
Re:OMM古書市
 佐藤
 - 04/7/6(火) 21:20 -
----
▼岡島昭浩さん:
>『国定常用新訂漢字 模範いろは辞典』というのを買いました。


買い物があって何よりでした。所持するところの『模範音引 いろは引大辞典』(大町桂月閲、石井敏著。大正13)は、羊頭狗肉というか、内題を掲げるそばから(?)
   『あ』
  アー   嗚呼〔吁、嗟、噫〕
  アイ   唯 〔──と応(こた)へる〕
   ……
 などと五十音順に始めてくれるカワイイ奴です(「イロハ索引」はあり)。御覧のとおり、語釈をきちんと掲げないものも多く、いい加減なものです。『模範いろは辞典』はいかがでしょうか? お手すきのおりで結構です。
 a 近代国語辞書風の語釈があるかどうか
 b ペン字、または筆書きでの書体表示(見本、手本?)がある
 c イロハ順ですよね(汗)。純イロハ順か、仮名数を考慮したイロハ順か
 d その他、お気づきのことなど



【221】
五十音順いろは辞典
 skid
 - 04/7/6(火) 22:36 -
----
▼佐藤さん:
>所持するところの『模範音引 いろは引大辞典』(大町桂月閲、石井敏著。大正13)は、羊頭狗肉というか、内題を掲げるそばから(?)
>   『あ』
>  アー   嗚呼〔吁、嗟、噫〕
>  アイ   唯 〔──と応(こた)へる〕
>   ……
> などと五十音順に始めてくれるカワイイ奴です(「イロハ索引」はあり)。


似たようなことが五十音順の『模範 いろは新辞典』(大町桂月、近代文芸社、昭和3年)というやつにもあります。
でも、実は『大正 新実用辞典』(水島慎次郎、成文堂、大正3年)の改題本です。
  あ【阿】美称に用ひ又親みていふときのことば。
  あゝ【吁】おどろく時又怪しむときのことば。

大正から昭和初期にかけて、けっこう改題本が横行していたようです。
昭和5年から10年にかけて出た、内容が同じなのに書名が違う国語辞典を10冊持っています。



【222】
いろは辞典
 岡島昭浩
 - 04/7/6(火) 23:41 -
----
▼佐藤さん:
>買い物があって何よりでした。所持するところの『模範音引 いろは引大辞典』(大町桂月閲、石井敏著。大正13)は、羊頭狗肉というか、内題を掲げるそばから(?)
>   『あ』
>  アー   嗚呼〔吁、嗟、噫〕
>  アイ   唯 〔──と応(こた)へる〕
>   ……
> などと五十音順に始めてくれるカワイイ奴です(「イロハ索引」はあり)。


なるほど、『辞書解題辞典』に、
模範いろは新辞典 大町桂月閲 近代文芸社 昭三・二 八一六頁 147×85 一円五〇銭 縦二組 五十音順。

とあるのに通じそうですね。

『国定常用新訂漢字 模範いろは辞典』は、

> a 近代国語辞書風の語釈があるかどうか


一応は、あります。
 イーグル 〔Eagle〕鷲・わし
  :
 いゐき 〔異域〕外國
 いゐん 〔醫院〕病人をなほす所
 ゐゐん 〔委員〕事をまかされた人
程度です。「必要の場合には、二行に亘って解釈したものも亦極めて少くない」のだそうです。

> b ペン字、または筆書きでの書体表示(見本、手本?)がある


これは、ありません。

> c イロハ順ですよね(汗)。純イロハ順か、仮名数を考慮したイロハ順か


一 本書所載の言葉は頭字二字目三字目以下すべて「いろは」順なり。
一 同音に発音するものはすべて同所にて引かる。
  い・ゐ・ひ(いと発音するもの)は「い」の部
  え・ゑ・へ(えと発音するもの)は「え」の部
に収めたり。

です。

> d その他、お気づきのことなど


「語数が殆ど四萬有餘」ということです。746頁。縦三段組。壱圓拾銭。最後の項は「すんぜんしゃくま 寸善尺魔」。「五十音 索引」あります。



【223】
昭和のいろは辞典
 岡島昭浩
 - 04/7/7(水) 0:06 -
----
▼佐藤さん:

> c イロハ順ですよね(汗)。純イロハ順か、仮名数を考慮したイロハ順か


早引き方式で思い出すのが、『新案記憶式 和漢英活用辞典』(小島茂雄著 耕文堂 大九・四)です。大正11.1.15の11版を持ってます。
語辞の配列順序は邦人の最も習熟せるイロハ順を以てし 且つ検索記憶に便せんが為め発音語数によりて一字乃至七字以下に区分して之を配列せり

ということですが、同字数の中ではまたイロハ順です。イイ、イロ、イバ、イボ、イト、イド、イチ、イヂ……、イイネ、イイン、イロリ、イロカ、イロウ、イロケ、イロメ、イロン、イハイ……。「七字」とあるけれど、「六字以上」までが普通のよう。

最後の項目は、「スイジョウケイサツ 水上警察 Water-police(ウォーターポリス).」



【225】
Re:五十音順いろは辞典
 佐藤
 - 04/7/7(水) 0:50 -
----
>似たようなことが五十音順の『模範 いろは新辞典』(大町桂月、近代文芸社、昭和3年)というやつにもあります。
>でも、実は『大正 新実用辞典』(水島慎次郎、成文堂、大正3年)の改題本です。
>  あ【阿】美称に用ひ又親みていふときのことば。
>  あゝ【吁】おどろく時又怪しむときのことば。


おお、やはりご存じでしたか。情報、ありがとうございました。それにしても大町桂月というお人は…… 
五十音順なのに「いろは辞典」と称するメンタリティが解せませんよね。なぜなんだろう。「凡例」にも五十音順を採用とうたっているのに。んんん。



【228】
昭和のいろは辞典
 岡島昭浩
 - 04/7/7(水) 16:15 -
----
国語研究会編『模範 いろは大辞典』大阪 松栄館
 本文冒頭には「交盛館編輯部編 樗渓的子礼修」
 昭和5年6月20日 30版発行
 2頁+4頁+30頁+1200頁+36頁

> a 近代国語辞書風の語釈があるかどうか

 一応あり。

> b ペン字、または筆書きでの書体表示(見本、手本?)がある

 なし

> c 純イロハ順か、仮名数を考慮したイロハ順か

 2字目までは純いろは順、そのあとは文字数順。(凡例ではそこまで記さず)

> d その他、お気づきのことなど

 最後の項目は「すんすん 寸々」。上覧「日用語類」(本文では「日用叢話」)あり。



【230】
Re:昭和のいろは辞典
 岡島昭浩
 - 04/7/7(水) 17:07 -
----
帝国国語研究会編『新式 日用いろは辞典』三星社出版部 昭和5.3.10発行
308頁 特価六拾五銭(定価 金壱円三十銭)六段

> a 近代国語辞書風の語釈があるかどうか

 ひらがなのみの語釈あり。例「夷《い》 ゑびす」

> b ペン字、または筆書きでの書体表示(見本、手本?)がある

 なし

> c 純イロハ順か、仮名数を考慮したイロハ順か

 2字目までは純いろは順、そのあとは不定。

> d その他、お気づきのことなど

 最後の項目は「すんれつ 寸裂 ずた/\にさく」。
印面の釘あり。



【231】
Re:昭和のいろは辞典
 skid
 - 04/7/7(水) 17:52 -
----
▼岡島昭浩さん:
>国語研究会編『模範 いろは大辞典』大阪 松栄館
> 本文冒頭には「交盛館編輯部編 樗渓的子礼修」
> 昭和5年6月20日 30版発行
> 2頁+4頁+30頁+1200頁+36頁


これの元版は『模範 日用いろは大辞典』(交盛館)です。
大正5年12月5日発行
大正11年4月20日 23版



【233】
Re:昭和のいろは辞典
 佐藤
 - 04/7/8(木) 0:00 -
----
▼岡島昭浩さん:
>帝国国語研究会編『新式 日用いろは辞典』三星社出版部 昭和5.3.10発行
>308頁 特価六拾五銭(定価 金壱円三十銭)六段

>> a 近代国語辞書風の語釈があるかどうか

> ひらがなのみの語釈あり。例「夷《い》 ゑびす」

>> b ペン字、または筆書きでの書体表示(見本、手本?)がある

> なし

>> c 純イロハ順か、仮名数を考慮したイロハ順か

> 2字目までは純いろは順、そのあとは不定。


種々のご教示感謝いたします。節用集の終焉をどこに置くかで、いろいろ考えていますが、『昭和 いろは字典』(昭和3年刊)からどれほど後に行くかが目下の関心事。
http://www.gifu-u.ac.jp/~satopy/syouwa.jpg
そのためには、節用集の定義、が必要になるわけですが、細かいことはさておき、とりあえずab、ついでcが条件かなと思っているところです。



【236】
Re:五十音順いろは辞典
 skid
 - 04/7/8(木) 12:24 -
----
もうひとつありました。
『三体文字くづし方入 いろは新辞典』
国語研究会編、博潮社出版部
昭和8年7月10日発行

「三体文字〔の〕くづし方」は付録として収録。
内題と付録のタイトルに〔の〕が入っています。



【238】
Re:五十音順いろは辞典
 畠中敏彦
 - 04/7/9(金) 22:55 -
----
▼佐藤さん:
>五十音順なのに「いろは辞典」と称するメンタリティが解せませんよね。なぜなんだろう。「凡例」にも五十音順を採用とうたっているのに。んんん。


私は、ある組織の幹事をしている関係から、その組織の名簿を作成(更新)しておりまが、当初の「・・・名簿(いろは順)」を(五十音順)に訂正しました。つまり、
・いろは順・・・やや砕けた表現
・五十音順・・・やや厳粛な表現 
との印象を受けたからです。
佐藤さんのご覧の書籍は、「五十音順辞典」よりも「いろは辞典」の方が、書名としてふさわしい、とされたのではないでしょうか。



【239】
Re:五十音順いろは辞典
 畠中敏彦
 - 04/7/9(金) 23:02 -
----
▼畠中敏彦さん:
当初の「・・・名簿(いろは順)」を(五十音順)に訂正しました。

すみません、勘違いしておりました。上記を下記に訂正。

『当初の「・・・名簿(あいうえお順)」を(五十音順)に訂正しました。』



【240】
Re:昭和のいろは辞典
 skid
 - 04/7/10(土) 10:31 -
----
▼佐藤さん:
>節用集の終焉をどこに置くかで、いろいろ考えていますが、『昭和 いろは字典』(昭和3年刊)からどれほど後に行くかが目下の関心事。
>http://www.gifu-u.ac.jp/~satopy/syouwa.jpg


この字典は、最初に明治33年『新撰活版 広益いろは字典』(鍾美堂)として出版されたものですね。
大正15年には『大正いろは字典』(明文館)になっていますが、柱題は「新撰活版 明治早引大全」ですから、その前にも書名を変えて発行されていたようです。



【243】
Re:昭和のいろは辞典
 skid
 - 04/7/10(土) 22:14 -
----
>この字典は、最初に明治33年『新撰活版 広益いろは字典』(鍾美堂)として出版されたものですね。


奥付には、
明治33年8月5日印刷
同  年8月7日第11版
というように第11版から始まっています。
活字で組んだ最初の版数なのかもしれません。

また、同じ日付の第11版から始まっているものに『新撰活版 活用いろは字典』があります。
版元は同じ鍾美堂ですが、編輯者は後藤常太郎。
字詰が行書活字のひとつ分だけ少なく、行数も1行少ないのに、丁数は50丁少ない200丁です。

さらに、同じ内容を改編して字詰・行数の違うものに『新式いろは辞典』(成象堂)があります。
こちらは洋装本で、本文749頁。
大正6年3月20日発行
昭和6年1月20日発行
の2冊を持っています。



【244】
記録更新?
 佐藤
 - 04/7/10(土) 23:19 -
----
▼skidさん:
>さらに、同じ内容を改編して字詰・行数の違うものに『新式いろは辞典』(成象堂)があります。
>こちらは洋装本で、本文749頁。
>大正6年3月20日発行
>昭和6年1月20日発行
>の2冊を持っています。


情報、ありがとうございました。
ちょっと読み間違えてるかもしれませんので、確認させてください。
 ・原則として語釈がなく、
 ・語頭イロハ×仮名字数順で、
 ・書体表示が明朝(楷書)のほかに、行書・草書(筆・ペン字)がある
ものでしょうか(最後の行草書表示だけがないのでしょうか)。



【245】
Re:記録更新?
 skid
 - 04/7/11(日) 0:40 -
----
▼佐藤さん:
> ・原則として語釈がなく、
> ・語頭イロハ×仮名字数順で、
> ・書体表示が明朝(楷書)のほかに、行書・草書(筆・ペン字)がある
>ものでしょうか(最後の行草書表示だけがないのでしょうか)。


『新式いろは辞典』は『昭和いろは字典』と同じ形式です。
まったく同一のものかと思うぐらいそっくりなものです。

ちょっと整理しますと、まったく同一のものは、
  『新撰活版 広益いろは字典』(鍾美堂)
  =『大正 いろは字典』(明文館)
  =『昭和 いろは字典』
形式は同じだけれど、分量を少し減らしてあるものは、
  『新撰活版 広益いろは字典』(鍾美堂)
  >『新式いろは辞典』(成象堂)
  >『新撰活版 活用いろは字典』(鍾美堂)
という関係です。



【246】
記録更新!\(^o^)/
 佐藤
 - 04/7/11(日) 1:54 -
----
▼skidさん:
>『新式いろは辞典』は『昭和いろは字典』と同じ形式です。
>まったく同一のものかと思うぐらいそっくりなものです。


おお! やりました、記録更新ですね。昭和3年から昭和6年(1月20日)へ! お調べ、ご教示、ありがとうございました。
  ※『昭和〜』再掲:http://www.gifu-u.ac.jp/~satopy/syouwa.jpg



【274】
現代語の源氏物語
 岡島昭浩
 - 04/8/4(水) 9:48 -
----
日本書房で買ったものですが、現代語の源氏物語関係(梗概も含め)なので、ここに続けます。

笹川臨風・日向甲などの通俗教育叢書・あるいは通俗叢書には、いろいろあるようですが、源氏物語もありました。表紙の題名は『新釋 源氏物語』、扉題は「源氏物語」、内題は「通俗源氏物語」。扉では「教育普及会」、本文冒頭では「通俗教育普及会」。
「執筆者」は「小山龍之輔」。刊記では「編者 成光館編輯部」昭和7.11.5 17版発行
(大正5.2.15発行)。成光舘出版部
これは梗概で、時折原文が出てきます。
時代はいつとはわからないが、或帝に多くの妃嬪《きさき》が仕へてゐた。其中で、身分はそれ程よくないが、後宮《こうぎう》三千の寵を一身に聚《あつ》めて、時めいた女官《ぢょかん》があった。




【275】
Re:現代語の源氏物語
 岡島昭浩
 - 04/8/4(水) 10:07 -
----
地球文庫2001、2002とある『新抄 源氏物語』I・IIの二冊を購入しました。「はしがき」によればIIIまであるということです。表紙に「PL出版社」とありますが、刊記などは見当たりません。表紙には他に「要約世界大成」「文学芸術篇」「撰修 仲小路明良」などと見えます。一冊目の半分近くまでが、「紫女の半生」「物語の構想」にあてられ、現代語訳は150頁から始まります。
いずれの大御代でございましたか、女御・更衣が多勢お仕えしておられます中に、とりわけ貴い御身分と申すほどではございませんものの、すぐれてそのころ花やいだ方が居られました。




【276】
Re:現代語の源氏物語
 岡島昭浩
 - 04/8/4(水) 10:28 -
----
現代語ではなく、英語なのですがついでに。末松謙澄のもの。抄訳の抄出です。KIRI-TSUBO,HAHAKI-GI,WOOTZ-SEMI。(末松謙澄は、福岡県人ですから「はわく」という語を持っていたと思われますが、HAWAKI-GIではなくHAHAKI-GIなんですね。)
昭和9.2.13 三角社。

なお、
http://www.yorku.ca/inpar/Japanese.html
ここに、PDFファイルがありますが、セキュリティで印刷しか許可されていませんので、コピー&ペーストなどができないのが残念です。



【295】
京都夏の古本市
 佐藤
 - 04/8/17(火) 5:29 -
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う〜ん、買い物、ありませんでした。
節用集は厚手のものが目立ちましたが、既蔵のものばかりで、状態ももう一つ。また、見覚えのあるものが多かった気も。春の会からの持ち越しでしょうか。秋にリセットされることを祈るばかりです。



【296】
Re:京都夏の古本市
 岡島昭浩
 - 04/8/17(火) 14:37 -
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▼佐藤さん:
>う〜ん、買い物、ありませんでした。


私の方は、雑本を中心に買いましたが、これぞ、というのはありませんでしたね。

土岐善麿『文藝遊狂』(立命館出版部 昭和7.7.20)を、目次の「俳句とローマ字に就て」に引かれて、(100円だから)購入したのですが、「インチキ語源考」というのもあり、嬉しく思っています。他に、窪田空穂訳の改造文庫版源氏物語の3を買って(100円)、1-6(真木柱まで)の蔵となったこと、戦前の新聞縮刷版を一冊手元に置いておけること、ぐらいでしょうか。

今回は、三密堂があまり楽しめなかったように思いました。去年の秋は楽しませて貰いましたが。

次は、近鉄奈良が19日からですね。



【409】
Re:古本屋めぐり ブックオフ
 佐藤
 - 04/9/28(火) 16:20 -
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久しぶりに岐阜駅西方のブックオフに。『言語学大辞典』は1・2・4巻(の3冊だったかな)がまだ売れ残っていて、それぞれ4500円でした。



【458】
Re:ようやく天王寺
 岡島昭浩
 - 04/10/11(月) 23:21 -
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秋の天王寺に行って来ました。

百円均一コーナーが、やや物足りなく感じました。水濡れ本が多い感じで、なんと百円コーナーでは、一冊も買いませんでした。これは大変珍しいことです。

ただ、その隣で、建築物取り壊しの際に救出した本、というコーナーがあり、文庫本が50円で売っていまして、ここでは、ついつい沢山買ってしまいました。

あと、比較的まともな買い物としては、洋装本に改装した江戸期の節用集で三つ切り本、題名は見あたらないし、刊記もない、というもの。「にごる」で分類しており、佐藤さんのページにある、『大成正字通』であるようです。巻末の年号は享和の二まではありますが、三は印刷なのか手書きなのか、はっきりしません。それから、凡例3丁はありますが目次はありません。



【460】
Re:ようやく天王寺
 佐藤
 - 04/10/12(火) 17:50 -
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▼岡島昭浩さん:
>あと、比較的まともな買い物としては、洋装本に改装した江戸期の節用集で三つ切り本、題名は見あたらないし、刊記もない、というもの。「にごる」で分類しており、佐藤さんのページにある、『大成正字通』であるようです。巻末の年号は享和の二まではありますが、三は印刷なのか手書きなのか、はっきりしません。それから、凡例3丁はありますが目次はありません。


 私のは「享和」の「三」まで印刷されています。お迷いのように「三」は不安定な記し(刻み)ぶりでした。版面がまずまず綺麗だったので何とか印刷だと判じられました。

 長音や四つ仮名などは、仮名本位ではなく発音本位にまとめるのが本書の特徴ですが、目次がないとこの工夫が生かしきれません。たとえば、目次(丁付合文)の一行めは次のようです。
   イ 一  イウ三百五  ロ 十九  ロウ 廿三
 「イウ」ではじまる語は、イ部ではなく305丁目、すなわちユ部の後にあることを示しています。また、ロウ部の廿三丁には「ラウ」ではじまる語も入ることになります。目次を見れば分かることですが、ないとなると…… 使い込んでの破損なら仕方ありませんが、旧蔵者が「単にイロハ順を示しただけだろう」と思って省いたのなら残念ですね。いやいや、気づかないのが普通なのかもしれません。



【466】
大成正字通(Re:ようやく天王寺)
 岡島昭浩
 - 04/10/14(木) 9:35 -
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▼佐藤さん:
>▼岡島昭浩:

>>巻末の年号は享和の二まではありますが、三は印刷なのか手書きなのか、はっきりしません。それから、凡例3丁はありますが目次はありません。

>
> 私のは「享和」の「三」まで印刷されています。お迷いのように「三」は不安定な記し(刻み)ぶりでした。版面がまずまず綺麗だったので何とか印刷だと判じられました。


ありがとうございます。

> 長音や四つ仮名などは、仮名本位ではなく発音本位にまとめるのが本書の特徴ですが、目次がないとこの工夫が生かしきれません。たとえば、目次(丁付合文)の一行めは次のようです。
>   イ 一  イウ三百五  ロ 十九  ロウ 廿三
> 「イウ」ではじまる語は、イ部ではなく305丁目、すなわちユ部の後にあることを示しています。


本文の最初、「(い)いういふは別に有」というのを見ただけでは、「い」の後半部にでも「いう いふ」が纏めてあるのかと思っておりました。



【523】
2004秋 百万遍
 佐藤
 - 04/11/1(月) 20:18 -
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初日(10/30)から出かけましたが、雨がぱらついたこともあって、古文書の山から廃棄寸前の本を救い出すこともできず、逃げ帰って参りました。これまで、秋の会は何かしら収穫があったのですが、『文選字引』(享保初、寛政刊)を500円で買うのみでした。もちろん、春・夏ももう一つ。今年の京都とは相性が良くなかったようです。



【525】
Re:2004秋 百万遍
 岡島昭浩
 - 04/11/3(水) 19:00 -
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文化の日、子連れで行って参りました。

もう雑本しか買えない私です。
着いたときには、もう100円均一コーナーは、一袋500円コーナーになっていました。某近世文学研究者旧蔵の雑誌や抜刷が大量に置いてありましたが、珍しいものはそれほどはない。でも、ついつい袋に詰めてしまう。抜刷には謹呈の際の手紙なども挟まれたりしているものもありました。

退屈していた息子に、「お待たせ。そろそろ帰ろう」と門を出たところで「思文閣文化祭」のチラシを渡される。息子にわびて会場に行く。
そこで、50円で買った『クイズ字典』(昭和35.5.30 学校出版)が面白い。クロスワード向けの本らしいのだが、
 この「字典」は、「クイズ」の正解に必要な、日本語。外来語、地名、人名、史蹟名などを「現代教育仮名使い法」によって2字語(カタ・カネ・イネ)から5字語(シアサッテ・サザメユキ)までを、洩れなく収録しました。
というもので、84000語を収めたとのことです。「10字語までの14万語内外を編集」したということです。



【538】
熊本、鶴屋古書市(Re:古本屋めぐり)
 岡島昭浩
 - 04/11/13(土) 23:10 -
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熊本の学会で、鶴屋の古書市に行くことが出来ました。『明治小学児童文集』というのが10冊あり、結構安いものだと思ったのですが、開いてみると、昭和初年のものであり「明治」というのは、明治学園のことだった。福岡県戸畑市。私が小学3・4年生の頃に、近くに住んでいて、通っている人も近所に居た。そうした懐かしさもあり、購入。

昭和3.3.19の第十一編に、何を言われても「豚のしっぽ」とだけ答える遊びがのっていた。p76

全般的に郷土史関係のものが多くありました。
福岡の幻邑堂さんが懐かしくて声を掛ける。



【580】
Re:新本屋で岩波の品切れ本を買っていた頃
 岡島昭浩
 - 04/12/11(土) 0:58 -
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岩波文庫の『ザビエル書簡抄』は、下しか持っていなかったのだなぁと手に取ると、なんとこれは、修士一年の時(1983)に秋の学会があった富山大学の生協で購入したものであることが判明。



【730】
Re:古本屋めぐり
 岡島昭浩
 - 05/2/16(水) 21:59 -
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「てんま天神梅まつり古書即売会」に行くのを忘れていたなぁ、と昨日思ったのでしたが、なんと今日までやっていた、と今、判明。昨夜のうちに調べればよかったのだが、昨夜は電源コードを忘れて帰ってしまい、パソコンをほんの少ししか使えなかったのだ。

さて、先週末は、東京出張で、神保町の古書会館と、西部古書会館に行った。昨年の同じ用事での出張の際には、新宿古書展於神保町、にも行けたのだが、今回はそれが出来ずに残念。夜行急行銀河で帰阪。



【734】
Re:新本屋で岩波の品切れ本を買っていた頃
 岡島昭浩
 - 05/2/24(木) 23:28 -
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岩波文庫の『杜詩』八冊が復刊と聞き、多分これはどこかの新本屋で売れ残っていたのをどっさり買ったのではなかったか、と思い、見てみたら、新本屋で買ったのは三冊のみ(1977-8年頃の7-8刷を1982年に)で、あとは古本屋で買い集めたようだ。

新本屋に残っていたのを買ったのは『三国志』であるようで、「友泉亭」と書いてあるが、これは九大教養部のだいぶ南の方だ。なぜそんなところの本屋に行ったのだろう。古本屋めぐりのついでに寄ったのだろうか。これは1976年頃の刷だが、それを1980-81年頃に買ったものと思う。

そんな町はずれの新本屋にも岩波文庫があった、そういう時代の話。

漆山又四郎の『杜詩』は全四冊。今、第一巻が見当たらないが、どこかにあるはず。漆山天童は1948年没だから、これも、うわづら候補。


店員さんのことば(お箸は何膳)

【699】
店員さんのことば(お箸は何膳)
 Yeemar
 - 05/1/23(日) 23:29 -
----
別スレッド「私の「一万円から」 #」や、旧会議室「名古屋で聴いた完了態?」に密接に関連します。

「セブンイレブン」「ローソン」などで弁当なんかを買うと、店員さんが「お箸は何膳おつけいたしましょうか」などと言います。「何膳」とは奥ゆかしい日本語、「何本」とは言わないのだな、と妙に感心します。前はそうではなかったように記憶します。ではいつごろから変わったかというと、ここ何年か、というくらいで、具体的な記憶がありません。

2002.11.01の「朝日新聞」声欄(西部版)を見ると、
 コンビニで若い店員さん相手に、「おはしを一膳(ぜん)下さいね」と言っても通じないことを知ったのは最近のこと。この人たちのおはしの数え方は、「1本、2本」。割りばしは割る前の状態で「1本」。おでんを挟む菜ばしは1膳を「2本」と数える。何だかそれが当たり前で、数え方の法則とでも思えてくる。
とあります(数字を含め表記はデーベースによる)。こういったいくつかの指摘が契機になって変わったのでしょうか。または、まさにこの投書そのものが契機だったりして。

なお、この投書は「皆さん、これから寒さが厳しくなりますが、手袋の数え方、知っていますか」で結ばれています。『新明解国語辞典』では、手袋は「左右で一双・一組:一枚」。



【720】
Re:店員さんのことば(よろしかったでしょうか)
 Yeemar
 - 05/2/8(火) 23:06 -
----
●2002.04.26「北海道クローズアップ・“よろしかったでしょうか”は変ですか?」(NHK北海道)

というテレビ番組があったようです。私は見たわけではありませんが、NHK放送番組審議会・北海道地方のホームページにて
○4月26日(金)の北海道クローズアップ「“よろしかったでしょうか”は変ですか?」は、最近耳にすることが増えた“よろしかったでしょうか”という言葉の由来について、興味深く見ることができた。北海道弁が全国に広がっていったものではないかという仮説に驚いた。全国チェーンの居酒屋での語法や、NHK放送文化研究所の調査など、よく取材していた。
とありました。北海道で発祥したという説は、NHK「気になることば」でも紹介されました(旧会議室「名古屋で聴いた完了態?」参照)



【728】
Re:店員さんのことば(よろしかったでしょうか)
 Yeemar
 - 05/2/12(土) 2:15 -
----
旧会議室「名古屋で聴いた完了態?」の最後のほう

> いわゆる「ファミコン言葉」とあるが、私は知りませんでした。いつごろから使われたことば?


と書きましたが、NHK放送研究所の塩田雄大氏であったようです。氏は「ファミ・コン方言」としています。(「「よろしかったでしょうか」はよろしくないか〜平成13年度(後半)ことばのゆれ全国調査から(1)〜」(『放送研究と調査』2002.03 p.71)

塩田氏のコメントが日経新聞等に紹介されて広まったものでしょう。

ついでに、ロイヤルホストが従業員に示した張り紙は「日本経済新聞社 NIKKEI NET ウイークエンド版・食べ物新日本奇行」に紹介されています(画像はこちら)。オリジナル版ではなく2003.01.15の新版のようです。



【729】
Re:店員さんのことば(よろしかったでしょうか)
 Yeemar
 - 05/2/12(土) 2:45 -
----
> オリジナル版ではなく2003.01.15の新版のようです。


いや、時期から見て、2003.01.15で初めて5大禁止語に触れたのでしょう。

この張り紙は2003.10.08 NHK「お元気ですか日本列島」の「気になることば」でも取り上げられました(私の「一万円から」)。


ニュースで耳に付いたことば――ランティシ氏とクバイシ師

【18】
ニュースで耳に付いたことば――ランティシ氏とクバイシ師
 岡島昭浩
 - 04/4/18(日) 18:21 -
----
TBS系の昼のニュースで、長峰アナのこの二人の発音。

ランティシ師は、シが無声化しているのか、ほぼ「ランティッシ」から「ランティシ」に聞こえるが、クバイシ師は、シを無声化させずに、はっきりと「クバイシシ」と聞こえる。

「ランティ氏」と誤解しているおそれもあるが、そうでないとすると、直前の「バイ」と「ティ」の違いが原因であろうか。

と、思ったがネット配信で聞くと、クバイシシと無声化させずに言っているのは別のアナウンサーであった。

屑情報でしたが、諸アナウンサーの発音を聞いてみると面白いことです。



【59】
ニュースで耳に付いたことば――大型連休と黄金週間
 岡島昭浩
 - 04/5/9(日) 12:02 -
----
NHKが大型連休を使うのは気付いておりましたが、黄金週間(ゴールデンウィーク)は、別に商標登録ではないですよね。(NHKと商標

映画に由来する言い方をテレビ界で避けるのなら民放に波及してもよさそうなのに、なぜNHKは、商標に甘くなった今でも、これを避けるのでしょうか。



【60】
Re:ニュースで耳に付いたことば――大型連休と黄金...
 岡島昭浩
 - 04/5/9(日) 12:52 -
----
▼岡島昭浩さん:

>映画に由来する言い方をテレビ界で避けるのなら民放に波及してもよさそうなのに、なぜNHKは、商標に甘くなった今でも、これを避けるのでしょうか。


書いてありました。
http://www.nhk.or.jp/bunken/nl/n022-q.html



【673】
Re:ニュースで耳に付いたことば――大型連休と黄金...
 Yeemar
 - 05/1/12(水) 15:22 -
----
NHKと商標 #」にリンクしておきます。



【690】
Re:ニュースで耳に付いたことば――「黒人」改め「...
 岡島昭浩
 - 05/1/20(木) 22:14 -
----
アメリカ合衆国の国務長官、朝までは「黒人女性初」と言っていたのに、午後のニュースからは「アフリカ系女性初」となったようでした。NHKの場合。



【693】
Re:ニュースで耳に付いたことば――「黒人」改め「...
 道浦俊彦
 - 05/1/21(金) 7:34 -
----
去年11月、「平成ことば事情1959・アフリカ系アメリカ人」に書きました。
アメリカ大統領選挙も終わってブッシュ大統領の再選が決まったときに、同時に行われた上院議員選挙で、黒人としては3人目の上院議員が誕生。これを報じた11月4日の朝日新聞の表現が、
「『アフリカ系米国人』としては3人目の上院議員当選」
と書かれていました。ほかの新聞(読売と日経)は、
「『黒人』で3人目」
という表現。朝日新聞ではもう「黒人」という表現は使わないのか?も聞いたところ、
「明確な使い分けが社内にあるというわけではなく、『黒人』も使っている。」
とのことでした。しかも「黒人」の方が圧倒的に多いそうで、だからこそ今回の「アフリカ系米国人」が目立ったと。今回は「出自」がポイントになっているために「アフリカ系」と明示したのではないか、とのことでした。
ただ、外見は白人でも混血していれば「黒人」として扱われるのか?といった問題や、アメリカ国内でも「Black」を差別語ととらえて(「Nigro」は言うまでもなく差別的呼称)
「African−American」
「Afro−American」
などと言い換える傾向もあることは、今後、踏まえていかなくてはならないかもしれません。
私は大学時代から男声合唱をやっているのですが、学生時代は「黒人霊歌」を、
「ニグロ・スピリッチュアルズ」
と呼んでいましたが、最近の合唱の演奏会のプログラムなどを見ていると、
「アフロ・アメリカン・スピリッチュアルズ」
という表記が増えているようです。
また、CNNとかNBC、ABCといったアメリカの放送局のニュースの同時通訳の人の日本語を聞いていると、「黒人」とは言わずに、
「アフリカ系アメリカ人」
と訳していることが多いように思います。
翌日(11月5日)の読売新聞(だったと思う)でも、「アフリカ系アメリカ人」という記述を見つけたので、まだ、各社とも使い分けが厳密に行われている状態ではないようです。



【694】
Re:ニュースで耳に付いたことば――「黒人」改め「...
 道浦俊彦
 - 05/1/21(金) 7:38 -
----
ただ、こないだ読んだ本には、黒人の中でも、もともと住んでる黒人と、最近移住してきた「カリブ海系の黒人」などに対して差別感情があるようで、ただ黒人と言うだけで「アフリカ系アメリカ人」と一くくりに呼ぶことに関しては、これまでそう呼ばれてきた人たちは、快く思っていないようです。周りから見るのとその渦中にある人たちとでは、微妙な温度差があるのだなと改めて感じました。



【695】
Re:ニュースで耳に付いたことば――「黒人」改め「...
 岡島昭浩
 - 05/1/21(金) 21:13 -
----
▼道浦俊彦さん:
>去年11月、「平成ことば事情1959・アフリカ系アメリカ人」に書きました。


http://mscw.msec.ne.jp/ytv-cgi/announce/kotoba/back/1901-2000/1956.html#4

拝見しました。

なお、私の記述は不正確でした。昨日昼過ぎ(1300か1330か1400か)のNHKラジオニュースで、「アフリカ系女性として初めて」という言い方を聞き、たしか「黒人女性初」と言っていたはずだが、と思ったのでした。



【697】
Re:ニュースで耳に付いたことば――「黒人」改め「...
 畠中敏彦
 - 05/1/22(土) 11:07 -
----
横からすみません。
以前、肌色について議論したことを思い出しました。
差別語問答(2002/7/7〜7/9の部分)

 → BBS_MSG_000218135502.html



【727】
「鎮圧」と「鎮火」
 畠中敏彦
 - 05/2/11(金) 21:16 -
----
北区のメタンガス噴出引火事故で、
TBSラジオは、「鎮圧」しましたと放送しておりました。
その後「鎮火」は火が消えることであり、今回のメタンガスの火(種?)は残っているので、鎮圧であるとアナウンサーが解説しておりました。
私は、このアナウンサーの説明にピンときませんでしたが、どうでしょう?
なお、その夜のNHKニュースでは「鎮火」を使用していました。


重音脱落

【723】
重音脱落
 Yeemar
 - 05/2/9(水) 7:41 -
----
旧会議室「日本国語大辞典に用例にないことば」のこのあたりで出ている話題です。

堀内孝雄「愛しき日々」(小椋佳作詞)にある「かたくなまで」の例がニュースで出てきました。
〔手嶋龍一ワシントン支局長〕〔フライシャー米報道官によれば〕イラクのサダム・フセイン大統領はアメリカの最後通告にはついに応じておらず、イラク国外へ逃亡を拒否する姿勢をかたくなまでに崩していない、としております。(「NHKニュース・対イラク最後通告期限切れ」 2003.03.20 11時ごろ)
手嶋氏の滑舌はあまりよくなく、ここも「かたくななまでに」の言い誤りという可能性もあります。しかし、2005.02.09に「Google」で検索すると、
  「"かたくなまでに"」=約 1,610 件
  「"かたくなまでの"」=約 599 件
  「"かたくな態度"」=約 30 件
ということです。「"かたくなまでに"」はタイプミスにしては多いようです。


草冠

【715】
草冠
 田島照生
 - 05/2/1(火) 13:34 -
----
いずれリンク切れになってしまうのでしょうが、こんな記事を見つけました。「残念ながら反響は全くありません」という結びが、ちょっと寂しいですが。

http://www.asahi.com/culture/update/0131/003.html

草冠といえば、「藝」の意で「芸」をつかう場合に、その草冠を四画に作り、「芸」の意で「芸」をつかう場合に、その草冠を三画に作るという人があるということを聞いたことがあるのですが、その意義がよく分りません。



【716】
Re:草冠
 Yeemar
 - 05/2/1(火) 19:16 -
----
▼田島照生さん:
>いずれリンク切れになってしまうのでしょうが、こんな記事を見つけました。


この記事は文字・漢字をよく取材されている記者・清水弟さんによるものですね。「朝日新聞」東京夕刊 2005.01.31 p.18では署名入りです。

私はなるほど画期的な試みだと思いました。ただ、記事に添えられている「茗」の写真がわかりにくいため、記事への読者の理解をさまたげているのではないでしょうか。

>草冠といえば、「藝」の意で「芸」をつかう場合に、その草冠を四画に作り、「芸」の意で「芸」をつかう場合に、その草冠を三画に作るという人があるということを聞いたことがあるのですが、その意義がよく分りません。


「芸」(ウン)の意で4画にする例を知っていますが、これは一般的なのでしょうか。

山川出版社『詳説日本史(新版)』(1984)p.55に「石上宅嗣は芸亭{うんてい}という図書館を作り」とあります。これは4画草冠です。1997年3月文部省検定済の『詳説日本史 改訂版』(2000)でもp.55に「石上宅嗣は芸亭{うんてい}という図書館をつくり」とあり、同様に4画草冠ですから、山川出版社の教科書で日本史を習った人は「芸亭」の「芸」を4画で書くはずです。

「『藝』の新字の『芸』ではなく、古くからあった『芸』です」という意味で、古さを出そうとして4画にしているのかなと、私なりに納得していました。



【717】
Re:草冠
 かねこっち
 - 05/2/2(水) 14:30 -
----
この話題は、お詳しい方がたくさんいらっしゃると思いますが、
明朝体活字においては「芸亭」の「芸」も昔から三画ではないで
しょうか。
大修館の大漢和辞典の見出し文字は明朝体ですが、これは多くこの
辞典のために拵えられた文字であるようです。
つまり4画と3画はデザイン差であって、違う文字ではない。

草冠、より古くは「艸」ですから6画なんでしょうし、大修館の
大漢和も6画のところにならんでいますね。
下記は大修館書店のウェブページですが、Q&Aの Q3050 に

> 「くさかんむり」が4画になっている漢字を見かけることがありますが、
>これを3画で書くと、間違いですか?

