「少人数(ショウニンズウ)」が以前からずっと気になっています。
最近の辞書には、項目が立てられるようになりましたが、少し前までは項目もなかった筈です。
広辞苑の第四版にはまだ項目がなく、「こにんずう(小人数)」の項に「コニンズとも」と注記さ
れています。確かに、「人数」について言うのだから、「少ない」「人数」という連想がはたらい
て、「少人数」になったのでしょうが私としては不自然な感じがしてどうにも気になります。
特に、「少人数制で指導も行き届き…」などと塾や予備校の案内に書かれると、かなり怪しい教育
をしているのではないか、と思ってしまいます。
ところで、広辞苑の注記にある指摘、「ニンズウ」ではなく「ニンズ」だったということは御存
知でしたか?同辞書の項目「にんず(人数)」には、「スは呉音シュの転または漢音か」と注記が
あり、「にんずう(人数)」の項には「古くはニンジュまたはニンズ」という説明が載っています。
「気になりませんか」に上記をコメントしましたら、岡島さんから「話題が変わったら新しくメッ
セージせよ」との指摘をいただきましたので、新たにポストさせてもらいました。
小矢野哲夫(KOYANO Tetsuo) さんからのコメント
( Date: 1997年 11月 19日 水曜日 9:37:13)
ぼく(48歳)は「こにんずう」と言います。反対は「おおにんずう」です。
でも、どっちの言い方も、ちょっと古いな、と思います。辞書に「〜にんず」とあるようですが、
漢字の文字づらから「にんずう」と読むものと思っていました。耳から入ってきた形を覚えるばあいもありますが、
これは「目から」覚えたのではないかと思います。現在の学生なら「しょうにんずう」と発音するのではないでしょうか。
塾や予備校で「小人数(こにんずう)」と書くと、寺子屋式みたいな印象(善し悪しはべつにして)をもちます。
小学校の給食で、子どもたちの関心はおかずのメニュー。子どもが通っていた大阪府下・北摂地域の学校では、
「大きいおかず」のことを「だい、おかず」(アクセントは高低、低低高)、「小さいおかず」のことを
「しょう、おかず」(アクセントは高低、低低高)と言っていました。
「にんずう」と「にんず」に似たようなものに、「だいぶん」と「だいぶ」があります。ぼくは、「だいぶ」派です。
昨日、30歳代の女性から、ぼくが頻繁に「だいぶ」と発音しているとの指摘を受けました。気になっていたのでしょうね。
satopy さんからのコメント
( Date: 1997年 11月 19日 水曜日 12:50:50)
「大分」の方の話しになりますが、37歳の私はもっぱら「だいぶ」を使っております。「だいぶん」の方は還暦を期に使ってみてもいいか、と思うくらいのものです。
老年の方が使うのは違和感はないのですが、そうですか、30代の女性からそういうご指摘があったのですか。最近は、若い人も「だいぶん」を使うのかもしれませんね。あるいは方言差か。
森川知史 さんからのコメント
( Date: 1997年 11月 19日 水曜日 22:12:27)
小矢野さん・satopy さんコメントありがとうございます。
「こにんずう」の反対は「おおにんずう」のコメントで思い出したのですが、岡島さんの「目についたことば」
でだったと思うのですが(記憶はあやふやです)、「だい舞台」を「おお舞台」と言うのが気になるという人の
ことを紹介されていましたが、私はその人とは反対に、「だい舞台」という言い方が気になります。
これも、「おお舞台」という言い方の方が「おお時代」なんでしょうか?
「だいぶ」については、私もこれを使っていて、satopy さん同様「だいぶん」というのは年寄りくさい気がし
ます。小矢野さんの奥様は、satopy さんや私の意見をどう思われるのでしょう?
「だい、おかず」「しょう、おかず」で連想したのは、ビールについて「おお瓶」を「だい瓶」という言い方
です。これは、やはり是非とも「おお」を使ってほしいですね。だって「だい瓶」ではトイレを連想してしまっ
て、飲んだり食ったりする場所にはふさわしくないですからね。
あるひとが、「実物大型紙」のことを「じつぶつおおかたがみ」と言っていて、間違いに気づいていないようで、
指摘してあげたい気もしたのですが、言えずにいたのを覚えています。
森川知史 さんからのコメント
( Date: 1997年 11月 25日 火曜日 20:08:03)
今日(11月25日)の朝のBSの「世界のニュース」を見ていたら、NHKの女のアナウンサーが「こんな、
だい人数では、…」と言いました。もはやここまで来たか、という思いです。
「だい向こう受け」を狙ったり、「おお発見」をしたりするようになるのでしょうか?
かるがもまちこ さんからのコメント
( Date: 1997年 11月 25日 火曜日 21:39:58)
みなさん、初めまして。かるがもまちここと小矢野真知子です。
わたしは、二十数年前の学生時代から、ずっと「おお失敗」と言っていました。
仲間うちで、「おお、おお!おお失敗!」と言っていたんです。本当は「だい失敗」だったんですね。文字で書くときは、大失敗ですよね。それを音声に表す場は、改まった場では、普通「大失敗」とは言わずに、ただ単に「失敗」と言って自分の失敗を表現するでしょう。だから「おお失敗」で二十数年失敗もせずにこれたのだと思います。
「だい舞台」に関しては、ゆずれません。長年宝塚歌劇ファンのわたしといたしましては、「宝塚のだい舞台」なんです。
好きなビールに関しても、お店で生をたのむときは、「だい生1。」です。その感覚で、「だい瓶」と言います。
だいぶ、(「だいぶん」ではありません)文字数をとってしまったようですので、今日はこのあたりで失礼致します。
小矢野哲夫 さんからのコメント
( Date: 1997年 11月 25日 火曜日 21:53:34)
森川さん、「だい人数」をキャッチなさった由。「だい発見じゃー」的ですね。でも、考えてみると、文字づらの印象と、聞いた感じでは、うんとインパクトが違うような肝します。
聞いた感じでは「だい人数」のほうが強烈だと思います。
まさか、「「だい向こう受け」を狙ったり、「おお発見」をしたりするようになるのでしょうか?」ってなことには、よもや、よもやなるまいと思います。
しかし、「大向こう」と書いてあって、「おおむこう」と読める人たちが21世紀にどれくらい残っているのか、疑問はあります。
「大発見」について言えば、おやじギャグ的に、「だい発見、Oh! 発見」などは、ぼくなら言いそうですが……。
「大小」の問題はなかなか奥が深いようです。あ、そうそう、ぼくは、しょっちゅう、「大(だい)なり、小(しょう)なり」という言い回しを使います。
耳からの情報がたよりの「大小」問題ですね。
森川知史 さんからのコメント
( Date: 1997年 11月 26日 水曜日 17:11:39)
>小矢野さんの奥様は、satopy さんや私の意見をどう思われるのでしょう?
という私の不用意な文面に健気にも回答くださった奥さんに、まずはお礼申します。
「だい舞台」と「だい瓶」は、次第に勢力を増してきているようですね。
私が「鬼の首」をとった、「だい人数」はいかがでしょうか?
ことほどさように(いやはや、どうも私の言い回しは「おお時代」なんでしょうか?)
