1997年08月05日

「日本」は「ニホン」か「ニッポン」か?(天野正博)

「日本」という文字は「ニホン」というのか、それとも「ニッポン」というのか、という問題です。
僕は大学でこの問題について考えていますが、ことばのゆれ、類義語、方言(地域方言、社会方言)など、様々な面が考えらます。
勿論、答えは出ないと思いますが、皆さんのご意見をお聞きしたいと思います。
是非とも、お願い致します。


稲川順一inagawa@pu-kumamoto.ac.jp さんからのコメント
( Date: 1997年 10月 09日 木曜日 17:26:06)

 中央公論社「日本語の世界」7巻「日本語の音韻」(小松英雄著)
第7章促音の働き P.200から217にわたってその事について
詳しい論考があります。
 参考になると思います。


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 1997年 10月 09日 木曜日 18:49:03)

 あ、稲川さん、どうも有難うございます。

 もう一つ参考文献を挙げるのなら、柳田征司『基礎語彙の研究』武蔵野書院です。
 ものすごく詳しい論考です。

 ただ、社会的云々、ということだと話は大変で、明治以降の国号の読み方の問題が出て来ると思います。


恭子 さんからのコメント
( Date: 1997年 10月 12日 日曜日 1:23:41)

今日、サッカーを観ていて思ったのですが、日本代表を応援する時、「ニッポン!(チャチャチャ)」ってやってました。
国際的には「nippon」って言う響きで通用してるとか…
関係ないかもしれませんが。


情報言語学研究室(萩原) さんからのコメント
( Date: 1997年 10月 12日 日曜日 18:18:43)

私もこのことについて、ちょっとメモを残しています。
よかったらのぞいてみて下さい。

言葉の泉>ことばの溜め池[9/10付文]


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 1997年 10月 13日 月曜日 17:57:26)

 柳田氏の著書は『基本語詞の研究』でした。

 恭子さんの「国際的」との関連で「対外的」ということで、新村出に論があるはず。全集に索引があります。

 それから稲川さん、ここは別に卒論相談室などではなく、どなたが書いてもよい場所です。またお越しください。

 萩原さんのURL、「http://」がダブってましたので削りました。


天野正博 b08k173@isc.senshu-u.ac.jp さんからのコメント
( Date: 1997年 11月 05日 水曜日 13:25:19)

皆様の貴重なご意見ありがとうございます。
稲川さん、岡島さんの挙げて下さった文献にあたってみようと思います。
恭子さんの言うように、NIPPONには国際的な響きがあるかもしれません。
JAPANとも音が似ているといわれていることもあるようです。
ただ、NIPPONは英語の「NIP ON」(愛咬する)という言葉と同じ音であるため、やめた方が良いという人もいます。


情報言語学研究室(萩原 義雄) さんからのコメント
( Date: 1997年 11月 07日 金曜日 18:00:32)

ここに示したのは島村抱月 のローマ字文です。
Bungaku ni oyobosu Romaji no rieki Soko de Nippon no moji ga Romaji ni kawatta to sureba donna rieki wo wareware bungaku no ho de ukeru kato iu to imamade kotoba ga mimi ni ateru homen wo orosokani shite ita shi(詩) ya uta no homen ga mattaku atarashii shigeki wo ukeru daro omou. Nipponjin no imamade no mimi wa kiwamete nibukatta; sore ga Romaji ni kakiaratamete rarete kuru to hajimete komakai onritsu(音律) no aru kotoni ki ga tsuite kuru. Kono kekka wa nakanaka okiimono da to omou.

ここでは、「ニッポン」「ニッポンジン」と島村は使っています。
明治の國号表記「ローマ字」表記からみた場合。


情報言語学研究室(萩原 義雄) さんからのコメント
( Date: 1997年 11月 08日 土曜日 14:36:34)

