大苦労
今朝、天気にさそわれて植木屋にいき、スイカの鉢植えを買った。丈が1メートル弱くらい、小さな実の一つついた立派なやつで、歩いて10分の道のりを、大苦労して持って帰った。セールになっていたのだが、それでも3000円した。(江国香織『落下する夕方』〔1996.11発表〕角川文庫 1999.06.25 p.88)真逆
少年はそれから、学校の裏門近くに置いてあった自転車で最寄りのJRの駅に向かった。現場近くには有名な豊川稲荷があり、それにあやかって、付近の街路には開運通り、町には幸町などのおめでたいネーミングが付されている。開運とも幸とも真逆の罪を犯した少年は、宵闇{よいやみ}せまるそらの通りを全速力で逃走した。(AERA 2000.08.14-21 p.34)前者は「おおくろう」か「だいくろう」か。後者は「しんぎゃく」なのでしょうか。
益山 健 さんからのコメント
( Date: 2001年 9月 21日 金曜日 22:45:17)
Scudelia Electro の「1999」という曲の歌詞が「真逆に働く可逆の科学を
学ぼう」で始まっており, 「まぎゃく」でないと語呂合わせにならなくな
ります。
Yeemar さんからのコメント
( Date: 2001年 9月 22日 土曜日 19:07:19)
「1999」というからにはそのころの歌なのでしょうね(歌詞を示しているホームページもありますね)。
「まぎゃく」というと俗語的な語感がありますが、「AERA」の硬派記事で出てきたので、ふつうのことばなのだろうか、どうなのだろうかと思いました。
まさか「まさか」ではないとは思いました。
Yeemar さんからのコメント
( Date: 2001年 10月 25日 木曜日 11:59:04)
若者ことばなのでしょうか。
雰囲気真逆〔まぎゃく〕じゃねえか。〔コンビ「号泣」の漫才〕(NHK「爆笑オンエアバトル」 2001.10.14 00:35)
Yeemar さんからのコメント
( Date: 2001年 10月 25日 木曜日 12:03:28)
福井県にて拾ったことばです。
旧豊かさ指標≠ナ本県〔福井県〕は一位でしたが、表面に出ない不満は京金族≠ニなったり、低い人口増加率として現れました。〔大野市 南部弘晃〕(福井新聞 2001.10.22 p.19)「京都、金沢」に買い物に出かけ、地元にお金を落とさない族ということと思われます。説明なしで書いてあるからには、県民ならば読んで分かることばなのでしょう。
「けいきん族」ではなく、「オレたちきょうきん族」という語呂合わせだと思いました。
Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 08月 13日 水曜日 22:13:24)
養生
街を歩いていると「芝生養生中につき立入禁止」などと書いてあります。具体的には東京・外苑西通りの西麻布あたりで見たような気がします(詳しくはメモをし忘れました)。これは「ようじょう」でいいのだろうかと疑問が湧きました。
すると佐藤貴裕さん「気になることば」の「養生」、「現場の「養生」」以下に、人間以外について使われる「養生」について詳述がありました。岐阜大では「芝生養生につき」とある由です。『広辞苑』にも、コンクリートや植物を「養生(ようじょう」する用法が記されています。
しかし、こんにち「養生」といえば最も一般的には人間が摂生するという意味で用いられるはずで、「芝生を養生」「テープで養生」というと「なにがしかの可笑しみがともなう」ほどに違和感があるのも事実です。
こういう場合、もしかして読み方を変えて使われてはいないか。「ようせい」などと。
――ということを、つねづねぼんやり考えていましたら、たまたま、「リフォームネット」の「用語集・や」に「ようじょう」「ようせい」を分けて書いてあるのに行き当たりました。
「ようじょう」は
仕上がった部分に傷や汚れがついたり、雨がかかったりしないよう、ビニールシートや紙、ベニヤ板などで覆って保護する事。であり、また「ようせい」は
モルタルやコンクリートを十分に硬化させ、良好な性質を発揮ささせるため、セメントの水和反応に必要な水分を確保し、また補給し、かつ適切な温度条件に保つこと。です。字はどちらも「養生」です。そして、「はぐくみそだてる」意は「ようせい」のほうの読みで表しているように思われます。
「芝生養生中」も、「ようせい」と読まれている可能性はないでしょうか。
佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 08月 14日 木曜日 03:58:17)
問題提起、ありがとうございました。
字音の種類によって意味を振り分けるのはよくあることなので、ヨウジョウ/ヨウセイで使い分ける可能性は考えられますね。仮に、現代、園芸・農業関係でヨウジョウと読んでいたとしても、将来、ヨウセイと読む可能性はあることにもなるでしょう。
一方では、同一の用字・概念が、分野によって読み方を異にすることもありますね(例:口腔。医学ではコウクウ、音声学ではコウコウ)。だから、「芝生養生」が、ヨウジョウと読まれても別段不思議ではない、との理屈は成立します。
園芸・農業関係のもので読みが分かる例が出てこないと、なかなか先に進みづらいようにも思います。
↓
→ 毎日中学生新聞 5月8日(木)。「芝生(しぼう/しばふ)」も面白いですね。
佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 08月 14日 木曜日 04:30:34)
建築用語集で、コンクリート関係についてヨウジョウと使っている(らしい)ところがありました。本当のところはどうなのか、気になりますね。あるいは、会社によってヨウジョウ一つで済ませたり、ヨウセイ/ヨウジョウで使い分けたり、といったことがあるかもしれませんね。
→ 建築用語目次。(五十音が行単位で平仮名・片仮名を使い分けているのも興味深い)
佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 08月 14日 木曜日 04:44:42)
眠れないので、Googleで簡単な調査を。コンクリートのことが書かれていて、養生をヨウジョウと読むか、ヨウセイと読むかが分かればと期待してのことです。
・「コンクリート ようじょう 養生」だと 約97件
・「コンクリート ようせい 養生」だと 約6件
リンク先に行ってみないとわからない部分もありますし、漢字の読みを示すこと自体、なんらかの意図(善意にせよ、悪意(?)にせよ)が反映されているわけで、必ずしも自然な言語使用ではないかもしれませんね。この数字はあくまで参考として。
Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 08月 14日 木曜日 06:33:00)
かながきの例のご提示ありがとうございます。もう今の時間はお眠みでしょうか。私は今起床しました。
ことば足らずであったかもしれませんので、少々補足いたします。
> 「芝生養生中」も、「ようせい」と読まれている可能性はないでしょうか。
これは「コンクリ」「芝生」の場合は人間の場合と区別して「ようせい」と読むのがふつうではないか、ということではなく、「ようせい」と言っている人が(表面に現れないにせよ)存外多いかもしれない、という程度のニュアンスとご理解ください。
私個人が初めて注意札の現物を見たときの状況を描写しますと、まず、ごく素朴に「芝生のようせい」とよんでしまいました。それから、「まてよ、『ようじょう』か。こういう所にも『ようじょう』を使うのだろうか」という疑問がわきました。辞書類を見ると「養生」に「コンクリの育成・保護」等の意味もあるので、「ようじょう」で問題もないことはすぐにわかったのですが、心にひっかかっていました。
すると、今度たまたま、「ようじょう」「ようせい」とよみ分けている例にぶつかり、「ほらほら、『ようせい』のよみが成立しているではないか」と面白く思いました。この分ではさだめし芝生の場合も、と思ったのです。
そして、そこから先には進んでいないという現状です。
なお、「Google」の「ようせい」6件というのは、先に示した例のほかは、「きょうようせい」(供用性)のよみの一部がひっかかったもののようで、実質「ようせい」のよみを示している上記のページはまれな1例ということになるようです。
佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 08月 14日 木曜日 12:24:52)
>、「ようせい」と言っている人が(表面に現れないにせよ)存外多いかもしれない、という程度のニュアンスとご理解ください。
はい。可能性としては十分にありうると思っていますのでご安心ください。ただ、今の段階でヨウセイがどれほど確認できるかはおさえておきたかった、ということはありました。そうした方向が、例示したことも重なりあって、ちょっと強調されてしまったかもしれませんね。