なる項目があります。
http://www.taishukan.co.jp/kanji/index.html



【718】
Re:草冠
 Yeemar
 - 05/2/2(水) 16:48 -
----
▼かねこっちさん:
>この話題は、お詳しい方がたくさんいらっしゃると思いますが、
>明朝体活字においては「芸亭」の「芸」も昔から三画ではないで
>しょうか。


昔の本では、草冠を3画で書く出版物(これが多数派でしょう)では、当然「芸亭」も3画草冠で書き、草冠を4画で書く出版物では、「芸亭」も4画草冠で書いたものと推測します。

ヘボン『和英語林集成』3版では、「芸臺(ウンタイ)」は4画草冠で書いてありますが、他の草冠(たとえば「草木(サウモク)」)も同様に4画であって、使い分けの意識はないようです。また、『大日本国語辞典』(昭和46年新装版31版。これは昭和14・16年の修訂版と同内容だと思いますが……)を見ると、「芸香(うんかう)」「芸閣(うんかく)」などは3画草冠ですが、他の草冠(例えば「蘊蓄」)も同様に3画で区別はありません。

『広辞苑』初版では「芸亭」は4画草冠で、「いかにもわざわざ鋳造しました」というぶかっこうな活字です。ところが、他の草冠(「蘊蓄」「菠薐草」「蘿葡」……)は依然3画なので、(無意味な?)区別が生じています。

『日本国語大辞典』初版の「芸亭」などは3画草冠で、これは他の草冠(例えば「蘊蓄」が3画なのと同様です。ところが、同辞典第2版に至って「芸亭」などは4画草冠になり、他の常用漢字表外字の草冠(「蘊蓄」「菠薐草」「蘿葡」……)が依然3画であるのと違いが生じています。こうなると、私にはわけがわかりません。

田島さんのご指摘の例は、「芸」(ウン・ゲイ)について、『日本国語大辞典』などとはまったく逆の書き分けをしている人がいるということですね。


引用者によって字句が変わること。「同文同種」「同種同文」

【698】
引用者によって字句が変わること。「同文同種」「...
 岡島昭浩
 - 05/1/23(日) 14:59 -
----
「同文同種」あるいは「同種同文」の用例を探していました。その際、上垣外憲一「黄遵憲『日本雑事詩』――清国知識人の明治日本観察――」(『国文学解釈と鑑賞』60-3(1995)特集 外国人の見た日本・日本人)で、小見出しに「同種同文の国」とあるのが目に留まりました。『日本雑事詩』の「原本」に見える長崎の詩を引用した後、その詩句の「桃源」から話を進め、
彼はこう結論する。「要するにいまの日本人はじつはわれらと同文、同種である。」
とし、「黄遵憲の言い出した同種同文という標語」と書いています。

黄遵憲が「同文同種」「同種同文」を作ったのであれば、おもしろいことだと思います。『日本雑事詩』の「原本」は1880年の刊で、かなり早い例ということになると思うのです。東亜同文会が出来たのが1898年で、毎日コミュニケーションズ『明治ニュース事典6』によれば、〔1902.1.20 報知新聞〕に、
近衛公は同文同種の義務を全うせんとしてこの院を設立して、今日の盛大を致したることを祝して、大いに留学生の奮発を促す旨を演説し、

とあり、三谷憲正「博文館『太陽』と朝鮮」(鈴木貞美編『雑誌『太陽』と国民文化の形成』思文閣出版2001.7.28)によれば、山路愛山「韓国の政党及其領袖」(『太陽』第一六巻二号 1900.8.1)に、
大きなる所より着眼すれば日韓は原来同種同文の国にして祖国を同うし、言語の系統を同うし、

とあるのが、私の探した中では、古いところだったからです。まだ孫文関係であるとか、梁啓超などの日本留学生であるとかを組織的に探したわけではないのですが、それにしても、1880年は早そうに思えます。

上垣外氏が注にあげる、平凡社東洋文庫の『日本雑事詩』実藤恵秀, 豊田穣訳を見てみました。長崎の詩のあたりには「同文同種」などは見当たらず、それは、もっと前の徐福のあたりに見えるものでした。つまり、上垣外氏の論において長崎の詩は、徐福の話の中で挿入的に説明されているものです。文は次のようでした。
要するに、いまの日本人は、じつはわれらと同種である。
(p22)
「同文同種」でも「同種同文」でもなく、単に「同種」です。東洋文庫の版の違いかもしれないと思いながら確認出来ずにおりますが電子版があるけれど、あまり使い勝手のよいフォーマットではないので買う気になれずにいます。)、鐘叔河輯注校点『日本雑事詩広注』(湖南人民出版社1981.10)によれば、原文でも「総之今日本人実与我同種」であるようです。なお、実藤恵秀・豊田穣『日本雑事詩』(生活社1943.7.31)では、この部分は「(はぶく)」です。時局柄です。
他の箇所を見ても、
故求通其語甚難。字同而声異、語同而読異、文同而義異、故求訳其文亦難。
などとあり、「文同」とは言っていますが、「同種」とは随分違う印象を持ちます。

「同文同種」については、なお、探りたいものです。


豚汁・ぶたじる・とんじる #

【689】
豚汁・ぶたじる・とんじる #
 岡島昭浩
 - 05/1/20(木) 21:54 -
----
豚汁・ぶたじる・とんじるというスレッドがありましたが、今日は車での移動が多く、NHK第一放送を聞いていたら、朝、山田敦子アナが「とんじる」、午後に有江活子さんが「ぶたじる」と、ともにリスナーからの葉書を読むときに言っていました。

山田アナは東京出身、有江さんは北海道出身とのこと。


そういえば、レバニラかニラレバか、というのを話題にしているCMをやっていましたね。



【692】
Re:豚汁・ぶたじる・とんじる #
 道浦俊彦
 - 05/1/21(金) 7:29 -
----
「レバニラかニラレバか」は「平成ことば事情288」に以前書きました。
コマーシャルは、去年3月頃に流れていた、とんねるずの木梨さんがお父さん役で出ている冷凍食品(「クック・ドゥ」)のコマーシャルでしょう。木梨さんが、
「レバニラ」
と言うと、妻役の人が、
「ニラレバ!」
と訂正する場面が最後にありました。この「レバニラ(ニラレバ)」の冷凍食品を販売している会社は、どちらの言い方も認めているということでしょうね。



【696】
Re:豚汁・ぶたじる・とんじる #
 岡島昭浩
 - 05/1/21(金) 21:15 -
----
▼道浦俊彦さん:
>「レバニラかニラレバか」は「平成ことば事情288」に以前書きました。


拝見しました。
http://mscw.msec.ne.jp/ytv-cgi/announce/kotoba/back/0201-0300/0286.html#3

>コマーシャルは、去年3月頃に流れていた、


そんなに前でしたっけねぇ。時の流れは早いですね。


商品名(食パン)

【686】
商品名(食パン)
 Yeemar
 - 05/1/17(月) 22:37 -
----
食パンというのは日本のものだから、というわけでしょうか。いつのころからか、店頭で目にする食パンの商品名が軒並み漢字になっています。

 山崎製パン「超芳醇」「新食感宣言」
 敷島製パン(pasco)「超熟」
 フジパン「本仕込」
 西友(SEIYU FINE SELECT)「香熟」

ちょっと日本酒か何かのような感じもします。以上は東村山市の「西友」久米川店にて確認。ウェブで調べると、ほかに

 神戸屋「湯種
 日糧製パンでは漢字名の食パンはないようで、「ブランジェ」(Java使用)を売り出し中。
 第一パンでは「ラブスブレッド」など洋風の名に混じって和風の「むぎゆたか」なども。


NHKと商標 #

【672】
NHKと商標 #
 Yeemar
 - 05/1/12(水) 15:19 -
----
NHKと商標
の続きです。

「テーマパーク」の例。
〔吾妻謙アナウンサー〕そんな和久井〔映見〕さん、芸能界に入るきっかけは、十六歳の夏休み、友だちと千葉は浦安のテーマパークに行ったとき、スカウトされたんですね。(NHK「スタジオパークからこんにちは」2005.01.12 13:05)
「ディズニーランド」はこの番組ではだめなのですね。

「ニュースで耳に付いたことば」の「大型連休と黄金週間」からリンクされているNHK文研のページは消えています(サイト更新に際し取捨選択した結果か)。2000.04、研究主幹・豊島秀雄氏が書いています。いわく、
「ゴールデンウイーク」(黄金週間)は、〔略〕映画界が、宣伝も兼ねて作り出したことばで、昭和27〜28年(1952〜53)ごろから一般にも使われるようになったようです。しかし、1970年代の「石油ショック」以降、「のんきに何日も休んではいられないのに、なにがゴールデンウイークだ」といった電話が放送局に何本もかかってくるなど抵抗感を示す人がめだってきました。〔略〕ウイーク(週間)も的確な表現ではなくなってきました。〔略。そこでNHKは〕「大型連休」を使っています。ただ、活字メディアでは、旅行案内や若者向けの情報誌を中心に「ゴールデンウイーク」や、その頭文字をとった「GW」の表記が多く使われているようです。
とのことです。この記事は、引用元を明記されずに複数のサイトに引用されています。



【683】
Re:NHKと商標 #
 Yeemar
 - 05/1/16(日) 12:20 -
----
2005.01.16 NHK「日曜スタジオパーク」で紹介された昔の子どもの遊び。その字幕スーパーに
 「昭和54年(1979)電子銃撃ゲーム」
 「昭和55年(1980)正六面体パズル」
 「平成8年(1996)卵形電子ペット」
映像がなければ、いったい何のことだ、と思います(それぞれ「インベーダーゲーム」「ルービックキューブ」「たまごっち」)。



【684】
Re:NHKと商標 #
 NISHIO
 - 05/1/17(月) 4:28 -
----
「カプセル玩具」というのも出てきましたね。「ガチャポン」のこと。



【685】
Re:NHKと商標 #
 Yeemar
 - 05/1/17(月) 20:25 -
----
▼NISHIOさん:
>「カプセル玩具」というのも出てきましたね。「ガチャポン」のこと。


それが商標の言い換えだとは思い至りませんでした。出演者たちが自然に「カプセル玩具」と言っていたので、待てよと思うこともなく、みごとにだまされてしまいました。

商標の言い換え大行進、の番組だったわけです。


「ださい」について # (語源説)

【675】
「ださい」について # (語源説)
 岡島昭浩
 - 05/1/13(木) 3:38 -
----
「ださい」についての続きですが、新語源説がありました。ここの下の方に載っているのですが、
第二次大戦後 フランスで 田舎向けに作られた自動車の名前です。その車のイメージが ダサイという名前とともに 日本に入ってきた

ということですが、多彩なるかな、「ださい」の語源説。



【676】
Re:「ださい」について # (語源説)
 Yeemar
 - 05/1/13(木) 21:50 -
----
▼岡島昭浩さん:
>「ださい」についての続きですが、新語源説がありました。


私のホームページが知らないところでリンクされていて恥じ入ります。

ダットサンは知っていますが、ルノーにダサイという車種があったのは知りませんでした。ちょっとにわかには確かめられませんでした。


起承転結「糸屋の娘は目で殺す」

【659】
起承転結「糸屋の娘は目で殺す」
 岡島昭浩
 - 05/1/10(月) 18:14 -
----
起承転結の例として挙げられる
○○○○糸屋の娘
姉は十六妹は十四
諸国(諸)大名は弓矢で殺す
糸屋の娘は眼で殺す

というのがありますが、これは、頼山陽が説明したと言われることがよくあります。
近藤春雄『中国学芸大事典』(大修館書店)の「起承転結」では頼山陽のみを載せますが、同氏『日本漢学大事典』の「京都三条糸屋の娘」の項では、頼山陽と梁川星巌をあげ、星巌は「京都三条糸屋の娘」、山陽は「大阪本町糸屋の娘」と言ったとしています。参考文献として簡野道明『唐詩選詳説』p693・塩谷温『唐詩三百首新釈』p37を挙げていますから、どちらかが星巌で、どちらかが山陽なのでしょう。

この伝説を記録したものは、かなり多く、web上にも見られます。書籍上でもそうですが、頼山陽は、作ったことになっていたり、例として引いたことになっていたり、さまざまですし、詩句にも小異があり、「伝説」にふさわしいものです。

辞典類では上記の他に、皓星社『隠語大辞典』の「眼で殺す」の項によって、『かくし言葉の字引』(1929)に、
めでころす【眼で殺す】:美女が色眼をつかつて男子を悩殺することをいふ。頼山陽が門弟に詩句の起承転結の作法を教ゆる為めに作つたと伝へられて居る文句に、「大阪本町糸屋の娘、姉は二十一妹は二十歳、諸国大名は刀で殺す、娘二人は眼で殺す」といふのがある。〔情事語〕
とあることが分かります。

松下大三郎『標準日本口語法』(p326)に、
諸國諸大名は刀で殺す絲屋娘は目で殺す、どうも此の結句が巧いて。
という例があることをついでに書いておきます。文末の「て」の例です。

加藤咄堂「青年指導と雄弁」(文部省社会教育局『話法と朗読法』昭和10.7.25)には、
この起承転結を或詩人が
  京の三條の絲屋の娘、姉は十八妹は十五
   諸国大名は刀で殺す、絲屋娘は目で殺す
初めの「京の三條の絲屋の娘」これが起で、それを承けて「姉は十八妹は十五」パツと転じて「諸国大名は刀で殺す」これがどう結ばれるかと思ふと「絲屋娘は目で殺す」かういふのが起承転結であります。
とあります。

宮崎来城『漢詩自在/作詩術』(明治36.7.1初版。大正2.12.15の四版による)p275-276には、次のようにあります。

頼山陽は初学の徒に結句法を示すに今様を以てしたことが有るさうな
 大阪本町の絲屋の娘
絲屋の娘で筆を起した、此れ起句、
 姉が十六妹は十四
而かも其娘は姉妹で有る、齡は十六と十四で有るといふことを述べて上句を承けた、此れ承句、
 諸国諸大名は刀で斬るが
絲屋の娘に何の関係もない諸侯【「諸候」とあるを訂正】のことを出した、此れ転句、
 いと屋の娘は目で殺す
絲屋の娘はの五字を出して、起句、承句を顧み、目で殺すに四字を出して転句を顧み、以て全編を収束した、此れ結句。
彼の読孟甞君伝といひ、此今様といひ、ともに絶句の起承転結法を学ぶの捷逕としては殊に宜しい。


乗附春海『古今各体/作詩軌範終』明治26年3月27日 穎才新誌社には、次のように。

 起句 君をはじめて見る時は
 承句 千代も経ぬべし姫小松
 転句 御前のいけのかめ岡に
 結句 鶴社群れ居て遊ぶめれ
(中略)
又頼山陽翁か初学者に絶句法を示すには此の今様を以てすと云ふ
 起句 大坂本町糸屋のむすめ
 承句 姉は十六いもとは十四
 転句 諸国諸大名は刀で斬るが
 絶句 いと屋の娘は眼で殺す
是れ絶句作法の捷徑ならん。第三句に実事を述ぶべきは前に載する古人の論を見て悟るべし。

ちなみに、この前にある
 赤蜻蜒羽を切ったら唐辛
是れ其殺風景にして味無し。之を前後して
 唐辛羽を着けたら赤蜻蜒
と云へば雅味自ら存せり。故に意を取捨し言を前後するに因て雅俗も亦自ら分る者なり。又連歌師流の言に「山畠助兵衛」と云へば尋常農人の如く聞ゆ。之を顛倒して「畠山兵衞助」と云へば舘持の一人の名の如し。
とあるのも面白いところです。三十年ほど前に、あのねのねが歌った「赤とんぼ」で、「赤とんぼ羽を取ったらあぶらむし」というのがありましたが、「羽を取ったら唐辛子」だろう、と思った記憶(理屈ではなく言葉として)があります。


さて、この伝説は頼山陽に近づくことが出来るのでしょうか(数日後に続く)。



【674】
Re:起承転結「糸屋の娘は目で殺す」
 岡島昭浩
 - 05/1/13(木) 2:36 -
----
中央公論社の『随筆百花苑』第2巻「在臆話記」第四集巻六に、
山陽後兵児の詩の、眉斧開剖壮士腸。此語は、南品の流行俚歌にて、薩士は刀で殺し、吾妻女は目で殺すと唄ひたる也。
と見えます(p149)。

「在臆話記」は、江戸時代のことについて書いていますが、明治40年頃の筆のようです。

さて、この「後兵児の詩」は「後兵児謡」で、
蕉杉如雪不愛塵 長袖緩帯学都人
怪来健児語言好 一操南音官長嗔
蜂黄落 蝶粉褪 倡優巧 鉄剣鈍
以馬換妾髀生肉 眉斧開剖壮士腸
というものです(岩波文庫『頼山陽詩抄』ではp101)。

美人の眉が壮士の腸を開剖する、というのですね。薩摩の俚謡「吾妻女は目で殺す」を頼山陽が翻案して漢訳したらこれになった、というのでしょうか。

この伝説と山陽とが、すこし違う方面で関わりを持っている記録でした。


なお、「南音」と、薩摩言葉について触れているのも、興味を引きます。


「フツーに」

【662】
「フツーに」
 あびめれく
 - 05/1/11(火) 17:32 -
----
「ふつーにカワイイ」「ふつーにかっこいい」などと使われますが
「意外に」に近い意味で使われているような気がします。
ただ、「意外に」よりも微妙に肯定的・共感的な意味合いがあるのでしょうか。
評価程度は、「十分一般的な意味でかわいい、かっこいい」
ただ、そう言った自分が、彼・彼女をかわいいとかかっこいいとか、思って
惹かれたという意味合いをうまく消しているというニュアンスもあるようですが。



【666】
Re:「フツーに」
 岡島昭浩
 - 05/1/12(水) 1:00 -
----
▼あびめれくさん:
>「ふつーにカワイイ」「ふつーにかっこいい」などと使われますが


私の持った感覚は、「特にかわいくしようとしなくてもかわいい」「特にかっこよくしようとしなくてもかっこいい」、あるいは、「特に強調しているわけではなく、かわいい、と評価しうる」というような意味合いでした。

(新刊)日本語本レビュー ##

【623】
(新刊)日本語本レビュー ##
 Yeemar
 - 04/12/31(金) 9:51 -
----
(新刊)日本語本レビュー・(新刊)日本語本レビュー #
の続きです。

メモしておかなければ「その本に書いてあった」ということがあとで分からなくなりそうなもの(内容が多岐にわたるものなど)もここに記しておきたいと考えます。


●加藤秀俊『なんのための日本語』中公新書2004.10.25

【はじめに寸評】 著者は日本語に関する見識をもつ人とおもうが、それにしては、頼りない記述が目につく。伝聞・憶測による記述がしばしばあらわれ、一事を以て万事をはかるたぐいも多い。「こんなめずらしい言語について、わたしはなにも知っているわけではない」(p.7)「わたしは文法学についてほとんどなにも知らない」(p.95)「まったくの耳学問だが」(p.105)などという記述に接すると、「おやおや」と思う。著者は「これはけんそん、韜晦だよ」と言われるかもしれないが、実際に読んで「誤りだ」「思いこみだ」「話をおもしろくするために俗信を利用している」と感ずる部分も少なくない。日本語について大所高所からものを言うためには、不正確でもあえていう蛮勇が必要なのか。しかし、読者、とりわけ日本語研究が専門でない一般の読者には迷惑な話ではないか。

とはいえ、メモすべきだと思った箇所は諸処にあるので――

たんび このように外語としての日本語を勉強しているひとたちに会うたんびに、(p.61)
ウォーター 比嘉正範(社会言語学者)は少年時、沖縄戦で重傷を負って米軍野戦病院に収容され、看護兵の「ウォーター?」の一言に「たんに「水」以上のひろく、ふかい意味」を感じ、言語研究の道にすすんだ〔要旨〕(p.71-72)
単語 「きょうは、いい天気でした」というかたまりは「きょう」「は」「いい」「天気」「でした」の五つの単語でできあがっている。(p.82)〔*「でし」「た」と分けるのが一般的〕
マイペンライ プリアー『マイペンライ』(1995)によればこのタイ語は「申しわけありません」「お気の毒でした」「ありがとうございます」など多様な意味で使われる〔要旨〕(p.105-106)〔*「どうも」「アロハ」と比較〕
あげる 「いただく」の反対の「あげる」をやたらにつかうのもおかしい。(p.117)〔*「やる」と言うべしとの趣旨〕
話す 大牟羅良『ものいわぬ農民』(1958)では北上山地で黙々とはたらくひとびとのすがたをえがく〔要旨〕(p.134)〔*当時の山村の言語生活を知る資料?〕
つくり・はじかみ・ぎんなん 〔旅館の夕食の献立に「飯蛸」「蕗浸し」のほか〕「造里」というのはなんだ。はこばれてきたのでやっとわかったが、これは「ツクリ」すなわちお刺身のことなのであった。「初地神」というのもありました。クイズ番組のつもりで解読してこれが「ハジカミ」(すなわちショウガの雅名)であることがわかり、「銀庵」を「ギンナン」とよませようとしていることも実物をみてわかった。(p.190)〔*あて字を批判〕
漢語癖 佐伯功介『國字問題の理論』(1941)(p.193)〔*同じ意味の漢語・和語を対比的に列挙して漢語癖を批判〕
 二〇〇三年の秋に、ある在日中国人が〔いうには〕なんでも中国の若いひとたちがことあるごとに「酷」というのだそうだ。〔略〕英語の「クール」というのが流行語になって、その表記に「酷」をあてているというわけ。(p.197)
サンキョウ・グバイ 文久3年に栗本市郎左右衛門〔ママ。左衛門か。著者はATOKを使用〕は漂着船船員の英語を記録して「サンキョウ」「グバイ」を含む「単語帳」を作った〔要旨〕(p.201)〔小林亥一『文久三年御蔵島英語単語帳』(小学館1998)として出ている〕
カミングアウト 「いきなりこの場でカミングアウトさせていただくが、実はわたしはフェミニストである」〔略〕たぶん「カミングアウトする」というのは「結論をいう」というつもりらしいことは見当がつくが、いくら和製英語でもこれはひどい。(p.227)〔*coming outは少数者であることを告白することで、英語の辞書にも載っているのでは?〕
日本製漢字語 高名凱先生の編纂による『現代漢語外来詞研究』(一九五八)(p.236)〔*邦訳は『現代中国語における外来語研究』関西大学出版部1988。岡島さん「中国に渡った日本語」(テキストファイル)にも〕
ことばの乱れ 「こだわる」「悩ましい」「あえて」の使い方が気になる。乱れといっても、楽譜と違ってことばには基準がない。辞書もあてにはならない。「ことばは生きているから変化する」という説にまどわされるな。自分のことばに責任をもて〔要旨〕(p.217-226)〔*気持ちは分かるが、とすると「こだわる」「悩ましい」を「新しい」意味で使う人はことばに責任を持っていないのか。どういうことばを選べば責任を持っていることになるのか。その「基準」はあるのか。論理矛盾ではないか〕



【656】
Re:(新刊)日本語本レビュー ##
 岡島昭浩
 - 05/1/10(月) 11:18 -
----
私がレビューするわけではなく、産経新聞の書評です。

http://www.sankei.co.jp/news/050110/boo022.htm
【ベストセラーを斬る】『問題な日本語』北原保雄編(大修館書店)



【663】
Re:(新刊)日本語本レビュー ##
 道浦俊彦
 - 05/1/11(火) 20:42 -
----
『問題な日本語』、読書日記149で取り上げました。

*************************************

読書日記149『問題な日本語〜どこがおかしい?何がおかしい?』(北原保雄、大修館書店:2004、12、10)

2002年12月に出た「明鏡国語辞典」(大修館書店)。そのスタッフが、言葉に対する疑問や変わりつつある言葉についての疑問に答える形でまとめたのがこの本。タイトルそのものが「問題な」というヘンな日本語の使い方をしているところがミソ。
まあ、たしかにたいていの最近気になる日本語について答えてくれていますから、一般の人でちょっとだけ言葉の問題に興味のある人にとっては、目からウロコが落ちることも多いと思う。
まるで参考書のように、下の段に注釈のように「コラム」があるのだが、これは読みづらい。コラムはコラムとして出して欲しい。同じページの下にあると、いっぺん上の段を読んでから、また下の段を読まなきゃならないから、面倒です・・・。
挿絵、かわいいです。
(☆☆☆)
(2004、12、16)

「カンニング」のアクセント。

【646】
「カンニング」のアクセント。
 畠中敏彦
 - 05/1/7(金) 15:42 -
----
通常は「低低低」(平坦)で、例のお笑いのコンビ名は「高低低」では?
同様に「渋谷」は地名では「低低低」で、人名は「高低低」では?

九州出身の私は自信がありませんが、ちょっと気になりましたので。

以前、類似した議論はしましたが。。。
→ http://okazima-web.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin//room_1/BBS_MSG_981012213147.html



【651】
Re:「カンニング」のアクセント。
 道浦俊彦
 - 05/1/8(土) 14:33 -
----
▼畠中敏彦さん:
>通常は「低低低」(平坦)で、例のお笑いのコンビ名は「高低低」では?
>同様に「渋谷」は地名では「低低低」で、人名は「高低低」では?



「地名」の場合は「平板(平坦)アクセント」で「人名」は「頭高アクセント」というのはよくあるのではないでしょうか?
また、「低低低」(平坦)ではなく、もう少し詳しく言うと「シブヤ(低高高)」ですね、標準語アクセントで言うと。カンニングも「カンニング(低高高高高)」です。関西弁だと「カンニング(高高高高高)」「しぶや(高高高)」です。標準語アクセントの特徴は、最初の音の高さと次の音の高さが、必ず変わるということです。



【655】
Re:「カンニング」のアクセント。
 畠中敏彦
 - 05/1/10(月) 11:06 -
----
▼道浦俊彦さん:
>関西弁だと「カンニング(高高高高高)」「しぶや(高高高)」です。標準語アクセントの特徴は、最初の音の高さと次の音の高さが、必ず変わるということです。


道浦さん、ありがとうございます。
ちなみに、九州(というか鹿児島?)では、人名や地名に関係なく、一般的に
同一(平板)のアクセントであるような気がいたします。


歌謡曲のことば

【35】
歌謡曲のことば
 Yeemar
 - 04/5/4(火) 3:23 -
----
紅白で目についたことば
で、歌謡曲の「なりゃこそ」について話が出ました。

「なりゃこそ」ではありませんが、「いりゃこそ」ならば

松山恵子「お別れ公衆電話」(1959)
 ・好きでないなら 何でもないわ
  好きでいりゃこそ 苦しくなるの
ディック・ミネ「雨の酒場で」
 ・飲みほす君の 悲しみを
  知っていりゃこそ とめるのさ

ふつうの文章にはあまり出てこないようです。時代小説などにはあり。

なお、今までに出ているのは:
天童よしみ「あんたの花道」
 ・女房なりゃこそ 掛け声 ひとつ
フランク永井「大阪ぐらし」
 ・娘なりゃこそ 意地かけまする
 ・おなごなりゃこそ 願かけまする
(参考 京都・大阪の盆歌「おんごく」
 ・天満なりゃこそ 市立てまする
 ・丁稚なりゃこそ 庭掃きまする)
音丸「船頭可愛や」
 ・独りなりゃこそ/枕もぬれる
田端義夫「別れ船」
 ・さようならよの 一言は/男なりゃこそ 強く言う
霧島昇「旅役者の唄」
 ・役者なりゃこそ 旅から旅へ



【38】
りゃこそ
 岡島昭浩
 - 04/5/5(水) 10:51 -
----
夫婦宿
 歌:北原由紀 作詞:賀川幸星 作曲:賀川幸星
生きていりゃこそ 明日があるさ
1988

ありがとうおまえ
 歌:殿さまキングス 作詞:岸本健介 作曲:岸本健介
おまえ支えて くれりゃこそ
1988

人生峠
 歌:村田英雄 作詞:宮原哲夫 作曲:小松原てるを
おまえいりゃこそ この俺も
耐えてしのんだ いばら道
1979

嫁ぐ日よ
 歌:村田英雄 作詞:二階堂伸 作曲:市川昭介
夢がありゃこそ 祝いの唄は
声にならない 淋しさよ
1988

男なりゃこそ笑って捨てた/恋よ情よ思い出よ(男の涙)
と、『講座日本語の語彙11』「人情」にあり。

筒井康隆「乗越駅の刑罰」
初老の駅員 (客の顔の上で鍋を傾け、煮えくり返ったスープを飲まぜながら、念仏調の抑揚をつけて喋り続ける)飲みこんで。飲みこんで。熱いだろうが飲みこんで。よく味わって飲みこんで。熱いからこそうまいんだ。熱いけれども我慢して。我慢すりゃこそうまいんだ。

かわいけりゃこそ神田からかよふ、にくて神田からかよわりょか、
(おまんが飴売りの文句)
鶴峯戊申『語学新書』にも引用さる。『国語学大系1』296頁

かあいけりゃこそ、傘(からかさ)小骨の数ほど通うた、なぜにとどかぬわしが胸
(かわいそ節の一例)

 ある鴬の鳴くを聽けば
春がくりやこそ        身を倒しまに
法と法華經で        憂身をやつす
(漱石 俳体詩)

上方落語にもあるようです。
親父「オモシロソーニテ オモシロケリャコソ ヨンデンネン」
『二十世紀初頭大阪口語の実態』162頁「浮世床」(松鶴)



【41】
Re:りゃこそ
 Yeemar
 - 04/5/5(水) 14:59 -
----
広範囲ですね。おそれいりました。

かわいそ節の出典は何でしょうか。「漱石 俳体詩」は、もしかすると漱石全集から採られたものでしょうか。

「りゃこそ」では、

「ひばりの佐渡情話」美空ひばり(1962)に
 ・波に追われる 鴎さえ/恋をすりゃこそ 二羽で飛ぶ

とありました。



【47】
Re:りゃこそ
 岡島昭浩
 - 04/5/5(水) 18:48 -
----
▼Yeemarさん:
>かわいそ節の出典は何でしょうか。


恥ずかしながら、日本国語大辞典の「かわいそ節」の項です。

>「漱石 俳体詩」は、もしかすると漱石全集から採られたものでしょうか。


恥ずかしながら、出典不明です。直接の出典は、
http://www.let.osaka-u.ac.jp/~okajima/jal_ftp2.htm
から獲得できていた
souseki.lzh
ですが、今は行方不明のファイルなのですね。
なんとかしないといけません。



【475】
Re:歌謡曲のことば―りょか
 Yeemar
 - 04/10/17(日) 6:17 -
----
「忘らりょか」などというときの「(ら)りょか」(←(ら)れうか、(ら)れようか)は、歌謡曲に散見しますが、なぜか「忘る」に付くことが多いのが不思議です。思うに、

日比繁治郎作詞・筑波久仁子歌「道頓堀行進曲」(1928)に
・なんでカフェーが/忘らりょか
・道頓堀が 忘らりょか
とある「忘らりょか」が一般化したためでしょうか。