この記事を紹介しておきます。
『にっぽん』は薩摩官僚のお好み?
“日銀呼称ルーツを探る”
日本銀行は「にっぽん銀行」か「にほん銀行」か、呼称が決められたいきさつは?―などを探った調査資料を、このほど日銀がまとめた。「日本」をどう読むか、これまでも議論が絶えないが、この資料は国号呼称論争の一断面を示すものとして関心を集めている。
 「日本」を「にっぽん」と読むか「にほん」と読むかについては「…どちらを誤りとも断ずることはできないと思う。…これを人為的に固定しようとすることは必ずしも当を得た態度と称し難い」(二十二年当時の片山哲首相の国会の答弁)という説に代表されるように、一般的にはどちらの発音でもよいとされているのが現状。
 ただ日銀券の場合は、明治十八年以降ほぼ一貫して「NIPPON GINKO」とローマ字で印刷されおり、正式の決まりはないが、日銀は「にっぽん」を採用、ことし秋に発行される一万年、五千年、千円の新しいお札もこれが引き継がれる。
 日銀の調査資料によると「にっぽん」と発音されるようになったのは、武家社会で力強いP音が好まれた鎌倉時代。「にほん」と読まれるようになったのは江戸時代初期で、その後明治時代に至るまで両方の読み方が併存していた。
 それが「にっぽん」の採用となったことについて資料は、明治十五年の日銀設立時、明治十八年の「NIPPON GINKO」登場時の通貨当局の要人に、松方正義(蔵相)吉原重俊(日銀総裁)ら武勇を好む気風が強い薩摩(鹿児島県)の出身者が圧倒的に多く、彼らが好んで使った「にっぽん」の発音が反映された結果だろう、と推定している。[日本経済新聞・1984年2月21日]


天野正博b08k173@isc.senshu-u.ac.jp さんからのコメント
( Date: 1997年 11月 14日 金曜日 15:01:49)

 日本銀行についての話題がありますが、これについて、井上ひさし紙が面白い
エピソードを紹介しています。
 紙幣に「NIPPON GINKO」と印刷されているので、「ニッポン銀行」
かということで、当の日本銀行に電話をかけてみると、交換手が「はい、にほん銀
行ですが」と応対したというのである。
 このことは、たしか『ニホン語日記』(文春文庫)に載せられていたと思います
が、このほかにも、井上ひさし氏は「ニホン」と「ニッポン」ということについて
書かれています。『井上ひさしの日本語相談』(朝日文庫?)にもあります。是非
目を通して見てください。


森川知史 さんからのコメント
( Date: 1997年 11月 16日 日曜日 21:37:17)

言わずもがなのことですが。
『日葡辞書』にはNifon→Nipponとあって、Nifonの項目にはNifongaraxi,Nifonguiの二語が取り上げられており、Nipponの項目にはまず、Nipponの説明としてFinomoto,Nifon,Yasoxima,Yomoguigaximaとあって、
Nippongui,Nippon ichiの二語が載せられています。これからみても、この時代に既に「ニホン」「ニッポン」の両方が使われていたことが分かります。ただ、項目の立て方をみるかぎり、「ニッポン」の方がやや優位
(?)かな、とも思えますが。「ジャッパン」や「ジパング」を考えてみると、中国で日(ジッ)本(パン)と発音されたことが元ではないかと想像されますが、だとすれば、「ニッポン」の方がやはり優勢なのでしょうか?
国名にしろ、国歌にしろ(そして国旗までもが)曖昧な国、日本、ということでしょうか?


天野正博b08k173@isc.senshu-u.ac.jp さんからのコメント
( Date: 1997年 12月 15日 月曜日 12:42:42)

『講座 日本語の語彙・別巻』に、「ニホン」という語に関する過去の論文についての記録が出ていました。
また、地名について書かれたものにも、関連するものがあります。『日本の国号』という書籍も2冊出ているようです。


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 1998年 9月 28日 月曜日 18:20:37)

 同じ話題です。

筑波大学日本語学研究室掲示板


言魔 さんからのコメント
( Date: 1998年 9月 29日 火曜日 6:42:22)

ちょっと前に仲間のゐんばさんのところで、やってました。
38対27で「にほん」が勝ち...勝ち負けではありませんが、
一応ある程度のサンプリングによる調査ではないかと思います。
「日本の標準」をどう読むか


天野正博 さんからのコメント
( Date: 1999年 3月 16日 火曜日 15:20:41)

最近、君が代・日の丸論争とやらが騒がれております。
こういうときには、「日本」の本当の読み方はなんなんだというような議論も
ふつふつと出てくるような気がします。
オリンピックが近くなるとこの話題が盛り上がるのと同じ現象だとは思いますが。