別の可能性として、別語のつもりでヨウセイの読みを提示したのにもかかわらず、「養生」とヨウジョウとの結びつき(一種の定訓?)の強さに押し切られ、受入れられていない、ということもあるかもしれませんね
(ちょっと「兄弟(キョウダイ/ケイテイ)」風です)。
Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 08月 14日 木曜日 14:41:40)
「芝生養生中」を「ようせいちゅう」と読むのは無理かなとも思ったのですが、いや、やはりそう読む人もいそうだという気が本当にしてきました。というのは――
「Google」では「芝生 ようせい」(「コンクリート ようせい」)で検索してもそれらしいものは出てきません。しかし、
「"芝生養成"」約40件
「芝生養成」約3,420件
(「"コンクリート養成"」約30件)
(「コンクリート養成」約30件)
という検索結果が出ました。
これらは、「しばふようせい」のつもりで書かれたものと推測されます。「芝生養生(ようじょう)」とは別個に「芝生養成(ようせい)」の語があるにすぎないとみることもできますが、書き手が「養生」のつもりで「ようせい」と入力し、結果的に「養成」と変換されてそのまま決定されたとも考えられます。
「今年はななななんと『芝生養成中』が強化されちゃって」と書いた人は、実際には「芝生養生中」という立て札を見たのではないかという想像も湧きます。
なお、人間の健康についていう場合、「養生」を「『ようじょう』ではなく『ようせい』と読む」とあえて断って使っている向きもあるようです。ウェブでざっと見ただけなので詳しいことは分かりませんが、ある特別の療法を実践する人々などは、そのような使い方をしているようです。こうなると、人間の場合も「ようせい」に限らないわけです。
どんな場合も「ようせい」と読むならば、読みで意味を区別することはできませんね。
Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 08月 14日 木曜日 14:44:24)
正誤
× こうなると、人間の場合も「ようせい」に限らないわけです。
○ こうなると、人間の場合も「ようじょう」に限らないわけです。
佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 08月 14日 木曜日 21:05:09)
「芝生養成」で検索するのはうまいですね。先に「仮に、現代、園芸・農業関係でヨウジョウと読んでいたとしても、将来、ヨウセイと読む可能性はある」と書きましたが、現代でもすでにありそうだとの証拠をお教えいただき、ありがとうございました。他人の現在は自分の未来ですね(=言語伝播が己が身に及んでいない、と言いたいだけです)。
>ある特別の療法を実践する人々などは、そのような使い方をしているようです。こうなると、人間の場合も「ようせい」(「ようじょう」に改む)に限らないわけです。
なるほど。ただ、この例は敢えて言っている、誤読でないところが面白いですね(先に「別語のつもりでヨウセイの読みを提示した」と書きましたが、実はちらっと目についた漢方関係のページが念頭にありました。同じところを見たのかもしれませんね)。ただ、同じヨウセイでも、依拠したものが漢籍だからという確信があってヨウセイと読んでいるのかもしれませんね(未確認)。
道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 08月 15日 金曜日 16:53:45)
佐藤さん、大阪府高槻市にも「芝生町(しぼうちょう)」というのがありますよ。
Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 04日 火曜日 19:57:39)
上記「養生中」の実例を挙げていませんでしたので、実例を添えておきます。
お願い!!葛西臨海公園で、2003.10.18採集。
入らないで
芝生養生中です。
Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 04日 火曜日 20:02:46)
> 実例を挙げていませんでしたので
これは、「町での実例」ということです。ずっと上に
> 東京・外苑西通りの西麻布あたりで見たような気がします(詳しくはメモをし忘れました)
と示すのみで、町での実例を示していなかったので補足したのです。