「(ら)りょか」はその後、

佐伯孝夫作詞・児玉好雄歌「無情の夢」(1935年)に
・なんで忘りょう/忘らりょか
・なんで生きよう/生きらりょか
今中楓溪作詞・東海林太郎歌「野崎小唄」(1935年)に
お願{がん}かけようか/うたりょか滝に
藪内喜一郎作詞「露営の歌」(1937年)に
・手柄たてずに 死なりょうか
・天皇陛下万歳と/残した声が 忘らりょか
西條八十作詞・渡辺はま子歌/「支那の夜」(1938年)に
・ああ 別れても 忘らりょか
佐藤惣之助作詞・霧島昇 二葉あき子歌「新妻鏡」(1940年)に
愛の揺藍{ゆりかご} 花の籠/なんで嵐に あてらりょう
佐伯孝夫作詞・渡辺はま子歌「桑港{サンフランシスコ}のチャイナタウン」(昭和25年)に
・忘らりょか 忘らりょか/蘭麝{らんじゃ}のかおり
などとあり、さらには小林旭、ザ・ドリフターズの歌った「ズンドコ節」(成立はもっと古いか?)の
ホームのかげで泣いていた 可愛いあの子が忘らりょか
に至るのではないかと思います。ほかにもありそうですね。

推量の助動詞を「う」と記した例は古く、11世紀には見えているようですが、一般化したのは中世ごろでしょうか。しかし「りょか」のように短く言う語法はもっとおそい時代の韻文の中で生まれたのではないでしょうか。たとえば歌謡・松の葉(1703)に
憎か打たりよか、やつこりや/\/\
とあるなど、江戸時代には多そうです。



【630】
紅白で目についたことば #
 Yeemar
 - 05/1/3(月) 7:06 -
----
新年おめでとうございます。

この書き込みは「歌謡曲のことば」のスレッドの内ですが、
 紅白で目についたことば
の続きでもあります。

今年も、恒例?の「紅白の字幕で目についたことば」です。以前は、常用漢字外の字というだけでもなるべくメモしていましたが、今回は必ずしも積極的にはメモしませんでした。


〔第1部〕
◎上戸彩「愛のために。」
・タイトルに句点
◎TOKIO「自分のために」
 「終わらない詩{うた}唄{うた}おう」〔用字〕
◎モーニング娘。・W「2004年 愛・涙・キッス紅白スペシャル」
(愛あらば IT'S ALL RIGHT)
・タイトルが文語「愛あらば」(恒常条件なら「あれば」とすべきか)
 「感謝がみなぎる」〔意味、「みなぎる」は「勢い・力」などに使うか〕
(ロボキッス)
 「やばい あいつは YES MAN」〔俗語〕
 「好き好きっす ロボットだっても」〔古風?〕
◎w-inds.「四季」
 「磁石みたく 理由{わけ}もなく」〔俗語/用字〕
◎aiko「花風」
・タイトル「花風」は古典語を発掘して使う?
◎川中美幸「おもろい女」
 「うちはほんまに あゝおもろい女」〔繰り返し符号〕
◎EXILE「Carry On」
 「失くしちゃいけない夢がある」〔ルビなし〕
 「投げ出す日々があっても…」〔句点〕
 「いつも乗り越えて来た」〔句点〕
 「いつも 輝く未来{あした}が待っている」〔用字〕
 「云{い}い聞かせてゆこう」〔用字〕
 「失くさずに らしく進もう!」〔ルビなし/助動詞の単独用法〕
◎後藤真希&松浦亜弥「冬の童謡〜メリークリスマス&ハッピーニュー2005年〜」
(風も雪も友達だ)
 「ふけよ風 つめたかないぞ」〔縮約(←つめたくは)〕
◎nobodyknows+「ココロオドル」
 「のってきな的な言葉が出てきた」〔句につく「的」〕
 「つかねぇ やっぱ 気付いたんだ100%{パー}」〔俗語、縮約(←というかねえ)(←パーセント)〕
 「あみ出す つうか 勝手」〔俗語、縮約(←というか)〕
 「揺らす Body Rock 増々」〔表記(←ますます)〕
 「いてもたってもいらんない 心だけじゃ/収まんないぜ Day and Night Shake a body」〔音便(←いられない)(←収まらない)〕
◎美川憲一「納沙布みれん」
 「凍{い}てつく風が 哭{な}く海鳴りが」〔用字〕
 「想{おも}いださせる 納沙布みれん」〔用字〕
 「もいちど逢{あ}いたい 抱かれたい」〔用字〕
 「待ってみましょか 納沙布みれん」〔縮約(←みましょうか)〕
◎Every Little Thing「恋文」
 「青い空の下 何を想{おも}い、」〔用字/読点〕
 「ひとつふたつと目を瞑{つむ}って」〔用字〕
 「指折り数えた 愛{いと}しき日々…」〔用字〕
 「一瞬一瞬の美しさを」〔読点〕
 「想い続けられたら」〔用字〕
 「また同じだけ 笑えるよう
 君と僕とまた
 笑いあえるように…」〔読点〕
◎ORANGE RANGE「ロコローション」
・タイトル「ロコローション」は造語?(locomotion + lotion?)
 「クモンベイベ DO THE ロコモーション」〔訛った英語のカタカナ書き(←c'mon baby)〕
 「どう魅{み}せたい? SHOW TIME/
 招待! 夏の大サマーセール!」〔用字/重言〕
◎島谷ひとみ「ANGELUS―アンジェラス―」
 「祈りのようににつたう」〔拡張新字体〕
 「未来へたどりつく ANGELUS」〔アルファベット表記でも
 「アン|ジェ|ラ|ス」と4音節で発音〕
 「情熱の破片{かけら}を手にして」〔用字〕
◎中村美律子「河内おとこ節」
 「生きのいゝのが 売りもんや」〔おどり字〕
 「こゝが男の 舞台なら」〔おどり字〕
 「後は腕づく 腕しだい」〔仮名遣い許容(←→腕ずく)〕
 「坂田三吉 物語り/派手な掛声{かけごえ}頂いて」〔送り仮名
(動詞の「物語る」?)〕
◎布施明「MY WAY」
 「今 思えば楽しい想{おも}い出よ」〔用字〕
◎前川清「そして神戸」
 「捨てられた我身{わがみ}が みじめになるだけ」〔送り仮名〕
 「{め}についた名もない 花を踏みにじる」〔用字〕
 「誰か うまい 嘘{うそ}のつける」〔拡張新字体〕
◎夏川りみ「涙そうそう」
 「想{おも}い出遠くあせても」〔用字〕


〔第2部〕
◎平原綾香「Jupiter」
 「この宇宙{そら}の御胸{みむね}に抱かれて」〔用字〕
 「自分を信じて あげられないこと」〔待遇、あげる・やる〕
◎大塚愛「さくらんぼ」
 「やっぱ実感するね」〔俗語〕
 「中実{なかみ}がいっぱいつまった」〔用字〕
 「隣どおし あなたとあたし さくらんぼ」〔仮名遣い(←どうし)〕
◎イ・ジョンヒョン「Heaven 2004」
(ワ―come on―)
(日本語詞/H.U.B. ムン・サンウォン キム・ヨンギ)
 「離れてあえなくなるなら」〔漢字書きの助動詞〕
◎Ryu「最初から今まで」(訳詞者不明)
 「僕の心を掴{つか}んでいる 君のすべてを」〔拡張新字体〕
 「僕が笑いたいたびに/君は僕を泣かせてしまう」〔「たい」と「た
び」の共起は特異〕
 「君に逢いたいたびに/僕はこんなふうに壊れてしまう」〔「たい」と
 「たび」の共起は特異〕
◎藤あや子「雪荒野」
 「卍{まんじ}ともえに 降る雪が」〔三省堂国語辞典「まんじともえと」〕
 「身八口{みやつくち}から 忍び込む」〔服飾〕
 「追って行きたい 行かない」〔可能の「れる」〕
 「トンカラリ トンカラリ」〔機を織るオノマトペ(隣組にあらず)〕
 「小千谷{おじや}ちぢみ 命がやせる」〔仮名遣い(←おぢや)〕
◎長山洋子「じょんから女節」
 「離れられない 男{ひと}がいる」〔用字〕
◎細川たかし「下北漁歌」(歌の舞台は下北大間崎)
 「時化{しけ}には勝てない ヤン衆カモメ」〔めずらしい語〕
 「嬉{うれ}しがるのは お白粧{しろい}カモメ」〔用字(「白粉」とせず)〕
 「それも イッチャナ」〔青森または北海道方言?「いいよね」? 宮崎方言にも似る〕
 「歌で中〆{なかじめ} 浜の酒場は 演歌節」〔漢字として使われる「〆」〕
◎松平健「マツケンサンバ II」
 「灼{や}けた素肌 肩を抱いて」〔用字〕
◎一青窈「ハナミズキ」
 「君と好きな人が百年続きますように」〔句点〕
◎ゆず「栄光の架橋」
 「誰にも見せない泪{なみだ}があった」〔用字〕
 「あの時想{おも}い描いた夢の途中に今も」〔用字〕
 「辿{たど}り着いた今がある」〔拡張新字体〕
◎中島美嘉「朧月夜〜祈り」
 「見わたす山の端{は} 霞{かすみ}ふかし」〔句点〕
 「春風そよふく 空を見れば」〔読点〕
 「夕月かかりて におい淡し」〔句点〕
 「遥{はる}か 遥か 遠い未来に」〔拡張新字体〕
◎さだまさし「遙かなるクリスマス 紅白歌合戦バージョン」
・タイトル「遙」は正字体
 「尤{もっと}も僕らはやがて自分の子供を」〔副詞に漢字〕
◎森進一「さらば青春の影よ」
 「正解{こたえ}は今も 分からないけれど」〔用字〕
◎坂本冬美「播磨の渡り鳥」
 「噂{うわさ}追いかけ 紅緒笠{べにおがさ}」〔拡張新字体〕
 「逢{あ}える 逢えない」〔拡張新字体〕
 「思案したとて 一天地六 チョイト」〔一の裏は必ず六である。悪い後には良いことがあ
るたとえ

◎北島三郎「峠」
 「先を見上げりゃ まだ中半{なかば}」〔用字〕
 「男なりゃこそ 他人{ひと}より重い」〔古風/用字〕
◎石川さゆり「一葉恋歌」
 「ぼんやりと紅灯{あんどん}ながめ 文綴{つづ}る」〔用字〕
 「その身体{からだ} 任せてくれと」〔用字〕
◎氷川きよし「番場の忠太郎」
 「顔も知らねえ 瞼{まぶた}の母に/もしも遭えたら 話しのつぎ穂」〔用字(「会え・逢え」でない)/送り仮名(「話」でない)〕
 「二束三文 草鞋{わらじ}の紐{ひも}も/いちどこじれりゃ
捨てるだけ」〔「こじれる」を具体物に用いる例〕
◎五木ひろし「雪燃えて」
 「細雪{ゆき}螢{ほたる}を 縺{もつ}れて追いかける」〔用字/正字体〕
 「指先寒かろと そっと噛{か}む」〔拡張新字体〕
 「たとえ九十九{つづら}谷 ふたり堕{お}ちても」〔めずらしい語「九十九谷」は「つづら折の谷」?/用字〕
 「風哭{な}いて ひゅるひゅると」〔用字〕
 「いのちの結晶{かけら}を 重ねたままで」〔用字〕
◎小林幸子「雪椿」
 「背{せな}をかがめて 微笑{ほほえ}み返す」〔詩語〕



【632】
Re:紅白で目についたことば #
 岡島昭浩
 - 05/1/4(火) 1:02 -
----
▼Yeemarさん:

>◎坂本冬美「播磨の渡り鳥」
> 「思案したとて 一天地六 チョイト」


これは、私も気になりました。なぜ「天一地六」ではないのだろう、と。阿川弘之「南蛮菓子」には、
 云うまでもなく丁半賭博は普通二つ賽で、大肌脱ぎになった壷振りが、
「先天一地六表三合|跡《とも》云々」と唱えて、一つは「一」を上に、一つは「六」を上に、手前に「三」を揃え、向うに「四」を揃え、外側がそれぞれ「五」で、「二」を内側に挾むようにして二つの賽を合せ、それから籐で出来たある種の椀の形をした壷の中へこれを収めて、よく振って場に伏せるのである。
とありました。

サイコロは船旅とも関係するようですが、この歌もそうなのでしょうか。平凡社の『日本民俗語彙』「ゴシンオイレル」にも、
山口縣の周防大島では、船の神は博奕が好きなので賽二つに銭十二文(閨年は十三文)、大夫すなわち形代《かたしろ》が二人、これをオタマシまたはゴシンと稱して、船大工が、
 天一地六おもて見あわし ともし
 あわせ オモカジごてごて
と唱えながら後向きに入れ、次いでムラグミが盃を船靈様にさすという。(海の生活誌)
とありますし、落語の「へっつい幽霊」にも見えるようです。


『日本国語大辞典』でも、洒落本の「一天地六……」をあげるなど、そちらのほうが多いようではあるのですが、「天一地六」もあるということのご報告まで。



【635】
Re:紅白で目についたことば #
 道浦俊彦
 - 05/1/4(火) 21:43 -
----
すごい!・・・あ、あけましておめでとうございます。
私が気づいたのは、大塚愛の「中実」という用字だけでした・・・。
皆様、今年もよろしくお願いします。



【640】
Re:紅白で目についたことば #
 Yeemar
 - 05/1/5(水) 13:45 -
----
このほか、

◎Gackt「君に逢いたくて」
 「いつもつないだ手は温かかった」

を「あたたかった」と歌っていました。重音脱落(同音脱落)の例です。歌で言い損なうはずもないので、歌詞と実際の歌とが異なっているのでしょう。

同様の例、紅白では1997年に

◎堀内孝雄「愛しき日々」(小椋佳作詞) かたくなまでの

があったことは岡島さんが指摘されています。


米洗ふ前に蛍が二つ三つ

【625】
米洗ふ前に蛍が二つ三つ
 岡島昭浩
 - 05/1/3(月) 1:52 -
----
以前、国語教育関係のMLに入っていた時に、
 米洗ふ前に蛍が二つ三つ
 米洗ふ前へ蛍が二つ三つ
 米洗ふ前を蛍が二つ三つ
という、助詞の使い方で句意が変わる話の出典はなんだろうという話になりました。

その時は、「秋香歌譚」という江戸時代の本にあるらしい、という情報提供がなされましたが、これは明治期の本で、中村秋香のものです。国会図書館には、明治40年刊の『秋香歌かたり』として入っています。
http://kindai.ndl.go.jp/cgi-bin/img/BIImgFrame.cgi?JP_NUM=41000900&VOL_NUM=00000&KOMA=100&ITYPE=0
遠江なる柿園嵐牛は、俳句にては其頃知られたる人なりしがある時
  鍋洗ふ前に三つ四つ蛍かな
といふを得て、かゝる情は歌にては言ひ得がたるべしとおもひ石川依平に示しけるに、依平みて余は俳諧の事をしらねば、とかく評を加ふべきならず、但し歌にては鍋洗ふ前をといはざるべからず、をといへば即ち鍋洗ふ前を三つ四つ蛍が飛びかふさま言外にしらるべし。前ににては鍋を洗ふ前の草村などに居るさまにて、とびかふさまと聞えぬなりとありければ、嵐牛深く感じ、これより常に依平が教を受けて俳句も大にすゝめりと春畊氏語られき、


これより古いものとして、落合直文『将来の国文』が見つかりました。明治23年に「国民之友」に載せたもので、山本正秀『近代文体形成資料 発生篇』pp.652-662で見ることが出来ます。
 米洗ふ前に螢の二ツ三ツ
こはある有名なる俳諧師がものしたる句なり、この句を作り出てたる時、みつから大によろこび、当時の奇人香川景樹に示したりしに、景樹見て、いかにもおもしろし、されとその螢は死したるものと思はる、いかにと問ふ。俳諧師大にいかりてその故を詰る。景樹いふ、若し飛行するものならむには、[前に]を[前を]といはざるべからずと。こをきゝてその人大に悟るところありしよしものに見えたり。[に]といへば或一定の塲所をさし示す助辭にて、唯螢が前に落ちて動かずにある意なり。さるを[を]といへば「前を飛ぶ」「前を過ぐ」など、おのづから螢の飛び行くさまも見えて、全句浮動、あはれ、はじめて名吟ともいはるべきなり。




【633】
Re:米洗ふ前に蛍が二つ三つ
 Yeemar
 - 05/1/4(火) 6:35 -
----
▼岡島昭浩さん:
>以前、国語教育関係のMLに入っていた時に、
> 米洗ふ前に蛍が二つ三つ
> 米洗ふ前へ蛍が二つ三つ
> 米洗ふ前を蛍が二つ三つ
>という、助詞の使い方で句意が変わる話の出典はなんだろうという話になりました。


私はこの話を聞いたことがなかったのですが、東京書籍「新編新しい国語」2〔中学2年国語教科書〕(平成8年2月29日文部省検定済)p.159に「有名な話」として載っていたのを読んで知りました。教科書ではこう紹介されています。
  米洗う前に蛍{ほたる}の二つ三つ
という句を作った人が、「米洗う前を{ヽ}蛍の二つ三つ」がいいと、先生から注意を受けたという有名な話があります。この句は、「に」でも「を」でも、言葉としては自然です。どちらも間違ってはいません。しかし、「に」を使うと、米をといでいる自分の前に蛍がいるというだけの意味ですが、「を」を使うと、「蛍」が自分の周りを飛びまわるという意味が出ます。飛んでくる蛍と、飛び回る蛍、「を」のほうに動きがある、そこで、「を」のほうが句としてよいということになるのだと想います。「に」「を」、たった一字の違いですが、意味のうえではこのような違いが出るのです。



「姨捨山に照る月を見で」と塙保己一

【629】
「姨捨山に照る月を見で」と塙保己一
 岡島昭浩
 - 05/1/3(月) 2:44 -
----
目についたことばで書いた、「姨捨山に照る月を見で」の話だが、これが塙保己一に仮託される話が、田中康二氏「板花検校説話の成立と展開」(『論集 説話と説話集』2001)に書かれた。氏は、「目についたことば」を見て、塙保己一としたものは何であるのか、と問い合わせて下さったが、その時は、答えられなかった。

その後、
大町桂月・佐伯常麿『誤用便覧』明治44年。「いさ、いざ」の項の
古歌の
  わが心慰めかねつ更科や姨捨山にてる月を見て
の「て」を塙保己一が、
  わが心慰めかねつ更科や姨捨山にてる月を見で
と「で」に濁って全然反対の意味とし、以てわが心を咏じたといふことは有名な話で、人の知るところである。

三浦圭三『日本文法講話』(昭和7.2.15 啓文社)3-4ページ
濁点の例を今一つ云ふと、盲人で、学者で、名高い塙検校が信州更科地方へ旅行した時、そのあたりには有名な「姥捨山の月」と云ふのがあって古今集歌人は
我心なぐさめかねつ更科や
      姥捨山に照る月を見て
更科の里のあたり、姥捨山に照りわたる月を見て、あはれ遠くもきつるかなと、旅愁一入の感に堪へないとの意。解釈に今一説あるがこれが正しいと思ふ)

と云った。それを検校は盲人のことゝて、最後の「て」を「で」として人に示して
我心なぐさめかねつ更科や
    姥捨山に照る月を見で

成程、盲としての旅のあはれは、よく聞えてゐる。僅かに一語「て」と「で」の相違で目あきと盲との区別がついた訳である。

を、見つけていたが、更に追加。

落合直文『将来の国文』。明治23年に「国民之友」に載せたもので、山本正秀『近代文体形成資料 発生篇』p652-662で見ることが出来る。

塙検校、幕臣某と共に信濃なる姨捨山に至りたる時、某、検校に向ひ、有名なる姨捨山なり、一首詠み給へといふ。検校傍なる人に書かせて出したる歌、
   我心なくさめかねつ更科や
         姨捨山に照る月を見て
こは古今集雜部にのせたる歌なり。意は姨捨山といふ名につきて、あはれを催し、照る月を見ても我心を慰めかぬるよしなり。某、検校に向ひ、我不學なりといヘども、この歌の古歌なることは知り居れり。君の歌こそ望ましけれといふ。檢校答へけるやう、こは予が歌なり。古歌は[見て]の[て]の文字清みたり、我歌は濁れるなりと答へしとかや。一字の助辭全く歌の意に變化を生じ、盲人の述懐となりしなり。いかに歌かつ靈なるものは助辭にあらずや。



( )で終わる終止符。

【601】
( )で終わる終止符。
 畠中敏彦
 - 04/12/18(土) 10:24 -
----
たとえば、(・・・)で文章が終わる場合、
(・・・。) なのか (・・・)。 なのか、どちらが正当なのでしょうか?
私の知る限り、両者が混在しているようですが。

些細なことですみません。



【602】
Re:( )で終わる終止符。
 Yeemar
 - 04/12/18(土) 12:04 -
----
新聞社ごとなど、媒体によって独自の基準を定めているものと思います。

共同通信社『記者ハンドブック 新聞用字用語集』(第9版)と『朝日新聞の用語の手引』(1997)を見ましたが、だいぶ違います。原理原則には共通するものがあるかもしれませんが、例の列挙のしかたが違うため、原則が違うようにみえる面もあります。

私の流儀(今作った)では、(1)括弧内も文の一部であれば括弧を「。」の前に置き、(2)文の一部でなければ括弧を「。」の後に置くことになります。すなわち、

(1)私はこう思う(のだが、異論もあろう)。
(2)私はこう思う。(しかし、異論もあろう)

上記新聞社の基準では、(1)(2)を区別しないのでは、と思います。

一方、文中の場合は? 今作った私の流儀では

(3)私は、そんなことは許されぬ(ばかりでなく起こりえない)、と信ずる。
(4)私は、そんなことは許されぬ(そればかりでなく起こりえない)、と信ずる。

となって、文の一部かどうかでは区別をしません。すると、(1)(2)も分ける必要はないでしょうか。



【605】
Re:( )で終わる終止符。
 豊島正之
 - 04/12/19(日) 15:19 -
----
>(2)私はこう思う。(しかし、異論もあろう)


寧ろ問題は、これを
<br/>
(3) 私はこう思う。(しかし、異論もあろう。)<br/>
(4) 私はこう思う。(しかし、異論もあろう)。<br/>

とするか否かなのではないでしょうか。
(丸括弧内で文が完結するときに、最後の句読点を閉じ括弧の外に出すか否か)。

因みに、私は 上記の様に(4)ですが、これは、林大(はやしおおき)先生から
直々に伺った方式です。そのとき、丸括弧内に2文以上あるとき、どうなさるか
お尋ねしたところ、「そう、それが困るんだけど」、それでも最後の句読点を
外に出すと伺った様に記憶します。



【606】
Re:( )で終わる終止符。
 Yeemar
 - 04/12/19(日) 17:28 -
----
畠中さんのいわれるご趣旨を取り違えていたかもしれません。あらためて書きますと、

(1)私はこう思う(しかし、異論もあろう)。
(2)私はこう思う。(しかし、異論もあろう)
(3) 私はこう思う。(しかし、異論もあろう。)
(4) 私はこう思う。(しかし、異論もあろう)。

のうち、私は(1)(2)のことしか頭にありませんでした。ところが、過去の自分の文章を見直してみると、私は(1)または(3)で書く事が多いようです。1文か、それより短い単位ならば(1)で書き、複雑な1文または複数の文ならば(3)かもしれません。括弧内に複雑な文や複数の文を書くことをきらって、あらたに段落を起こすこともあります。

(4)にしない理由は、最後のマルも含めて文であり、マル括弧はその全体を注釈あつかいにすると考えられるからです。

共同通信の『記者ハンドブック』によれば、段落の途中の文ならば(1)とし、段落の最後の文ならば(2)とするようです(2001年第9版第2刷 p.77-78)。しかし、この区別は根拠がよくわかりません。

カギ括弧の場合は、同じようには行きません。

(5)先生は満足そうに微笑された「まさしくその通り」。
(6)先生は満足そうに微笑された。「まさしくその通り」
(7)先生は満足そうに微笑された。「まさしくその通り。」
(8)先生は満足そうに微笑された。「まさしくその通り」。

ふだん会話文のカギ括弧内にマルを付ける習慣の人は、ためらわずく(7)を使うはずです。カギ括弧内にマルを付けない習慣の人は、可能性として(5)(6)(8)ですが、(5)はあまりないものと思います。

私はどうかというと、マル括弧の場合と異なり、(6)または(8)を使うように思います。(8)を使うときは、
  「まさしくその通り」とおっしゃった。
の略という気持ちで書いているときです。



【608】
Re:( )で終わる終止符。
 Yeemar
 - 04/12/19(日) 19:54 -
----
次のような例もあります。カギ括弧の前後にマルを使うものです。
 最後に、ぼくのいちばん気にいった「憲法前文」の最初の二行を紹介する。ぼくは、いますぐにでもその国に亡命したい。「全くもってタイシタコトのない/世界的にみてソコソコの国がいい。」。ちなみに、作者は女子高生。〔高橋源一郎〕(「朝日新聞」2002.08.18 p.9)
韻文の引用などは、原文にマルがあるかどうかを示すため、このような処置をとる場合もあるでしょう。

――などと書いていると、この話題について、既視感があらわれてきました。以前、
 括弧と○の位置について
というスレッドがあったのであります。そこで、私は“。」。”のような書き方についても触れています。



【610】
Re:( )で終わる終止符。
 NISHIO
 - 04/12/20(月) 11:37 -
----
▼Yeemarさん:
>(1)私はこう思う(しかし、異論もあろう)。
>(2)私はこう思う。(しかし、異論もあろう)
>(3) 私はこう思う。(しかし、異論もあろう。)
>(4) 私はこう思う。(しかし、異論もあろう)。


新入社員の頃に、「補足・注釈を括弧書きする場合は、括弧内が直前の1文のみに掛かるときはマルの前に書いてもよいが、2文以上に掛かるときはマルの後に書く」と指導されました。
カッコ内の文にマルを付けるかどうかはとくに指導された記憶がありませんが、読みやすく分かりやすい文章を書くためには長い文や複文の括弧書きは避けるという原則を優先して「〜。(図1参照)」のような書き方にとどめています。

法令の文章はカッコ内の文にマルを付ける慣習があるらしく、下記のような表記をしばしば見かけます。
北海道開発局組織規則・第五条(農業水産部の所掌事務)
 四 国が直轄で行う災害復旧事業に関すること(農林水産省の所掌に属するものに限る(林野庁の所掌に属するものを除く。)。)。




【611】
Re:( )で終わる終止符。
 Yeemar
 - 04/12/20(月) 20:01 -
----
▼NISHIOさん:
> 長い文や複文の括弧書きは避けるという原則を優先して「〜。(図1参照)」のような書き方にとどめています。


つまり長い文や複文はそもそも括弧に入れないということですね。

> 四 国が直轄で行う災害復旧事業に関すること(農林水産省の所掌に属するものに限る(林野庁の所掌に属するものを除く。)。)。


これは驚きました。マクドナルドのダブルバーガーのようです。法律や政令、通達などをよく調べてみたいと思います。



【616】
Re:( )で終わる終止符。
 畠中敏彦
 - 04/12/23(木) 9:28 -
----
Yeemarさん、豊島さん、NISHIOさん、ありがとうございます。

ここに投稿させてもらった後、新聞の記事を注意してみておりますが、
Yeemarさんが言われるような記述(下記)になっているようですね。
多岐にわたり情報を集めたわけではありませんが。

▼Yeemarさん:
>(1)私はこう思う(しかし、異論もあろう)。
>(2)私はこう思う。(しかし、異論もあろう)


>共同通信の『記者ハンドブック』によれば、段落の途中の文ならば(1)とし、段落の最後の文ならば(2)とするようです(2001年第9版第2刷 p.77-78)。

こんな本を持っていた

【133】
こんな本を持っていた
 岡島昭浩
 - 04/6/7(月) 15:35 -
----
自宅の本を置くスペースが増え、職場から持ち帰ったりしておりますし、調査の途中で忘れていた自分の本を見つけることもあります。気が向いたとき、書き込みます。

『現代語解説』大正14.1.30第1版発行 大正15.3.10第9版発行 (四六判)
 著作兼発行者 文化之日本社編輯部

箱に「本書は従来上下二巻、又は一、二、三、四の四巻に製本せしことあるも、前中後篇の三巻に製本するを最も便利とし今回は之に據れり。」「前篇 二百八十四頁 金壹圓貮拾銭 中篇 三百〇八頁 金壹圓貮拾銭 後篇 二百七十八頁 金壹圓貮拾銭 」
背表紙には「COMMENTS ON THE NEW AGES WORDS(A)」中篇後篇は(B)(C)。

『辞書解題辞典』によれば、二冊本は、大正13.10。

1993.6購入 4000円

 新しい村
 新しい女
 安価生活
 アナクロニズム
 アイコノクラズム
 アロ二州問題
 安全第一
 暗面描写
 愛他主義
 愛己主義
 アイ・ダヴリュー・ダヴリュー
 阿片問題
 青い花
 青い酒
 青い鳥
など、アが74項目。うち、40項目が16ページ、残り34項目が小さい活字で2行以内の解説とし、3ページに収まる。


近代日本学術用語集成 第3期 大正補遺篇 龍溪書舎 1994
というのに2冊本が入っているようだ。
http://webcat.nii.ac.jp/cgi-bin/shsproc?id=BN11156980



【134】
Re:こんな本を持っていた
 skid
 - 04/6/7(月) 17:17 -
----
家蔵本は第四巻が欠本ですが、四冊ものです。
●第一巻
大正13年10月1日(第一版)発行
大正14年1月4日(第四版)発行
●第二巻
大正13年11月15日(第一版)発行
大正14年1月10日(第三版)発行
●第三巻
大正14年2月10日発行

第一巻だけ、奥付の著作兼発行者が「偉大会編輯部」と印刷され、「偉大会」にゴム印で消し線があって「文化之日本」となっています。
発行所も「偉大会」と印刷され、横にゴム印で「文化之日本社/振替大阪五四二三九番」とあります。
しかし、扉や裏表紙は「文化之日本社」です。

第一巻の巻頭にある「現代語解説索引」には【上】【一】(【一】はゴム印)、第二巻には【上】(二)、第三巻には【下】(一)と表示があります。

『辞書解題辞典』のデータは上巻のみでしょうか。



【135】
Re:こんな本を持っていた
 岡島昭浩
 - 04/6/7(月) 18:13 -
----
skidさん、有り難うございます。

前中後の刊記を別々に見ないと行けないのに、一緒くたにしていました。
●前篇
大正13年10月1日(第一版)発行
大正14年12月1日(第九版)発行
●中篇
大正13年11月15日(第一版)発行
大正15年3月10日(第十版)発行
●後篇
大正14年1月30日(第一版)発行
大正15年3月10日(第九版)発行

skidさんの四冊本と発行年月日だけ比べると、第三巻・第四巻と、後篇が対応しそうに見えますが、中身は次の通りです。

ア−ケ 索引1-17頁 本文1-284頁
コ−ト 索引1-19頁 本文285-592頁
ナ−ワ 索引1-18頁 本文593-870頁


>『辞書解題辞典』のデータは上巻のみでしょうか。


そのように見えますね。「上・下巻 上巻四二八頁」とありますから。428頁までということは三巻本で見ると、「し」までですね。

webcatの
http://webcat.nii.ac.jp/cgi-bin/shsproc?id=BA61955204
この書誌を見て、別タイトルについて。

架蔵本の、背表紙「NEW AGES」の「NEW」と「AGES」の間に、空白はわずかにありますが、他の語間の空白よりは狭いようです。それから、表紙には、筆記体で、

  Comments
    on
 The new age's words

とアポストロフィがはいっていました。



【136】
偉大会(Re:こんな本を持っていた)
 岡島昭浩
 - 04/6/7(月) 18:27 -
----
▼skidさん:

>第一巻だけ、奥付の著作兼発行者が「偉大会編輯部」と印刷され、「偉大会」にゴム印で消し線があって「文化之日本」となっています。
>発行所も「偉大会」と印刷され、横にゴム印で「文化之日本社/振替大阪五四二三九番」とあります。
>しかし、扉や裏表紙は「文化之日本社」です。


国会図書館のOPACで、
『模範的現代語講義. no.5』(大正15)が、偉大会と文化之日本社の共同刊行と記されていました。(リンクを張ろうと思いましたが、文字列が長すぎてうまく行きません。書誌番号000000541570です。)

また、webcatで、
http://webcat.nii.ac.jp/cgi-bin/shsproc?id=BN15673816
現代語講義 / 文化之日本社編
 京都 : 偉大會・文化之日本社, 1926
というのも同じものでしょうか。



【137】
Re:こんな本を持っていた
 skid
 - 04/6/7(月) 19:46 -
----
▼岡島昭浩さん:
>ア−ケ 索引1-17頁 本文1-284頁
>コ−ト 索引1-19頁 本文285-592頁
>ナ−ワ 索引1-18頁 本文593-870頁


四冊ものの第三巻までの構成は、次のとおりです。

ア−キ 索引1-13頁 本文1-222頁
ク−シ 索引1-13頁 本文223-428頁
ス−ハ 索引1-15頁 本文429-650頁

索引は活字を組み直しているのかもしれません。
函もあるのですが、家蔵本はなぜか第一巻が第四巻の函に入っています。
ちゃんと揃っていないのは、どうにも残念です。



【139】
Re:こんな本を持っていた
 skid
 - 04/6/8(火) 8:05 -
----
▼岡島昭浩さん:
>架蔵本の、背表紙「NEW AGES」の「NEW」と「AGES」の間に、空白はわずかにありますが、他の語間の空白よりは狭いようです。それから、表紙には、筆記体で、
>
>  Comments
>    on
> The new age's words
>
>とアポストロフィがはいっていました。


よく見たら、2冊ものの上巻のみも所有していました。
こちらの表紙は「new-age's」、背表紙は「NEW-AGE'S」とハイフンがあります。



【609】
Re:偉大会(Re:こんな本を持っていた)
 岡島昭浩
 - 04/12/20(月) 1:51 -
----
▼岡島昭浩:
>また、webcatで、
>http://webcat.nii.ac.jp/cgi-bin/shsproc?id=BN15673816
>現代語講義 / 文化之日本社編
> 京都 : 偉大會・文化之日本社, 1926
>というのも同じものでしょうか。


入手しました。
大正十五年七月一日発行
大正十五年八月十日(第二版)発行
大正十五年九月一日(第三版)発行
編輯者 文化之日本社編輯部
発行者 文化之日本社
(右代表者) 京都市吉田下大路町四五 宮田恒吉


これは菊判ですが、序文は同じ。項目の順序が違います。

アーク燈
アークライト
アーチ
アート
アートペーパー
アートフォアアート
アートフォアライフ
アームストロング会社
アーメン

アイアンロー
青い酒
青い花
赤行嚢
アカシヤ
アカデミー
アカデミック
アカデミー学派
赤本
赤門
アクセント
悪魔派
アスファルト
アセチシズム
アセチリン
アダム
アダム教派
阿堵物
新しい女
新しき村

というように、かなり五十音順です。索引はありません。


# 「ライオン」の話

【154】
# 「ライオン」の話
 Yeemar
 - 04/6/16(水) 22:09 -
----
「ライオン」の話
の続きです。

病気の名前が分かってほっとしたという話。「朝日新聞」(夕刊)2004.06.16 p.9「三谷幸喜の ありふれた生活211」に
帰宅してパソコンの前に座ったら、いきなり腰のあたりに痛みを感じた。最初は冷房が利きすぎて、体が冷えたのかと思った。(略)
 床に転がり、痛みが治まるのを待つが、よくなる気配はまったくなかった。自分の体の中で、何か大変なことが起きている。(略)
 妻の運転する車で、近くの病院に駆け込んだ。その間も痛みは激しくなるばかり。これまで大病をしたことがないから、ここまで痛いと、かえって新鮮な感じがした。ほんのちょっとだけ(僕は今日中に死ぬのだろうか)と思った。
 診察後、腎結石の疑いがあると、先生に言われた。得体{えたい}の知れない痛みに、名前がついたことで、ほっとする。ほっとはしたけれど、それで痛みが治まるわけではない。
もっともこれは、死病ではないらしいと分かってほっとしたのでしょうから(手遅れになればともかく)、「得体のしれない猛獣の名前が分かって安心する」というのとはちょっと違うかもしれません。



【603】
Re:# 「ライオン」の話
 岡島昭浩
 - 04/12/18(土) 22:14 -
----
ちょっと違うのですが似ているので。

『木下順二作品集II おんにょろ盛衰記』(未来社 1961.7.5)の「解説対談」での木下氏の発言。
そういう感性的にもね、こまかく分けて考える考え方と、一方でそいつを概念として概括する表現との両方がなければならないわけで、極端な話が例の有名な、ライオン一匹一匹に名前がついている未開社会、それをライオンとして一つの概念としてとらえる能力がないという、これはちょっと極端だけれども、そこんところが方言をこまかく使ってゆくとわからない場合がいろいろと出くるわけです。




【604】
Re: 「ライオン」の話 #
 Yeemar
 - 04/12/19(日) 7:29 -
----
>こまかく分けて考える考え方と、一方でそいつを概念として概括する表現との両方がなければならないわけで、


黒一点、白一点」に孫引きした金田一春彦氏のいわゆる「言語にはその分析能力と同時に綜合能力があり」ということですね。

知らぬげに

【597】
知らぬげに
 道浦俊彦
 - 04/12/16(木) 12:13 -
----
本を読んでいたら、
「知らぬげに」
という表現が出てきました。「ググる」と2540件も出てきましたが、なんとなく、しっくりこない気がします。
「なにげに」と同じようなものなのでしょうか?それとも昔からある「正しい形」なのでしょうか?



