1997年05月16日

変節の人(情報言語学研究室(萩原 義雄))

 世の中ただいま「変節」ということばが席巻している。このことば、「話の特集」元編集長の矢崎泰久さんが東京都知事告発本である『変節の人』(飛鳥新社)から今月出版したことに始まる。

さてこの「変節」なることばの意義を電子辞書に従って、まず意味を確認しておこう。

広辞苑第四版
へん‐せつ【変節】節義を変えること。また、従来の主張をかえること。「成行きによって―する」□―‐かん【変節漢】
へんせつ‐かん【変節漢】節義を変じた男。変節者。

大辞林第二版
へん-せつ [0] 【変節】 (名)スル
守ってきた節義を変えること。それまでの自分の信念・主義・主張などを変えること。
へんせつ-かん [4][3] 【変節漢】変節した男を軽蔑していう語。

五月二三日号週刊朝日で、青島都知事が野坂昭如氏に浴びせた差別発言
再現スクープ。
「盟友」の苦言に「テメエらは!」と暴言90分
として、この矢崎さんの本をもとに、ことの一部始終を野坂さんが明かした内容になっている。

ところで、『変節の人』の表紙をみると、こう書いてある。
  かつての同志が告発する青島幸夫の正体

  私たちはこの本を推薦します。

  井上ひさし
  永六輔
  大橋巨泉

  170万票の信頼を裏切り、
  官僚のイエスマンに成り下がった
  青島とは、そもそも
  どんな男なのか?
  青島の行状を白日のもとに晒し
  速やかな辞任を求める糾弾の書

 なぜか、同志だった中山千夏は表紙に名をあげていないが、本のなかでは登場しているようだ。

 こんな具合にである。なにかこのことばが一九九七年の世相を席巻しそうな気配を感じさせてならないのだが……。
人は地位だけでこうも「変節」する輩がまだこの日本という国の世の中に満ちあふれているのかと思うのは私だけだろうか?

ところで、「変節」ってあまり使わないことばではないかと思う。辞書には「変節漢」なる表現も記載されている。学研国語辞典にその用例がみえ、「私は激憤して伊藤の変節を腹の底から憎んだ」<嘉村・途上>とある。いずれにしても複数の方々から「変節」のレッテルを貼られることはいままでなかったかと思うのだが……。


posted by 岡島昭浩 at 22:04| Comment(0) | TrackBack(0) | ■初代「ことば会議室」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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