2001年07月01日

「たとえば」と「for example」(Yeemar)


英和辞典を引くと、「for example」は「たとえば」と載っています。

日本語の「たとえば」は、冒頭で使うことができます。たとえば、次の例はそうなっています。

 高橋昭・三省堂国語辞書出版部長の話 例えば、女は女性のこと、で済ませるのでは不親切なので、どんな場面、環境で使われるかを考え、語感の違いを際立たせようとしたあまり、一部読者に不愉快な思いをさせてしまった。言葉は社会との関係で日々動いており、「貞淑」の説明なども、確かに現在の感覚には合わなくなってきている。短いスペースの中で、どう表現するかむずかしいところだが、読者の方たちの意見を入れて、よりよい辞書にしていきたい。
(「三省堂「新明解国語辞典」を手直し」朝日新聞夕刊 1984.11.30 p.18)
ところが、私が大学で習った英語の先生(日本人)は、冒頭で「for example」を使うな、とたびたびおっしゃいました。授業中、学生に英語で質問したことに対し、学生が「For example...」で始めると、「No, no」と注意されました。「○○は△△である。たとえば、……」というように、まず命題を述べて、そのつけたしとして具体例を示すときに「for example」を使うのである、と(たしかそうだったと思います。なにしろすべて英語で言われたのでよく分かりませんでした)。

『新明解国語辞典』をみると、「たとえば」は、「前文に述べた趣旨を客観的に証明するに足る例をあげることを表わす」として、「やりたくない事は、友達みんなが参加してもしない。――〔=卑近な例をあげるならば〕塾はいやだって、行ってません」などの例を挙げています。つまり、命題を述べ、その具体例を示すという順序です。森田良行『基礎日本語 2』でもそのような例のみ載っています。

しかし現実には日本語には「たとえば……」で始まる文章もあり、自然です。とすると、英語でも冒頭で「For example...」とやるのも自然な場合もあるのではないかと思います。実際のところはどうなのでしょう。



ののまる さんからのコメント

( Date: 2001年 7月 02日 月曜日 14:55:54)


日本語話者の場合、周辺的な話題を導入にして主題への道筋を付ける表現方法には特に違和感を感じませんが、
まず主題を先に述べてその後で理由や例を述べる英語の場合、違和感があるのではないかと思います。
特に "example" は、「これに勝る例が少ない典型例」というニュアンスなんで、冒頭に用いると「何の典型例なんだ??」ってことで混乱するのではないかと思います。

辞書(『ランダムハウス英和大辞典』第2版)を見ると、こんな例が載ってました。
If you were to go to Itary, for instance, you would get a different perspective on our culture.
「例えばイタリアに行くようなことがあれば、我々の文化について今とは違った見方をするようになるだろう」
instance は「一般的な例、必ずしもベストな例でなくてもいい」というニュアンスのようなので、
後半の趣旨を強調するために使われる仮定的な例を示す「例えば」に相当するものとして、挿入されているのだと思います。

そのほかにも、日本語の「例えば……とする」のような、最初に事柄を設定するような言い方ならば、
"Let us suppose that..." 等の表現があります。



Yeemar さんからのコメント

( Date: 2001年 7月 02日 月曜日 20:46:55)


ありがとうございます。「For example...」と語り始めるということは、日本語で言えばさしずめ、いきなり「典型例を言うならば……」と語り始めるのに似た違和感があるのだというふうに理解しました。

もっとも、
「冷房をがんがんかけているのに涼しくならないということがありうるでしょうか?」
「典型例を言うならば、そこが屋外だった場合は涼しくならないでしょう」
というふうに、言おうと思えば言えてしまうところが、日本語の日本語らしいところでしょうか。

渡辺真知子が20年前に「たとえば…たとえば〜」と冒頭から歌っていたのも、「For example...」ではなく「If..., for instance, ...」か「Let us suppose that...」と訳すべきなのでしょうね。



Yeemar さんからのコメント

( Date: 2002年 2月 02日 土曜日 23:05:18)


NHK「ポップジャム」(2002.02.02 放送)で、LISAという歌手がゲストとして出ていました。

彼女はよくファンから相談を受けるそうで、司会の堂本光一さんに「何か印象に残っている相談はありますか」ときかれて、LISAさんは「For exampleね……」と話しはじめました。

LISAさんは東京生まれ、コロンビア系ハーフのシンガーとのことですが(NIFTY MUSIC CHANNEL)、どのような言語環境で育ったのでしょうか。


posted by 岡島昭浩 at 11:25| Comment(0) | TrackBack(0) | ■初代「ことば会議室」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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