【598】
Re:知らぬげに
 Yeemar
 - 04/12/16(木) 21:22 -
----
その「本」は何でしょうか?

三橋三智也「哀愁列車」(1956)の3番に
泣いて泣いて
泣いているのを 知らぬげに
とありますね。

また、谷山浩子「風を追いかけて」(1979)に
丘の上から 見る町は
私のことなど 知らぬ気に
とあります。

「げ」は手元の『三省堂国語辞典』を見ると「接尾」、つまり単独の語としては使われないということになっています。「はかなげ」(これは形容詞語幹に付いたもの)とか「ありげ」(動詞連用形に付いたもの)のように、上のことばと合体して全体で1語となるものですね。

ところが、「知らぬげ」と言うと、否定助動詞「ぬ」(ず)の連体形プラス「げ」であって、「知らぬ人」「知らぬ顔」などと同じく2語っぽくなってしまうので、注意が引かれますね。

古くはどれくらいからあったかというと……13世紀の「宇治拾遺物語」に
此女、時々は見かへりなどすれども、わがともに、蛇のあるとも知らぬげなり。
とありますから、「正調日本語」といってよろしいでしょう。「源氏物語」では「知らぬやうにて」となります。

群馬県あたりでは「げ」がさかんに使われますが、「知らぬげだ」(知らないようだ)とは言われないでしょうか(「ぬ」の使用地域でないので無理かもしれません)。香川県では「あの子はなんも知らんげやった」(知らないようだった)と言うはずです。



【599】
Re:知らぬげに
 Yeemar
 - 04/12/17(金) 0:33 -
----
「ぬ」の連体形だけでなく、「動詞連体形+げな」、「過去の助動詞『た』の連体形+げな」の形もありますね。

たとえば「柳多留」三・16に
おふくろが切ッて廻すでのひるげな
(おふくろが切って廻すで伸びるげな?)
また漱石「坊っちやん」に松山方言として
御望み通りでよからうと思ふて、其手続きにしたから行くがえゝと云はれたげな。(漱石全集)
と出てきます。

香川方言では「一人で来るげに言いよった」(一人で来るようなことを言っていた)と使います。



【600】
Re:知らぬげに
 岡島昭浩
 - 04/12/17(金) 23:45 -
----
私の方言(福岡県を転々)では、「げな」は使いますが、「げに」は文語としてしか意識できません。また「げな」でも文末で終止形接続のもの(「美しいげな」「あるげな」)は使うのですが、形容詞語幹接続・動詞連用形接続で連体用法のもの(「美しげな人」「自信ありげな態度」)は、文語と意識します。

終止形接続のものは、「知らんげな」(知らないそうだ)というのですが、後者はどういえばよいのか。「知らない」なら「知らなげに」(あるいは「知らなさげに」?)だろうと感じるのですが、「知らぬ」はすぐには出てきません。「知らずげに」「しらざりげに」では変かな、などと考えて、「しらぬげに」を思い出すような気がします。


「におう」について

【583】
「におう」について
 はゆ
 - 04/12/12(日) 1:02 -
----
はじめまして。

数年前から、気になっていたのですが、「におう(匂う・臭う)」を
においを嗅ぐという意味で使うTVタレントさんが増えてきたように思います。

台所用洗剤のCMで洗ったお弁当箱のにおいを嗅がせるのに「におってみて」と
言ったり、異臭がする何かのにおいを嗅がせるのに「におってみぃ」など。
後者は関西弁の人だったのですが、関西では「におう」は、においを嗅ぐ意で
使うのでしょうか?

『「にほふ」は数少ない日本語の自動詞で、主に色彩や美しさ等、人以外の抽
象的なものが主語にくる珍しい言葉だ。』と昔、国語で教わった身としては、
誤用はすごく耳障りなのですが、このまま混濁していってしまうのでしょうかね?



【584】
Re:「におう」について
 道浦俊彦
 - 04/12/13(月) 11:10 -
----
ははあ、言われるまで気づきませんでしたが、どうやら関西弁のようですね。自然に使っていますが。関西弁に「におぐ」という動詞はあります。「大阪ことば事典」にも載っています。それが「におう」にまで使われるようになったのですね。



【585】
Re:「におう」について
 NISHIO
 - 04/12/13(月) 20:30 -
----
▼道浦俊彦さん:
>関西弁に「におぐ」という動詞はあります。「大阪ことば事典」にも載っています。それが「におう」にまで使われるようになったのですね。


「だるまさんがころんだ」の上方バージョンの
「ぼんさんがへをこいた」の続き(20まで数えるとき)が、
「においだらくさかった」だったような…。


【586】
Re:「におう」について
 道浦俊彦
 - 04/12/14(火) 10:38 -
----
▼NISHIOさん:
>「だるまさんがころんだ」の上方バージョンの
>「ぼんさんがへをこいた」の続き(20まで数えるとき)が、
>「においだらくさかった」だったような…。



そのとおりです!私もそれで初めて知りました。京都で言うそうです。さらにそのあと、滋賀では「くさいのはあたりまえ」と言うそうですが。



【587】
Re:「におう」について
 Yeemar
 - 04/12/14(火) 17:47 -
----
▼はゆさん:
>台所用洗剤のCMで洗ったお弁当箱のにおいを嗅がせるのに「におってみて」と
>言ったり、異臭がする何かのにおいを嗅がせるのに「におってみぃ」など。
>後者は関西弁の人だったのですが、関西では「におう」は、においを嗅ぐ意で
>使うのでしょうか?


関西を含む西日本に広がっているようです。『日本方言大辞典』にの「におう」の項に「かぐ」の意で京都府、島根県(「このお菓子をにおって見い、少し臭いぞ」)、岡山県、広島市、山口県、徳島県(「よーにおうてみー〈よくかいでごらん〉」)、高知県、熊本県、大分県、鹿児島県などにあります。

また、歴史的には「匂いをかぐ」の意で俳諧・続寒菊(1780)に「徳利匂ふて酢を買にゆく〈芭蕉〉」の句が出ています(これは『日本国語大辞典』第2版から)。

したがって、「においをかぐ」の意での用法は、歴史的・地理的に一定の位置を占めているといえるでしょう。

「におぐ」は、「におう」と「かぐ」の混淆形でしょう。



【588】
Re:「におう」について
 Yeemar
 - 04/12/14(火) 18:29 -
----
▼はゆさん:
>『「にほふ」は数少ない日本語の自動詞で、主に色彩や美しさ等、人以外の抽
>象的なものが主語にくる珍しい言葉だ。』


「日本語の自動詞で、抽象物を主語にとる動詞は数が少ない」ということでしょうか。こういうことはあまり考えたことがありませんでした。そこで少し考えてみました。

主語に取る名詞の抽象度がどの程度かにもよりますが、感覚に関る自動詞と思われるものだけでも、「光る」「輝く」「映える」「照り映える」「褪せる」「鳴る」「響く」「とどろく」「香る」など、「におう」以外にもいろいろありそうです。

感覚に関することば以外となると、「増える」「減る」「広がる」「狭まる」「広まる」「高まる」「低まる」……など、抽象物を多く主語にとる自動詞は少なからず思いつきます。(これらはもちろん具体物も主語に取ります。「におう」も「にほふ黄葉」というので、この点は同じ)

――となると、国語の先生がおっしゃった真意はどういうことだったのか、気になります。



【593】
Re:「におう」について
 NISHIO
 - 04/12/15(水) 11:47 -
----
▼Yeemarさん:
>関西を含む西日本に広がっているようです。『日本方言大辞典』にの「におう」の項に「かぐ」の意で京都府、島根県(「このお菓子をにおって見い、少し臭いぞ」)、岡山県、広島市、山口県、徳島県(「よーにおうてみー〈よくかいでごらん〉」)、高知県、熊本県、大分県、鹿児島県などにあります。


香川県でも使います。(ま、私の郷里は香川とは言っても元備前国ですけど。)
少なくとも最近の用法ではないし、誤用ともいえないと考えてよろしいでしょうか。



【596】
Re:「におう」について
 岡島
 - 04/12/15(水) 23:27 -
----
▼Yeemarさん:
>関西を含む西日本に広がっているようです。


福岡でも使います。三谷幸喜『気まずい二人』の中でも、両親が福岡出身である三谷が使う、という話題がありました。対談相手に同意を求めていたような気がしますが、相手の出身地は覚えていません。


「わがまま」と「エグい」

【216】
「わがまま」と「エグい」
 道浦俊彦
 - 04/7/6(火) 0:33 -
----
先日Yeemarさんとお会いしたときに、
「最近、若者の間では『わがまま』『エグい』という言葉がプラス評価で使われているようだ」
というお話が出ました。「わがまま」に関しては「自分らしさ」「自分流」「素の自分」などの「個性追求」の流れの中で「『わが』まま」を重視することでプラス評価が出てきたのではないかと思います。でもそれによって「公・私」の「公」が破壊されるということに重いが至らない教育だったのではないか、ということも思います。
「エグい」がプラス評価というのは 「ヤバい」がプラス評価なのと同じ理由ではないでしょうか?
具体的にそういった使用例をご存知の方はいらっしゃいますでしょうか?



【217】
Re:「わがまま」と「エグい」
 岡島昭浩
 - 04/7/6(火) 1:24 -
----
▼道浦俊彦さん:
>「エグい」がプラス評価というのは 「ヤバい」がプラス評価なのと同じ理由ではないでしょうか?


「えぐい」のプラスは古そうな気がしますが、それとは違うのでしょうか。
榊原昭二『昭和語』朝日文庫では、「昭和五十六年ごろから若者は、スゴイ、カッコイイの意味ではやらせている。えぐるような、するどい、といったつもりで使っているのか」(p229)としています。

http://www.tok2.com/home/okazima/mwsearch.cgi?keywords=%1B%24B%24%28%240%24%24%1B%28B



【218】
Re:「わがまま」と「エグい」
 Yeemar
 - 04/7/6(火) 2:40 -
----
私が道浦さんに申し上げたのは、だいたい以下のようなことでした。補いつつ再構成します。

まず、「あなたはわがままですね」「わがままなあなた」と言われて怒らない人はいないと思います。ところが、雑誌などを見ると、「わがままなあなたの希望にお応えします!」などと、平気で読者をわがまま者扱いにしています。

これに気づいたのは最近で、ちょっと手元に用例がありません。以前近所の百貨店で写真を撮った記憶はあるのですが。今あわててウェブの例を添えるならば、
わがままノノピアーノコース(とってもわがままなあなたのために全55種類から選べます)
【ぐるなび】リストランテ・エ・ベヴァンダノノピアーノ(メニュー)より)
「とってもわがままなあなた」は、そのまま受け取れば客を厳しく批判している言い方です。

もうひとつ、「あなたはよくばりですね」「よくばりなあなた」というのもほめことばであるようです。これについては、格好の例ではありませんが、手元に用例があります。ファミリーレストランのメニューで
Yo・Ku・Ba・Ri”プレート
598kcal/塩分1.3g
(2004.06.24「Sunday's Sun」中野店で採集)
とあって、いろいろな種類のカレーのセットです。けだし欲の皮の張った客に出す料理とみえます。

「わがまま」の話を申しあげたところ、同行の方が「すると、『こだわる』を悪い意味ではなく良い意味で使うようになったようなものでしょうか」と続けてくださいました。

「エグい」については、岡島さんが引かれた例のように、「ナウい」と同時期に使われた流行語があったことは承知しています。最近では「エグいホラー小説」などと、たいへんグロテスクだという意味で使われているように思います。本来は、もちろん「たけのこのえぐ味」のような味を指して「えぐい」と言ったのでしょうけれども、「エグい小説」というのは、あくの強いいやな小説ということではなく、グロテスクでたいへんすばらしい小説ということではないかと思うのです。



【589】
Re:「わがまま」と「エグい」
 Yeemar
 - 04/12/14(火) 21:22 -
----
「よくばりなあなた」の用例です。
もうふつうのクリスマスでは満足できない、そんな欲張りなあなた。「ものしり一夜づけ」が、ちょっぴり知的な香りが漂う、大人のクリスマスをお届けします。(NHK「ものしり一夜づけ」番組宣伝     2004.12.14 19:56)



ニュースで目についた言葉 # 「買春(かいしゅん)...

【385】
ニュースで目についた言葉 # 「買春(かいしゅん)...
 畠中敏彦
 - 04/9/20(月) 5:51 -
----
今朝(H16.9.20)の朝日新聞(1ページ)の折々のうたに
>訓読みと音読みを勝手にくっつけた「買春」なんて言葉はもってのほかの珍造語で・・・
と、ありました。



【391】
Re:ニュースで目についた言葉 # 別状と別条
 畠中敏彦
 - 04/9/23(木) 5:53 -
----
細かいことですみませんが、もうひとつ。
たとえば、「命にベツジョウはない」は、別状なのか別条なのか?。
昨夜のNHKニュースでは前者が、他の局では後者を使っていました。
(私の記憶違いがなければ)

もっとも、辞書をみるかぎり双方とも、大きな間違いではなさそうですが。



【502】
Re:ニュースで目についた言葉 #「見合わせる」
 UEJ
 - 04/10/26(火) 23:05 -
----
これはニュースというよりはJRの用語なのかもしれませんが、
不通となっている上越新幹線に対しての「運転を見合わせています」
という表現に違和感を感じます。

私の「見合わせる」に対する語感は「無理すれば運行することもできるのだが
運転を控えている」というニュアンス。
今回の上越新幹線のようにどうやっても運行できない場合は
回りくどい言い方をしないでずばり「不通です」が適当な気がします。



【505】
Re:ニュースで目についた言葉 #「見合わせる」
 道浦俊彦
 - 04/10/27(水) 16:56 -
----
おっしゃるっとおりで、「運転できるけど念のためしない」が、本来の「見合わせる」で、「しようとしてもできない」のは「不通」なんですが、この音が「普通」と同じなので、やめたのではないでしょうか。だから「○○から××の区間は、運行を中止しています」といいうべきところでしょう。「平成ことば事情174」に書きました。



【508】
Re:ニュースで目についた言葉 #「見合わせる」
 畠中敏彦
 - 04/10/28(木) 9:40 -
----
▼道浦俊彦さん:
>おっしゃるっとおりで、「運転できるけど念のためしない」が、本来の「見合わせる」で、「しようとしてもできない」のは「不通」なんですが、、、


UEJさん、道浦さんに同感。
私の印象では、最近、交通機関が不通になれば、画一的に「見合わせる」を使っているような気がいたします。
失礼な言い方になるかもしれませんが、関係者の方は、その意味を深く考えず、惰性で使っているような気がいたしますが、どうなんでしょう?



【510】
Re:ニュースで目についた言葉 #「見合わせる」
 KS
 - 04/10/28(木) 10:51 -
----
▼畠中敏彦さん:
>UEJさん、道浦さんに同感。
>私の印象では、最近、交通機関が不通になれば、画一的に「見合わせる」を使っているような気がいたします。
>失礼な言い方になるかもしれませんが、関係者の方は、その意味を深く考えず、惰性で使っているような気がいたしますが、どうなんでしょう?


 意味を考えず使っているんじゃなくて「不通です」では響きがきついと言う理由じゃないでしょうか「見合わせさせて頂いております」なんて案も出るのです。言葉としてはおかしくても、いかにも「丁寧に、へりくだって言っている」と云う雰囲気がお客様に伝わるかどうかが大切なんです。見合わせている」でも「不通です」でも電車が動かないことには代わりが無いと言うことですね。「自分の責任ではない」という気持ちも働いている家も知れません。
 こう云う視点で見るとチョッと可笑しい最近の言葉も理解がいくのでは…



【512】
Re:ニュースで目についた言葉 #「見合わせる」
 畠中敏彦
 - 04/10/28(木) 20:41 -
----
▼KSさん:
言葉としてはおかしくても、いかにも「丁寧に、へりくだって言っている」と云う雰囲気がお客様に伝わるかどうかが大切なんです。

なるほど。
そう言われると、そのような見方も、否定できないかもしれませんね。
ただ最近、へりくだる余り、本来の日本語をあやしくしている傾向がある(本例はともかく、一般論として)のも、事実のような気がいたします。



【516】
Re:ニュースで目についた言葉 #「見合わせる」
 道浦俊彦
 - 04/10/29(金) 8:44 -
----
「見合わせる」は、交通機関の広報がそのように送ってきたファックスをそのまま読んでいるのだと思います。交通機関は、婉曲表現だと思っているのではないでしょうか。メーカーが「欠陥」を「不具合」と言うようなものです。またマスコミが、発表情報を検証すること自体を「見合わせ」た結果でしょう。自戒をこめて。



【517】
Re:ニュースで目についた言葉 #「見合わせる」
 KS
 - 04/10/29(金) 9:33 -
----
▼畠中敏彦さん:
>ただ最近、へりくだる余り、本来の日本語をあやしくしている傾向がある(本例はともかく、一般論として)のも、事実のような気がいたします。


ことばとは不思議なもので、きちっとした日本語を覚えた人には違和感いっぱいで憤死しそうでも、知らない人には何とも感じない。指摘すると「言葉尻とらえて知ったかぶりして嫌なやつ!」ぐらいの評価になります。社会もマスコミも「言葉はフィーリング、通じればいい」と云うがごとく間違ってたり正しく無かったりしてもそのまま通ってしまうようです。
 百貨店の歳暮コーナーで「ご住所(お電話番号)、お伺いして宜しいでしょうか?」
 金メダルコメントで「みんなが応援してくれて…」 若い人に変だよと指摘すると「どうしてですか?」と問われて返事をためらう今日この頃です。



【518】
Re:ニュースで目についた言葉 #「見合わせる」
 Yeemar
 - 04/10/30(土) 9:12 -
----
▼道浦俊彦さん:
>「平成ことば事情174」に書きました。


こちらですね。

それから高島俊男『お言葉ですが…』(単行本第1巻 p.47-48〔この項95.5.25〕)に
 地震の翌日、テレビで、
「新幹線は数ヵ所で橋げたが落下したため、運転を見あわせています」
 と言っていた。何でもものごとをとりやめることを「見あわせる」と言うものと思っているようだが、そうではない。やってやれぬことはないが、大事をとってやめておくのが「見あわせる」である。
「このケーキ、賞味期限を三日すぎてるけど、クンクン、大丈夫なようだ。食べるかい?」
「まあおれは見あわせておこう」
 というようなのが「見あわせる」である。絶対不可能なばあいにもちいることばではない。
とあります。



【519】
Re:ニュースで目についた言葉 #「見合わせる」
 NISHIO
 - 04/10/31(日) 12:04 -
----
▼道浦俊彦さん:
>「見合わせる」は、交通機関の広報がそのように送ってきたファックスをそのまま読んでいるのだと思います。交通機関は、婉曲表現だと思っているのではないでしょうか。メーカーが「欠陥」を「不具合」と言うようなものです。


最後の部分はちょっと引っかかりますが(メーカーの一技術者として)…、
それはさておき、通常、企業の報道発表資料は広報部門が社内規定に基づいて用語や表現を厳重にチェックしているはずです。内容によっては法務部門の審査もあります。現場の担当者が適当に書いた文章がそのまま発表されることは考えられません。(実際の報道内容をみると、微妙なニュアンスの違いや明らかな間違いもしばしばあり、社内に訂正情報が流れることも珍しくありません。『「〜〜」の部分は記者の憶測』といった補足も見かけます)

ホームページに掲載する「お知らせ」なども、報道発表と同様、社内規定に基づいて慎重にチェックするのが常識だと思うのですが、今回のJRの例では不統一が見られます。JRの社内用語集に「見合わせ」「取り止め」「運休」「不通」の使い方が載っていれば見てみたいものです。

【JR東日本・山手線駅構内の掲示】
      ご案内
 10月23日に発生した新潟地方を震源とする強い地震の影響で、下記の区間が運転を見合わせております。
        記
10月28日6時現在、運転を取り止めている区間
  ・上越新幹線 越後湯沢〜燕三条
  (略)
下記の夜行列車は次の区間、運休となります。
  (略)
【JR東日本・新幹線列車運行情報】 http://www.jreast.co.jp/train_info/shinkansen.asp 
 上越新幹線は、新潟中越地震の影響で越後湯沢〜燕三条駅間で運転を見合わせ

【JR東日本・新潟支社のお知らせ】 http://www.jrniigata.co.jp/jisinn.htm 
 10月23日に発生いたしました新潟県中越地震の影響により、上越新幹線の一部区間およびJR東日本新潟支社管内を中心とした在来線の一部区間が不通となっております。




【520】
Re:ニュースで目についた言葉 #「見合わせる」
 佐藤
 - 04/10/31(日) 21:21 -
----
▼UEJさん:
>私の「見合わせる」に対する語感は「無理すれば運行することもできるのだが運転を控えている」というニュアンス。今回の上越新幹線のようにどうやっても運行できない場合は回りくどい言い方をしないでずばり「不通です」が適当な気がします。


 語感については同感です。
 ただ、(私も自信がないのですが)一部区間だけ運転不能だが、諸般の事情(安全確認・折り返し運転ダイヤ作成等)からあえて全線で運転を一時中止している場合、「見合わせる」でもよい気がしますが、どんなものでしょうか。
 



【570】
Re:ニュースで目についた言葉 # 「の疑いがある」
 UEJ
 - 04/12/4(土) 17:38 -
----
奈良の女児殺害事件で、女の子の服に付いていた髪の毛の血液型がB型であるとの鑑定結果が出たことを受けて、「警察は犯人の血液型がB型である可能性があるとみて捜査を続けている」との報道に違和感ありです。
髪の毛の血液型がB型だと分かる前から、犯人の血液型がB型である「可能性」は多かれ少なかれあるに決まってるじゃないか、と思ってしまいます。
「B型の可能性が高いとみて」なら納得するのですが…。

「警察は…の可能性があるとみて」「警察は…の疑いがあるとみて」という言い回しには今回の件に限らず「んっ?」と思うことが少なくないのですが、今回は特に強く違和感を感じました。



【571】
Re:ニュースで目についた言葉 # 「の疑いがある」
 UEJ
 - 04/12/4(土) 17:53 -
----
話は逸れるのですが、

>「B型の可能性が高いとみて」なら納得するのですが…。


と書きながら、ふと「疑い」は「高い」じゃなくて「強い」または「濃い」だよなぁ、でも逆に「疑いは弱い」とはあまり言わないなぁ、と迷ってしまったので、googleでヒット数調査してみました。

可能性が高い:約 735,000 件
可能性が強い:約 45,600 件
可能性が濃い:約 5,440 件

可能性が低い:約 29,100 件
可能性が弱い:約 25 件
可能性が薄い:約 9,890 件

疑いが高い:約 3,530 件
疑いが強い:約 17,100 件
疑いが濃い:約 3,800 件

疑いが低い:約 159 件
疑いが弱い:約 2 件
疑いが薄い:約 510 件

とりあえず結果を羅列するだけに留めますが、「が」を「は」に変えた場合の組み合わせなども含めて考察するといろいろ面白いかも。



【572】
Re:ニュースで目についた言葉 # 「の疑いがある」
 道浦俊彦
 - 04/12/4(土) 22:39 -
----
なるほど、そうですね。気をつけます。「可能性が高井」か「大きい」かについては「平成ことば事情893」で書いています。この場合は「需要」についてでしたが、「可能性」についても。2年前ですが。此処に(長いですけど)貼り付けておきますので、ご参考までに。


1996年以降、国内での製造と輸入が禁止されている「フロン12」を密輸入していたとして、埼玉県の業者が逮捕されたというニュースを読みました。その中でこの「フロン12」が、いまだに国内2000万台の自動車のエアコンで使用されていて、在庫に限っては販売も許可されているという現状をさして、
「まだまだ需要が高い」
という文章が出てきました。ハタと立ち止まったのは、
「需要は“高い・低い”のか?“大きい・小さい”なのか?“多い・少ない”なのか?」
ということです。これによく似た例としては、
「可能性」
があります。この「可能性」も「大きい」「高い」「強い」のどれが適当なのか?とよく問題になります。
まずは「需要」について考えましょう。「需要」の反対語は「供給」。


「供給」が「高い・大きい・多い」。


この中だったら、「多い」を選ぶのではないでしょうか。
そうすると「需要」も「多い」かな。でも「需要が高まっている」という表現はOKだな。また「大きな需要がある」もいけそうだな。「希望」も「大きい・小さい」ですね。
ここまで考えてハタと気付きました。(よく「ハタ」となるな。)
「高い」と「大きい」は「数字」に関係する言葉です。つまり、「確率」が「高い」ということは、確率を表す数字が「大きい」ということです。
それに対して、「多い・少ない」は、「量」を表す言葉です。「量」も、もちろん数字に置き換えることは出来ますから、そこで、直接数字に関係する「高い」「大きい」と結びついて使われることがあるということではないでしょうか?
そう考えると、「可能性」についても本来は数字に直接は置き換えられない「強い・弱い」であって、それが数字にむすびつくことによって 「大きい」「高い」という言い方も認められるようになっていったのではないのか?という考えが浮かびました。
いつものようにGoogleで検索。


需要が「高い」= 3970件 需要が「低い」= 436件
需要が「多い」= 4950件 需要が「少ない」= 3260件
需要が「大きい」=1530件 需要が「小さい」= 124件


これで見ると、「需要」は総合的には「多い・少ない」が、頭一つ抜け出ていますね。ネット上の頻度では。次が「高い・低い」、一番使われてないのが「大きい・小さい」です。
「可能性」についても見てみました。


可能性が「高い」=25万9000件 可能性が「低い」=7720件
可能性が「強い」= 1万4800件 可能性が「弱い」= 7件
可能性が「大きい」=3万0900件 可能性が「小さい」=414件


こちらは「高い・低い」、次いで「大きい・小さい」、「強い・弱い」。
「可能性」はパーセンテージ、つまり数字と結びついて語られることが多いので、「高い」「大きい」が来るのでしょう。それに対して「需要」は「可能性」ほどは数字と結びついていない、と見ることも出来るのではないでしょうか。
この説が認められる可能性は・・・・高い?低い?


2002/10/30



【573】
Re:ニュースで目についた言葉 # 「の疑いがある」
 UEJ
 - 04/12/5(日) 21:14 -
----
▼道浦俊彦さん:
>なるほど、そうですね。気をつけます。


「の疑いがある」「の可能性がある」というのは警察側の発表で使う定型文だと思っていたのですが、報道機関側の言い回しなのでしょうか?



【582】
Re:ニュースで目についた言葉 # 「受け止め」
 Yeemar
 - 04/12/11(土) 8:46 -
----
ちょっと前に、「受け止め方」「反応」の意味で「受け止め」ということばが使われているのに気づきました。例、
〔有働由美子アナウンサー〕曽我〔ひとみ〕さんと家族の再会について日本政府の受け止めです。(NHK「ニュース10」2004.07.09 22:00)
のように(複数のアナウンサーが使っていましたから、ニュース用語になっていたのでしょう)。

これは新用法だと思いました。ところが、ここしばらく、耳にしないような気がします。私が聞き漏らしているだけか、たまたま使われていないだけか、それとも、「受け止め」はへんなことばだという声が出て使われなくなったのでしょうか。耳にされた方がいらっしゃいましたらご一報いただければ幸いです。


不規則な活用

【581】
不規則な活用
 Yeemar
 - 04/12/11(土) 8:26 -
----
ふたつ以上の音便形
の続きのつもりです。とりわけ、その中の「不規則な活用」についてのメモの続きです。

以下は活用ではなく造語法の不規則に係るものですが:「濃い口」「濃いめ」「早い目」(→「実はそれって ちがくテ?」)

また、「鯉こく」という料理の「こく」とは何かと思い辞書を見ると「鯉濃く」。形容詞連用形で名詞を作る造語法は一般的でない。「遠く」、「近く」、「多く」、「安くで手に入れる」の「安くで」などの例があるけれど。

「鯉濃く」は「鯉の濃漿(こくしょう)」の意から、とのこと。このような湯桶読みもめずらしいでしょう。

その「濃漿」を『日本国語大辞典』で見てみると、語源はさだかでないようです。大言海に「コキシル(膿汁)の音便転か。また、コクニタシル(濃煮汁)の中略か」との説明があるようですが、こじつけではないでしょうか。


来年の著作権ぎれ

【560】
来年の著作権ぎれ
 岡島昭浩
 - 04/11/27(土) 13:21 -
----
そろそろ年末。
今年いっぱいで著作権が切れる人にどんな人がいるのか、気になるところです。
死せる作家の会にも香取秀真・吉沢義則・幸田成友・寒川鼠骨らが載っていますが、それ以外にも居ます。

解釈の橘純一 1884.2〜1954.1.9
俳文学の勝峰晋風(勝峰晋三) 1887.12.11〜1954.1.31
長崎洋学の古賀十二郎 1879〜1954

著作者は他にも居ますが、国語学国文学周辺の研究者としては、こんなところでしょうか。国語年鑑の最初の年でもあるようなので、それも見ないといけませんが。

なお、現在、著作権の保護期間は死後五十年ですが、これを七十年にして欲しいという要望が出され、審議されています。
著作権保護期間延長の動きを止めたい いくつかあるページの中から、他へのリンクも張られている「壊れる前に」へリンクしておきます。)

もし七十年に延長されることになってしまうと、二十年間、著作権保護期間終了者が出ないという寂しいことになってしまいます。



【575】
著作権保護期間延長へ
 岡島昭浩
 - 04/12/8(水) 0:40 -
----




[添付]〜添付ファイル〜






・名前



: noextension.png





・サイズ



: 7.8KB



青空の行方
添付画像
【noextension.png : 7.8KB】


【579】
Re:来年の著作権ぎれ
 UEJ
 - 04/12/9(木) 22:43 -
----
>なお、現在、著作権の保護期間は死後五十年ですが、これを七十年にして欲しいという要望が出され、審議されています。


アメリカで50年が70年に延長されたのはディズニーの働きかけだと言われていますね。
http://www.eigafan.com/abroad/business/2002/0910/

20年後には保護期間をさらに延長して100年にしよう、なんて話が出てきそう…。


「ワ+米」

【578】
「ワ+米」
 佐藤
 - 04/12/9(木) 20:18 -
----
「探・深」の旁が「ワ冠に米」となる例、易林本節用集にありました。下記リンクの最終行(探)とその前の行(探題)。画像をクリックすると大きな画像を表示します。
http://ddb.libnet.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/i029/image/01/i029s0094.html


「みだらな」と「しだら」と「みだれ」

【574】
「みだらな」と「しだら」と「みだれ」
 道浦俊彦
 - 04/12/6(月) 15:07 -
----
「みだらな」という言葉と、「だらしない」の語源とされる「しだら」(太鼓を打つリズムと聞いています)は関連があるのでしょうか?
また「みだら」と「乱れ」は関連があるのでしょうか?ご存知の方ご教示ください。


オリンピックで目についたことば ##

【291】
オリンピックで目についたことば ##
 Yeemar
 - 04/8/14(土) 15:13 -
----
オリンピックで目についたことば
の続きです。

2004.08.14 のアテネオリンピック開会式。入場行進で、男性アナウンサーはさわやかで晴れやかな調子で選手団を紹介。「前回の大会ではすぐれた成績を残しました」などというふうに。

イラクの選手を紹介するとき、ついその口調で
去年のイラク戦争では多くの国民が犠牲になりました。
と明るく紹介した(ように私には聞こえた。少なくとも重くはなかった)。戦争はまことに悲しむべきことで、本来ならつい一瞬絶句して、聞き手にイラクの過去と現在を思い起こさせるようなアナウンスであってほしかった。それとも、このアナウンサーのもともとの声質によるのかな?



