2006年03月26日

き線点

「き線点」という不思議な文字遣いがあります。
 ADSL技術は光ファイバー回線上では使えないため、NTT側は、
「都内は一〇〇%光ファイバー化した」
 と喧伝。これを聞いて、あきらめる人が多いという。
「たしかに、き線点(幹線の末端)までは光ファイバーになったが、すべてを光ファイバー化するのは技術的に不可能。しかしNTT側は、それをわざと明らかにしない」(平野副社長)(「週刊朝日」2000.07.21 p.23)
ふつう、このような交ぜ書きは、常用漢字外の字を含む場合に行われます。

いったい、どんな難しい字を使うのだろうと思っていましたが、ホームページ「通信用語の基礎知識」
http://www.wdic.org/w/WDIC/%E5%B2%90%E7%B7%9A%E7%82%B9
では「岐線点」の字を示し、「一般に "き線点" と書かれるが、その理由は良くわからない。」と記します。なんのことはない、常用漢字にある字です。

「わからない」ことが分かり、それなりに納得はしました。しかし、なぜでしょう。学習漢字でないから、かな書きにしたのでしょうか。
posted by Yeemar at 05:54| Comment(6) | TrackBack(0) | 文字・表記一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
『標準ラジオ大辞典』日本ラジオ協会(昭和10.8.15発行 昭和14.11.30の四版による)を引いてみたところ、feeder pointではなく、feeding point なら載っていました。

それには、「饋電點」という訳語が当てられていました。feederが「饋電線;配電線,給電線」、feeder line が「饋電線路」。「き線」は「饋線」ではなかろうかと思いました。
Posted by 岡島昭浩 at 2006年03月27日 11:18
ありがとうございます。『標準ラジオ大辞典』は、はじめて知りました。

2000年に接したことばなので、もう6年くらい、疑問を持ち続けていることになります。

「配線点」ともいうそうですが、「配」の字が「饋」(おくる)に似ているために言い換えたのでしょうか。もっとも、「おくる」といっても、「饋」の場合は「食物や金品をおくり届ける。また、食物や金品などのおくりもの。」(学研漢和大字典)という意味だそうですが。
Posted by Yeemar at 2006年03月27日 20:52
『国会会議録用語集』(2001年,衆議院記録部・参議院記録部)の見出し語に「き線点(饋)」とありました。
(これは通信ネットワーク分野の用語と解説されていますが,一方で,鉄道分野の用語として「岐線」も載っています。)

国会会議録検索システムで確認してみますと,「き線点」の初出が1994年,「饋線点」の初出が1996年と,比較的新しい語のようです。
Posted by 茂木俊伸 at 2006年04月13日 00:43
「饋線点」ではなく、「饋電線」の方ですが、

東京高等裁判所昭和40年9月11日判決(昭和35年(行ナ)第107号)行政事件裁判例集16巻9号1480頁
という裁判例の中に、被告の主張に対する原告の反駁として、

「例えば、き(饋)電線に短絡が生じ、」

という表現がありました。
Posted by J at 2006年04月23日 12:05
電話局の交換機と加入者宅内の電話機との間は、2本1対のメタリックケーブル(銅線)で個別に接続されています。これを「市内線路」「加入者線路」「加入者ケーブル」などと呼びます。
実際にはバラバラに電線を引くのではなく、一定の加入者数ごとに「配線区画」を設定し、局から個々の配線区画までは千〜数千対の太束ケーブルを敷設します。配線区画内は、数十〜数百対の細束ケーブルを適宜分岐しながら加入者宅内に引き込みます。
この、局から配線区画までの太束ケーブルを「き線ケーブル(feeder cable)」と言い、地下の「管路」や「とう道(洞道)」を利用して敷設します。配線区画内は電柱上に張り巡らした「架空(がくう)ケーブル」などで、「配線ケーブル(distribution cable)」と言います。
以上が長い前置き。

「き線点」は、「き線ケーブル」と「配線ケーブル」の分岐・接続点を指す言葉です。メタリックケーブルの場合は「き線点」の実体はたんなる端子函でしたが、最近は「き線ケーブル」の部分は光ファイバー化が進んでおり、「き線点」の部分にはデジタル多重化・アナログ変換を行う「き線点RT(Remote Terminal)」という装置が設置されています。配線区画内は、電話回線やADSL回線は従来通りメタリックケーブルですが、インターネット用には末端まで光ファイバーを引くケースも増えました。

「き線点」という言葉は大昔からあったはずですが、十年ほど前から急に国会などの一見場違いな場面で飛び交うようになったのは、NTTと他の電気通信事業者との接続料算定方式が通信自由化の重要課題になったせいです。NTTの交換設備や市内回線のどこからどこまでの設備のコストが幾らだから接続料はこれこれ…と細かく計算します。その方法が政治的な駆け引きも含めて散々議論になりました。
なお、「市内線路」や「加入者線路」はアナログ時代の用語で、現在は「アクセス系」と呼ぶのが一般的です。「電話局」もNTT民営化後は「NTTビル」と呼び名を変えました。「加入者」は「契約者」と呼ばれます。

参考:
『接続料問題:LRICモデルとその適用』(甲南大学経済学部 佐藤治正)
http://hsato.eco.konan-u.ac.jp/paper/040426/BBA.pdf
ここに「き線点」「き線点RT」などの簡潔な図が出ています。

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電気通信分野以外での「き電」について。

【鉄道用語】『鉄道用語(こひつじの家)』
http://lavender.system.nitech.ac.jp/rail/system/trolley.htm
・饋電線/・き電線《きでんせん》〔feeder/feeder line/feeder cable〕
 電気車の消費電流が大きい路線において,トロリ線に電力を供給する
 ために架設される,銅またはアルミニウムでできた太い電線。
 200〜300mごとに饋電分岐線によってトロリ線と接続する。
ほかに、
き電方式、ATき電(方式)、BTき電(方式)、直流き電、交流き電、
き電変電所、き電開閉所、き電区間、き電回路、き電停止、等々
関連用語が多数あります。

【無線用語】『電気通信標準用語辞典 第2版』(電電公社編、昭和47年)
給電線(feeder)
 空中線(アンテナ)と送信機・受信機を接続するもので、き電線とも言う。
 並行2線式線路、同軸ケーブル、導波管などが用いられる。
Posted by NISHIO at 2006年08月20日 08:10
「饋」について調べてみましたが「JIS第二水準」
の文字であり非常用漢字です。難しい漢字や常用漢字でないものはかな書きするのが通例となっているようです。かな書きの理由は常用漢字でないから。標識などで「埠頭」を「ふ頭」と表記されるのと同じでしょう。「埠」も非常用漢字です。
Posted by 司馬 at 2010年08月27日 17:35
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