「いなたい」ということばをご存じでしょうか。この3月ごろ、
知り合いの調布の音楽家から語源をたずねられたのですが、
答えることができませんでした。
その音楽家によると、〈元々関西のミュージシャンが使い
始めたのが広まったのではないか〉〈今でも音楽関係の人間
しか使わない言葉かも〉ということで、〈意味を説明しろと
言われると、ちょっと答に窮してしまう言葉〉だそうです。
ウェブで検索してみました。
↓このページを見ると
http://www.netbeet.ne.jp/~tachy/g/g10.html
「きちんと辞書で調べたこと無いけど「田舎臭い」とか「泥
臭い」とかっていう一面を持ってるんだろう」とあります。
↓また、このページを見ると
http://www.incl.ne.jp/~nori/fuku/tshirt/tamio_t1st.htm
「”田舎(いなたい”」と漢字も添えてあります。
↓さらに
http://niigata.cool.ne.jp/roujin/mania991015.html
「暗い、疲れてるちょっと悲しい雰囲気」という表現と同時
に出てくる。
↓ここでは
http://www.jungle.ne.jp/junglelife/35/interview5.html
「格好悪い・情けない・ダサイ」などの類義語として使われ
ているようだ。
おそらく、マイナスイメージとしては「あか抜けない」、プ
ラスイメージとしては「素朴な」という意味かとも思います。
そのことを件の音楽家に告げると、さらに〈この言葉の発祥
はたぶん大阪方面で、1980年代前半だと思う〉とのこと。
以上を信ずるかぎり、辞書ふうに書けば
いなた-い(形)〔「田舎い」からか〕あかぬけない。また
は、素朴な。1980年代前半ごろから、主として関西で、音
楽の評価に使われ始めた俗語。
とでもなりましょうか。いかがでしょうか。
岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2000年 7月 03日 月曜日 16:16:14)
ちょうど数日前、山下達郎関係のMLで話題になっていたことでした。符合にびっくりしました。
http://www02.u-page.so-net.ne.jp/bc4/hasuike/yougosyuu2.htm
ここによれば『大阪呑気大事典』(JICC1988.9.25)にあるということで、見てみると確かに27頁にあります。
で、大滝詠一ファンの私としては以下を引用したいところ。
→ 新春放談1985
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山下: こういうね、いなたい歌が、
大滝: 何だって、いなたい歌?東京方言じゃないのそれ。
山下: 関西だという話しがあるんですけど、山岸が言ってたんです。
大滝: いなたいっていうのを?どういう意味なの?
山下: いなたいってのはね、要するに、いなかといなたい、いなかでいなたい、ドロくさいとか、カントリーだとか、ちょっとこうなんというか、ソティスフィケートされてないというか。
大滝: 都会に出て行ってはいけないということを、子どもが言ったとか、そんなことじゃないの?「いなかにいなたい」って。
山下: 山岸が言ってたから、つくったんじゃないかな。まぁ、いいや。
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「アングラ」(中川五郎)、「片町線」(堰守)でも、使われています。
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あの頃横文字を漢字で書くことが流行《はや》った。それは大阪の専売特許ではなかったが、あの横文字漢字のいなたさは僕にとっては絶対に大阪なのだ。 (中川)
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「いなたさ」に傍点。