【294】
解説者とアナウンサー
 佐藤
 - 04/8/17(火) 5:21 -
----
 この組み合わせのありようで、ドキドキハラハラすることがありますね。
 昨日の野球がそれでした。星野元監督と噛み合わないというか、ちょっとぎすぎすした感じがした。遠慮のない関係を結べているからのやりとりだった、と見えなくもないのですが。
 男子体操のはなかなか好ましかった。アナウンサーは正確な情報を伝えつつ、視聴者代表のような感想も述べる。解説は個々の競技の冷静な評価、ミスの要因などの細部を、経験者ならではの視点で的確に指摘してました。両者の声がかぶることもなく、アナウンサの感想を、解説者が裏付けする感じでテンポもよい。お互いにやりやすいだろうなと素直に思える運び方でした(それもあって、つい夜更かしを……)。



【297】
Re:解説者とアナウンサー
 佐藤
 - 04/8/17(火) 15:15 -
----
同じNHKですが、実況とビデオとで別の人になってました。地上波と衛星波の違いでしょうか。ビデオの方も悪くないけれど、実況の組み合わせの方(解説者がソウル五輪に出た人)がよかったかな。



【298】
Re:解説者とアナウンサー
 佐藤
 - 04/8/17(火) 19:34 -
----
17日19時以降の録画は実況のコンビのようです。「放物線は勝利への架け橋だ!」。



【299】
Re:解説者とアナウンサー
 岡島昭浩
 - 04/8/18(水) 18:56 -
----
▼佐藤さん:
>「放物線は勝利への架け橋だ!」。


これは、NHKのオリンピックテーマソングの引用なのでしょうね。
http://www3.nhk.or.jp/olympic/nhk/theme2_fs.html



【304】
Re:オリンピックで目についたことば ##――ちょー...
 Yeemar
 - 04/8/19(木) 21:55 -
----
北島康介選手の一言は「ちょーきもちええ」と聞こえましたが、「週刊新潮」2004.08.26 p.17 グラビアのキャプションに
競泳男子平泳ぎ100メートルの北島康介(21)、優勝後のひとことは「ちょーキモチいー」
とあります。新聞の見出しも「ちょー気持ちいい」ではなかったでしょうか。



【305】
Re:オリンピックで目についたことば ##――うわず...
 岡島昭浩
 - 04/8/20(金) 0:08 -
----
女子柔道実況の三宅アナウンサーはフジテレビの人だと思うのですが、何度か「うわずえ」と言うのを聞きました。
これは「うわぜい」の語源俗解形だろうと思っている形ですが、NHKあたりから「指導!」が入ったりしないのでしょうか。

「奥衿」というのは、柔道以外でもいうのだろうかと思って検索してみたら1件だけそれらしいのが引っかかりました。
http://www.rakuten.ne.jp/gold/proudmary/page/03detail/tah_size.html



【306】
Re:オリンピックで目についたことば ##
 Yeemar
 - 04/8/20(金) 9:32 -
----
3度目の五輪で悲願の金、柔道女子78キロ級の阿武教子選手のよみ方は「あんの・のりこ」。「喜屋武」さんが「きゃん」さんだから、「武」は「ん」と読む漢字なのでしょう。すると「阿武」は「あん」であり、「の」は「藤原道長」の「ふじわらの」のように読み添えのかなでしょうか(歴史的なことを考えず今の状態を説明するならば「阿武」全体で「あんの」とよむ一種の熟字訓というべきでしょうけれども)。親戚の人を「鈴木の一郎ちゃん」とか「田中の太郎さん」とかいうのにも似ておもしろく思います。

「喜屋武」さんは「きゃん」という発音が先にあって文字を当てたのか、もともと「きやむ」などと言っていたのがなまって「きゃん」になったのか。この字で「きやたけ」さんもいますね。



【308】
Re:オリンピックで目についたことば ##
 skid
 - 04/8/20(金) 14:13 -
----
▼Yeemarさん:
>3度目の五輪で悲願の金、柔道女子78キロ級の阿武教子選手のよみ方は「あんの・のりこ」。


「阿武」で連想するのは「阿武松原」「阿武松緑之助」。
「あぶ」→「あふ」→「おう」でしょうか。
横綱の「阿武松」は『大日本人名辞書』新訂版(昭和11年)に「アブノマツ」という見出しになっています。



【310】
Re:オリンピックで目についたことば ##――うわず...
 佐藤
 - 04/8/20(金) 23:23 -
----
▼岡島昭浩さん:
>女子柔道実況の三宅アナウンサーはフジテレビの人だと思うのですが、何度か「うわずえ」と言うのを聞きました。


不用意な発音から聞き覚えた、あるいは、発音を不用意に聞き取って覚えてしまった、という線もありますか? 自分で「うわぜい」とつぶやいてみて、「うわずえ」に聞こえないこともないように思ったので。(おお! 塚田、金メダル!)



【311】
Re:オリンピックで目についたことば ##
 畠中敏彦
 - 04/8/20(金) 23:38 -
----
【○○は、最もメダルを期待していた一人】
と、ある局のアナウンサーが言っておりました。

「○○は期待していた一人」であり、他にも期待している人がいるのですよね。
「最も…」ときますと、特定の(単一の)者を指す印象がありますが、そうで
もないんですね。
まぁ、オリンピックに限らず、普段もこのような言い方をよく耳にします。



【312】
Re:オリンピックで目についたことば ##――うわず...
 岡島昭浩
 - 04/8/21(土) 7:10 -
----
「うわずえ」は、スポーツ放送の世界では、すでに定着した言葉となっているようにも思うのですが、「上から末まで」という感じで意識されているのだろうと思っています。
「うわぜい」(ウワゼエ)という伝統形を聞いて、「せいくらべ」の「せい」との関係を想起できない(で「末」を想起してしまう)のは、「せいが高い」ではなく「せが高い」が標準的な形になってしまっている所為もあるのでしょうか。

なお、「うわずえ」は、ほぼ常に「うわずえがある」の形で使われるようです。

旧会議室で書いていたのでした。解説者ではなくアナウンサーが、しかもNHKの放送として流れたことを記録したかったのでした。



【313】
Re:オリンピックで目についたことば ##――(c)
 岡島昭浩
 - 04/8/21(土) 7:16 -
----
視聴者からの応援FAXなどが紹介されたりしますが、その中に、&#169; 、(c)、丸シー、があり、「〜ちゃん」と読まれているのを知りました。アナウンサーは、「絵文字が使ってますが」などと言っていたように思います(たしか青山アナでしたか)。

携帯メールなどでは、丸シーは、普通に使えるのでしょうかね。



【318】
Re:オリンピックで目についたことば ##――(c)
 KS
 - 04/8/24(火) 16:37 -
----
▼岡島昭浩さん:
>視聴者からの応援FAXなどが紹介されたりしますが、その中に、&#169; 、(c)、丸シー、があり、「〜ちゃん」と読まれているのを知りました。アナウンサーは、「絵文字が使ってますが」などと言っていたように思います(たしか青山アナでしたか)。
>
>携帯メールなどでは、丸シーは、普通に使えるのでしょうかね。


携帯メールの普及で絵文字や略号が大流行ですね。
ドコモ標準絵文字を始め、各自オリジナルな絵文字がいっぱいあるようです。当然ながら、私にはサッパリですしとても付き合いきれません。
 もっとも、言葉にしても文字にしても、このような流行が自然に淘汰整理されて生まれたものかもしれないような気がしています。



【335】
Re:オリンピックで目についたことば ##――ちょー...
 道浦俊彦
 - 04/9/5(日) 10:16 -
----
VTRで見ても「チョー気持ちええ」でした「いい」ではありません。標準語に変換されたのでしょうね。



【567】
Re:オリンピックで目についたことば ##――ちょー...
 skid
 - 04/12/3(金) 18:46 -
----
私は「チョー気持ちええ」とは聞こえないのですが、注意不足でしょうか。
最初に「チョー」を付けない「気持ちいい」の「いい」は、力が入って「い゛ー」となったような感じだと思ったのですが、記憶が曖昧です。



【568】
Re:オリンピックで目についたことば ##――ちょー...
 佐藤
 - 04/12/3(金) 23:55 -
----
▼skidさん:
>私は「チョー気持ちええ」とは聞こえないのですが、注意不足でしょうか。


私も。このところ、何度か聞く機会がありましたね。日本語の典型的な〔i〕よりは舌が下がり気味だが、〔e〕までは行ってないような発音に感じました。



【569】
Re:オリンピックで目についたことば ##――ちょー...
 道浦俊彦
 - 04/12/4(土) 17:16 -
----
▼佐藤さん:
>▼skidさん:

>>私は「チョー気持ちええ」とは聞こえないのですが、注意不足でしょうか。

>
>私も。このところ、何度か聞く機会がありましたね。日本語の典型的な〔i〕よりは舌が下がり気味だが、〔e〕までは行ってないような発音に感じました。



そのとおりだと思います。
私は最初、1回目のは「気持ちええ」と聞こえました。2回目は「気持ちいい」と聞こえました。
全国の若者に広がっている関西弁の影響かと思いましたが、今回の流行語大賞のニュースで、VTRを何回も繰り返し見て聞いていると、「気持ちいい」と言おうとして、鼻に水が残っていて「イ」と「エ」の中間のような音になった、というのが、本当のところではないでしょうか。
本人も「気持ちいい」としっかり言えなかったので、もう一度繰り返したのでは?そこから考えると「チョー気持ちいい」と彼は言いたかったと考えていいのではないでしょうか?


涙がちょちょぎれる

【328】
涙がちょちょぎれる
 瑞菜
 - 04/9/2(木) 9:38 -
----
はじめまして
ふと思いついてネットで調べてここまでたどり着きましたが
よくわからない言葉みたいですね。

情報提供と言うほどでもないんですが、小さい頃
漫才で「大丸ラケット」さんか「いとしこいし」さんあたりが
「涙がちょちょぎれますわ〜」と言ってたような記憶があります。
なにぶんものすごい昔で定かじゃないですが。
話の内容か「情けなくって涙が出る」というニュアンスを感じてたんですが
「教えてgoo」あたりだと「感動して涙が止まらない」みたいな感じの
投稿がありますね。
本当の意味はどうなんでしょうね。



【329】
Re:涙がちょちょぎれる
 岡島昭浩
 - 04/9/2(木) 11:24 -
----
ようこそ。

目についたことば「ちょちょぎれる」を読んで頂いたのですね。
なるほど上方漫才の方で使われていたのですね。有り難うございます。

意味の方では、「泣ける」というのも、感動によっても情けなさによっても使われますから、その泣ける度合いが激しいのが、「涙がちょちょぎれる」なのであろうと思いますが、いかがでしょうか。



【331】
Re:涙がちょちょぎれる
 畠中敏彦
 - 04/9/3(金) 10:42 -
----
▼岡島昭浩さん:
泣ける度合いが激しいのが、「涙がちょちょぎれる」なのであろうと思いますが、いかがでしょうか。

それに「ちょちょぎれる」の語感が、なんとも面白いから、漫才で登場するのではないでしょうか。もちろん、あらたまった席では使いませんよね。



【555】
Re:涙がちょちょぎれる
 瑞菜
 - 04/11/23(火) 11:03 -
----
実は全く逆に思ってたんですよ。「涙があふれる」のは口だけで全然涙なんか出ん状態と思ってました。舞台で本当にボロボロ泣きませんから仕方ないかな。使う機会無くて良かった(笑)。

で、なんか納得しきれないままに随分してからですが、「ななずみそ」というのを思い出しました。高校生の古文の授業ですから相当大昔ですが、この最初の「な」て「なじむ」の否定でしたっけ。それで「途切れない」って事かなとようやく納得しました。しかし、こんな事なら専門家の先生はとっくに解明してるはずですよね。やっぱり違うかな。まあ、深く詮索する必要も無いんですけど。


NHK「気になることば」週間報告 ##

【10】
NHK「気になることば」週間報告 ##
 Yeemar
 - 04/4/17(土) 13:18 -
----
NHK「気になることば」週間報告
の続きです。

高校野球などあり、久々の再開だったため、何度か(1、2度?)見逃したようです。放送日だけでもいずれ確認しておきたいと思います。

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2004.04.** 〔「どうも」について?〕

2004.04.05 ドウモ インターナショナル
 投書(千葉県・男)「イタリアのミラノで日本人駐在員とタクシーに。運転手はきょろきょろしてドーモ(dome ドーム型の教会)のほうにUターン」
 投書(東京都45歳・男)「1983年のテクノポップStyx(スティクス)『Mr. Roboto』(ミスターロボット)に『ドモ アリガト ミスター ロボット』」
 投書(千葉県45歳・男)「『ありがとう』『すみません』とともに外国人が初めて覚える日本語のひとつ」
 NHK国際放送局の外国人にインタビュー
 スウェーデン語・レーナ・リンダールさん(女性)「日本の会社で仕事をしていたとき、電話を切るときのことばが分からなかったが、他の社員のやりとりを聞き『どうも』が便利と分かった」
 イタリア語・アレッサンドロ・クレメンティさん(男性)「色々な意味を含んでいることばを把握して使えば便利。うまく使えればやっと日本語を話せるという実感」
 スペイン語・ホセ・アントニオさん(男性)「外国にはないと思う、日本語の特徴」
 クレメンティさん「イタリア語にはない、日本語の特徴」
 リンダールさん「スウェーデン語にはない、敬語もない」
 ハワイの「アロハ」は、「こんにちは」も「さようなら」も、おくやみの時にも
*参考「やっ、どーも」(ことばをめぐるひとりごと)

2004.04.06 ♪君たち男の子?
 投書(京都府40代・男)「女性のことばに『だろう?』耳障り」
 投書(東京都65歳・男)「テレビドラマでも『〜だよ』『〜だね』『でかい』『いてっ』」
 「(仲間うちで)勢いで『痛い』ではなく『いてっ』」(伊東アナウンサー)「そうだね」(桜井アナウンサー)
 VTR(渋谷・女性)「『なんとかじゃねー?』とか『ありえなくねー?』とか」「女だけでいるとき」「『〜じゃねーかよ』『ふざけんなよ』とか『すげー』とか」
 (1)「〜かしら」「〜わよ」など特有の語尾がなくなる
 「てよだわことば」子ども→女高生→一般に。大正時代は「粗野で下品」。良妻賢母教育への抵抗のことばとの説も
 親しい間柄だけで使えることばを使って距離を縮めたい
 中国・韓国では区別はない、韓国語では抑揚だけで男女が分かる
 (2)荒っぽいことばの使用が増える
 男性のことばがやさしくなり女性に近づく
 文化庁調査(H7)違いがないほうがよい9.8%・自然の流れでありやむを得ない41.2・違いがある方がよい44.1→(H12)7.8・34.8・52(違いがある方がよい人が増える)

2004.04.07 違くない お便りから
 (1)形容詞説
 投書(長崎市・女)「『違わない』のとき『違う』という断定を避けて、『違っている状況ではない』という形容詞のニュアンスを持ち込んだ」
 投書(男)「『遠くても近くても』のように対にするためには『正しくても違くても』」
 (2)幼児語説
 投書(さいたま市・女)「孫に『それは違うよ』というと『ちがくないでしょう』、『にんじんは好きくないの』」
 投書(神奈川県・女)「3歳の孫が『行(い)くない』〔「良(い)くない」?〕。」
 (3)方言説
 投書(兵庫県10代・男性)「播州で『違くない』は聞かないが『この部屋きれくなってない(きれいになっていない)』はよく聞く。関西方言?」
 投書(岡山県31歳・女)「19歳くらいの時に香川で『違うくない』『きれいくない』『すきくない』『変(へん)くない』」
 投書(福島県岩瀬郡)「子どものころから使用。『ちがぐねがい?』と話す」
 投書(町田市65歳)「福島県伊達地方で昔から『ちがぐね』『それとはちがぐで、○○だぞい』」
 投書(秋田県・男)「秋田弁では『ちがうくない』『ちがうくねい』『ちがうぐねが?』と言う」
 投書(東北・76歳)「(東京生まれ・育ち)『ちがく』は仙台市では若者だけでなく古くから一般的」
 東京外国語大学・井上史雄教授調べ(20年前)福島県・栃木県60〜70代「ちがくない」使用
 投書(栃木県19歳・女)「栃木の方言。南下して若者が使うようになった」

2004.04.08 超ウルトラスーパー気になる!
 「超特急」「超高層」「超満員」名詞の前につく→形容詞・動詞の前につくように
 辞書でも新用法を説明
 20年くらい前からか――若者向け情報誌「angle」(主婦と生活社)1984.04 日本女子大学の特集「【流行語】▼超。ものすごいという意味で言葉の始めに“超”をつける。(例)超むずかしい。」
 1996年には流行語「チョベリバ チョベリグ」
 東京外国語大学・井上教授――東海道沿いに調査「静岡からではないか」
 「週刊こどもニュース」(1998.11.22放送)富士市でインタビュー(女性)「20年くらい前ですか、小学生の時」70年代には使っていたということになる(新方言)
 大阪では「めっちゃ」、広島では「ぶち」(「ぶつ」から?)、東部(備後)では「ばり」、山口「ぶち・ぶり」
 「超」もひところに比べれば減る。VTR(渋谷・女)「『すごい』という意味で『多少』を使う」。「ちょっとかっこいい」も「たいへん」を表す

2004.04.09 国会中継



【11】
Re:NHK「気になることば」週間報告 ##
 Yeemar
 - 04/4/17(土) 13:25 -
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「ご苦労さま」は失礼か、をめぐって投書が寄せられました。04.16 の放送で名古屋の人の投書に「方言で中部地方では目上にも使っていました」とあるのは注目すべき情報です。職業による違いは触れられていませんでした。

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2004.04.12 「どうも」あれこれ
 投書(女)「フィンランドの飛行機で客室乗務員に『キートス(ありがとう)』と言ったら、『ドーモ、ドーモ』と言われた」
 投書(東京都63歳・男)「ドイツ語では『ビッテ(bitte)』、広東語『ムゴイ(唔該)』」いずれも「どうも」ほどは汎用性がない
 「どうも」の後を省略するのはどうか、賛否両論
 投書(中野区・女)「細い路地、込んだ商店ですれ違うとき、こんな便利なことばはない」
 投書(大田区63歳・男)「近隣・友人であれば『やあ』『よう』と同じくあいさつとして重要」
 投書(板橋区・女)「主人が連発して気になる、注意しようとして30年あまり過ぎる」
 投書(横須賀市・男)「『どうもありがとう』では尊大、『どうもありがとうございます』とほどでもなく『どうも』で済ます。気持ちの交流を面倒くさがる風潮」
 投書(東京都59歳・男)「すでに『ああ』『ええ』などの感嘆詞と同じで、省略している意識はない」
 投書(31歳・男)「『音』として使う。『すいません』ほど他人行儀でない場合『どうも』で注意を引く」
 ビジネス社会で使われる。「あうんの呼吸」
 不快感を与えないように使えばいいのではないか

2004.04.13 ご苦労様って失礼ですか?
 投書(岡山市43歳・女)「二十数年前、勤め始め、目上には『ご苦労さま』でなく『お疲れさま』をと言われた」
 投書(東京50歳・女)「『ご苦労さま』年下から言われると軽く見られている気がする」
 投書(仙台市41歳・女)「母は『ご苦労さま』は目上から目下に、『お疲れさま』は目下から目上にと言う。ちまたではそうではないようだ」
 桜井アナウンサー「目上にも目下にも『ご苦労さま』は使いにくい」
 歌舞伎の世界から生まれたのではないか。「お疲れ様でした→目上、ご苦労様でした→目下」
 「ご苦労さま」江戸時代から、「お疲れさま」明治時代から
 「ちゃんばら映画で上の人が家臣に『ご苦労』、偉そうですね」
 NHK放送文化研究所調査(H8)「部下が部長に『ご苦労様でした』」おかしい39.2%、おかしくない57.1%、どちらとも言えない2.3%
 今の時代は上下関係が複雑で、「目上・目下」が年齢・肩書きで区別できないから?
 あいさつのことばとして使っているのでは「さようなら」の代わりに「ご苦労さま」
 「ねぎらう」(古語「ねぐ」=(上に)加護を願い祈る(下に)ねぎらう・いたわる)日本には「下から上にねぎらう」という考えはなかった→「ご苦労さま」はおかしい
 「お疲れさま」はねぎらうことばではないのか?→一緒に仕事をしているとき、「あなたも疲れました、私も疲れました」という気持ちか
 桜井アナウンサー「新潟では夕方、町の人とすれ違うと『おつかれさんです』」
 投書(大田区・女)「目下の人が目上の人にねぎらいのことばを伝えるには?」
 「お疲れさまでございました」か?「このたびはご苦労さまでございました」といえばよいという意見も

2004.04.14 地域限定の外来語
 「ラーフル」(鹿児島県で黒板消し)オランダ語「rafel(ラフル)=ボロ切れ」からか
 いしだまさよしさん〔字不明〕(鹿児島)原稿用紙16枚に「英語『rubber』→『ラッブル』→『ラーフル』が語源だ」
 バンコ=縁台、ボブラ=かぼちゃ〔以上九州中心〕、ギッタ=ゴム〔西日本中心〕(前出)
 投書(延岡市・男)「延岡一帯では、『バンコ』は食事用のテーブル」
 投書(東京・吉祥寺)「『ギッタ』は『グッタペルカ』(ゴム。グッタはマレー語でゴムの樹液)富山県東部で『ボーブラ』は『キクカボチャ』のこと、ふつうのかぼちゃ(クリカボチャ)は『カボチャ』」
 投書(埼玉県68歳・男)「石川県加賀地方でも使う、『カボチャ』はハイカラで『ボブラ』は日常語」
 「ボブラ」=ポルトガル語「abo´bora」から、「カボチャ」=「Cambodia abo´bora」

2004.04.15 〜ぶりの使い方
 投書(町田市・女)「『10年ぶりの不作』というが、『〜ぶり』は期待したときに使うのではないか」
 「〜以来の不作」のほうがいい
 「着工以来15年ぶりに完成」のような使い方も(以前で同じでなくてもよい)
 打者のヒットが「○×××○」の場合、「4打席ぶり」のヒット
 「満」と「数え」でも違う。「ぶり」は「満」で数える
 芥川賞最年少記録を「37年振りに塗り替えた」2004-37=1967(この前は丸山健二「夏の流れ」)

2004.04.16 お疲れさま その後…
 投書(沼津市・男)「場合により使い分け。上司が退社―『失礼します』、上司が部長などに折衝『どうもありがとうございました』、上司が運動会に出走―『どうもお疲れさまでした』」
 投書(31歳・男)「目上が『ご苦労さまでした』はねぎらいのことば。特定の状況で目下が使えばわざわざ何かをしていただいた申し訳なさを表す。イントネーションも必要」
 投書(岡山市・女)「高1の娘いわく『友達同士でも〈ご苦労さま〉は偉そう。学校を出るときは〈お疲れ〉〈お疲れさま〉と言う』。そこで『お疲れ』『お疲れさま』『お疲れさまです』『お疲れさまでございます』としては」
 投書(横浜市60歳・女)「お隣から回覧板を持ってきてくださったとき、友だちにFAXで労をねぎらうとき『お世話さまでした』」(類似意見多数)
 上司が帰るときに「お世話さまでした」とは言えない、宅配業者には「お世話さま」では
 投書(東京・女)「(名古屋出身)ご苦労さまを方言で中部地方では目上にも使っていました」
 投書(上田市・男)「長野県の東部では『こんばんは』そのものが『おつかれ』と言います。若い人はだれも言わない」
 投書(井原市)「岡山西部、夕方から夜のあいさつ、電話での第1声『おつかれでござんしょ』」
 投書(秋田)「『ごなんぎです』『あがってたんせ』など」
 投書(茨城県19歳・女)「小学生のとき先生にお礼で『先生、ありがとうございました。ご苦労さまでした』と言うと先生は『大変失礼。目上に言ってはいけない』。私は疑問を持つ。『お疲れさまです』『ご苦労さまです』と言う本人は目上の苦労をすべて理解できたとは思わないが、自分が分かる範囲で感謝の気持ちを伝えようとしている」
 気持ちが大事、でもふさわしいことばでなければ誤解も
*参考スレッド「教えてください(ご苦労様)



【16】
Re:NHK「気になることば」週間報告 ##
 skid
 - 04/4/18(日) 1:29 -
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ちょっと本題から逸れます。

> 投書(東京都45歳・男)「1983年のテクノポップStyx(スティクス)『Mr. Roboto』(ミスターロボット)に『ドモ アリガト ミスター ロボット』」


テクノポップというのは誤解です。
当時、STYXのシングルレコード(日本版)を買いました。
グループ名はもちろん、曲名も大文字です。
邦題には「ミスター・ロボット」と中黒点が入ります。
日本語で歌っている箇所に英語歌詞を添えると、こんな感じ。

♪どうもありがとう、ミスターロボット、又会う日まで
 (Domo Arigato Mr. Roboto, mata ah-oo hima de)
 どうもありがとう、ミスターロボット、秘密を知りたい
 (Domo Arigato Mr. Roboto, himitsu wo shiri tai)

 君はボクが何者なのか考えている……機械なのかマネキンか
 部品は日本製、ボクは最新型の人間
 〈中略〉
 どうもありがとう、ミスターロボット、どうも……どうも
 (Domo Arigato Mr. Roboto, Domo....Domo)
 どうもありがとう、ミスターロボット 《以下は英語》
 みんなのやりたくない仕事をやってくれて
 本当にありがとう、ミスターロボット
 ボクを自由にしてくれて
 どうもありがとう、ありがとう、ありがとう、
 君にお礼を言いたい、本当にありがとう
 〈後略〉

訳詞は嶋倫子、英語歌詞はアルバムから(シングルのは句読法が若干異なる)。
「会う」が「ah-oo」です。



【29】
Re:NHK「気になることば」週間報告 ##
 Yeemar
 - 04/4/24(土) 23:02 -
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「じゃん」のルーツを解明することに力が注がれています。「じゃん」はもともとは「じゃんか」「じゃ あんか」であり、大元は「では あるまいか」といったところでしょうか。

南関東・中部地方からずっと離れた北部九州(五島など)、山口などで「じゃん」が用いられるのは、方言周圏論で説明できるのでしょうか。

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2004.04.19 〔見逃し。「つぎ」と「こんど」の違いについて?〕

2004.04.20 数日の数っていくつ?
 桜井アナウンサー「『数日』は『2、3人』。3、4も5、6も多い」
 伊東アナウンサー「『数日以内』は『2、3日以内』」
 NHK放送文化研究所調べ(1603年以降の辞書107冊につき)1886年、和英辞典「数」の項目に「10より少ないいくつか(Several less than ten)」―1911年〜3、4。5、6。―1976年〜2、3が登場―1980年〜2、3が多くなる―2000年〜2、3/3、4から5、6
 NHK放送文化研究所調べ(H8)「数日後」「2〜3」36%、「3〜4」30、「4〜5」21、「5〜6」9、「その他」4。H8の調査で、60歳以上では「数日」を2〜3日より3〜4日、4〜5日とする人がわずかに多い/(H15)「数日」43%、26、12、7、12。
 NHK放送文化研究所調べ(H15)「数人」20歳代―「2〜3」31%、「3〜4」25、「4〜5」17、「5〜6」10、30歳代―26、29、15、13、40歳代―27、23、21、10、50歳代―25、28、15、15、60歳以上―21、15、24、24
 投書(東京都)「〔もと看護師の私が〕突発性発疹は何日で消えるかと聞かれ『数日』。2〜3日から1週間のつもりであいまいに答えた」
 放送で急な事故のニュースで人数確認できない場合は「数人」

2004.04.21 じゃんの道 静岡発
 報告・小田川肇アナウンサー(静岡放送局)
 みやげ物屋てぬぐい(S40年前後)にも「ではないか じゃん」「いいじゃないの いいじゃん」
 S30の録音(静岡市内農家の女性〔M25生まれ〕の雑談)「おちゃがしゃーえーじゃー(お茶菓子は良いよ) はなしゃーなんでだよ(話は何だか〜ね) はなしょーしてもらいたいてゆーでー(話をしてもらいたいっていうから) べんしにはなしをして(弁士に話をして)べんしのはなしんこまるじゃん(弁士の話が困るよ)」
 かつては静岡清水←→甲州甲府を富士川、身延街道を通じ行き来した
 静岡清水に江戸時代の「甲州廻米置場跡」の石碑、現在も山梨県所有の土地が
 清水の「じゃん」は甲府のと違う(VTR・年配女性)「ことば悪いやね、漁師町でしたから。女の人も『いいじゃんか』」
 清水・甲府どちらがルーツかは断定がむずかしい

2004.04.22 「じゃん」の道 山梨発
 報告・横井健吉アナウンサー(甲府放送局)
 なじみの店で「よくきたじゃんねー」
 「こうふアルジャン argent」(市役所が再開発の拠点として作る)
 山梨県立美術館に「みるじゃんの丘」
 山梨県ホームページ「食うじゃん」
 山梨では年配の人ほど使う
 高齢者の趣味の会「うまいじゃんね」「作るじゃん」「価値あるじゃんね」「いいじゃんね」「早いじゃん」「年をとりたかねーじゃんね」「肩が痛くなってやーじゃんね」
 山梨ことばの会代表・小林是綱さん(1)断定「温泉一緒に行ってくれる?」「行くじゃん」(2)勧誘「どっか連れてってくれる?」「温泉へでも行くじゃんけ〔古い形〕」(3)同意「温泉よく行く?」「よく行くじゃんねー」「ほーじゃんねー〔一番多い形〕」
 静岡清水から富士川沿いに鰍沢へ海産物が、鰍沢から幕府献上米、天然氷などが運ばれる、鰍沢から県東部、長野へ物資運ばれる(「じゃん」も運ばれた?)
 投書(横浜市・男)「両親1901年鰍沢生まれ、祖母と『じゃん』を使っていた」
 投書(女)「66年甲府に住む。甲州名物の煮貝は、静岡から富士川沿いに甲府に運ぶ」

2004.04.23 じゃんの道 長崎発
 報告・田中洋行アナウンサー(長崎放送局)
 五島列島・福江市(年配女性)「時たま、良かじゃん、何とかじゃん、と使う」
 岐宿町・ 松山勇さん(76)(方言研究者)宅で年配女性会話「鼻なんかおさえて分からんじゃん」「ここへんでもあん人とあん人とチング(友達)やもんて言うじゃん?」
 大正6年に出版された本〔『五島通史』〕にも当時「『じゃん』が使われている」、年配者も祖父母の代から使うという
 島原市・峰友喜代年さん(74)芸能「にわか」の中に「じゃんにすればよかろーがー」(じゃん=折半;けんか両成敗)
 静岡・山梨の「じゃん」との関係は分からず
 島原の有馬晴信は甲州大和村に幽閉、明治に島原農民が山梨にじゃがいも開拓民



【49】
Re:NHK「気になることば」週間報告 ##
 Yeemar
 - 04/5/6(木) 5:14 -
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見逃しが多くなってきました。この週は「小ネタ」が多かったように思います。

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2004.04.26 負けず嫌い?負け嫌い?
 「負けないことが嫌い?」――辞書には「負け嫌い」(江戸時代、漱石「坊っちゃん」)もあり
 「負け嫌い」が先にあり「負けず嫌い」か
 明治時代「負ける嫌い」もあり。「負けず魂/負けじ魂」との混交か
 意志・推量を表す「行かず」(静岡・山梨など)
 「ふるさと日本のことば」(2000.05.28放送)長野県・佐久市湯川「行かずに ほ(行こう ほら) えべさえべさ」「行かず めた」
 「食わず嫌い」は――「食わないのに嫌い」

2004.04.27 「生きざま」って使いますか?
 投書(茨城県50代)「『〜ざま』がきたなく感じられる、『死にざま』と重なる」
 投書(東京都59歳・男)「『ざまを見ろ』などみっともないようすを表すはず」
 辞書には「個人の生き方の具体的なありさま」等、悪いイメージはない
 「死にざま」(死ぬときの有りさま・死にぎわ)から生まれた
 「さま」――(1)方向を表す(2)人に対する敬称(3)様子を表す――否定的ではない
 「ざま」江戸時代中ごろから侮蔑的――「ぶざま」
 1960年代に生まれたことば――劇的な生き方に若者が憧れたか

2004.04.28 渋滞、ノロノロ運転は?
 「川崎から20キロ渋滞しています」川崎はどこか?――「川崎から先へ20キロ」「川崎より手前20キロ」
 日本道路交通情報センター・越智ひろみさん「川崎から」というと川崎から先。「川崎から渋谷にかけて20キロの渋滞」。センターでは「渋谷を先頭に川崎までの渋滞」
 渋滞予想(下り)「大和バス停25km」→「大和バス停を先頭に25キロ渋滞」
 複雑な渋滞状況「谷町で工事のため○キロ、さらに渋谷から駒沢にかけて○キロ、さらに用賀から川崎にかけて○キロ」
 東西に走る道路では「○○方面へ向かう西行きは」、内回り・外回りでは「○○方面へ向かう外回りは」。
 〔宮川アナウンサー余談〕富山・礪波地方の屋敷林を「カイニョ」という。地元民も語源が分からない。〔ウェブでは「垣入(かいにょう)」ともある〕

2004.04.29 みどりの日

2004.04.30 〔見逃し。新聞によれば「よく間違う慣用句」〕



【58】
Re:NHK「気になることば」週間報告 ##
 Yeemar
 - 04/5/8(土) 14:01 -
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連休だったため、今週は2回だけです。

ところで、NHK教育テレビで放送されている「日本語なるほど塾」にはテキストがあり、毎号の末尾に、この「気になることば」で放送した主題のうちいくつかが取り上げられています。

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2004.05.06 結果を出す
 スポーツニュースで「結果を出す」(よい? 悪い?)
 放送文化研究所(H8)「彼は結果を出しましたね」――「おかしい」40%「おかしくない」40%/「おかしいと感じる人」男性:女性 20代15%:46%、30代35:50、40代33:46、50代40:46、60歳以上36:38(若い男性少ない)
 「評価する」(よい? 悪い?)最近の辞書では「高く評価する」も。また「評判の店」「人気の店」
 町永俊雄アナウンサー「結果は『実を結ぶ』だからいい意味なのでは?」

2004.05.07 他人事でもヒトゴトですか?
 投書(33歳・男)「辞書に『他人事』を『たにんごと』は間違いでないとあるが、あれは断じて『ひとごと』と思う私は意固地なのか」
 伝統的には「ひとごと」
 戦前辞書では「人事・他人事」――「人事」では「じんじ」なので「他人事」→ルビを振らなければ「ひとごと」
 放送文化研究所調査(H11)「とても他人事とは思えない」たにんごと77%、ひとごと17、どちらかと言えば3、どちらかと言えば2
 「お手数をおかけしました」年配の丁寧な方は「おてかず」――大正時代には「おてかず」一般的
 「世論」は「よろん」→「せろん」



【430】
Re:NHK「気になることば」週間報告 ##
 岡島昭浩
 - 04/10/5(火) 15:59 -
----
今、NHKラジオをつけたらやっていました。

「農作物」などにふれた後、
「重複」について「ちょうふく」が古く「じゅうふく」が新しい、という話をしていますが、中国から渡ってきたときにはチョウフクだったが、日本風の読みをするようになり、ジュウフクが出てきた、という風に説明したのは、いけません。

「綴り字発音」という風に説明をしたのはよさそうですが、漢字音の単一化、という風にするのがよかろうと、私は思っております。

聴取者からのお便りは、相変わらず「どちらが正しいのでしょう」。「気になることば」の担当者は無力感に襲われないでしょうか。



【432】
Re:NHK「気になることば」週間報告 ##
 Yeemar
 - 04/10/5(火) 18:27 -
----
▼岡島昭浩さん:
>今、NHKラジオをつけたらやっていました。


最近、東村山市に引っ越しまして、中野のYeemarは東村山のYeemarとなっております。生活形態が変わり、テレビの記録がはなはだしにくくなりました。そこで「週間報告」はなんとなく尻切れトンボとなっております。

とはいえ、説明のしかた、読者の興味のありかたなどを含め、大事な情報が放送されるので、何とかしなければと思っています。

ラジオは雑音が多くあまり入りません。これも何とかしなければと思います。



【554】
Re:NHK「気になることば」週間報告 ##
 Yeemar
 - 04/11/23(火) 7:14 -
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> そこで「週間報告」はなんとなく尻切れトンボとなっております。


NHKホームページに、今年4月からの内容紹介があります。
http://www.nhk.or.jp/a-room/kininaru/index04.html

また、昨年度については「タイトル集」があります。

というわけで、私の報告は尻切れトンボとなっても、NHKのホームページと合わせれば、(奇しくも?)うまい具合に相互補完されるわけです。

また「NHK日本語なるほど塾」の番組テキストにも、毎号「気になることば」のページがあって、この番組から選り抜いた話が載っています。


『日本語新辞典』

【536】
『日本語新辞典』
 田島照生
 - 04/11/7(日) 13:48 -
----
けさ、讀賣新聞と日本経済新聞の広告で目にとまったのが、松井栄一編『日本語新辞典』(小学館)。まったくノーマークでした。

以下、広告欄からの抜粋。
「『日本国語大辞典』編集委員・松井栄一が、半世紀にわたる日本語研究の成果として編んだ“正しい日本語の使い方”がわかる待望の新辞典です。現代生活に必要な約63,000語を収録。類語から用例、アクセント、敬語など一語一語を徹底詳解しました。」
定価は六千三百円。小型の国語辞典にしては値が張ります。

また、「web日本語」の下記ページもご覧ください。
http://www.web-nihongo.com/dictionary/dic_52/d-index.html

国語辞典といえば、今月下旬には新明解の第六版も出るそうです。



【537】
Re:『日本語新辞典』
 skid
 - 04/11/9(火) 3:11 -
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▼田島照生さん:
>けさ、讀賣新聞と日本経済新聞の広告で目にとまったのが、松井栄一編『日本語新辞典』(小学館)。まったくノーマークでした。
>
>定価は六千三百円。小型の国語辞典にしては値が張ります。


A5判ですので、他の小型辞典より頭ひとつ大きい感じです。
そのぶん活字も大きめですが、読む辞典といった印象。
とりあえず102あるコラムに興味をひかれ、すべて目を通しました。
まさに、かゆい所に手が届くような内容だと思います。
日本語学習者に最適なのに値段が高いのは残念ですけれど、もしかしたら将来は小型版も出るかもしれませんね。



【539】
Re:『日本語新辞典』
 道浦俊彦
 - 04/11/14(日) 16:47 -
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>▼田島照生さん:
>とりあえず102あるコラムに興味をひかれ、すべて目を通しました。


私もコラムは全部目を通しました!コラムだけ集めて本を出しても売れるのではないでしょうか?
ただ、裏表紙の裏にある「コラムの目次」で、あいうえお順に並んでいる「万歳」(1603ページ)が、なぜか、「破天荒」(1375ページ)と「日暮れ・夕方」(1415ページ)の間に入っています。「バンザイ」と読むのなら「ハ行」のこの位置でいいのですが、ページ数が合いません。「マンザイ」と「マ行」で読むなら、「敬語ー参る」(1577ページ)と「未亡人」(1627ページ)の間でよいと思いますが、それなら目次の並び順が違います。
なぜだろう?



【540】
『国語辞書事件簿』
 田島照生
 - 04/11/18(木) 0:30 -
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『日本語新辞典』とはまったく関係がない話なのですが、辞書に関する話題ということで、ここに書きます。

今月下旬に、石山茂利夫さんの『国語辞書事件簿』(草思社)という本が出るそうです。価格は千八百円。『裏読み深読み国語辞書』と似た内容になるのでしょうか。

以下、草思社の「これから出る本」(http://www.soshisha.com/next.htm)より。
「『広辞苑』のネタ元になった辞書は? 名辞書『例解国語辞典』を襲った悲劇とは? 丹念な調査をもとに、辞書制作の舞台裏に迫る。」



【544】
Re:『国語辞書事件簿』
 skid
 - 04/11/19(金) 2:01 -
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▼田島照生さん:
>今月下旬に、石山茂利夫さんの『国語辞書事件簿』(草思社)という本が出るそうです。価格は千八百円。『裏読み深読み国語辞書』と似た内容になるのでしょうか。


前著までは言葉の問題を中心に書かれていますが、新著は辞書そのものにまつわる問題がテーマになっています。
章タイトルと主な小見出しを挙げてみます。
1 激突!いろは対五十音
 明治人には「新しい時代の波」だった五十音/大槻文彦の「実験」/利用者に資格を求めた辞書
2 『大言海』八万語説の背景
 国語辞書は仲間に冷たい/『大日本』の見出し語――二二万? 二〇万四〇〇〇?/『日国』の根拠は見坊データ?
3 誇大宣伝ファイル
 看板に偽りあり!『大辞泉』増補版/営業用リニューアルの手本?『広辞苑』二版補訂版/『角川国語大辞典』の怪
4 悲劇の名辞書
 名辞書『例解国語辞典』の悲劇/『レイカイ』のマル秘手直し大作戦/『レイカイ』には“欠陥版”がある
5 『広辞苑』のルーツ発見・序
6 『広辞苑』のルーツ発見・破
7 『広辞苑』のルーツ発見・急



【549】
Re:『国語辞書事件簿』
 田島照生
 - 04/11/20(土) 2:35 -
----
▼skidさん:

コメント有難く存じます。
これは、たとえば『草思』などといった様な月刊誌に連載されていたものをまとめたものなのでしょうか。
第一章と、第五章以下の「『広辞苑』のルーツ発見(序破急)」というのが非常に気になります。



【551】
Re:『国語辞書事件簿』
 skid
 - 04/11/20(土) 18:12 -
----
▼田島照生さん:
>これは、たとえば『草思』などといった様な月刊誌に連載されていたものをまとめたものなのでしょうか。


前著『裏読み深読み』は読売新聞日曜版の記事がもとになっているかもしれませんが、新著は関連性があるとはいえ、定年退職後に取材をやり直して書き下ろしたものと思われます。

>第一章と、第五章以下の「『広辞苑』のルーツ発見(序破急)」というのが非常に気になります。


5〜7の小見出しを少しだけ。
5 新村父子、参考辞書を公表/『辞苑』の親辞書はライバル辞書!/模倣隠しの裏技「組み合わせ」法
6 延々と続く模倣のパレード/松井簡治の容赦ない指弾/参考辞書告知は“新村トリック”?
7 息子による容赦ない告発「『辞苑』『広辞苑』は模倣の産物」/単行本並みに辞書を量産/モラルを疑う“辞書事業”/模倣の相関図/虎の尾を踏んだ? 新村出

実証的に動かぬ証拠を捉え、推理力を働かせたものとなっています。
以前、石山氏から「もとになった辞書は何だと思う?」と問われ、最初の『辞苑』が少人数で短期間に作られたことから先行辞書を挙げたら、よい勘だと言われました。
誰でも勘だけで言うことはできますが、ここまで踏み込んで論じられることはなかったと思います。



【552】
『新明解国語辞典』第六版
 skid
 - 04/11/22(月) 22:15 -
----
見た目のことなんですが、「字音語の造語成分」として別枠で掲載している部分が変わりました。
第五版は、ほんのちょっとだけ大きく漢字を載せ、全体に赤の網点をかけてあります。
第六版は、漢字をかなり大きくして、赤の枠線で囲んでいます。

それはともかく、せっかく2色刷なのだから、もっと読みやすく色分けできないものかと感じます。
用例をたくさん入れたり、細かく意味分類をするなど、丁寧になればなるほど1項目の行数が増え、求める部分を見つけにくくなるからです。



【553】
Re:『新明解国語辞典』第六版
 skid
 - 04/11/23(火) 6:17 -
----
第五版との単純な違いは、1500語増え1519頁が1616頁になったことと、語の運用に関する情報の「運用」欄を設けたこと。
「待遇表現にかかわる用法を中心に、必ずしもその語の一般的な意味とは一致しない側面や含意され意味を取り出し、対人関係にもたらすプラス・マイナス両面の表現効果を、具体的な用法を明示しながら解説を行なった」

「のたまう」の項目
*第五版
「おっしゃる」意の雅語的表現。〔「のたもう」は、より雅語に近い発音。口語でこの語を使う時は、多分に皮肉をたたえた一種しゃれに近い表現として用いられることが多い〕
*第六版
「おっしゃる」意の雅語的表現。〔終止・連体形は多く「のたもう」と発音される〕■運用■その場の状況や置かれた立場にそぐわない相手(第三者)の発言を、皮肉を込めて指すのに用いられることがある。例、「応急策を論じている時に原則論を宣うとは恐れ入った」


差別語問答「痴呆→認知症」

【546】
差別語問答「痴呆→認知症」
 畠中敏彦
 - 04/11/19(金) 20:54 -
----
厚生労働省は、痴呆に代わり「認知症」を新呼称とするそうです。
ボケ→痴呆→認知症と変わりましたね。
認知障害といい、認知症といい、ボクはちょっとピンときません。



【548】
Re:差別語問答「痴呆→認知症」
 佐藤
 - 04/11/20(土) 0:15 -
----
▼畠中敏彦さん:
>認知症といい、ボクはちょっとピンときません。


 そうですね。「認知症」はちょっとしっくりきませんね。「症」の直前に来るのは、望ましくない病的な状態や(不眠症・不妊症)、病的状態を起こす原因(アニサキス症・花粉症)を表す場合が多いので。せめて「認知不全(症)」とかにならなかったのかとも思いますが、それでも差別感は残ってしまうのかな。むずかしいですね。



【550】
Re:差別語問答「痴呆→認知症」
 畠中敏彦
 - 04/11/20(土) 11:29 -
----
▼佐藤さん:
>せめて「認知不全(症)」とかにならなかったのかとも思いますが、それでも差別感は残ってしまうのかな。


おっしゃるとおりですね。
検討委員会メンバーの堀田力さんは、「認知不全」を主張されたそうです。


近喫という言葉

【541】
近喫という言葉
 Pote
 - 04/11/18(木) 19:31 -
----
いつも拝見しております。
今回、気になったことを質問させてください。

表題の「近喫(きんきつ)」という言葉なのですが、私は
ごく普通に使っていました。
「この懸案は、近喫の対処が必要だ。」の様な使い方です。
意味は、「可及的速やかに」の様なものでしょうか。

ところが、最近「そんな言葉は無い。」と指摘され、調べてみると
確かに辞書にも無く、Googleで調べても「参議院の議事録」に
1件あるだけでした。

いったい、私はこの言葉をどこで覚えたのでしょう?

識者の皆様のご意見をお聞かせください。



【542】
Re:近喫という言葉
 岡島昭浩
 - 04/11/18(木) 20:01 -
----
「喫近」からの連想ではないでしょうか



【543】
Re:近喫という言葉
 岡島昭浩
 - 04/11/18(木) 22:55 -
----
▼岡島昭浩さん:
>「喫近」からの連想ではないでしょうか


#最近、モバイルで書き込める機種を手に入れたので、嬉しくなってバスの中から書き込んでしまいました。

厳密に書くならば、「喫緊」が「喫近」と書かれることも多いのですが、それから類推したものではないかと。

「緊喫」はあるのか、というとgoogleではいくつかあるようです。



【545】
Re:近喫という言葉
 Pote
 - 04/11/19(金) 9:59 -
----
ありがとうございます。

「喫緊」かあ・・
お恥ずかしい次第です。
「きつきん」ではなく「きっきん」なんですね。
いつのまにか逆に覚えてしまったのですね。

今後、気をつけることにします。



【547】
Re:近喫という言葉
 Yeemar
 - 04/11/19(金) 20:58 -
----
▼Poteさん:
>ところが、最近「そんな言葉は無い。」と指摘され、調べてみると
>確かに辞書にも無く、Googleで調べても「参議院の議事録」に
>1件あるだけでした。


第109回国会 農林水産委員会 第2号(昭和六十二年七月三十日)ですね。
○政府委員(佐竹五六君)〔略〕私どもとしては目下当面近喫の課題からまた片づけていくということで現在北海道沖韓国トロール船、それから山陰、それから九州周辺のトロールまき網それからアナゴかご漁業を対象に取り上げているわけでございますが、
これは、OCRの読み取りの誤りでなければ堂々たる用例(言い誤りにせよ)ですね。

そのほか、国会会議録検索システムによれば全部で8件出てきます。昭和50, 52, 54, 59, 60, 61, 62, 平成2年です。なかなか少なくないとおもしろく思いましたが、実例を見ると「最近喫煙……」などとあって、偶然の近接であることがわかりました。


させていただく#

【413】
させていただく#
 岡島昭浩
 - 04/9/29(水) 23:34 -
----
「させていただきの連呼」の、一部を受けるものです。

岩淵悦太郎『日本語対談』筑摩書房S53.5.25の中野重治との対談に記事がありました。
岩淵 わたしの経験では、わたしは昭和十三年に大阪高等学校の教師になって赴任したんです。東京では「本日休業」という素気ない看板が出てたのに、大阪へ行きますと「本日休ませていただきます」という看板が出ているんです。(中略)関西弁的な言い方がだんだん広がったんでしょうか、丁寧に言おうという気持ちなんでしょうか。


なお、余談ですが、中野重治は、松尾捨治郎に国文法を習ったとのこと。福井中学ですね。



【416】
Re:させていただく#
 道浦俊彦
 - 04/10/2(土) 17:39 -
----
池田弥三郎の著述にも同じような記述があったような気がしますが・・・。



【417】
Re:させていただく#
 岡島昭浩
 - 04/10/2(土) 17:48 -
----
▼道浦俊彦さん:
>池田弥三郎の著述にも同じような記述があったような気がしますが・・・。


『東京ことば』(読売新聞社会部 読売新聞社 1988.6.20)によれば、池田弥三郎『銀座十二章』に、「させていただきます」についての言及があるようなのですが、未確認です。
参照



【418】
Re:させていただく#
 道浦俊彦
 - 04/10/2(土) 19:42 -
----
家に帰ったら『東京ことば』確認してみます。ほかに外山滋比古さんか誰かも書いていたような気がしてきました・・・。



【527】
Re:させていただく#
 岡島昭浩
 - 04/11/3(水) 22:32 -
----
池田弥三郎『銀座十二章』(旺文社文庫 1980.9.30)を、本日入手。そのp38。
『荷風日記』の昭和九年七月二十一日の記事に、「銀座所見」として、
喫茶店テラスコロンバン。店頭板がこいにはりたる紙に「閉店させて頂きます云々」とあり。
とある。これは「させていただく」という変なことば遣いの流行の例として荷風氏は書き記したのだが、(中略)ちなみに、「休ませていただきます」は、店主が妙に客にこびた言い方でいや味だが、も一つこれに理由を加えて「店員慰労のため」と付け加えることが、銀座の店々でもはやりだした。
とありました。昭和39年に『文芸朝日』に連載されたものとのこと。



【535】
Re:させていただく#
 岡島昭浩
 - 04/11/7(日) 0:00 -
----
中山二郎「言語についての戦争後遺症」『正論』平成8.4(p261-267)に、
下級者が上官又は先任者に許可を求めるときには、「○○○してよろしいでありますか」とぎごちなく言うか、上官が許可するに相違ないと思う時には「○○させて頂きます」と言った。(中略)復員軍人の多くが、この言い方を世の中一般に持ち込み、盛に使ったから、軍隊経験のない人々に伝染して、大流行するに至った。

さらに司馬遼太郎の『街道を行く』を引用。


私の「一万円から」 #

【532】
私の「一万円から」 #
 Yeemar
 - 04/11/5(金) 12:06 -
----
私の「一万円から」
の続きです。

「朝日新聞」夕刊 2003.02.07 p.8「三枝の笑ウインドウ」〔桂三枝〕に、落語家による「から」の解釈が紹介されています。
 私の弟子の三象は辞典、辞書と言われるたぐいのものを100冊以上持つ言葉の研究家でして、学者のような落語家の彼を一風変わっていると言う人も多いのですが、私は彼の孤高の生き方を尊敬すらしています。
 ある時、電話で彼に尋ねました。
 「コンビニでお金を渡した時、『千円からお預かりします』と言う千円からの【から】の使い方が気にいらんのやけどな。あれはどう考えても『千円をお預かりします』と違うか?」
 「それはコンビニのレジでお金を受け取った人が、その店のオーナーか、パートのバイトかによりますね」
 「どういうことや?」
 「もし、800円の物を買ったとします。バイトなら正式には『千円から私が800円お預かり致しまして、200円おつりをお返しします』と言うべきで、800円が抜けています。店のオーナーですと、その800円は自分のお金ですから『千円からお預かりします』と、この【から】の格助詞は付けても間違いではありません」
アルバイト員が「〜からお預かり」を使うのは「千円から私が800円お預かりする」の省略である、という説明は分かります。旧会議室でも天野修治さん道浦俊彦さんがご指摘になっています。「千円から800円を引く」というときの「から」と同じでしょう。

一方、受け取り手がオーナーだった場合の説明ですが、これは何のことかさっぱりわかりません。説明になっていないのでは?



【533】
Re:私の「一万円から」 #
 Yeemar
 - 04/11/5(金) 12:25 -
----
旧会議室で、ロイヤルホストが「バイト敬語」を見直そうとしているという動きを報じた日経新聞記事についてメモしましたが、「朝日新聞」夕刊(西部版)2003.06.17 p.9に「この敬語のほう、禁止になります ロイヤルホスト」というくわしい記事が出ています。日経新聞(5月24日)よりは遅れます。中に
 ■ロイヤルの5大禁止語
 (1)「こちらコーヒーになります」
 →「お待たせしました。コーヒーでございます」
 (2)「1000円からお預かりします」
 →「1000円、お預かりします」
 (3)「おタバコのほう、お吸いになられますか」
 →「禁煙・喫煙どちらのお席がよろしいですか」
 (4)「佐藤様でございますね」
 →「佐藤様でいらっしゃいますね」
 (5)「以上でよろしかったでしょうか」
 →「コーヒーと紅茶でよろしゅうございますか」
というのが出ています。これも日経新聞の報道とはやや異なります。

「よろしゅうございますか」は奥ゆかしいことばですが、ファミリーレストラン等で耳にしたことはありません(最近しばらく行かないので、いまはどうか知りません)。

銀座4丁目の「和光」(高級時計店)を、高級でない品物のことで訪ねた折(2004.11.01)、店員さんが「お待ちいただいてよろしゅうございますか」と言ったので、「よろしゅうございますか」はなかなか言えないことば、さすがは「和光」だと思いました。



【534】
Re:私の「一万円から」 #
 Yeemar
 - 04/11/5(金) 12:27 -
----
> 店員さんが「お待ちいただいてよろしゅうございますか」と言ったので、


その店員さんは若い女性でした。


日本語アンケート

【509】
日本語アンケート
 Yeemar
 - 04/10/28(木) 9:42 -
----
JUSTSYSTEMが「変わりゆく日本語の実態調査」というのを実施しているのですね。
 https://www.justsystem.co.jp/atok/nihongo2/
おそらくずいぶん大規模調査になることと思います。どんな結果が出るか楽しみです。

設問の中で興味深かったのは、
(a)(ある文章の表題として)シカゴの科学産業博物館がとんでもなかった!
(b)(日記の文章で)まぁ セミナー終わったあとのあの雨のすごさは・・・・食べる予定だった焼肉屋までいくのにとんでもなかったです。
というふうに使われる「とんでもなかった」という言い方が自然かどうかというものでした。私はこういう言い方を知りませんでした。(b)に至ってはにわかには意味が分かりませんでした。



【515】
Re:日本語アンケート
 畠中敏彦
 - 04/10/29(金) 8:07 -
----
▼Yeemarさん:
>「とんでもなかった」という言い方が自然かどうかというものでした。私はこういう言い方を知りませんでした。


僕も早速、回答してみました。
「とんでもなかった」は、僕もYeemarさん同様、まず使いませんね。
前後関係から、何となく意味は理解できますが。


だじゃれ #

【514】
だじゃれ #
 Yeemar
 - 04/10/29(金) 2:28 -
----
だじゃれ
の続きです。
米長 ぼくの母親は、八十八で亡くなったから天寿を全うしたと言うべきかな、八月の十日頃に入院したんだが、腹水がたまって、もう家には戻れないだろう、ということになった。
 母は毎年、お盆の時期にはナスビやスイカや曼荼羅{まんだら}をお供えしていたけれども、その年のお盆はそれもかなわないだろう。
 ぼくは説明を受けて、「腹(覆)水盆に帰(返)らずというのはこのことでしょうか」と担当の先生に聞いた。先生は大いに驚いていたけれど。
(内藤國雄・米長邦雄『勝負師』朝日選書2004 p.208)
ちょっとブラックジョークですが。


もじり、パロディ

【500】
もじり、パロディ
 Yeemar
 - 04/10/25(月) 11:21 -
----
宮本輝『葡萄と郷愁』はまじめな小説ですが、こんな一節があります。
 アーギは、一九〇七年に出版されたアディ・エンドレの「血と金」という詩集におさめられているその詩を諳{そらん}じることが出来た。

 海辺、たそがれ、ホテルの小部屋。
 あの人は行ってしまった。
 もう逢{あ}うことはない。
 あの人は行ってしまった。
 もう逢うことはない。(文春文庫p.179)
これはどう見ても山口洋子作詞「よこはま・たそがれ」であり、まじめな小説の中に流行歌を取り入れたパロディが入っているように見えます。私はここで笑ったのです。

ところが、調べてみると話はあべこべで、この詩人は実在するようです(Ady Endre, 1877-1919)。山口洋子さんのほうが(穏当に言えば)パスティーシュを行っていたわけ。

この話は「有名」であるようで、無粋独言7(2002.8.14)では「パクリそのものである」と断罪しています。

「葡萄と郷愁」はこの続きがあり、
「自分でも、よく真似{まね}をして作ってたよ。いろんな単語を並べてね。たとえば、この単語だったら、『あの夜、仮面、幸福の庭。あの人は行ってしまった。もう逢うことはない。あの人は行ってしまった。もう逢うことはない』。そんなふうになるんだ。〔……〕」
この詩が実際にいろんな模作を生んだのか(つまりこの詩は「根岸の里のわび住まい」みたいなものか)、それとも、宮本輝氏が日本の歌謡曲を暗に批判したのか(これは深読みですね)。



【501】
Re:もじり、パロディ
 田島照生
 - 04/10/26(火) 1:27 -
----
私を見捨てて他に花が
咲くと思うか義理知らず
たとえ他に花咲いたとて
私の怨みで皆殺し サノヨイヨイ
(以下省略)

はじめ見たとき、梶芽衣子の『怨み節』を想起してしまいました。ご存じかもしれませんが、これは「田川三井炭坑・撰炭節」という歌で、「月が出た出た」でお馴染みの「炭坑節」のもと歌なのだそうです。
つい最近、新藤謙『流れ者歌謡考』(ブロンズ社,1971)を読んではじめて知りました。むしろ、もと歌のほうがパロディの様に感じられます。

また、以下のようなパロディがあります。これは以前、どこかで聞いたか読んだかしたことがある筈なのですが、有名なパロディだったのでしょうか。

「『教育勅語』は『朕惟フニ我カ皇祖皇宗国ヲ肇ムルコト宏遠ニ』と始まるのだが、中学生ともなると、『ちんおもうに、われこそこそと、くじりはじめることのうえんに』などという替え文句を上級生から教わって、その方も暗誦していたのである。きびしければきびしいだけ、その反動も大きい。きびしさの裏にはまた、逃げ道もあったのである。」(駒田信二『漢字読み書きばなし』文春文庫1994,p.12)



【503】
Re:もじり、パロディ
 岡島昭浩
 - 04/10/26(火) 23:42 -
----
本歌どりでも、石原裕次郎の方を先に知ったら、そうなるのかとも思います。

それから、先ほど検索して謎が解けかかっているのですが、五木寛之の『青春の門』に、「流れ流れてさすらう旅は 今日は函館明日は釧路」というのが出てきて、これは「旅の終わりに」ではないかと思ったことがありました。作詞者名は五木寛之ではない。

誰となく歌われていたものが、五木寛之によって書きとめられもし、歌謡曲にもなったのだろうか、と思っていたのですが、作詞者名は違う(立原岬)ものの、これはやはり五木寛之の作詞によるものらしいですね。『旅の終わりに』という小説があるのでした。



【504】
Re:もじり、パロディ
 KS
 - 04/10/27(水) 10:22 -
----
▼岡島昭浩さん:
>それから、先ほど検索して謎が解けかかっているのですが、五木寛之の『青春の門』に、「流れ流れてさすらう旅は 今日は函館明日は釧路」というのが出てきて、これは「旅の終わりに」ではないかと思ったことがありました。作詞者名は五木寛之ではない。
>これはやはり五木寛之の作詞によるものらしいですね。『旅の終わりに』という小説があるのでした。


 「艶歌」と言う短編小説をTVドラマ化したときの挿入歌(小説の中では主人公「演歌の城?」が作ったヒット曲)だったと思います。記憶が定かではありませんが、ドラマの中の歌詞はチョッと違ったような気がしますが…。



【507】
Re:もじり、パロディ
 Yeemar
 - 04/10/28(木) 2:16 -
----
▼岡島昭浩さん:
>それから、先ほど検索して謎が解けかかっているのですが、五木寛之の『青春の門』に、「流れ流れてさすらう旅は 今日は函館明日は釧路」というのが出てきて、これは「旅の終わりに」ではないかと思ったことがありました。作詞者名は五木寛之ではない。


「旅の終わりに」は知りませんが、よく似た「流浪の旅」(後藤紫雲作詞、大正時代の歌)は知っています。
流れ流れて 落ち行く先は
北はシベリア 南はジャバよ
というものですが、「旅の終わりに」は「流浪の旅」の替え歌とか、パスティーシュという位置づけなのでしょうか?


「ね」で終わる質問 #

【506】
「ね」で終わる質問 #
 Yeemar
 - 04/10/27(水) 17:48 -
----
「ね」で終わる質問
の続きです。

「なんですか」(詰問)の意で「なんですねぇ」という言い方の例です。
「まあ、なんですね、その格好は、……今しがたまでいじめて居たと思えばもうこれだ、まるで駄々っ子だよ」
 吉原つなぎの浴衣{ゆかた}を思いきり抜衣紋{ぬきえもん}に着た内儀のお幸が冷麦{ひやむぎ}の丼{どんぶり}を盆に載せて入って来た。
(富田常雄『姿三四郎 天の巻』〔1964年発表〕講談社 大衆文学館 1996.04.20一刷 p.30)
もう1つ
殊に僕の此の直覚を助けたものは、其の時のお富美さんの態度でした。〔……〕さうしてだゞツ{ヽヽヽ}児を叱りつけるやうな調子で、
何ですねえあなた、宇之さんの方で駄目だと云ふものを、そんな無理を云つたつて仕様がないぢやありませんか。〔……〕」
(谷崎潤一郎「富美子の足」〔1919年発表〕『谷崎潤一郎全集 第六巻』中央公論社 1981 p.374)



人間

【477】
人間
 道浦俊彦
 - 04/10/19(火) 21:06 -
----
中国語では「世の中、世間」という意味ですが、日本語では「人」の意味で「ニンゲン」ですね。「ジンカン」と読むと「世の中、世間」の意味か。「人間」が「ヒト」の意味で使われ始めたのはいつ頃からで、その起源はどう言うことなのでしょうか?ちなみに復刻版『言海』で「人間」を引いたら、「世の中」の意味が最初にあり、3番目に「俗に誤ってヒト」というふうに書いてありましたが。



【478】
Re:人間
 佐藤
 - 04/10/20(水) 10:46 -
----
▼道浦俊彦さん:
>「人間」が「ヒト」の意味で使われ始めたのはいつ頃からで、その起源はどう言うことなのでしょうか?


人口に膾炙した「人間五十年、下天の内を比ぶれば」(幸若『敦盛』)からだとなると話は早そうですが、果たして。これも元々は仏教的なもので「人の世」などの意味ですね。
http://www.jicpa.or.jp/coffee_break/20040506index.html



【480】
Re:人間
 道浦俊彦
 - 04/10/21(木) 8:14 -
----
水平社宣言「人の世に熱あれ、人間に光あれ」の「人間」は「人」の意味ですよね?大賞11年、1922年です。



【481】
Re:人間
 岡島昭浩
 - 04/10/21(木) 11:33 -
----
これについて、私が興味があるのは、〈「世の中、世間」の意味ではニンゲンと読むのは間違いでジンカンと読むべきである〉というような、言葉とがめが、いつごろからあるか、ということです。

いや、違いますね。いつごろから、ニンゲンがヒューマン、ジンカンが人生・世間というような使い分けが生じたか、というところですが、その一環として、言葉とがめの存在を知りたいわけです。



【483】
Re:人間
 豊島正之
 - 04/10/21(木) 19:18 -
----
(旧)日本古典文学大系「今昔物語集(一)」(岩波書店)補注128(p.430)に、関連記事があります。尚、この本は何回も増補されているので、図書館などに収められている初刷の本には、この注が無いかも知れません。



【486】
Re:人間
 Yeemar
 - 04/10/22(金) 5:13 -
----
▼豊島正之さん:
>(旧)日本古典文学大系「今昔物語集(一)」(岩波書店)補注128(p.430)に、関連記事があります。


補注の見出し語をピックアップしてすぐ検索できるようにしなければ、と感じました。

昭和40年の3刷によれば、「今昔物語集」(12世紀ごろか)の巻五第三に「天人ハ目不瞬カズ、人間ハ目瞬ク」とあることから、このころすでに「天人」の対語として「人間」(ヒューマン)の意味で使われたのではないか、というようなことが書いてあります。『日本国語大辞典』第2版も、この例を「ヒューマン」の意の初出と扱っています。初版では「好色一代男」の例が初出あつかいですから、ずいぶんさかのぼったものです。

「人間到る処青山在り」は、いつだったかNHK「クイズ日本人の質問」で取り上げられ、古舘伊知郎さんが「じんかん(が正しいと世上言われるが)、これは、にんげんと読んでもいいんです」と言っていたのを覚えています。メモは取っていません。

『言葉に関する問答集』では〈「人間、到ル処、青山在リ」の「人間」は、「ニンゲン」か「ジンカン」か〉という問があります。これについて縷々述べた後、〈……このような事情から考えると、元の詩については、「人間」を「ジンカン」と読むことによって誤解を防ぐ方が好ましい読み方だとも言えるのである。ただし、すでに「人間」を「ニンゲン」と読んで「ひと」と解釈し、Aの意味〔人間はどこでも墓所の地とすることができる〕でことわざのように広がっている現状を誤りとするには及ばない〉とあります。

この項の初出は1991年ですから、ことばとがめの記録としては新しいですね。



【498】
Re:人間
 佐藤
 - 04/10/24(日) 22:57 -
----
▼豊島正之さん:
>(旧)日本古典文学大系「今昔物語集(一)」(岩波書店)補注128(p.430)に、関連記事があります。


高島俊男『お言葉ですが……』に反論があるようですが、まだ実見していません。Googleで検索するとその説を紹介したページがヒットするのですが、キャッシュのみ。


政治家と日本語 #

【495】
政治家と日本語 #
 岡島昭浩
 - 04/10/24(日) 12:12 -
----
政治家と日本語の後を受け継ぐスレッドが立っていなかったので、なにか新たに立てるべきか、はたまた別話題で(誤解を避ける言い方?)書くか、迷ったのですが、「政治家と日本語」にしました。日本語の問題ではなく、認識の問題なのですが。

昨夜、1900すぎ、防災担当大臣の会見を聞いて、耳を疑いました。耳を疑ったままで、まだ確認出来ていなくて、私の誤解かもしれないのですが、書き付けます。
記者 人的災害は?
大臣 怪我人はない、という情報が入っています。
記者 土砂崩れで生き埋め、という報もありますが……
大臣 現在、調査中(あるいは情報収集中)です。
「〈ないという情報〉がある」ということを発言する意図は何なのでしょうか。〈ないという情報〉が山ほど有っても、〈あるという情報〉が到来すれば消え去ってしまうものだ(デマでなければ)、という認識が、「防災担当」大臣にない、というのは恐ろしいことです。

私の誤解であることを切に祈ります。

いずれ、大臣記者会見要旨に載るでしょうか。多分、「情報収集中」という風にしか載らないでしょうね。


特殊な音

【494】
特殊な音
 Yeemar
 - 04/10/24(日) 10:20 -
----
漢字のよみで、あまりきかない音と思われるものに時々行き当たります。なぜそう読むのか分からないこともあります。

以下のうち「十百」は湯桶読でしょうから、ここに入れるのはふさわしくないかもしれませんが、「じっぴゃく」との混淆のようにも思います。「校」を「めん」と読むのは音とは思われないので訓でしょうか。「越」を「つう」と読むのは「えつ」の変化でしょうか。「立」が「るい」になるのは宋音に基くものと思いますが、類例は少ないのではないでしょうか。

●十百
『談林十百韻』(だんりんとっぴゃくいん)〔田代松意編の俳書、1675年跋〕

●校條
サンフランシスコのシェラトン・パレス・ホテルで校條浩{めんじょうひろし}さんと朝食を共にした後、校條さんの運転する車で一緒に飛行場に向かった。(「週刊朝日」2000.04.07 p.48)

●毛越寺
空気枕をたずさえて東北新幹線に乗った。めざすは平泉の中尊寺と毛越寺{もうつうじ}である。〔五木寛之・みみずくの夜{ヨル}メール98〕(「朝日新聞」2004.06.28 p.21)

●るいよう 立用
大坂堂島の帳合米の取引〔=先物取引?〕で、火縄が消失し、火縄値段が決定しない場合、前日の火縄値段で解け合うこと。〔稲の穂(大阪市史五)〕(『日本国語大辞典』)



南野法相

【489】
南野法相
 道浦俊彦
 - 04/10/22(金) 18:20 -
----
「南野」と書いて「のおの」と読み、表記するとのことですが、「のうの」ではないのでしょうか?そもそもどうして「南野」が「のおの」なのでしょうか?



【490】
Re:南野法相
 岡島
 - 04/10/22(金) 18:59 -
----
▼道浦俊彦さん:
>「南野」と書いて「のおの」と読み、表記するとのことですが、「のうの」ではないのでしょうか?


「扇おおぎ」と共通する問題ですね。


>そもそもどうして「南野」が「のおの」なのでしょうか?