ことばは、生き物で、自分の感覚にまでなっていて、「それは間違い!」などと簡単に
は決めつけられないものなのですね。
情報言語学研究室(萩原 義雄) さんからのコメント
( Date: 1997年 12月 06日 土曜日 9:41:56)
「大」「小」の字音読については、わたしも特異な話しぶりが氣になっていました。
以下は「言葉の泉>ことばの溜め池」で昨日掲載したものです。
「小刀」は、「こがたな」と「ショウトウ」と音訓両読みする。
○昼は紙箱と紙と絵筆と鋏〔はさみ〕と小刀と糊〔のり〕を前に日々新しい堤燈を一心に創〔つく〕り、我が堤燈よ!最も珍しく美しかれ! と夜の虫取りにでかけるのであろう。[川端康成『バッタと鈴虫』新潮文庫「掌の小説」三五頁]
は、前者で「こがたな」と読む。「小鳥」「小犬」「小枝」「小使」「小男」「小僧」「小娘」「小柄」「小脇」「小言」「小遣」「小包」「小銭入」「小切」「小山」「小路」「小屋」「小料理屋」「小菊模様」「小高い窓敷居」「小意気」「小腰かがめる」「小首をかしげる」「小ざっぱりした雪隠」などは「こ○○」と読む。(「広小路」は「ひろこうじ」、「小母さま」は「おばさま」と読む。)
○「おい、足を見な、足を。血が出てるじゃないか。剛気な小女郎〔こめろ〕だな、え、お前さん。」[川端康成『夏の靴』一一四頁]
これなどは、「小女郎」と書いて「こめろ」と読ましている。
また、耳慣れない表現としては「こどびん」がある。
○「あの、すみませんが、お宅にお水残っていましたら、これに少し……。」と、隣りの奥さんが小土瓶〔こどびん〕をさげて来た。[川端康成『水』四四四頁]
さらに、「しょう○○」は「小説」「小宅」「小紳士」「小淑女」がある。
「大」も「大雪」「大手」「大声」「大火傷」「大湯」「大型」「大勢」「大方」「大道具部屋」「大袈裟」「大笑い」が「おお○○」と読む。(「大人」は「おとな」と読む)
○宿屋の内湯で一先ず体を清めてから石段を下りて大湯へ行くのが浴客の習慣である。[川端康成『滑り岩』九二頁]
○「大湯が噴き出したのかしら。」[川端康成『門松を焚く』二一七頁]
逆に「たい○○」と読む語には、「大家」「大火」「大木」「大樹」「大輪」「大切」「大変」「大した人気」「大して気にも止めない」などがある。「だい○○」は、「大分」「大胆」「大学」「大仏」「大尽風を吹かせる」などがある。(「大分」は、地名は「おおいた」で、これは「だいぶ」または「だいぶん」と読む)
○「山火事かね。―暴動かね。―東京が大火ね。熱海へ賊が攻め寄せて来たのかね。」[川端康成『門松を焚く』二一六頁]
がある。
この「大小」をあらわすことばの読みは、結構使い分けられていて、「小人数」は、「小土瓶」と同じように「こニンズ」と読む(これが現代人は「こニンズウ」と発音している)。「真っ赤な大嘘〔おおうそ〕」や「大失敗〔おおしくじり〕」などが読み分けに苦慮するようだ。
古くは、天草版『伊曾保物語』母と子の事に「大盜人」を「だいぬすびと」と読む例がある。
いかがでしょう。ご意見をお聞かせ下さい。
→ 言葉の泉>ことばの溜め池
森川知史 さんからのコメント
( Date: 1997年 12月 10日 水曜日 20:30:32)
萩原さんコメントありがとうございました。
「大小」の字音読はご指摘通り難しいと思います。
「おお」訓みのところに掲げておられる「大勢」も「たいせい」とも訓みますし、「大笑い」も「呵々大笑」のよう
に「たいしょう」と訓んだり、「大声」も「大音声」では「だい」訓みですね。
一方、「たい・だい」訓みに掲げておられる例では、「大家」は「おおや」とも訓む訳です。「大樹」だって詩など
では「おおき」の訓みがみられますね。
ところで、ふと思い立って、"goo" で「少人数」「小人数」をキーワードに検索をかけてみました。
結果は「少人数」6357件・「小人数」2761件でした。
「少人数」「小人数」共に教育関係のホームページが多く、その他に「会議室」「宴会場」「旅館」等がみられます。
予想通り、「少人数」の方が多く、「小人数の」約2.3倍でした。やはり、「小人数」は少数派で、次第に「少人数」
に取って代わられようとしている様子がうかがわれます。
しかし、「小人数」を用いているものが3千件近くもあるというのは、少々意外でした。
「だい舞台」と「おお舞台」のように、訓み方に関するものは、共に「大舞台」のように表記が同じで検索できません。