言魔 さんからのコメント
( Date: 1999年 3月 22日 月曜日 17:06:36)

君が代・日の丸論争で思い出しましたが...
「君が代」そのものは古今集から来ているそうですが、
メロディは明治2年に英国人「フェントン」が作曲した
ものだそうですね。(出典:「天声人語」1947.1.4)
なんでも「古来より」という表現をしたがる方々が
おられますが、結構新しいものらしいです。

言葉のよろずや


石ねこ さんからのコメント
( Date: 1999年 3月 22日 月曜日 22:03:11)

「君が代」のメロディーについてですが、確か二種類あり、ひとつはフェントン作曲、もうひとつは宮内省雅楽寮(だったと思う。名義は同寮の一員林広守氏名義)があり、後者が現在の「君が代」である、という話を聞いた事があります。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 1999年 3月 23日 火曜日 2:14:00)

フェントンの君が代については、MIDIで聴けるサイトがあります。
また、文部省唱歌の君が代というのも聴けます。

なお君が代については本会議室の「ぽち」が関連話題といえば
いえますでしょうか。

似而非随筆11


森川知史 さんからのコメント
( Date: 1999年 3月 23日 火曜日 11:36:44)

少し話題がずれてしまうかもしれませんが、私は例えばオリンピック等で、寄せ書きされた日の丸を持って応援する日本人の姿を外国の人たちはどう思っているのだろう?と考えるのです。国旗に文字を書くというのは、国旗を汚すことで、侮辱罪にあたるのではありませんか?あの寄せ書きというのは戦前・戦中も行われていたことだけれど、あんなことって外国ではまずしませんよね。
国旗が大切と言いながら、それを汚して平気でいる日本人って、奇妙だな、と思うのですが。


おかちょん さんからのコメント
( Date: 1999年 3月 23日 火曜日 12:52:28)

 国有財産の上に、文部教官が君が代について論じるのは困難なので……。

 おかちょんは、広島のニュースを見てびっくり。どうびっくりしたかというと、教育委員会の人が「きみ」は「天皇」だということで「君が代」を歌うべしと言っていたこと。憲法の第1章に「天皇」があるから、いいのだと。
「君主」じゃないと思うのですが。おかちょんとしては、君が代を国家にするにあたっては歌詞の解釈を「みんなで長生きしようね」という風にしてやるほうがよかろう、と思っていたのです、無理してでも。でも多分歌詞の解釈には触れずに法制化するつもりだろうな、と思っていました。だから教育委員会の人が「君」は「天皇」と断言していいたのでびっくりしたのです。

Yeemarさんご教示の「似非随筆」の人も、教育委員会の人とほぼ同様の考えのようですね。


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 1999年 3月 23日 火曜日 12:55:20)

 「国語」は法制化されることはないでしょうね。
「国技」は、相撲か柔道か、はたまた野球か(野球規則かなんかに書いてあるとか聞きました)。

「国鳥」「国蝶」などなどは、どこで決めたものでしょうか。


後藤斉 さんからのコメント
( Date: 1999年 3月 23日 火曜日 16:40:57)

>「国語」は法制化されることはないでしょうね。

こういうものならあります。

(裁判所の用語)
第74条
裁判所では、日本語を用いる。

裁判所法


おかちょん さんからのコメント
( Date: 1999年 6月 12日 土曜日 13:58:45)

 「政府公式見解」だったのですね。象徴天皇がずっと続くように? 「君が代」擁護はもうやめよう。

 日の丸やめるなら国号「日本」も換えないとね。でも「日」は象徴天皇の象徴なんてことになるようなら困るけど。白地が国家の象徴?

