2002年02月02日

故障中(さち)

こんにちわ。
あの、教えてほしいんですが。
「故障中」って、間違っていると聞いたのですが・・・
なんでですか?
瞬間動詞なので、こうゆうふうには使えないとのことなんですが・・・ちょっと理解できてないので・・・教えてください。
お願いします。


畠中敏彦 さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 02日 土曜日 17:51:36)

私も違和感がありましたが、やはり「間違っている」と指摘する方がいたんですね。

・・・中は、人間がある行動を行っている状態をいうのではないでしょうか?
たとえば、作業中、食事中のように。

時計が止まっている、あるいは自販機が壊れているのは、単なるモノの事実状態であり「故障」と表示す(言う)べきと思いますがいかがでしょう。



Yeemar さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 02日 土曜日 21:31:30)

「故障中」はへんだという説もどこかで伺ったような記憶もありますが、私自身はそれほどへんだとは感じないのです。

金田一春彦氏の動詞四分類(参考:こちらのスレッド)のうちでいうと、「故障する」は「継続動詞」か「瞬間動詞」かという問題だと思います。

継続動詞は「ある時間内続いて行われる種類」の動作・作用を表すもので、「〜ている(ところだ)」「〜ている最中だ」「〜中」などをつけると進行態になる動詞です。

たとえば、「読む」「書く」「笑う」「考える」などは継続動詞です。「読んでいるところだ」「書いている最中だ」「考え中」などということができます。もちろん、「作業する」「食事する」も「作業中」「食事中」ということができ、継続動詞だと思います。

いっぽう、瞬間動詞は「瞬間的に終ってしまう動作・作用」を表すもので、「〜ている」をつけるとその動作・作用が終ってその結果が残存していることを表す動詞です。

たとえば「死ぬ」「結婚する」「卒業する」などは瞬間動詞ですが、「死んでいる」というと「もう死んでしまった」という意味になり、「死に中」「結婚中」「卒業中」とは言えません。

故障する」は微妙なところで、「故障している」と言うとき、「もう故障してしまった」という意味になるとすれば、瞬間動詞です。ちょうど、「壊れる」という動詞を使って「置物が壊れている」と言うとき、破壊された結果がそこにあるという意味になるのと同様に考えることもできます。

しかしまた、「故障する」は、「眠る」と同じように、やがては終わる動作・作用とみなすこともできます。もしそうだとすれば、継続動詞です。故障しているテレビは、何かの拍子にまた映るようになるかもしれません。「×置物が故障している」といえないのは、復帰する見込みがないからであり、そこに「壊れる」と「故障する」との違いがあるかもしれません。(「壊れる」は「故障する」を含み、より広い意味領域をもつのでしょう。)

「『故障する』は瞬間動詞だから、『故障中』はまちがい」というのではなく、「『故障中』といえるから、『故障する』は瞬間動詞だけでなく継続動詞の性格ももつ」と考えてはどうでしょうか。

やや話がそれますが、福島方言では「壊れる」を意味することばのうち、「ぼっこれる」は修復可能、「ぼじょこれる」は修復不可能なのだそうです。つまり「ぼっこれ中」とは言えても「ぼじょこれ中」は無理……かどうかは、福島方言話者ではないので、たしかなことは申せませんが。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 02日 土曜日 21:46:05)

「故障中」と同じように、へんだと言われそうな例として「落選中(の元候補者)」はどうでしょう。「落選」は瞬間的に決まるので、「落選する」は瞬間動詞ではないかとも思われます。しかし、「落選中」ということばはたしかにあるのです。


畠中敏彦 さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 03日 日曜日 17:37:14)

前回↑と多少重複しますが、「・・・中」は、

1.あることが進行している状態 Ex.食事中、勉強中
2.ある事実が継続している状態 Ex.故障中、落選中

に大別されるようですね。
くり返しになりますが、1.はともかく、2.については感覚的に抵抗を感じます。
では、2.をどう表現するのか妥当なことばがみつかりませんが。

いずれにしても、「故障中」のはり紙を見ますと人為的にそのモノを故障させてしまった、という印象をもつのは僕だけでしょうか。


森川知史 さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 03日 日曜日 21:43:35)

故障中が間違っている、とする説の論拠によく取り上げられるのが、故郷前、故障後という言い方があるか、という説明です。睡眠前、睡眠中、睡眠後(食事、就学、作業、勉強…)は自然だが故障では不自然だというのです。自販機などには、故障と書いた張り紙で充分という訳です。


森川知史 さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 03日 日曜日 21:45:20)

すみません。故障前と書くべきところを故郷前としてしまいました。訂正お願いします。


畠中敏彦 さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 04日 月曜日 8:46:21)

「修理中」、「調整中」の表示を見たことがありますが、これならすなおに受け入れられますが、、、。


天野 修治 さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 04日 月曜日 9:43:37)

私は一年に一度しか日本に帰らないので、仕事上(バルセロナで日本語教育)、店の看板や貼り紙につい目が行ってしまうのですが、前回帰日した際、シャッターを下ろした店に「休日中」という貼り紙を見つけて、思わず釘付けになって考え込んでしまいました。
これは、ありでしょうか?
「故障中」の話題とずれてしまいましたが。


UEJ さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 04日 月曜日 12:31:29)

私自身は「故障中」に特に違和感を感じません。
妻に聞いてみたところ、面白いことを言っていました。
 「故障中」というと修理しようとしている意志を感じる。
 しかし単に「故障」と書いてあると、そのままほっておくつもりなのかと思ってしまう。
これは私も同感なのですが、皆さんはいかがですか?
「故障中」という張り紙をする人も、「すぐ直すからちょっと待って欲しい」という思いを込めたくて
無意識に故障「中」と書いているような気がします。


道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 04日 月曜日 16:35:26)

私は「故障中」に違和感なしです。

「中」は人間の動作の継続にのみつくのですか?知らなかった。「開催中」は?主語が人間ですか。そうか。

「故障」が瞬間動詞だとして、壊れた瞬間のみを故障と呼ぶのなら
、実際にこの「故障中」の状態をこれ以外の言葉ではなんと呼べば良いのでしょうか?「故障状態継続中」?「修理待機中」?それとも「故障」のみ?ちょっと寂しい感じ。ケアされていないと言うか、見捨てられたと言うか。「故障」とわかっているなら、はよ、修理せい!!と言いたくなるのが客の立場。「故障中」は、UEJさんの奥さんもおっしゃるように、「修理する意思は、ある」事を示しているような気がしますが。

「故障中」と同じような例では「発売中」がありますが、たしかに「発売」は瞬間に近いから、初日はいいけど、そのあとは「販売中」にせよ、というのでしょうが、商業的には「販売中」では「引き」がないですよねえ。

森川さん、「故障前」「故障後」ということばは、直ったあとから考えればあるのではないですか?例えば
「故障前は、調子が良かったのに、故障後は、どうもトラブルが続く」のように。
元の状態への復帰を前提とすれば「故障中」「落選中」もOKでは?

天野さん、「休日中」はなんかへんですね。でも「休暇中」ならOKでは?「休業中」だと別の意味になりますね。
そうか、「営業中」はOKでも「閉店中」はなんかへんですね。「開店中」もおかしいかな。でも「今、店内改装で”閉店中”なんですよ。」はOKかも。
「中」の使い方というよりは、「故障」という言葉の持つ意味をどう捉えるか、が問題のようですね。
わかったようなわからないような。


森川知史 さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 04日 月曜日 22:36:29)

発言者のさちさんは、「故障中って、間違っていると聞いたのですが…」と書き始められたのでしたね。「間違っている」という表現は、この場合、適当ではないように思います。違和感を感じる人がどれだけいるか、ということでしょう。そして、どうやら、違和感派は少数なのではないでしょうか?
私はだから「故障中が間違っている、とする説の論拠によく取り上げられるのが、…」と注意深く書いたつもりなのです。
「ならば、お前はどうなんだ?」と詰問されそうですね。私は「違和感あり」の方かな?「中」に「修理しようとしている意志を感じる」との発言も尤もだと思いますが、私なら「故障。修理中ですのでお待ち下さい」とでも書きましょうか。


畠中敏彦 さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 05日 火曜日 8:32:14)

ほとんどの方が「故障中」に違和感をもっておられる思っておりましたが、皆様の発言を拝見しますと、そうでもないのは意外でした。

ただ、UEJさんの奥様や森川さんが、「中」に意志を感じるとされるのは、共通項があるようですね。


UEJ さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 05日 火曜日 10:36:00)

「故障中」が修理の意志を感じさせるのは、いつか「故障後」が来ることを感じさせるからなのでしょうか。


業界用語ですが、コンピュータなどの機器の信頼性を測る指標として
MTBF(Mean Time Between Failure)という用語があります。
日本語には「平均故障間隔」と訳されていますが、
ある機器が前回故障して修理された後、次に故障するまでの平均時間を指しますので、
この場合の「故障(failure)」は故障した瞬間から修理されるまでの「期間」を表しています。
専門用語かつ訳語なので、普段使われている単語とはニュアンスが違うと思いますが、
幅をもった「故障」の一つの例です。

# 但し、機器が故障してから修復するまでの時間は「平均故障時間」とはいわず
# 「MTTR(Mean Time to Repair)」、訳語では「平均回復時間」「平均修復時間」などといいます。


「故障中」に違和感を感じられる方は「故障時間」「故障期間」などにも違和感を感じられるのでしょうか?


oyanagi さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 06日 水曜日 2:57:24)

日本語教師向けの参考書などでは、「〜中」について、動作動詞について進行を表すのが一般的としながらも、瞬間動詞に「〜中」が付くものの例として、『故障中』『閉鎖中』『妊娠中』などが例外として挙げられていることが多いと思います。
(その書き方からすると間違いではないという扱いなのでしょう)

UEJさんが

>いつか「故障後」が来ることを感じさせるから

と書かれていますが、基本的にはそのように<一時的な状態>と認められる場合には瞬間動詞でも、それが表す事態が成立したあとの状態が<継続中>という意識で使えるんじゃないでしょうか。

ちなみに、私は「故障時間」「故障期間」という業界用語もそう違和感を感じません。強いて言えば、「故障時間」は故障した時刻という解釈のほうが優勢に感じますが。
きっと、故障という言葉が表す事態を単に成立した時点だけでなく、EUJさんがご指摘のように「故障後」の「修理されるまで」のことも含めてイメージできるからだと思います。

「来日中」「来客中」「停車中(の〜)」なんかも「故障中」と同じ原理だと思います。あと、私が採集したユニークなものでは、
『本日発令中だった光化学スモッグは解除されました』なんてのがありました。(区が設置した緊急情報放送用のスピーカーから流れてきました)



畠中敏彦 さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 06日 水曜日 8:31:55)

UEJさんの「故障時間」「故障期間」↑については、違和感は感じません。

なぜなら、「・・中」と違い、意志が伴わない(進行中でない)事実の表象だからです。


道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 06日 水曜日 10:19:04)

昨日、近くの書店で、「売り切れ中」という文字を見つけました。
やはり「中」に「その状態を早く解消したい」という「意思」を感じました。「売り切れ」だけだと、「お手上げ」で対応をしていないような感じも、なくはないですね。


道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 06日 水曜日 18:19:57)

「〜中(ちゅう)」の関連で、質問なのですが・・・、
なぜ「午前中とは言っても、午後中(ごごちゅう)とは言わない」のでしょうか?


UEJ さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 07日 木曜日 5:04:38)

> なぜなら、「・・中」と違い、意志が伴わない(進行中でない)事実の表象だからです。

なるほど、「故障」が幅を持った時間を表すかどうかよりは「進行中」かどうかの問題なのですね。
出直してきます。


> なぜ「午前中とは言っても、午後中(ごごちゅう)とは言わない」のでしょうか?

期限を表すのであれば「午後中」というよりは「今日中」と言うからかなぁ、
などと考えながらWebを検索してみると…、なんと「午後中」がありました。

http://wwwsoc.nii.ac.jp/saaaj/contents07_15.html
| 午後中(13:00 〜17:00 本学会員・非会員の方も参加できます)

http://www.hoops.ne.jp/~tennispia-jouez/sub7.htm
| 午前中 1500円     3000円
| 午後中 3000円     4000円
| 1日中 3500円     5000円
|
| 午前中 営業開始〜12:00まで
| 午後中 12:00〜17:00まで

http://www.gpd.co.jp/otodokesaki_sisutemu_dogai.html
| 配達時間につきましては、細かなお時間のご指定は出来ませんが、
| 「午前中」「午後中」「夕方以降」のいずれかの時間帯でのご指定は可能です。


但し1番上のページには「午後」と書いてある箇所もあるので打ち間違えの可能性あり。
これらのページによると「午後中」は夜の12時までというわけではなく、夕方5時くらいまでのようです。

広辞苑にも「午後」は
| 正午から夜の12時までの称。また、正午から日の暮れるまで。

と書いてあるからまぁこれは良いのかな。

でも私は「午後中」は使わないですね。


道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 07日 木曜日 7:40:33)

UEJさんありがとうございます。「午後中」、あったんですね。けどこれは「午前中」という文字に機械的に対応させただけで、生きた言葉ではないような感じがします。

大体、料金表示に「午前・午後」というのは見たことありますが、「午前中」を使うのも見たことがありません。文章だと「午前中は1500円、午後は3000円」とかは、あると思いますが。

「午後」には「午前・午後」と対応させるものと、「起きてから正午までの午前中」と「お昼過ぎ、昼下がりから、日暮れまでの午後」というのがあると思います。

「午前中」は「正午=12:00」というどの季節でも変わらないきっちりとした「締切り=ゴール」があるのに対して、「午前・午後」対応でない二つ目の意味の「午後」は、日暮れ時間が季節やその日の天気によって変わる(=日没時間)から、「締切り=ゴール」が一定していない。だから「午後中」という表現があまり使われないのではないか?と今、考えました。
どうでしょうか?


天野修治 さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 07日 木曜日 7:50:43)

「午後中」の問題は私も考えたことがありますが、未だに解決を見ていないので皆さんのコメントが楽しみです。
UEJ さんご紹介のように「午後」には二通りの意味があり、そのことが「午後中」の表現を使いにくくしている要因の一つではないか、と私は推測しています。
「午前(am)−午後(pm)」「午前中ー午後(正午から日の暮れるまで)」の対応です。
他にも幾つかの要素が絡んでいるのでしょうが。


森川知史 さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 07日 木曜日 13:43:56)

「午前中」という表現は、「午前中なら空いてますが、午後はだめです」のように使われますよね。「朝の間」とか「正午まで」というような意味合いで使われるので、午前「中」なのではないでしょうか?「午後になるまでの間」という響きが「中」に含まれているように思います。道浦さんのご指摘と同じことですかね?


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 13日 水曜日 21:35:15)

佐竹秀雄『サタケさんの日本語教室』(角川文庫、2000.03.25初版)p.144「故障中」に言及があります。

〔「会議中、工事中、準備中、休憩中」など〕「〜中」というのは、人間が主体となって「〜としている」ときに使える表現なのである。だから、「故障中」の張り紙の場合は、機会がまるで人間のように意志をもって「故障をしている」みたいで、不自然となる。単に「故障」とするほうが理屈に合っている。
畠中さんのお説と重なる部分がありますね。しかし、私は上に申しましたように、人間が主体か否かという以外の観点も導入するのがよいと思っています。


境田稔信 さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 14日 木曜日 2:53:05)

たまたま『月刊ことば』1977年11月創刊号を見たら、「ことばのパトロール」という投稿欄に「故障中」の「中」に疑問を呈するものがありました。
これより前に疑問視されたことがあったかどうか、ちょっと気になりました。


道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 14日 木曜日 8:05:31)

「中(チュウ)」に関して、疑問に思っていることに「中外(チューガイ)」があります。今なら「内外(ないがい)」と言うであろうところを、昔(戦前でしょうか?)は「中外(チューガイ)」と言っていたようです。今はあまり耳にしませんね。会社の名前に「中外製薬」というのはありますが。「内外衣料」という会社も確かありました。話がそれましたが、要は、昔は「内(ない)」のことを普通に「中(チュー)」と言っていたのではないか、ということです。
「中(チュー)」=「内(うち)」。
そうすると、「午前中=午前のうちに=午後にならないうちに」となります。
「午前」の対立概念に「午後」があります。しかし仮に「午後中」という言葉を考えた場合に、同じ手順で考えますと、
「午後中=午後のうちに=Xにならないうちに」
となって、この「X」にあたるのは、意味上ではまあ、「夕方」か「夜」だと思いますが、「夕方」も「夜」も「午後」の対立概念ではない。どちらかと言えば「午後」に包括される時間の概念であるところから、「午後中」は成立しないのではないか?という考えは、いかがでしょうか?


POP3 さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 14日 木曜日 16:18:29)

道浦さんの「午後中」についての上(↑)の説は説得力を感じますね.
ただ,私は「午後のうちに」と言う言い方なら,「夜にならないうちに」と
言う意味で使いそうな気がします.

話が少しそれますが,昔お世話になった方に名前を「中外」と仰る方がおいででした.
「中外」が教育勅語に使われていた事が命名の由来となったそうです.


畠中敏彦 さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 14日 木曜日 20:38:25)

Yeemarさん、境田さん(↑)がお調べ下さったとおり「故障中」に疑問を呈する方がいらっしゃったんですね。
そのことばの正当性、妥当性はともかく、私と同様の考え方を持っている方がおられ、なにかホッとしました。

ただ、道浦さんが言われる「午前中」については何ら違和感を持ちませんので、「・・中」を画一的に人間主体の行動と決めつけるのは、問題があるかもしれませんね。



天野修治 さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 17日 日曜日 11:51:10)

土曜の夜(スペインは日本より8時間遅い)なので、何とはなく夜更かしをしていて、夜中に「午後中」の問題を考えています。皆さんの考察はさすがに説得力がありますね。
私はちょっと発想を変えて、なぜ午後中と言わないのか、ではなく、「なぜ午前中と言うのか」と考えてみました。

『日本国語辞典』の「午前」「午後」に引かれている文例の中で「am」「pm」の意味で用いられているのは、1885年の『東京日日新聞』に「従来の計時法は、各国とも一昼夜を午前午後各十二時宛に分ち計へたりしを」と見える箇所が最初で、その前はすべて、「午前」が「昼前」あるいは「夜が明けてから正午までの間」、「午後」が「正午から日没までの時間」の意味で用いられているようです。そこで、「午前」「午後」が「am」「pm」として用いられたのは比較的新しい用法で、もともと「午前」は「ひるまえ」、「午後」は「ひるすぎ」の感覚で使われていたのではないか、と考えてみました。

『日葡辞書』(1603−04年)に「Gogo(ゴゴ)<訳>正午過ぎ。文章語」とあるところを見ても、「午後」は正午を少し過ぎた「昼下がり」「昼過ぎ」を指していたようです。
また「午前」については、『広益熟字典』(1874年)には「午前 ゴゼン ヒルマヘ」とあり、福沢諭吉の『文明論之概略』(1875年)に見える「又眠りを貪りて午前に起き」の「午前」の用例は「昼前」すなわち「昼近くまで」の意味にとれます。

そうすると、「am」の意味が登場する以前は、「午前」には「昼前」と「夜が明けてから正午までの間」の二つの意味があって、それらを表現で区別しようとしたことは想像に難くないです。こうして、「午前(ひるまえ)」は「昼前」となり、長い時間を示すほうの「夜が明けてから正午までの間」の意味に「午前<中>」と、<中>が使われるようになったのではないか、というのが私の推論です。
http://shibuya.cool.ne.jp/brn/


道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2002年 03月 12日 火曜日 20:25:07)

「恥をかかない日本語の常識」(日本経済新聞社編・1998年1月23日)の31ページに「故障中」が取り上げられていました。それによると、普通「〜中」は人間が主体で「ちょうど〜している最中」と言う場合に使われるので、「故障」は機械が主体なので、本来「故障中」は適切な言い方ではない。「自動車が故障中」「テレビが故障中」などもなるべき避けたい表現です、と結んでいます。
特に目新しくはありませんが、書物で「”故障中”は好ましくない」としている例の一つとして。


狩野宏樹 さんからのコメント
( Date: 2002年 03月 14日 木曜日 19:30:07)

人間が主体でない「〜中」を避けるべきとするならば、「発生中」の
「本来の適切な言い方」はどうだったのか教えていただきたいですね。
逆に、人間が主体であればいいのなら「故障中で欠場の選手」はOK?
(個人的には人間主体にしかなりえない「負傷中」の方が違和感強し)


道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2002年 03月 15日 金曜日 07:27:29)

私は「故障中」は人間が主体でなくても使えると思いますが、違和感を持つ方を代表するような記述の具体例として、新聞社が出している言葉のマニュアル本のようなものをご紹介しました。
「発生中」「負傷中」(これはどうかと思いますが)などは、人間がその事物をどう見ているかという”見方”という視点をあるのでは?「自動販売機が故障中」などは「擬人法」的なのかも知れません。「気象警報が発令中」というのもありますから、「〜中」の主体が必ずしも直接「人間」である必要はないでしょうね。でもこれも本当は「(人間が)気象警報を発令中」という解釈もありかな?
「故障中で欠場の選手」は、逆に選手が「自動販売機」のようですね。でも使っている人もいるかも。実際にはわざわざ「中」をつけなくても、「中」を取って「故障で欠場の選手」の方がすわりがいいのでは?


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2002年 11月 24日 日曜日 21:09:13)

雑誌「言語生活」に載った「故障中」についての目撃情報を引用しておきます。1952年と1981年の例です。

いろいろあると言えば、駅や学校などの時計の止まったのにはる張り紙にも、「故障」「不良」「修理中」「使用停止」「調整中」「規正中」など。中には「故障中」なんてのもある。
(「言語生活」 1952.05掲載=佐竹秀雄編『言語生活の目』筑摩書房 1989.07.20 p.12)

赤電話などに「故障中{傍点}」というはり紙がしてあるのを時々見かける。――単に「故障」とある方が自然な感じだと思うのだが。
(「言語生活」1981.06掲載=同上書 p.484)


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2002年 11月 24日 日曜日 21:18:08)

ちなみに、この「故障中」、『言語生活の目』の索引にはありません。こちらでも岡島さんが言及されていますが、この本は600ページ近くあるのに、索引が恐るべく簡略なのです。索引になくこちらの掲示板の話題に関連がありそうなものについて、随時報告したいと存じます。


posted by 岡島昭浩 at 14:09| Comment(0) | TrackBack(0) | ■初代「ことば会議室」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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