「なみの」→「なうの」→「のうの」
でしょうね。



【491】
Re:南野法相
 道浦俊彦
 - 04/10/22(金) 20:02 -
----
そうですそうです、扇(おおぎ・おうぎ)千影・元大臣と共通する問題です。
みなみの→なみの→なうの→のうの→のおの
ですか。
「のうの」はローマ字で「NOUNO」ですが、「のおの」は「NOONO」で「ぬうの」みたいになってしまいます。。。。



【492】
Re:南野法相
 岡島昭浩
 - 04/10/23(土) 0:08 -
----
▼道浦俊彦さん:

>みなみの→なみの→なうの→のうの→のおの
>ですか。


 なんの→なうの
かもしれません。

 なうの→のうの→のおの
という順番は付けられず、
 なうの→のーの(のうの・のおの)
ですね。

>「のうの」はローマ字で「NOUNO」ですが、「のおの」は「NOONO」で「ぬうの」みたいになってしまいます。。。。


ローマ字だったら、「のうの」でも「のおの」でも、「NO^NO」でしょう。


あがってナンボ

【482】
あがってナンボ
 KS
 - 04/10/21(木) 15:39 -
----
 表題の言葉は、大宅映子さんのゴルフエッセーの一文で、ゴルフの箴言中の至言としてあげておられる言葉です。
 ナンボ というのは関西弁ですが方言が書き言葉として認知された数少ない例でしょうか?。(標準語で「あがってイクラ」では通じないのでしょうか。)
 方言が書き言葉(文章)になる例は、名詞の場合を除いて少ないように思います。方言と言うのはそもそも話し言葉なんでしょうか…。それとも、単に書き言葉になじまないだけでしょうか。



【484】
Re:あがってナンボ
 岡島
 - 04/10/21(木) 23:24 -
----
▼KSさん:
> ナンボ というのは関西弁ですが方言が書き言葉として認知された数少ない例でしょうか?。(標準語で「あがってイクラ」では通じないのでしょうか。)



この場合、「〜(し)てナンボ」という慣用句が取り入れられたのでしょうから、「〜てイクラ」では、なじまないのではないでしょうか。


> 方言が書き言葉(文章)になる例は、名詞の場合を除いて少ないように思います。方言と言うのはそもそも話し言葉なんでしょうか…。それとも、単に書き言葉になじまないだけでしょうか。


東京でも、明治の頃に言文一致に苦労したわけですが、他地方の言葉は、文章にするのになじんでいないものと思われます。



【487】
Re:あがってナンボ
 道浦俊彦
 - 04/10/22(金) 5:14 -
----
元は麻雀用語では?



【488】
Re:あがってナンボ
 KS
 - 04/10/22(金) 9:24 -
----
▼道浦俊彦さん:
>元は麻雀用語では?


そう云えば、言ってましたね。「…満貫やったのに…」「上がってナンボ。はよ千点出せよ!」


誤写の推定

【450】
誤写の推定
 岡島昭浩
 - 04/10/10(日) 13:27 -
----
「目を引く誤植」の関連スレッドです。
たまたま、桑原博史全訳注『西行物語』講談社学術文庫(平成10.11.6)を見ていて、
家豊かにしては、須達壇弥梨が勢ひを移し、所従・眷属・七珍万宝に飽き満てり。(p23)
の、「須達壇弥梨」に、「しゅだつだんやり」というルビがついているのが、まずは目に入りました。p26の注を見ると、
須達壇弥梨《しゅだつだんやり》 「須達」は須達多《しゅだった》ともいい、古代インドの斜衛《しゃえ》国の長者。釈迦に仕え、祇園精舎を建てた。「壇弥梨」は不明。あるいは「須達多|闍梨《じやり》」で、「闍梨」は僧を示す阿闍梨の意か。
とあります。

翻刻凡例には、片仮名を平仮名に改めたなどとは書いてありませんから、板本も平仮名なのでしょうが、この誤写を考えるならば、書承の途中に片仮名本の存在が考えられます。「タシヤリ」が「タンヤリ」に変わったのでしょうから。あるいは、平仮名本でも「之」から「ん」への誤写、ということも考えられましょうか。

ともあれ、この本の影印本も出ているようですから、それを見ないと何も言えませんし、諸本を付き合わせねば、誤写の推定などしてはいかんのですが、たまたま眼につきましたので、書き付ける次第。



【452】
Re:誤写の推定――須達壇弥梨
 Yeemar
 - 04/10/10(日) 15:37 -
----
▼岡島昭浩さん:

>の、「須達壇弥梨」に、「しゅだつだんやり」というルビがついているのが、まずは目に入りました。


これは、かなが先にあって、それに書写者なりが漢字をあてたのでしょうか。〈「壇弥梨」は不明〉とあるからには、この用字は校注者の与り知らぬものでしょうね。

「や」に「弥」をあてると訓でよむことになりますから、中国の用字ではないのだろうと思いますが、インド人の名前に訓仮名をあてたりすることがあるのでしょうか。



【453】
Re:誤写の推定――須達壇弥梨
 岡島昭浩
 - 04/10/10(日) 17:01 -
----
▼Yeemarさん:

>>の、「須達壇弥梨」に、「しゅだつだんやり」というルビがついているのが、まずは目に入りました。


>「や」に「弥」をあてると訓でよむことになりますから、


ええ、それで目についたのです。

底本は、正保三年版本ということですが、
底本の仮名を適宜漢字に改め、仮名づかいを歴史的仮名づかいに統一し、当て字は普通の表記に改めるなど、表記上の統一と整理をはかった。
ということなので、影印を見ないことには、話が始まらないと思いはするのですが、ここにメモでもしておかないと、忘却のかなたに消えてしまうだろうと思い、書き付けた次第です。



【467】
Re:誤写の推定――須達壇弥梨
 佐藤
 - 04/10/14(木) 10:12 -
----
▼岡島昭浩さん:
>影印を見ないことには、話が始まらないと思いはするのですが、


とりあえず一つ。霞亭文庫本。見開き左5行目。版本のようですが、刊記欠。

奈良絵本も参考になりましょうか。同名の京都大学本。見開き右、後ろから4行目。



【468】
Re:誤写の推定――須達壇弥梨
 岡島昭浩
 - 04/10/14(木) 22:28 -
----
▼佐藤さん:

有り難うございます。すばらしい。

>とりあえず一つ。霞亭文庫本。見開き左5行目。版本のようですが、刊記欠。


文庫本の本文どおり、というところですね。

>奈良絵本も参考になりましょうか。同名の京都大学本。見開き右、後ろから4行目。


おお、「しゆたつたんみり」ですね。「壇弥梨」の音読みとしてふさわしい形ですね。なかなか面白い。しかし「須達多|闍梨《じやり》」には、遡れなさそうですね。



【469】
Re:誤写の推定
 佐藤
 - 04/10/15(金) 12:29 -
----
▼岡島昭浩さん:
>p26の注を見ると、
>
須達壇弥梨《しゅだつだんやり》 「須達」は須達多《しゅだった》ともいい、古代インドの斜衛《しゃえ》国の長者。釈迦に仕え、祇園精舎を建てた。「壇弥梨」は不明。あるいは「須達多|闍梨《じやり》」で、「闍梨」は僧を示す阿闍梨の意か。
とあります。


ちょっと字を変えて「檀弥」で検索すると「檀弥羅・檀弥利・檀弥栗」にヒットします。もし長者であれば「須達・壇弥[梨利栗羅]」と並列させられるのかもしれません。が、ヒット先の文脈からすると仏敵らしいのが気になります。



【470】
Re:誤写の推定
 益山 健
 - 04/10/15(金) 13:52 -
----
>あるいは「須達多|闍梨《じやり》」で、「闍梨」は僧を示す阿闍梨の意か。

須達多が阿闍梨の称号をつけてよばれることはあまりなさそうな気がするのですが, どうでしょうか。



【471】
Re:誤写の推定
 岡島昭浩
 - 04/10/15(金) 17:10 -
----
佐藤さん、また、益山さんのご指摘により、
「誤写の推定」ではなく、「誤注の指摘」といったものになってしまったようですね。

ありがとうございました。



【472】
Re:誤写の推定
 佐藤
 - 04/10/15(金) 17:46 -
----
 気になったのでもう少し調べると、ちょっとだけ込み入ってました。織田得能『仏教大辞典』だと、仏敵の悪王は「ダンミラ 檀弥羅」としてあがっており、これとは別に長者の「ダンミリ 檀弥離」が立項されてました。『西行物語』の「須達・壇弥梨」も長者を並列させたものなのでしょう。
 学術文庫の校訂者も、広く諸本を見渡すか(奈良絵本は「たんみり」だった)、いくつかの仏教辞典を丁寧に引けば正解が得られたでしょう。あるいは底本に忠実であろうとして「たんやり」から抜け出られなかったのかもしれません。が、非難するよりもまず自戒の契機として記憶したいというのが正直な気持ちです。


連想することば#

【455】
連想することば#
 佐藤
 - 04/10/11(月) 3:18 -
----
「ココロツタエ」
http://www.nhk.or.jp/aichibanpaku/song/
  ↓
『ホツマツタエ』
http://www.asahi-net.or.jp/~QM4H-IIM/k020318.htm(Yeemarさんのところ)

すみません。「誰かやるよ、きっと」って皆さん思ってるんだろうなと思いつつ。片仮名で書かれるのでつい連想します。

「連想することば」の続きです。旧会議室の段階で「連想することば#」と分かれていました。【管理者追記:「連想することば#」はこれ以降




【456】
Re:連想することば#
 佐藤
 - 04/10/11(月) 3:39 -
----
>「ココロツタエ」
>http://www.nhk.or.jp/aichibanpaku/song/


>片仮名で書かれるのでつい連想します。


そうそう、書き落としました。なぜ片仮名で書くのかが気になったのでした。ググってみたら『中日スポーツ』の9月22日分のキャッシュが閲覧でき、谷村は
伝えるのは人間が誕生した“いにしえ”からの思いで、漢字でもひらがなでもなくカタカナでしか表現できない

と言ったとか。単に、原始的で素朴なコト・モノを表すには片仮名がふさわしい、ということのようですが、それでも「原始」と「神代(文字)」が微妙に交錯します。ひょっとすると谷村の念頭に『ホツマツタエ』があっての「ココロツタエ」なのでしょうか。


誤解を避ける方法 #

【260】
誤解を避ける方法 #
 Yeemar
 - 04/7/21(水) 21:01 -
----
旧会議室「誤解を避ける方法」は、ちょっと趣旨があいまいなスレッドになってしまいました。私の意図としては、うっかり使ったことばが相手を傷つけたり、失礼になったりということを避けるため、事例(作例を含む)を集めようとするものでした。(現会議室になって、継承スレッドを立てた記憶がありますが、まだなかったようです。)

謝礼
大学から原稿料をもらうにあたり、「謝礼振込先をお知らせください」とメールで指示される。その返信でそのまま「謝礼振込先につきましては……」と書きかけて気づく。私のほうで「謝礼」と言ってはいけない。「稿料」と書き直す。「謝礼振込先」と熟語になっていると、気づきにくいもの。

食事
他家を訪問したとき、ついつい「お食事をごちそうになり、ありがとうございました」などと言ってはいけない。食事といえば、カップラーメンやあんパンでも食事だ。心づくしの、おいしいものをいただいたというときは、「おいしいお料理をごちそうになり」と言わなければならない。もちろん、単に「ごちそうになりました」でもよいけれど、もっと何か付け足したいときに注意。



【290】
Re:誤解を避ける方法 #
 Yeemar
 - 04/8/14(土) 0:54 -
----
お持ちください・お支払いする
「どうぞ、パンフレットをお持ちください」というのは、考えてみれば不思議なことばです。ほかの場合、たとえば、「お取りください」は「取れ」を尊敬表現にしたもの。「お聞きください」は「聞け」を尊敬表現にしたもの。とすれば、「お持ちください」は「持て」を尊敬表現にしたもの、と思いきや、そうではなく「持ってゆけ」という意味です。「持ってお行きください」というのがまどろっこしいので、「お持ちください」になったか。もしくは「お持ち帰りください」の部分的省略か。

「(千円を)払え」「(あなたに)払う」の尊敬形・謙譲形は「お払いください」「お払いする」ではなく、「お支払いください」「お支払いする」になります。「お払いください」「お払いする」でもべつによいという人もいるかもしれません。しかし、私は、「(悪霊を除くため)お祓いする」を思わせるのを避け、「お支払いする」と言います。

よく誤解しないものだという例
「あのう、山田さん、14日は空いていますか?」
「14日はちょっと」
「そうですか。わかりました。では、15日は?」
「15日はねえ……」
「そうですか。わかりました。では、16日は?」
「16日なら」
「そうですか。わかりました」

どうわかったというのか。山田さんは14日は都合が悪く、15日は困難で、16日は都合がよいようです。しかし、「14日はちょっと暇です」「15日はねえ、暇です」「16日なら大変多忙です」の可能性はないのか。外国語でも、言い方によってこのような以心伝心ふうの会話はあるのでしょうか。



【292】
Re:誤解を避ける方法 #
 Yeemar
 - 04/8/16(月) 17:29 -
----
しんでも
ご老人の体に病変が見つかる。若い人ならば手術して治すところだが、ご老体ゆえ手術に耐えられるかどうかわからない。ここは手術をせず様子を見てもいいのではないか。

そう話した人に対して、関西出身の人が「そうやそうや。しんでもええわ」

ここで空気が緊張するかどうかは、同席者が関西弁を解するかどうかによります。

もちろん、「しんでも」は「せんでも」(しなくても)ということですね。愛知県常滑市でも「工夫しんでもやれる」などと言うようです。



【293】
Re:誤解を避ける方法 #
 NISHIO
 - 04/8/17(火) 0:04 -
----
▼Yeemarさん:
>そう話した人に対して、関西出身の人が「そうやそうや。しんでもええわ」


私の仲間うちでは、「しんでも」より「しやんでも」のほうがよく使われていました。ちなみに明石〜神戸〜西宮〜尼崎の言葉が入り乱れいていたので、どのあたりの言葉かは不明です。

同じく関西弁で「死にな」というのも、知らない人には誤解を招きますね。「死ぬな」の意。「死になや」か「死になさんなや」と言えばたぶん心配ない。
「死にぃな」といえば「死になさい」になるので、これまた要注意。イントネーションの僅かな違いです。


ほかに、使用上の注意を要する方言として、岡山弁の「はよーしねー」(早くしなさい)があるそうです(お年寄りに向かってなんちゅうことを!)。
備前地方の言葉は子どもの頃から耳慣れているはずの私ですが、これは記憶にありません。



【451】
Re:誤解を避ける方法 # いかん
 Yeemar
 - 04/10/10(日) 15:28 -
----
「そのようなことをなさっちゃいかん」

というような文をメールで人に書き送りました。あとで考えると、「なさっちゃ如何」「なさっちゃ不可ん」の両様に解釈できます。勧誘か禁止かあいまいになってしまいました。「なさっちゃいけません」とか「しちゃいかんよ」とか、文体に統一性を持たせればよかったかもしれません。



【454】
Re:誤解を避ける方法 # いかん
 岡島昭浩
 - 04/10/10(日) 17:04 -
----
現実にあったことで、「するのは如何か」というのを、当方は否定の意味(「するのはいかがなものか」)で使ったのに、先方は推奨(「してはどうか」)ととったことがありました。


日本紙→和紙

【431】
日本紙→和紙
 佐藤
 - 04/10/5(火) 16:35 -
----
 今日、たまたま通りがかって見たNHKの番組。南田洋子さんが「日本紙(にほんし)」と言っていたのを、黒田アナウンサーが「和紙(わし)」と言い替えていたのが印象的でした。

 「和〜・国〜」の要素が「日本〜」に置き替えられる大きな流れがありますが、これに逆行ないし別の方向をたどるものもありそうですね。類例はあるでしょうか。いろいろ集まって来ると統一的な方向が見えて来るのか、それともやっぱり個々別々なのか。「国〜」と「和〜」とではまた事情が異なるのか…… そのあたりでお気づきのことを。



【447】
Re:日本紙→和紙
 岡島昭浩
 - 04/10/9(土) 0:07 -
----
▼佐藤さん:

> 「和〜・国〜」の要素が「日本〜」に置き替えられる大きな流れがありますが、これに逆行ないし別の方向をたどるものもありそうですね。類例はあるでしょうか。いろいろ集まって来ると統一的な方向が見えて来るのか、それともやっぱり個々別々なのか。「国〜」と「和〜」とではまた事情が異なるのか…… そのあたりでお気づきのことを。


古風なものが「和〜」になりたがる、ということはないでしょうか。

「そば」が「日本そば」と言われるようになった、と言われて久しいと思いますが、「和そば」という言い方は、それより新しそうな気がします。『ことばのくずかご』p140に、「「東京新聞」73年2月25日朝1「筆洗」欄」の例がありますが、日本そばはもう少し古いのではないかと思います。


暑さが和らぐ

【439】
暑さが和らぐ
 畠中敏彦
 - 04/10/6(水) 21:57 -
----
今日、某局のアナウンサーが
「“暑さが和らぐ”って表現おかしいんじゃない、“寒さが和らぐ”っては言うけど」と言ってました。
なるほどと思いましたが、両者に明確な区別があるんでしょうか?


「〜やん」の呼称

【343】
「〜やん」の呼称
 畠中敏彦
 - 04/9/7(火) 22:27 -
----
人を呼ぶとき、様、さん、君・・・を使うように、「やん(orあん)」を使う場合があります。たとえば、金田元投手をカネやんのように。
この「やん」は、自分からみてどの程度の地位(目上、同等、目下・・・)の人に対して、あるいはどのような場合に使うのでしょうか?
呼ばれたほうは、不快感を持つのではないかと、思っていましたが、どうもそうでもないような気がしております。



【345】
Re:「〜やん」の呼称
 道浦俊彦
 - 04/9/8(水) 16:27 -
----
『大阪ことば事典』(牧村史陽)には、

「やん」=サン(様)の転訛したもの。親しい間柄に用いる。(例)竹ヤン・源ヤン・おちょヤン(色町の少婢)・あんにゃん(兄さん)

とありました。



【350】
Re:「〜やん」の呼称
 畠中敏彦
 - 04/9/9(木) 8:59 -
----
▼道浦俊彦さん:
>『大阪ことば事典』(牧村史陽)には、
>親しい間柄に用いる。


道浦さん、ありがとうございます。

大阪がルーツとは知りませんでしたね。
親しさを表す反面、かしこまった時や目上・上司などには、使わないほうが無難ということでしょうか。



【351】
Re:「〜やん」の呼称
 岡島昭浩
 - 04/9/9(木) 12:21 -
----
▼畠中敏彦さん:
>大阪がルーツとは知りませんでしたね。


大阪に限ったわけではなく、全国いろんなところで行われているようです。
熊本の「おてもやん」が有名ですが、『日本方言大辞典』では、福島市が最北です。

方言によって使い方が異なることは充分考えられますが、いずれにせよ、「さん」が変化した(崩れた)ものであると思われますので、あまり立派な物言いではなかろうと思われます。



【353】
Re:「〜やん」の呼称
 かねこっち
 - 04/9/11(土) 0:43 -
----
話題とは関係ないでしょうが、韓国では(おそらく朝鮮半島では)、
未婚の女性を呼ぶ時に「〜ヤン」をつけますね。
チェ・ジウさんなら「ジウヤン」のように。
「ヤン」は「嬢」の朝鮮語読みのようです。



【356】
Re:「〜やん」の呼称
 UEJ
 - 04/9/11(土) 14:42 -
----
>大阪に限ったわけではなく、全国いろんなところで行われているようです。


でも大阪の呼称というイメージは強いですね。
藤子不二夫のパーマンに出てくるパーマン4号は
大阪出身という設定でしたが、愛称は「パーヤン」でした。



【357】
Re:「〜やん」の呼称
 道浦俊彦
 - 04/9/11(土) 18:29 -
----
田端義夫=「バタヤン」も。三重県松阪市出身。



【358】
Re:「〜やん」の呼称
 岡島昭浩
 - 04/9/12(日) 20:09 -
----
カネやんは愛知県ですね。いつごろからカネやんなのでしょう。でも、スワローズもジャイアンツも東京だから、愛知県時代なのかもしれません。
(金田正一投手です)



【361】
Re:「〜やん」の呼称
 KS
 - 04/9/13(月) 11:22 -
----
〜やん 懐かしい言葉を聞きました。
 私の子どものころ、田舎(播州)で日常的に耳にしました
 タケやん(竹二さん)
 ブイッたん(武市さん)
 ヨネさん(米次さん)
 の三種が日常的に使われていました。ただ、使い方の一般例では「タケやんが参加できへんゆう(云う)てたで」というふうに、第三者を指して使う例が多く、当人に直接云う場合は「さん付け」が普通でした。当人に直接「タケやん」「ブイったん」なんて云うのは相当横柄な言い方で一般的じゃなかったですね。
 「〜やん」「〜ったん」の言い方は、一定年齢以上の人(親の世代の人)を指して云う言葉で、子供を指してはあまり使わなかった様に記憶しています。 ドラえもんの「ジャイやん」は子供に対して使ってますがね…



【378】
Re:「〜やん」の呼称
 岡島昭浩
 - 04/9/16(木) 22:01 -
----
▼KSさん:

> ドラえもんの「ジャイやん」は子供に対して使ってますがね…


同様の、疑似「やん」の例としては、サロやん、カラやん、イタリやん、ボヘミやん、などがありますね。



【379】
Re:「〜やん」の呼称
 落合
 - 04/9/17(金) 14:38 -
----
>ドラえもんの「ジャイやん」は子供に対して使ってますがね…


がんばれ、ジャイやんツ、でよろしいでしょうか。



【380】
Re:「〜やん」の呼称
 KS
 - 04/9/17(金) 16:23 -
----
▼落合さん:
>がんばれ、ジャイやんツ、でよろしいでしょうか。


 落合さんですから「くたばれ!ジャイやんツと云ってほしいですね。ははは」

 ところで、「〜やん」について考えに考えたのですが「目上に対する尊称なんですよ」きっと。「兄やん」と云います「おとうとやん」とは云わないですから。はい。



【381】
Re:「〜やん」の呼称
 落合
 - 04/9/17(金) 19:17 -
----
▼KSさん:
すみません。言葉たらずでした。

http://www.tv-asahi.co.jp/doraemon/contents/chara/gian.html

ジャイやんではなく、ジャイアンです。



【427】
Re:「〜やん」の呼称
 岡島昭浩
 - 04/10/4(月) 23:11 -
----
小林信彦『おかしな男 渥美清』(新潮文庫2003.8.1)に引用されている、関敬六の文では、「渥美やん」が使われています。p48,p387

方言によるものかどうかは判りませんが、関氏は栃木県出身とのことです。


みたよな

【346】
みたよな
 道浦俊彦
 - 04/9/8(水) 18:21 -
----
宇野千代「おはん」の中に、
「小説みたよな」
という一説があるという文を読みました。意味は「小説みたいな」ということでしょうが、そうすると「〜みたいな」という言葉は、
「見たような」→「見たよな」→「みたいな」
と変化してできた言葉なんでしょうか?もしそうだとすると、
「よ」→「い」
という音韻転換が起きたと考えていいのでしょうか?そういった例は、ほかにもたくさんあるのでしょうか?



【347】
Re:みたよな
 岡島昭浩
 - 04/9/8(水) 20:16 -
----
▼道浦俊彦さん:
>宇野千代「おはん」の中に、
>「小説みたよな」
>という一説があるという文を読みました。意味は「小説みたいな」ということでしょうが、そうすると「〜みたいな」という言葉は、
>「見たような」→「見たよな」→「みたいな」
>と変化してできた言葉なんでしょうか?


はい、そうです。
「〜をみたような」から変わってきたことが判っています。

もしそうだとすると、
>「よ」→「い」
>という音韻転換が起きたと考えていいのでしょうか?そういった例は、ほかにもたくさんあるのでしょうか?


そ(ん)なような→そないな
とか、
そがような→そがいな(→そげな)
とか。



【348】
Re:みたよな
 道浦俊彦
 - 04/9/9(木) 5:10 -
----
岡島様
ありがとうございます。ところで、「そないな」「そがいな」「そげな」は、どれも方言(関西弁)のニュアンスがありますが、「みたいな」にはありません。なぜでしょうか?



【349】
Re:みたよな
 岡島昭浩
 - 04/9/9(木) 7:45 -
----
▼道浦俊彦さん:
>岡島様
>ありがとうございます。ところで、「そないな」「そがいな」「そげな」は、どれも方言(関西弁)のニュアンスがありますが、「みたいな」にはありません。なぜでしょうか?


同様な〈音の変化〉をあげたまでで、「そないな」「そがいな」のような言い方は、西日本を中心に起こったのに対し(東北の一部にもあると思います)、「みたような」は東京で起こったからでしょう。

「よう」→「い」は、他に、さようなら→さいなら、もありますね。これは東京も含めて全国的だと思います。



【355】
Re:みたよな
 道浦俊彦
 - 04/9/11(土) 13:57 -
----
平成ことば事情1884に「みたよな」、書かせていただきました。



【422】
「……ぞ」みたいな
 岡島昭浩
 - 04/10/4(月) 14:19 -
----
ここに繋げるのはよくないのかもしれませんが、「みたような」のなれの果て、ということで。

〈「……ぞ」みたいな〉という言い方の、比較的古い例にあたるかもしれないと思いました。ギョーカイ風の言い方としては古くからあったのだろうけれど、活字化されているということで。
それは、小林信彦『おかしな男 渥美清』(新潮文庫)p317-8に引用される、「第六作が封切られるころ発売された「キネマ旬報」増刊「男はつらいよ 大全集」」での山田洋次と渥美清の対談。
寅は全然気がつかないけれども、映画館のお客が「寅、刺されるぞ」みたいな(笑)。これはこわいね。


第六作「男はつらいよ・純情篇」は、一九七一年一月十五日封切りの由。


弁慶の泣き所

【332】
弁慶の泣き所
 岡島昭浩
 - 04/9/4(土) 15:11 -
----
某所より尋ねられ、気になって調べては見たものの、連絡するのは面倒だというこの私。

そのまま打ち捨てると、忘れてしまい、もったいないので此処に書き付けます。

『日本国語大辞典』では、「すね」を指す用例がありません。私もようやくそれらしいものを見つけましたが、向こうずねであると断定は出来ません。
巨石の乱積された上を伝わる時、浅市ののった巨石が不安定であったのでグラグラとゆるぎ出したため荷を負ったまま巨石の間に倒れて石に足を挾まれた。苦痛の叫びに驚き早速岩をずり動かして引き出すと、幸いに大したこともない。跛足を引きつつ剛気なだけに「弁慶の泣きどころだ」と言いながらついて来る。(大島亮吉『山―随想―』中公文庫による、p16。もと『山 研究と随想』岩波書店、昭五。大正九年七月二十二日の記録)
くるぶしやらアキレス腱であるのかもしれません。

なお、『日本国語大辞典』の初版では、方言辞典から、「むこうずね」の意味を引いてきていますが(大分県959・秋田市154)、二版ではこれを削っています。初版の出典一覧がちょっと見当たらないので(二版の番号とは違うようです)、年代がすぐに出せません。

『日本国語大辞典』で目を引くのが、(3)中指の最高関節から先の部分をいう。
これは、〔東京語辞典〕による、というもので、『広辞苑』も4版から、『大辞林』は最初からこの意味を取っているようです。また、柴田武『知っているようで知らない日本語1』(ごま書房 1987)にも、その意味が書いてあります。『日本国語大辞典』では、
(折りまげて力を入れても力がはいらないところからとも、人さし指と薬指とを直立させた間に中指をはさんでこれを第二関節から曲げ、第一関節から先を動かされると痛いところからともいう)
としていますが、『東京語辞典』は、こうです。
べんけい・の・なき・どころ〔弁慶泣所〕食指と薬指とを直立せしめたる間に、中指を挿みて、之を中関節より屈して、最高関節より先の所を動かさるゝ時は、弁慶の如き大男の猛者と雖も、屈従せられざるはなし。弁慶も泣くとの意。転じて他人の前に屈従する者をいふ。(『近代庶民生活誌7』による。また『隠語大辞典』にも引用される)

ここでは、中指の最高関節より上を指すのではなく、「弁慶にも泣き所がある」というような意味で書かれています。そうすると、「中指」云々は、別の根拠があるのでしょうか。存疑です。

『日本国語大辞典』の二版で、初版になかったのが、「ぼんのくぼ」を指すという、群馬伊勢崎040。040は「現地採録または報告」ので机上探索はストップ。『日本方言大辞典』でも取られています。

「こめかみ」あたりを指すと思われるのが、二つありました。
横笛を持ち変へて弁慶の泣所といふ頬のあたりをポカツと突かれた。此時弁慶痛いの痛くないのつて炭団のやうな涙を二ツの眼からコロ/\と溢して
 「百花園」十四巻百三十七号(明治28年)
 「橋弁慶」(禽語楼小さんロ演)
  『口演速記 明治大正落語集成』(講談社、全7巻)による
と、
 おきあがつて、おてんとうさまを見ようとすると、あたまがずきんずきんして、おでこがあつくつて、べんけえ《こめかみ》のなきどころがびくびくして、気もちがわるいから「あたまいたくなつたから、かへるよ。」といふと
「かにとり(特選)」 東京市向島区第二寺島小学校尋二 田村光雄
(『赤い鳥』昭和十年八月号入選)鈴木三重吉『綴方読本』角川文庫p26、講談社学術文庫p177
です。「べんけえ」の横に、傍注として「こめかみ」とあるのですが、「べんけえのなきどころ」に掛かるものでありましょう。

『日本方言大辞典』には、「べんけーなかせ」に「ふくらはぎ」「足の親指の毛をひっぱること」まで、あります。ともに静岡県志太郡535。
痛いところならどこでも(どういうことでも)「弁慶の泣き所」になりそうな勢いです。


『日本方言大辞典』の「べんけーなかせ」に広く見られる意味は、植物の「なぎ(梛)」のようです。これが「なぎなた」だったら、すぐに「すね」に結びつくのになぁ、と思って、そういえば、弁慶となぎなたには深い関係があることに思い至ったのでした。(ぎなた
もちろん、弁慶→なぎなた→すね、というは冗談の「連想する言葉」であります。



【333】
Re:弁慶の泣き所
 岡島昭浩
 - 04/9/4(土) 18:38 -
----
落語の「橋弁慶」というのは、あまり演じられないもののようです。これをいくつか見てみると、「弁慶の泣き所」が違ったりしないか、と思ったのですが。
柴田武『知っているようで知らない日本語1』に、
俗説によると、五条大橋の決闘の折、牛若丸は“弁慶の向こうずね”を執拗に攻めたてたというが、
とあるのも、これか、と思ったのですが、講談などの方を当たるべきなのかも知れません。

それから、書き忘れていたこと。『九州方言研究会報告書』(1996)の「九州方言広城調査項目(案)」で、「弁慶のなきどころという言い方を御存じですか。どの部分を指しますか。」という項目がありました。



【334】
Re:弁慶の泣き所
 岡島昭浩
 - 04/9/4(土) 21:42 -
----
三浦竜『ものしり大語源』知的生きかた文庫1996の説明には、最初、首を傾げました。
弁慶の泣き所【べんけいのなきどころ】進退きわまること。衣川の合戦で、弁慶が満身に矢を受け、立ちながら死んだことによる。弁慶にはもう一つ「弁慶の立ち往生」という有名な言葉がある。意味は、弁慶ほどの強者でも蹴られると痛がる「むこうずね」のことである。転じて、唯一の弱点の意にもなった。

読んでいる途中で気付くのですが、なんと、「弁慶の立ち往生」の説明と、「弁慶の泣き所」の説明とが入れ替わっているのです。

それはそうと、これは他の書でも似たような説明なのですが、
  ・「むこうずね」が転じて弱点の意味になった
というのは、どうなのでしょうかね。単に「泣き所」という場合のことを視野に入れて説明せねばならないと思いますが、どうもすっきりしない気が致します。



【360】
Re:弁慶の泣き所
 岡島昭浩
 - 04/9/13(月) 11:08 -
----
〈「弁慶の泣き所」は、すね以外にもある〉というテーマは、かつてNHKテレビの「日本人の質問」でも出たことがある、という情報を、学生さんから頂きました。

正解は「中指の……」だったようですが、不正解とされたものの中に、こめかみなどが入っていなかったかが気になります。



【362】
Re:弁慶の泣き所
 佐藤
 - 04/9/13(月) 21:08 -
----
▼岡島昭浩さん:
>正解は「中指の……」だったようですが、不正解とされたものの中に、こめかみなどが入っていなかったかが気になります。


書籍版だと公立図書館にありそうだなと思って岐阜県図書館と池田市立図書館で検索したら出て来ました。後者、「日本人の質問」で検索すると6件出て来ます。岐阜のは雄鶏社というのも出て来ました。
http://www.wombat.zaq.ne.jp/ikedatoshokan/



【375】
Re:弁慶の泣き所
 岡島昭浩
 - 04/9/16(木) 12:37 -
----
▼佐藤さん:
>書籍版だと公立図書館にありそうだなと思って


ありがとうございます。
量的に見て、書籍になっているのは一部なのでしょうね。

http://www.ashiya-city-library.jp/sogo/
(阪神広域図書館網 蔵書検索窓集合!)
ここで、見つけましたので、そのうち寄って、眺めてみます。


#このネタ、ボツですかねぇ。



【421】
Re:弁慶の泣き所
 岡島昭浩
 - 04/10/4(月) 12:26 -
----
『日本人の質問』書籍版、2冊だけ見ることが出来ましたが、弁慶は見当たりませんでした。

#洒落的解釈で「弁慶の薙ぎ所」というのを思いつきました。なぎなたで〈なぐ〉所、そこはスネです。バンザーイ。


ローマ字 #

【363】
ローマ字 #
 佐藤
 - 04/9/13(月) 22:50 -
----
旧会議室「ローマ字」の続きです。

ヤフーのオークションの品。出品者によれば「日本軍・将校用双眼鏡」だそうですが、メーカー名が

EARTH
KOGAKU K.K.

(「地球光学」?)とありました。正確な年代が知りたいところですが、とりあえず古そうなので記しておきます。ついさきほど終了したので、しばらくすると画像が見られなくなるかもしれません。↓
http://page9.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/k6997990



【365】
Re:ローマ字 #
 岡島昭浩
 - 04/9/14(火) 0:03 -
----
▼佐藤さん:
>EARTH
>KOGAKU K.K.


