2001年11月04日

こんな説がある――あるいは携帯談義(Yeemar)

会話の中で、ある大学生いわく――

「携帯でメールを打ってると、文章を要約する力がつくんですね」
「えっ?! そんな説があるの? どこで読みました?」
「授業で、先生が」
「先生がおっしゃってたの? それは、大学の先生? それとも高校の時の?」
「大学の。表現研究の時間に」
「それは、どういう授業ですか」
「作文を書いたりとか」
「要約力って、むだな修飾語をはぶいたりして、もとの長い文章を短い簡潔なものに縮める力のことだよね」
「だと思います」
「たしかに、携帯メールには字数制限があって、長い文章は書けませんね。でも、だからといって、それがただちに要約力に結びつくとは思えないし、そういう説を読んだことも聞いたこともないな」
「でも、そう言ってました」
「その先生は、『携帯メールを使っていると、要約力がつく、かもね』とおっしゃったのではないの?」
「いや、『要約力がつくと言われている』と言いました」
「その根拠についてはおっしゃっていませんでしたか?」
「よく覚えてません」
「うーん」

携帯メールについて、学問的な立場から論じたものとしては、雑誌「日本語学」2001.09「特集 ケータイ・メール」ぐらいしか存じませんが、目を通したところ、「要約力」うんぬんの話は出ていないようでした。

メールで短い文章ばかり打っていると、それはたしかに短い文章で意思疎通することには熟達するでしょう。「おひるなにたべた?」「うどんだよ〜ん」といったように。おそらく、携帯メールで交わされる文章の大半はこのたぐいでしょう。そのようなやりとりは文章の要約力に直結するものでしょうか。

単に、一語文、二語文の会話が常態化するというだけではないでしょうか。

携帯メールをお使いの方で、経験的に「携帯メールは要約力の訓練になる」とお感じになったり、また、そのような説をお聞きになった方はいらっしゃいますでしょうか。お教えいただければ幸いです。


道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2001年 11月 05日 月曜日 12:56:09)

日常的に使っていますが、全然「要約力」がついたとは思いません。キーを打ち込むのが早くはなったと思います。ただ、中には、短い文しか返して来ない人もいます。あれは要約しているんでしょうかね?


道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2001年 11月 05日 月曜日 12:57:04)

日常的に使っていますが、全然「要約力」がついたとは思いません。キーを打ち込むのが早くはなったと思います。ただ、中には、短い文しか返して来ない人もいます。あれは要約しているんでしょうかね?文を短くするのに、省略語を使ったり、絵文字を使ったりというのはあるようですが、それも「要約」にはいるんでしょうか?


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2001年 11月 08日 木曜日 21:28:12)

道浦さん、ありがとうございます。

絵文字といえば、川崎市宮前区のNEC中央研究所が、単語を絵文字に変換する携帯電話用ソフトの開発を進めていると、「朝日新聞」夕刊、2001.01.13 p.1に載っています。写真を見ると、あたかも「サザエさんうちあけ話」のように――という比喩は長谷川町子ファンにしか分かりませんが――、絵を格助詞や接続詞でつないでいます。

こうなると、行き着く先は、絵による会話ということになるのでしょうか。

* * *

かねこっちさんより、ご自身が卒業された高校が作っているサイトの掲示板のことを教えていただきました。

掲示板は複数あり、卒業年度の違う方々が、世代ごとにそれぞれの掲示板に集まって、同窓会の相談などをしていらっしゃいます。ずっと前に卒業された世代の集まる掲示板では、字数制限と戦いつつも長い文章がやりとりされています。一方、卒業したての若い世代の集まる掲示板では、ひとことふたこと、2行3行と行った書き込みが飛び交っているようです。携帯電話でアクセスしているのでしょうか?


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2001年 11月 08日 木曜日 23:22:11)

私は、Pメール(phs同士のやりとりで使うもので、カタカナのみ。普通のメールよりも送料が安い)を打つとき、電報を思い出します。
20ジツク。ムカエコウ
のような感じで。
電報を打つと文章力が上がる、というような説もあれば関連するかもしれません。

>「サザエさんうちあけ話」のように――という比喩は長谷川町子ファンにしか分かりませんが
藤田保幸ファンにもわかるかな。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2002年 08月 26日 月曜日 08:42:59)

携帯談義のスレッドですから、顔文字の話を書き付けます。

古紙回収に出すつもりの「文藝春秋」2002.03 p.85に、「春」という題の大塚寅彦の短歌連作。

  絵文字もて泳ぐ少女かぴちぴちとけふのメールの中には<゜)))彡

「<゜)))彡」には「さかな」とルビが振られています。

原文縦書き。「彡」は90度回転していないため、「さかな」のフォルムが崩れてしまっています。ルビが振られている以上は、「絵文字」が「文字」として使われているわけです。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2002年 08月 26日 月曜日 08:44:52)

「さかな」の顔文字がめずらしいというのではなく、短歌に使われているのがめずらしいと思ったのです。


新会議室へ

posted by 岡島昭浩 at 16:39| Comment(0) | TrackBack(0) | ■初代「ことば会議室」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック