2006年01月23日

恵送

人からものをもらうとき「ご恵送いただき……」と言うはずですが、「恵送」は『日本国語大辞典』『広辞苑』『岩波国語辞典』等には載っていません。『大辞林』にはあります。また、「恵贈」ならば『日本国語大辞典』等にもあります。

「恵送」が『日本国語大辞典』にないということは、見落としか、確かな例がないのか、どうなのでしょう。

(このように、1語につき1記事を投稿するのはもったいないかもしれません。ただ、コメントにして続けた場合、このシステムでは語句検索ができないようです。)
posted by Yeemar at 18:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 辞書にないことば | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
用例を探してみました。
青空文庫からも、太宰治などが拾えますが、もっと古いものを。

> 押上〔森蔵〕中将このごろ『聊斎志異』一六巻を恵送せられ、
>いわく、この中に死人の魂、他の死人の身に入れ替わる話一、二
>ありしと記憶す、と。
南方熊楠「睡人および死人の魂入れ替わりし譚」二(大正三年十月『人類学雑誌』二九巻一○号)
河出文庫の熊楠コレクション2のp280による。

>唯毎朝新聞を山田先生から御恵送になるのが達しるばかりで御座います。
(『緑簑談』、前編、第十六回、明治一九)
『講座国語史 文法史』p721からの孫引き


さらに、
>御庭前之柿御恵送早速賞味可致奉存侯
釋澄月の津崎監物宛書簡『名家手簡』六下(『江戸時代文学誌』3号の翻刻による。p174)。澄月は寛政十一年没。

書簡用語は、日本国語大辞典であまり拾えていないように思います。
Posted by 岡島昭浩 at 2006年01月23日 23:09
用例、もう一つ追加しておきます。
>啓。子規病状は毎度御恵送のほとゝぎすにて承知致候処、終焉の模様逐一御報被下奉謝候
夏目漱石の高浜虚子宛書簡(明治35.12.1)
(昭和32年の新書版全集による。第二七巻p176。書簡番号177)
Posted by 岡島昭浩 at 2006年01月23日 23:23
その後、ある先生から次のご意見をいただきました。「「恵送」は間違いではないか。「恵贈」と言うべきだ。「恵贈」は「けいぞう」とも「けいそう」とも言う。この音から「恵送」と書く人がいるということではないか」。たしかに、「寄贈」は「きぞう」とも「きそう」とも言います。「恵贈」に「けいそう」の読みを認めている辞書もあります。

何を以て間違いとすべきかはともかくとして、「恵送」は寛政期より前から使われていたことが、岡島さんのご教示でわかりました。ありがとうございます。
Posted by Yeemar at 2006年01月25日 02:10
「恵贈」は、どことなく冗長の様にも思われるのですが…。「恵投」ならば、重複も無く、書簡用語として一般かと。
これで思い出しましたが、「恵存」を「恵む、存せよ」と読んで「失礼だから目上の人に使ってはいけない」と大まじめに言った人がいました。こうした語の解釈も時と共に移り、思わぬ結果を招く事があるかも知れません。
Posted by 豊島正之 at 2006年01月29日 03:34
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