彼(ジョン万次郎)の書いた英語練習帳のWhat time is it now ? の傍らに、「ホッタイモイジルナ」とあるのだ。
として、さらに、
この本、単語「男子」の項を見ると、「ボヲヤ」と出ている。(中略)「女子」を見ると、「ゲロ」と書いてあったりして、
とあり、参考文献を、吉田正俊「女の子はゲロ」(『言語』12-7)としている。
これを見れば「ジョン万次郎の英語練習帳」が何であるのか分るであろうと、見てみると、これには、
安政年間に出た漂流記には「男子をボヲヤ、女子ゲロ」と記してあったそうです。
と、これまた伝聞で、しかもジョン万次郎とは書いていない。参考文献は大田雄三『英語と日本人』とのこと。これは講談社学術文庫に入っているので見てみたが、ボヲヤ・ゲロだけで「掘った芋」はなさそうだ。
城生佰太郎『「ことばの科学」雑学事典』(日本実業出版社1994.12.30)のp164にも、ジョン万次郎の名と、私が先日触れたテレビ番組(1984.8.29の放映)、と思われるものに言及して、「掘ったイモいじるな」と書いてある。参考文献としてEmily V. Warinner(宮永孝訳)『ジョン万次郎漂流記』(雄勝堂1991)というのが挙っているが、これは多分、
フハヤ アー ユー ゴエン
などの出典ではないのかな。このワリナーという人のは、昭和41年に田中至という人も訳しているようだ。ジョン万といえば井伏鱒二だが、パラパラ見たところ「掘った芋」はなさそうだ。そういえば『中浜万次郎集成』とかいうのが確か有ったはずだ。あの図書館にあったんだがなあ。《見たけど載ってない》
私はこれはほとんど「伝説」であると思っています。万次郎への仮託だと思っているわけです。
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