ところが、なぜ「青いえら」か、ということになると、説が分かれます。
(1)「名前の由来は、えらぶた後端の突出部が濃紺色であることによる。 」
(大阪府・水生生物センター)
(2)「名は雄のえらぶたにある青緑色の縞に由来する。」
(CD-ROM版「世界大百科事典」)
(3)「鰓(えら)ぶたの後端の青黒く光る斑点が特徴.」
(『コンサイスカタカナ語辞典』第3版)
(4)「えらぶたには鮮やかなブルーの縁取りがあります。」
(ポツくんの釣り入門・ブルーギルの釣り方)
諸説のうち共通するのは「えら」という部分だけで、「blue」とは濃紺なのか、青緑なのか、あざやかなブルーなのか不明です。「gill」とは突出部のことなのか、縞なのか、斑点なのか、縁取りなのか、不明です。
こうなると、ことばは頼りないので、ネットでひたすら写真を探してみました(日本のサイトに限らず、bluegillのキーワードで探索)。耳のように突出した黒い部分が映っている写真・絵がたくさんありました。しかし、濃紺色かどうかは分かりません。また、青い縞や斑点がないという確信もありません。
この分野に詳しい方はいらっしゃいませんでしょうか。
【関連する記事】
http://d.hatena.ne.jp/appleManso/20060824/p1
その後、青いシマシマがよく撮られている写真は下記で見つけました。「The fish were very colorful」とあります。
http://www.grahamowen.com/Adirondack-trip.html
よく吟味してみると、上記(3)の「斑点」とは、点々のことではなく、大きな点のように見える出っぱりということかもしれません。要するに(1)の突出部のことかもしれません。(4)も(2)のことを言っているのかもしれません(縁取り=縞?)。
説を強引に整理してみましょう。
a えらに青黒い(私には黒にしか見えない)出っぱりがあるから。
b オス(?)のえらに、青いシマシマがあるから。
という2説にしぼってもいいでしょう。
あざやかなブルーのシマシマを語源とするのは分かりやすいように思います。一方、黒としか見えないエラの突起を語源とするのは、私には分かりにくい説です。とはいえ、突起が多少とも青みがかっているのであれば、それもまた説得力を増すことになります。したがって、私にはまだどうとも決められません。
http://en.wikipedia.org/wiki/Bluegill
Of typical sunfish body shape, the bluegill's most notable feature is the blue or black "ear", actually an extension of the gill cover called the opercular flap. Its name, however, comes from the bright blue edging visible on its gill rakers.〔後略〕
〈ブルーギルは典型的なサンフィッシュの体型をもつが、そのなかで最も特徴的なのは青または黒の「耳」で、これは実際にはえらぶたが伸びたものである。ただし、名前の由来になっているのは、えら(gill rakers)にある鮮やかな青のふちどり(edging)である〉(拙訳)
Wikipedia日本版が「鰓蓋の上部に突出した皮弁」に由来するのとは食い違っています。
上記のうち、gill rakers はよくわかりません。また、edging とある以上は、ふちどりということになりますが、シマシマのことだと考えてはいけないのでしょうか。
http://image.space.rakuten.co.jp/lg01/95/0000182795/98/img31b24edaf63xi7.jpeg
個体によって違いがあるということでしょうか。
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『水族館の生物ポケット図鑑』
(監修 東京都加西臨海水族園園長 安倍義孝、主婦の友社、1993年)
ブルーギル スズキ目サンフィッシュ科
<略> えらぶた後端に眼と同じくらいの大きさの暗色斑紋があり、ブルーギル(青いえら)と呼ばれる。<略>
以下、図書館で調べてみました。
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『図説 魚と貝の大事典』
(監修:望月賢二、編集:魚類文化研究会+雅麗、柏書房、1997年)
ブルーギル[青鰓]
●Lepomis macrochirus
<略> 体色は個体差が激しいが、小形では紫がかった青色を基調とするものが多く、大きくなるにつれ黄色みを増してくる。<略>
【和名由来】英名をそのまま和名とした。ブルーギル(青鰓)の名は、鯉蓋後端にある青色の突起に由来する。
【外国名】[英]bluegill; bluegill sunfish; chain sided perch [仏]crapet a' oreilles bleues
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『外来水生生物事典』
(佐久間功・宮本拓海著、柏書房、2005年)
□生態
エラ蓋にある青い丸い部分が、青いエラ(ギル)という名前の語源である。子どものときは体側の縞模様がはっきりしているが、成長するにつれ薄くなり、繁殖期は腹側のオレンジ色が濃くなる。<下略>
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語源はシマシマではなくエラ蓋の色で間違いなさそうです。「突起」とありますが、体表より盛り上がっているかどうかは確認できませんでした。
シマシマ説に傾きかけていたのですが、専門の事典の記述が軒並み青黒のスポットを語源としているのをうかがって、考えを改めました。耳のような部分が、実際には青く見えるのであれば、納得できます。
それにしても、(2)の百科事典のような記述がどういう経路で出てきたのか、なぞです。事典の書き手がなんとなく書いたのでしょうか。