「アース光学」というところがあったようですね。
カメラ会社 一覧


古めのピアノのロゴでも、Hを使った長音表記を、テレビで見かけて、googleで検索した覚えがあるのですが、その名前が思い出せませんし、探し出すこともできません。
情なや。



【366】
Re:ローマ字 #
 佐藤
 - 04/9/14(火) 0:36 -
----
▼岡島昭浩さん:
>古めのピアノのロゴでも、Hを使った長音表記を、テレビで見かけて、


こちらかなぁ。値段の左の画像をクリックすると、「OHHASHI」が確認できます。創業当時(昭和33?)から使っていたロゴなのかどうか。
http://www.rakuten.co.jp/m-shinwa/637698/656424/



【367】
Re:ローマ字 #
 岡島昭浩
 - 04/9/14(火) 0:52 -
----
▼佐藤さん:
>▼岡島昭浩:

>>古めのピアノのロゴでも、Hを使った長音表記を、テレビで見かけて、

>こちらかなぁ。値段の左の画像をクリックすると、「OHHASHI」が確認できます。


ありがとうございます。それですそれです。
私が確認したのは、
このページでした。

テレビで映っている感じでは、かなり古いものかと思ったのですが、金田一氏の論文以後だったのでここに載せなかったのだと思うのですが、佐藤さん御発見のものは古そうですね。



【369】
Re:ローマ字 #
 佐藤
 - 04/9/14(火) 17:21 -
----
2匹目のドジョウで光学関係を。リコーが旧社名・理研光学工業株式会社の略なら対象になるかと。「K」ではなく「C」なのは気になりますが。

で、古いカメラに「RICOH」がないかと思ったら、ありました。
http://www.ricoh.co.jp/camera_lib/library/1936b.html

他にリコールという機種もあるのですが、画像が小さくて確認できず。リコール、現代なら縁起でもない名前で、それこそ、あり得ない商品名ですね。



【371】
Re:ローマ字 #
 岡島昭浩
 - 04/9/14(火) 22:48 -
----
▼佐藤さん:
>2匹目のドジョウで光学関係を。リコーが旧社名・理研光学工業株式会社の略なら対象になるかと。「K」ではなく「C」なのは気になりますが。
>
>で、古いカメラに「RICOH」がないかと思ったら、ありました。
>http://www.ricoh.co.jp/camera_lib/library/1936b.html


おお。年代の特定できそうなものでは古そうな所ですね。

リンクされたページに「ドイツ製品の模倣」とありまして、それで長音hなのだろうか、と思いました。いやしかし、CよりはKの方がドイツ語らしいか、と思ったのですが、ライカはLeicaとCですね。やはりドイツカメラ的綴りなのでしょうか。



【373】
Re:ローマ字 #
 佐藤
 - 04/9/15(水) 18:07 -
----
▼岡島昭浩さん:
>リンクされたページに「ドイツ製品の模倣」とありまして、それで長音hなのだろうか、と思いました。


なるほど。こちらはドイツ語起源かもしれませんね。野球などはアメリカ経由で。もちろん、野球のもドイツ語まで遡れるのかもしれませんが……

>いやしかし、CよりはKの方がドイツ語らしいか、と思ったのですが、ライカはLeicaとCですね。やはりドイツカメラ的綴りなのでしょうか。


「ドイツカメラ的」というのが含蓄ですね。ライカは商標・商品名で、作った会社はドイツのエルンスト・ライツ社。で、「カメラ」はもちろんラテン語の「カメラ・オブスキュラ(camera obscura=暗い部屋)」。したがって、ライツのカメラで「ライカ」であって、ドイツ語とラテン語の混成なのでしょう。ラテン語(ギリシア語も?)に遡れるカメラ用語・写真用語は多そうですし。



【396】
Re:ローマ字 # mizkan(ミツカン)
 佐藤
 - 04/9/24(金) 0:01 -
----
 もう少しふさわしいスレッドがあったようにも思いますが、とりあえずこちらで失礼します。
 お酢製品で有名なミツカンのロゴが「mizkan」になったようですが、zが気になる、母音がないのが気になる。「mitkan」だったら、「おお、舌内入声音!」と感激する(?)ところですが。
http://www.mizkangroup.com/

「ミツカン」の由来は端折りに端折ると「三勘」といことらしいです。
http://www.dik.co.jp/seken/GOGEN/gennzai.html



【398】
Re:ローマ字 # mizkan(ミツカン)
 Yeemar
 - 04/9/25(土) 0:23 -
----
▼佐藤さん:
> もう少しふさわしいスレッドがあったようにも思いますが、


JEUGIYA(JEUGIA)ですね。



【400】
Re:ローマ字 # mizkan(ミツカン)
 NISHIO
 - 04/9/25(土) 23:36 -
----
▼佐藤さん:
> お酢製品で有名なミツカンのロゴが「mizkan」になったようですが、


道浦俊彦さんの『平成ことば事情』にも取り上げられていますね。
◆ことばの話1885「mizkan」 2004/9/10

>「ミツカン」の由来は端折りに端折ると「三勘」といことらしいです。
>http://www.dik.co.jp/seken/GOGEN/gennzai.html


田中ひろみ著『社名商品名の謎』(日本文芸社)にも、商標条例(明治18年)以前は「酢の製造業者はどの製造元も一般に「丸勘」と呼ばれていた」とあります。

一方、神戸の「マルカン酢」の社史には、創業者の「酢屋勘三郎」に因む主旨の記述があります。

「丸勘」が一般名詞なのか固有名詞なのか、気になるところです。
(ミツカン酢もマルカン酢も出自は愛知)



【401】
Re:ローマ字 # mizkan(ミツカン)
 佐藤
 - 04/9/26(日) 1:34 -
----
▼NISHIOさん:
>道浦俊彦さんの『平成ことば事情』にも取り上げられていますね。
>◆ことばの話1885「mizkan」 2004/9/10


http://www.mizkangroup.co.jp/logo/logo.html ですね。ありがとうございました。


>田中ひろみ著『社名商品名の謎』(日本文芸社)にも、商標条例(明治18年)以前は「酢の製造業者はどの製造元も一般に「丸勘」と呼ばれていた」とあります。
>「丸勘」が一般名詞なのか固有名詞なのか、気になるところです。


同感です。
醸造業つながりで思いつくのはドイツワインの銘柄。一つの銘柄が別の会社から遠慮会釈なく販売される・・・ 実際どんな風なのか「リープフラウミルヒ」という銘柄で醸造元の数を調べましたが(=別会社と見るや、買っては飲み買っては飲み(笑))、20社だか30社だかまでやったところであきらめました。でも、酒屋で見覚えのない醸造元のを見かけるといまだについ買ってしまいます。



【406】
Re:ローマ字 # mizkan(ミツカン)
 道浦俊彦
 - 04/9/27(月) 7:56 -
----
>醸造業つながりで思いつくのはドイツワインの銘柄。一つの銘柄が別の会社から遠慮会釈なく販売される・・・ 実際どんな風なのか「リープフラウミルヒ」という銘柄で醸造元の数を調べましたが(=別会社と見るや、買っては飲み買っては飲み(笑))、20社だか30社だかまでやったところであきらめました。でも、酒屋で見覚えのない醸造元のを見かけるといまだについ買ってしまいます。



イタリアの白ワイン「エスト!エスト!!エスト!!!」もいろんなところから出ていますね。



【407】
Re:ローマ字 # mizkan(ミツカン)
 佐藤
 - 04/9/27(月) 10:31 -
----
▼道浦俊彦さん:
>イタリアの白ワイン「エスト!エスト!!エスト!!!」もいろんなところから出ていますね。


「リープフラウミルヒ」のほかに、「ツェラー・シュバルツェ・カッツ」「オッペンハイマー・クルテンブルネン」「ピースポッター・ミヒェルスベルク」などが複数の会社から出されています(読み方、現地のと小異するかもしれません)。商標権侵害とかにはならないのでしょうね。初めは固有名だったのが、現在ではワインのタイプ名のようになっているのか…… そうした状況がイタリアワインにもありそうですか?


馬から落馬 #

【376】
馬から落馬 #
 Yeemar
 - 04/9/16(木) 19:39 -
----
馬から落馬
の続きです。
SMART FOOD STYLE
am/pm+{プラス}news DELI
もっと楽しく
食事を食べこなそう
(「am/pm」店頭広告 2004.09.15 西池袋1丁目で採集、ホームページはこちら
有名レストランと協力してうまい弁当を売り出す予定なので期待してください、ということらしい。「食事を食べる」という言い方が重言。

「食べる」に「こなす」をつける造語法も注目される。「こなす」=「技術を習得して、うまく○○する」。「着こなす」「使いこなす」「(漢字を)書きこなす」「(洋書を)読みこなす」あたりの動詞ならば思いつきます。



【377】
Re:馬から落馬 #
 Yeemar
 - 04/9/16(木) 19:42 -
----
am/pmの当該ページのアドレスが間違っていました。ただしくはこちら。
http://www.ampm.jp/menu/newsdeli/



【393】
Re:馬から落馬 #
 Yeemar
 - 04/9/23(木) 11:25 -
----
以下は重言というよりは、「もぐったり沈んだり」「閉じるかしめるか」「キッチンに台所」のたぐいの例です。しかも長い例です。

2004.09.22 クローズアップ現代「学力格差拡大をくい止めろ」(NHK)で国谷裕子キャスターが
先ほど、そのー、勉強熱心な家庭と、塾に行かせてる学校……家庭がその、その差が二極化しているというふうにおっしゃったんですけども、これまでは、今きびしくても教育に熱心にあることが将来の明るさにつながったという考え方が広がってましたよね。
「勉強熱心な家庭と、塾にさえ行かせない家庭との差」とか「勉強熱心でない家庭と、塾に行かせてる家庭との差」とか言おうとして誤ったものとみえます。


携帯メール談義(絵文字・要約)

【382】
携帯メール談義(絵文字・要約)
 岡島昭浩
 - 04/9/17(金) 21:10 -
----
こんな説がある――あるいは携帯談義の続きです。

>>「サザエさんうちあけ話」のように――という比喩は長谷川町子ファンにしか分かりませんが

>藤田保幸ファンにもわかるかな。


これの補足です。
藤田保幸「引用研究史管見」第124回近代語研究会(1995.5.26 龍谷大学)
かつて朝日新聞に連載された「サザエさん打ち明け話」には、この種の表現方法が数多く見られた。

とありました。


時代劇・時代小説のことば

【131】
時代劇・時代小説のことば
 岡島昭浩
 - 04/6/5(土) 11:57 -
----
時代劇で目についたことばに続くもの、という位置づけです。

 旧会議室の最後に、過剰なサ行イ音便のことを書きましたが、直木三十五にもそれが見られます。改造社版全集の『源九郎義経』に、「〜〜まいた」というのが出てきます。

http://www.let.osaka-u.ac.jp/~okajima/uwazura/naoki01.pdf



【374】
Re:時代劇・時代小説のことば
 岡島昭浩
 - 04/9/16(木) 9:24 -
----
「役目なれば言葉を改め申す」などと、忠臣蔵で言います。多門伝八郎などがいうようですが、例えば、講談全集3(講談社 昭和4)の32ページ、赤穂義士本伝(一龍斎貞山)

こうしたものの、江戸期の用例はあるのでしょうかね。『旧事諮問録』の第四編 第六回 明治二十四年六月十五日「御側御用取次、外国奉行の事」に、
で御質問の前に当りて二言申し上げて置きますが、幕府中の御話をしまするに、現今の言葉に改めて御話をいたすと、情の移らぬ事がある。それ故、やはり公方様|益《ますます》御機嫌能恐悦奉存候という調子で、御の字が付かぬと情合が移らぬようであります。しかし中には、そのままに御話をすると甚だ現今の人の御存知のない事もあります。速記の方も、洋語を筆記なさるよりも難しいこともあろうと存じます。
というのならありました。

#「史談会速記録」に全部目を通したいと思いながら、まだやっていません。そういえば、現在の勤務校では雑誌も短期間ならば貸し出しが出来るはずなので、やろうと思えば出来るのでした。


ホームレスの語誌

【336】
ホームレスの語誌
 Yeemar
 - 04/9/5(日) 14:48 -
----
〈「ホームレス」ということばが広まったのは1980年代後半。当初は欧米の路上生活者を指した。〉

――と考えるのは正しいか。調べてみました。「朝日新聞記事データベース」と「国会会議録検索システム」で年ごとの出現頻度をまとめました。数字は末尾に記します。結論としては、「正しい」と思いますが……

■朝日新聞記事データベースを検索して――
・国際居住年(1987年)をきっかけに「ホームレス」ということばが知られるようになったようだ。国会でも使われるようになった。
・「ホームレス」の用例数が「浮浪者」を抜くのは1989年で、1995年には両語用例数合計の90%以上を占めるに至る。
・当初「ホームレス」は欧米の路上生活者を指す用法が多かったとみられる。(私の記憶でも)
●〔アメリカ生活での観察を記した文章で〕ホームレスと呼ばれる浮浪者が物乞(ご)いするそばで、大勢の金持ちが大型ヨットを連ねてパーティーに興じる光景はどうでしょうか。〔1989.06.10 東京朝刊「声」〕

■国会会議録検索システムを検索して――
・「浮浪者」の用例が昭和58(1983)年と翌年に目立つのは、横浜で中学生による浮浪者連続殺人事件が起こったため。
・「ホームレス」について、昭和60(1985)年の2例は、「ホーム・レスポンシビリティーズ・プロテクション」という語が拾われたもの。「ホームレス」初出は昭和62(1987)年11月19日。
・「浮浪者」「ホームレス」の用例数は、昭和60(1985)〜平成4(1992)年ごろは抜きつ抜かれつという感じ。とはいえ平成元(1989)年に「ホームレス:浮浪者」が2:1で逆転してからは「ホームレス」の用例数が伸び、差を大きくしている。
●ことしは国際居住年でありますが、その目的とするところは、ホームレスの人に家を保障する、こういうことでありますけれども、逆に家からほうり出されてしまっている。〔衆 - 土地問題等に関する特別委員会 - 2号 昭和62年11月19日 中島武敏委員〕

●四月二十日の毎日新聞の夕刊社会面を大臣ごらんになりましたか。現在、立ち退きを迫られてひとり暮らしのお年寄りが施設に避難したり、あるいは駅や地下道で野宿を続ける人がかなり出てきている。長くは読みませんが、深刻な事態、ホームレスですね、日本の、これが出てきておる。〔参 - 建設委員会 - 10号 昭和63年04月21日 内藤功君〕

【朝日新聞記事データベースの検索結果】
     浮浪者 ホームレス
1984(年) 0(件) 0
1985   18    1
1986   16    4
1987   17    10
1988   41    33
1989   33    40
1990   26    57
1991   21    52
1992   22    79
1993   17    72
1994   21   122
1995   13   164
1996   12   169
1997   13   139
1998   18   143
1999   11   203
2000   12   235
2001    8   314
2002   12   318
2003    8   359
2004    6   160

【国会会議録検索システムでの検索結果】
昭和 浮浪者 ホームレス
50(年)1(件)
51   0
52   4
53   2
54   1
55   0
56   3
57   1
58   19
59   14
60   4    2
61   3    0
62   1    1
63   3    2
平成
01   1    2
02   1    3
03   0    3
04   0    1
05   0    6
06   1   15
07   2   11
08   1    5
09   0   12
10   0    6
11   0   32
12   2   17
13   2   35
14   2   46
15   3   45
16   3   24


【337】
Re:ホームレスの語誌
 道浦俊彦
 - 04/9/5(日) 16:48 -
----
関連で、「平成ことば事情147」に書いた「ホームレス」関連用語について、引き写します。2000年8月のものです。


ことばの話147「野宿者」

大阪・天王寺で、ホームレスの男性を若者が襲撃する事件が起きました。
そのニュースを伝えた新聞各紙の「ホームレス」を表わす見出しが微妙に違っていました。

読売・・・野宿者(本文では、野宿者の男性)
朝日・・・野宿者
産経・・・野宿者(本文では野宿生活者)
日経・・・天王寺の男性(本文では、野宿者)
毎日・・・路上生活男性(本文では、路上生活者の男性)

おおむね「野宿者」となっていますが、毎日は「路上生活者」となっています。また、読売は夕刊の3版では「野宿生活者」を使っていたのが、4版では「野宿者」になっています。ちなみに、読売テレビでは「ホームレス」を主に使いました。(翌日のニュースではなぜか“野宿者”を使ってましたけど。)
一般的には「ホームレス」が一番耳になじんでいると思いますが、実はこの「野宿生活者」
はお役所用語なのです。
つまり大阪市がホームレス対策を扱っている部署の名前が「野宿生活者対策室」なのです。読売が3版でこの「野宿生活者」を使っていたのに、4版で「野宿者」にしたのは、また各社「野宿者」という言い方をとったのは、お役所(=大阪市)の手垢のついた言葉(=野宿生活者)を避けた結果ではないでしょうか?
ちなみに各自治体などによって、呼び方は異なります。具体的には、
国=「ホームレス」
大阪市=「野宿生活者」
東京都=「路上生活者」
横浜市=「屋外生活者」
名古屋市=「住所不定者」
という具合です。
ちなみに「路上生活者」と言った場合は、「大阪城公園」や「長居公園」に住む人たちは含まれるんでしょうか?厳密に言葉を解釈すれば「含まれない」ことになるんですが、その場合は「公園生活者」など、具体的な「場所の名前」を「〜生活者」の前につけて呼ばなくてはならなくなり、一般名詞としては面倒くさいことになりはしないでしょうか?
ホームレスの人たちを生み出す社会状況に目を向けるけることはもちろんですが、こういった用語の使い方に目をむける事も大切だと思います。
(2000、8、8)



【338】
Re:ホームレスの語誌
 岡島昭浩
 - 04/9/6(月) 23:51 -
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『ことばのくずかご88』では、「毎日新聞」7月17日夕刊4「ホームレスの変質」佐江衆一を挙げていますね。

また、『現代用語の基礎知識』(92年?)では、〔アメリカ問題用語〕として取り上げられ、
1987年の冬はとくに寒さが厳しく、路上での凍死者が続出したことから、ホームレスとよばれる放浪生活者が急増していることが注目された。
としていました。



【339】
Re:ホームレスの語誌 1983年の用例
 佐藤
 - 04/9/7(火) 14:57 -
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国会図書館の雑誌記事索引だと次の例が出て来ました。
高速道路やテントにゴロゴロ--二百万人?米国のホームレス(特派員ノート) / 草野 徹 世界週報. 64(12) [1983.03.22]




【340】
Re:ホームレスの語誌 1983年の用例
 佐藤
 - 04/9/7(火) 19:35 -
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続き。国会図書館の雑誌記事索引で年次ごとに見てみました。どれだけ普通の使用例とシンクロするか心もとないですが、参考に。1996年以降の増え方が印象的ですが、景気低迷とかかわるのでしょう。

  浮浪者 ホームレス
1980
1981
1982 1    
1983 8    1
1984 2    1
1985 1      →「浮浪者」の消滅?   
1986      1
1987      1 
1988      3
1989      3
1990 4    7
1991      2
1992      3
1993      4
1994      6
1995      3
1996 1   16 →「浮浪者」復活。
1997 2   28  わずかだが「ホームレス」
1998 4   23  の使用例に連動するように
1999 3   58  使われていくのも面白い。
2000 3   83   ↓
2001     67   ↓
2002 1  108   ↓
2003 3  112   ↓


逆方向 # (遠慮)

【330】
逆方向 # (遠慮)
 岡島昭浩
 - 04/9/2(木) 11:31 -
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「逆方向?」と同様の例を、中島義道『私の嫌いな10の言葉』新潮文庫が指摘していました。
 あるとき、滑稽な日本語を目にしました。綺麗なそば屋なのですが、壁に「お子さまは遠慮させていただきます」とある。私はこの「させていただきます」が虫酸が走るくらい厭なのですが、このときは吹き出してしまいました。(以下略。p54)



夏休み子供電話科学相談で耳にした言葉

【323】
夏休み子供電話科学相談で耳にした言葉
 岡島昭浩
 - 04/8/30(月) 0:05 -
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NHKラジオの夏休みは、高校野球を除くと、午前中はずっと、この科学に関する電話相談をやっていたように思います。言葉に関する電話相談などはあったりするのだろうか、などと思ったりもしますが、夏休みの自由研究は、理科に関することをしないと、どうやら優秀作でもどこにも応募しようがないようにも思えます。

さて、「だまる」というのは、辞書には、〈声を出さないでいる〉というようなことが書いてあり、『日本方言大辞典』などでも、「火勢が鎮まる」ぐらいですが、「動かずにじっとしている」という意味で使っている人がいるように思います。これが方言なのかはわかりませんが、〈沈黙〉とも〈不動〉ともとれる用例が多そうで、これぞ、という用例が欲しいところです。

電話相談で、回答者の人が、「パンダはだまってるんだね」と言っていました。これは、よい用例であるように思いました。パンダも鳴くことは鳴くようですが、そういう話ではないようでした。


もう一つ。
「動物がはえる」

これは、質問者が「また来年もはえますか」と質問したのに対して、回答者が「はえるってのは植物の場合だね。これは動物だからそうは言わないよね」と言っていましたが、質問者はたしか静岡の人ではなかったか、と。これは『日本方言大辞典』での分布にあいます。小学生にもまだ残っている方言でありました。
田圃に発生する小動物の話でした。



【325】
Re:夏休み子供電話科学相談で耳にした言葉
 KS
 - 04/9/1(水) 10:13 -
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▼岡島昭浩さん:
>さて、「だまる」というのは、辞書には、〈声を出さないでいる〉というようなことが書いてあり、『日本方言大辞典』などでも、「火勢が鎮まる」ぐらいですが、「動かずにじっとしている」という意味で使っている人がいるように思います。これが方言なのかはわかりませんが、〈沈黙〉とも〈不動〉ともとれる用例が多そうで、これぞ、という用例が欲しいところです。
>
>電話相談で、回答者の人が、「パンダはだまってるんだね」と言っていました。これは、よい用例であるように思いました。パンダも鳴くことは鳴くようですが、そういう話ではないようでした。

 
 だまれ(黙れ)=静かに!(語源に近いのでしょうか?)
 だまって帰趨を見守る=不動、注意深く?
 だまっている方が賢く見える。だんまりをきめこむ=沈黙は金
 男はだまって勝負する=不動
 だまらっしゃい!(黄門さん)=詭弁を云うな?
一般に使うのはこんな感じしょうか。


「斜に構える」についての不審

【315】
「斜に構える」についての不審
 Yeemar
 - 04/8/22(日) 13:22 -
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「斜に構える」(しゃにかまえる)とはどういう意味か。それは「正対する」ということである。『広辞苑』にもそう載っている――と、ことばに関る仕事の方(かりにAさん)から伺い、おどろきました。

まずその『広辞苑』を見ると、初版では
剣道で、手にしている得物をななめに構える。また、身構する。改まる。気取った態度をする。
第2版・第3版では
剣道で、刀をななめに構える。転じて、身構える。改まった態度をする。
第4版では
剣道で、刀をななめに構える。転じて、身構える。改まった態度をする。また、正面から対応せず、皮肉な態度をとる。
第5版(現在)では
剣道で、刀をななめに構える。転じて、身構える。改まった態度をする。また、正面から対応せず、皮肉な態度をとる意にもいう。
とあり、「正対する」とは書いてありません。ただし「改まった態度をする」とは書いてあり、この部分が「正対する」となんとなく通ずるようでもあります。とはいえ、この「改まった態度」は「身構えた態度」ということでしょう。

「春色梅児誉美」(1832-33)には「(此糸という花魁が)どうして恥をすゝがんと胸をいためて、湯どのより出るらう(廊)下の中の間に、しやにかまへたる彼(かの)鬼兵衛」とあります。『日本古典文学大系』の注には「ふくむ所ある姿勢をして」。にやにやしながら懐手でもしていたのか。あごでもさすっていたのか。

『三省堂国語辞典』(第5版)では、「しゃにかまえる」と「はすにかまえる」とを区別している模様。「しゃにかまえる」は、「刀をななめに構える」ものの、体の向きは(言及はないが)正面を向いているようです。一方、「はすにかまえる」は、「相手をまっすぐに見ず、からだをななめにして対する」と釈しています。

Aさんは、このあたりのことを言われたものかもしれません。真相は現時点ではよくわかりません。



【316】
Re:「斜に構える」についての不審
 佐藤
 - 04/8/23(月) 19:27 -
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▼Yeemarさん:
>ただし「改まった態度をする」とは書いてあり、この部分が「正対する」となんとなく通ずるようでもあります。とはいえ、この「改まった態度」は「身構えた態度」ということでしょう。


「改まった態度をする」の意味があるとは知りませんでした。勉強になりました。『新明解』第5版に
(b)何かに対し、構え過ぎるほどの姿勢を取る
とあり、『新明解古語』補注版第2版に
(2)しゃちこばって構える。きちんとした態度をする
とあります。このあたりになると、「正対する」により近いニュアンスになりますね。「全力でことにあたるべく身構える」のような語釈も浮かんできますが、私自身用例に当たりきれてないので何とも。
なお『新明解古語』は元になった姿勢を次のように記します。この構えがどういう時に取られるものなのかが分かると糸口になりそうですが。
剣道用語で、刀をさげて両手で柄を持ち、刀を筋違いにして向こう斜めに構えることから




【317】
Re:「斜に構える」についての不審
 KS
 - 04/8/24(火) 14:23 -
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▼佐藤さん:
>「改まった態度をする」の意味があるとは知りませんでした。勉強になりました。『新明解』第5版に

『新明解古語』補注版第2版に
>
(2)しゃちこばって構える。きちんとした態度をする
とあります。このあたりになると、「正対する」により近いニュアンスになりますね。


同感です。
 一般の使用例では「正面から(正攻法で)対処しないで皮肉やからかいの態度で臨む」の意(正対とは逆の用例)が多い様に思いますが、これは本来の意味とは間違った使用例なのでしょうか。
「流れに掉さす」もそのうちに流れに逆らうの意味が一般化していく?様に。
 



【319】
Re:「斜に構える」についての不審
 佐藤
 - 04/8/25(水) 22:39 -
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▼KSさん:
> 一般の使用例では「正面から(正攻法で)対処しないで皮肉やからかいの態度で臨む」の意(正対とは逆の用例)が多い様に思いますが、これは本来の意味とは間違った使用例なのでしょうか。


↓んん、ここまで言い切れる人がいるとは……
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/reader/200406/2004062700059.htm#0003



【320】
Re:「斜に構える」についての不審
 KS
 - 04/8/26(木) 10:38 -
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▼佐藤さん:
この種の言葉(専門用語が一般化したもの)には本来の意味とは違う解釈や使われ方をするものがままありますね。
 「若干16歳でオリンピック出場」とか云いますが、語源は「弱冠」で20歳。「…本来「じゃっかん」は20歳であり、16歳や21歳であってはいけないのだ…」と子どもの頃国語の先生に教えられたのが印象に残っています。



【321】
斜の構え
 佐藤
 - 04/8/29(日) 16:50 -
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実際、どんな構え方なのか。とりあえず香取神道流という流派の画像がありました。
http://members.hknet.com/~cjj/japanese/shinto/shinto.html

一方で「青眼の構え等と言われる斜の構え」といった表現もあり、(流派によっては)最も基本的な構えを「斜の構え」と言ったのか。http://www5a.biglobe.ne.jp/~ichini/bbs7/799658955847011.html

流派によって「斜の構え」で表す姿勢が異なるので、それを反映して「斜に構える」が「正対する/正対しない」両用の意味で使われるようになったのか…… この考えに拘泥するつもりはありませんが、とりあえず、可能性の幅を見極めるために挙げておきますね。



【322】
Re:「斜に構える」についての不審
 岡島昭浩
 - 04/8/29(日) 22:12 -
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『日本国語大辞典』の「正構」のところに、「斜に構える」の用例がありました。
せい−こう【正構】[名】受太刀(うけたち)の構(かま)えの一つ。正しい構えで相手の刀を受けとめること。*浄瑠璃・道中龜山噺-六「臂を落して斜に構へるせいこうの受方も、はて能教へたものじゃよな」


また、『近世上方語辞典』では、
剣道で、剣・棒などを斜めに構える。一説、笏(しゃく)に構えるか。
としています。〈ななめに構えていないじゃないか〉という意識からそのような語源説が出てきたのでしょうか。

『嬉遊笑覧』巻四武事には、
斜に構る
○(安斎随筆)に、しやにかまへるといふ俗語剣術より出たる詞なり 立て刀を提げ両手に柄を持刀をすぢがひになして向ふを斜に構へると云なり かやうの事何のわけも知らずして人なみにいふこと多し 扇をしやにかまへ其外何にてもかまへる物ある也 さもなき空手にいふはいかヾといへり おもふに空手にて正体に居らず筋かひにかまへたらんは斜にかまふなるべし(葉子譜)【(広百川学海)癸集に収む】刻画品の骨牌に斜眼また斜歯といへるあり 其図を見るに牌の縁の黒き処上下にすぢかひて星あるは斜眼なり 歯のかたも筋かひたるは同じ斜といふ事是にて明らかなり
とありました。


技彦さん

【61】
技彦さん
 Yeemar
 - 04/5/9(日) 15:19 -
----
書店に行くと、金田一技彦監修『広技苑』という本がときどき目に入ります。コンピュータゲームの本のようです。

気になります。「技村出 監修」でないところがです。つまりは「広辞苑」は非常に有名であるが、編者新村出はあまり有名でなく、むしろ人々は“国語学者”といえばまずは金田一春彦氏の名が浮かぶためにこうなったのであろうと思いました。新村出編『広辞苑』というよりも、金田一春彦編『広辞苑』のほうが、それらしいのでしょう。

amazon.co.jpで確認すると、2000年以来、春・秋の2回ずつ新版が刊行されている模様。それ以前は?

ゲーム業界用語事典」というサイトがあり、この本の歴史を詳述。それによれば、『広技苑』は2000年春以来以前は『大技林』だったようです。「最初はファミマガの別冊付録の裏技データベースだった」「金田一技彦監修」「2000年1月に徳間書店のインターメディア部門が廃止になったため、それ以降は広技苑と名前を変えて発売される」とあります。

「ファミマガの付録の攻略本」を集めたホームページ(こちら)を見ると、金田一技彦監修『ウル技 大技林』というのがあり、さらに『ウル技 大技林'90』『ウル技 大技林'91』……と続くようです。すると、初版は1989年ぐらいでしょうか。『大辞林』の初版は1988年ですから、その翌年に時宜を得た名付けをしたのでしょう。

しかし、なぜかこれも「技村明 監修」ではないのでした。



【81】
金田一春彦氏の訃報
 Yeemar
 - 04/5/19(水) 15:25 -
----
2004.05.19 15:00のNHKニュースにて、「国語学者 金田一春彦さん死去」の報。

私がテレビで拝見したのは、1997.11.08「こんにちはいっと6けん」(NHK)のインタビュー「金田一春彦博士文化功労者に」、1999.04.15 ETV特集「金田一春彦・コトバの旋律」(NHK教育)あたりが最後となりました。

この訃報では、字幕スーパー「日本語アクセント研究の第一人者 国語辞典の編さん携わる」「琵琶{びわ}法師の旋律手がかりに 鎌倉時代のアクセントについて著書も」「昭和52年 放送文化賞 平成9年 文化功労者」。

書斎での様子に続き、「平成13年10月」と記された式典(13年度東京都名誉都民顕彰式?)のようすが映されました。車椅子で臨み、石原慎太郎知事らしき人(後ろ姿)から何かを手渡されていました。顔つきがずいぶん変わっていて、目の光がおとろえていられたことにおどろきました。

→テレビでの金田一氏につては、こちらもちょっと関連。「視聴記録・「この人・金田一春彦ショー」



【83】
Re:金田一春彦氏の訃報
 畠中敏彦
 - 04/5/19(水) 18:11 -
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▼Yeemarさん:
>2004.05.19 15:00のNHKニュースにて、「国語学者 金田一春彦さん死去」の報。
>私がテレビで拝見したのは、1997.11.08「こんにちはいっと6けん」(NHK)のインタビュー「金田一春彦博士文化功労者に」、1999.04.15 ETV特集「金田一春彦・コトバの旋律」(NHK教育)あたりが最後となりました。


NHKはじめ各民放(笑っていいとも?など)に出演されているのを、私も何回か拝見しました。
ことばについて話されている時は、いわゆるハイテンションになられ、ことばの持つ奥の深さ、ことばについて論ずるときの楽しさなどを、窺い知ることができました。
ここに投稿されている方(僕も含め?)も、文面からだけですが、なにか共通項があるような気がいたします。



【101】
Re:金田一春彦氏の訃報
 田島照生
 - 04/5/24(月) 18:56 -
----
>2004.05.19 15:00のNHKニュースにて、「国語学者 金田一春彦さん死去」の報。


昨日の午後三時、NHK教育テレビで、『金田一春彦さんをしのぶ 本人が語る日本語研究の歩み』なる番組が放送されました。そのころ私は、研究発表会の末席をけがしていたので全く存じませんでしたが、家族が録画しておいてくれたので助かりました。
まだ観たわけではないのですが、金田一秀穂さんが出演されているようです。

また、今日の『日本経済新聞(朝刊)』文化面に、柴田武さんの「金田一春彦氏を悼む」という記事が掲載されています。



【106】
Re:金田一春彦氏の訃報
 Yeemar
 - 04/5/24(月) 22:51 -
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この番組、私、「ラテ欄」で確認していながらほとんど見逃してしまいまして(よくあること)、NHKに再放送を願っておきました。「学会のため、日本語研究者の大半は見られなかったと思いますので……」と一言添えて。

秋永一枝氏、金田一秀穂氏が出ていたのは見ました。案内は柴田実氏でしたね。

おそらくETV特集「金田一春彦・コトバの旋律」(上述)の内容が大半を占めていたのではないかと思うのですが(ラテ欄の紹介に「コトバの旋律」とあったから)。

むかしの「この人・金田一春彦ショー」、「日本語再発見」などの貴重な映像が含まれていたかもしれない、と気になっています。

余談、1980年代半ばごろではなかったかと思いますが、「日本語再発見」か何かの特集で「現代仮名遣い是か非か」をテーマに研究者・識者のディベートが行われ、ほとほとつかみ合いとなり、司会のアナウンサーが半泣きになって(これは大げさ)止めに入ったというのを見た記憶があります。これはもう一度見たい番組です。これには金田一氏はご出演でなかったか?



【107】
Re:金田一春彦氏の訃報
 Yeemar
 - 04/5/24(月) 22:59 -
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>また、今日の『日本経済新聞(朝刊)』文化面に、柴田武さんの「金田一春彦氏を悼む」という記事が掲載されています。


「朝日新聞」は2004.05.20夕刊 p.14「広い視野で実証的研究/金田一春彦氏を悼む/城生佰太郎 筑波大教授/(言語学・実験音声学)」

「読売新聞」は2004.05.20夕刊 p.4「金田一春彦さんを悼む/大野晋{おおのすすむ}/鋭い耳で平曲分析も/新領域を開拓した二代目=v

の記事がありました。



【119】
[管理者削除]
 
 - -
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この書き込みは管理者によって削除されました。(04/5/30(日) 21:24)



【120】
Re:金田一春彦氏の訃報
 田島照生
 - 04/5/30(日) 16:31 -
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Yeemarさん、どうも有難うございます。
ようやく、追悼番組を見ることがかないました。

>秋永一枝氏、金田一秀穂氏が出ていたのは見ました。案内は柴田実氏でしたね。


番組の冒頭では、甲斐睦朗さんがコメントを寄せておられました。

>むかしの「この人・金田一春彦ショー」、「日本語再発見」などの貴重な映像が含まれていたかもしれない、と気になっています。


残念ながら、ETV特集の映像のみでした。私も、Yeemarさんの書いておられる番組の映像を、ぜひとも拝見したかったのですが…。

ときにYeemarさん、『週刊新潮』(六月三日号)の「墓碑銘」にも、金田一春彦さんが取り上げられています。このコーナーでは最近も、例えば竹内均さんや高見澤潤子さんなどを取り上げていたので、「もしかすると金田一氏も…」とあたりをつけておりました。ちょっと、不謹慎な話な