 「日本国」やめて「和国」にしたら、「……共和国」に取り込まれたみたいな名前ですね。


さんからのコメント
( Date: 1999年 11月 19日 金曜日 13:18:52)

他のことを調べていて、
こんなページにめぐり合いました。

音訳


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 31日 金曜日 22:07:22)

『国語学大辞典』(東京堂)の年表では、昭和45・1970年7月の項に

▽閣議、国名公式呼称を当面ニッポンとすることを決定。
とあります。そうだったのか。どういう経緯だったのでしょう。やがてうやむやになったものと思いますが。

萩原さんが上記「ことばの溜め池[9/10付文]」でご紹介の、「朝日新聞」夕刊「素粒子」で取り上げられている吉田孝『日本の誕生』(岩波新書)では、<いざ子ども 早く日本へ 大伴の 御津の浜松 待ち恋ひぬらむ>を「にっぽん」と読んだということですが、これについては小池清治氏が『日本語は悪魔の言語か?』(角川oneテーマ21)p.37以下で反論しています(やはり「やまと」と読むべしと)。第1に「早くニッポンへ」では字余りである。第2に、この和歌は遣唐使仲間への呼びかけであり対日本人向けの和歌である。

「君が代」の法制化については99.08.12に「「君が代」寸感」を書きました。


NISHIO さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 06日 木曜日 15:15:15)

はじめまして。
道浦俊彦さんの『平成ことば事情』で「ことば会議室」の存在を数ヶ月前に知り、以来興味深く拝見しています。国号の話を見つけたので、初めて書き込みます。

講談社『週刊日録20世紀 1970』にも
 7月14日(火) 閣議、日本は「ニッポン」に統一と決定。
とあります。

これを初めて知ったとき(4年前)、気になっていろいろ調べてみました。

----------------------------------------------------------------
朝日新聞(東京本社版)、昭和45年(1970年) 7月14日 夕刊 第2社会面

ツルの一声で「ニッポン」
総理がニッポン・ニホン論争に軍配

 わが国の呼び方は「ニッポン」か「ニホン」か――をめぐって一四日の閣議はにぎやかな論争を展開した。郵政省がその日配った万国博の記念切手に「NIPPON」とあったことがそのきっかけ。閣僚の中にも両論あり、最後に佐藤首相が「自分も意識的にニッポンを使っている。それが公式の定着した表現ではないか」と発言、「ニホン」でも間違いではないが政府としては一応「ニッポン」を使うことになった。
 閣僚の話を総合すると、閣議ではまず中曽根防衛庁長官が「憲法はニッポン国憲法と呼ぶんだったかなあ」と言い出したところ、「いや、ニホン国憲法ではないか」と反論する閣僚もあって、やりとりがはじまった。「お札はNIPPON GINKOだ」「郵便切手にはいつもNIPPONを使っている」などの発言もあり、最後に首相が「万歳ひとつするにも、やはりニッポン国民万歳でなければ……」と締めくくって「ニッポン」論に軍配をあげたもの。
 このわが国の呼称問題は、内閣法制局の話によると、新憲法制定のさいにも国会で論議になったといわれ、当時の金森徳次郎国務相は「どちらとも決っていない。それぞれ慣習的に使い分けている」と答弁した。政府でもこれを検討するため、三十六年七月、総理府に公式制度連絡調査会を設けたが、結論は出ていなかった。
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この程度でも「閣議決定事項」ということになるのでしょうか。法的な効力はどうなのでしょう。

記事にある調査会を設けたのは、その頃に万国郵便連合で切手に国名を入れることに決まったのが一つのきっかけだそうで、約3千人を対象に調査した結果ではニホン支持とニッポン支持が大差なく、結論を出すには至らなかったとか。若い人ほどニホンが多かったそうです。しかしどういう経緯か、切手は「NIPPON」になっていますね。

ちなみに、昭和9年の臨時国語調査会でも審議されて、その時もいちおう「ニッポン」(ただし日本書紀と東京の日本橋だけは「ニホン」)…という案を出したものの、国会で承認されなかったとのことです。

「バンザイ」を引き合いに出すのもナンではありますが、佐藤首相の「ニッポン国民万歳」はちょっと意外でした。
「萬歳」を「バンザイ」としたのは大日本帝国憲法発布式が最初。慶祝の対象は永く「天皇」や「国家」だったはずです。時代が変わっても「ニッポン“国民”万歳」は聞いたことがありません。首相や大半の閣僚も、本音は違うのではないかと思えるのですが…。
参考:バンザイの由来→http://www.meijijingu.or.jp/intro/qa/14.htm




posted by 岡島昭浩 at 14:27| Comment(0) | TrackBack(0) | ■初代「ことば会議室」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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