過去のこと(など、「た」で言うところ)について、判断を下しているのは現在、というような場合においてのことです。
どんぴしゃりの用例ではないかもしれませんが、次のようなの。
「ふさ子さん、たしかいまは……」
と、マダムが店の名を告げた。
「その店は、どういうところ」
「よく知らないけど、アルサロみたいなところじゃないかしら」
「その店でも、やはりふさ子という名前だろうか」
「たしか、そうだと思ったわ」
(吉行淳之介「探す」(『私の東京物語』文春文庫p206)
これは「過去について」というわけではないけれど、私だったら、「そうだったと思う」というところです。
世代差なのか(私は四〇代なかば)、地域差なのか(私は福岡生まれ)。
あるいは、口頭では言わなくとも、文章ではそう書くものだとして書いているのか、とも思いましたが、関西の人が、「たしか、そうだと思った」と言っているのを聞いて、「今はどう思ってるんだ」と不安に思ったことがあるのを思い出しました。