さっそくですが、「お値打ち」という言葉の正確な意味とその語源
を知りたくて投稿させて頂きます。用例として、
・ お値打ち品
・ お値打ちな価格でご奉仕
・ これがこの価格だなんて、お値打ちでしょ。
などが挙げられます。検索エンジンで検索しても、たくさん出てきます。
過去に、実際に使っている方に質問してみたところ、
・ お買い得、というような意味
・ 中部地方で一般的な、小売り業界用語
などの回答を頂きましたが、いまひとつ釈然としません。
「値打ち」に「お」が着いたのか、「お値」を「打」ったのかよく
わからず、どうにも気持ちが悪いです。こちら(神奈川県)でよく目に
するようになったのは、おそらくここ2〜3年のことだと思います。
偶然ながら、格好の会議室を見つけられたと喜んでいます。簡単な
質問かもしれませんが、何らかのコメントを下されば幸いです。
峰 さんからのコメント
( Date: 1998年 2月 13日 金曜日 18:20:35)
「値踏み」する とも言いますよね。
やっぱり、「値」 を 「打」 ったのではないでしょうか。
だって、「その品物には、まったく値打ちがない」とも使いますよね。
「お」は、あとからついたんですよ。きっと・・・
satopy さんからのコメント
( Date: 1998年 2月 13日 金曜日 21:20:02)
とうとう神奈川まで来たのですか。「お値打ち」。
あまり関係ないかと思いますが、とりあえず、こういうのもあります。後日談はこちら。
森川知史 さんからのコメント
( Date: 1998年 2月 15日 日曜日 18:10:35)
「値打ち」1.財貨としての価値。あたい。[ヘボン]「一文の値打ちもなくなる[草枕]」2.事柄のもつ価値。品位。品(ヒン)。「愛を捧げて値打ちあるもののみをこそ愛しなば[海潮]」(新潮『現代国語辞典』)
特に1.の意味で「これは値打ちがあるな」「これは値打ちものやね」と使い、やがて「これは値打ちやね」と使われてきた関西では極めて自然な表現です。
平塚さん自身が挙げておられる例も、ものの販売時の口上のようですから、きっと関西から入った表現でしょう。
私は同じ販売用の口上でも「ご利用ください」という言い回しが気になっているのですが、つまり「買ってください」と言わずに「ご利用ください」とは何事か、と思うのですが、神奈川ではこの口上は一般化していますでしょうか?
岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 1998年 2月 15日 日曜日 21:47:27)
森川さんのかいてらっしゃるような所から、「値段のわりに値打ちのある」「この価格としては値打ちもの」、という具合に意味拡大したのでは、と思います。
『三省堂国語辞典』では、第2版(1973)から、「ねだんのわりにはねうちがあるようす。格安。」と載せられているのですね。いま引いてみたのですが。
平塚 さんからのコメント
( Date: 1998年 2月 16日 月曜日 9:49:18)
みなさん、コメント下さりありがとうございました。『三省堂国語辞典』
には古くから載っていたのですね。しかし、値打ちが「ある」とも「ない」
とも言葉の上で特定していないのに、自動的に「ある」ことになってしまう
点が、やはり気持ち悪いです。
> つまり「買ってください」と言わずに「ご利用ください」とは何事か、
> と思うのですが、神奈川ではこの口上は一般化していますでしょうか?
これは、耳にするような気がします。「ご利用!、ご利用!」などという
口上も記憶にあります。
昨今、色々な業界と一般人(その業界以外の人)との境界がなくなってきた
ことも、このような言葉をよく耳(目)にするようになった一因でもあるのか
と、ふと思いました。
Yeemar さんからのコメント
( Date: 1998年 2月 16日 月曜日 23:32:15)
「ご利用!」については、丸谷才一氏が『桜もさよならも日本語』の中で
触れていたように記憶します。その中で、「ご利用! ご利用!」という
小説があることも紹介されています(タイトルは違ったかもしれません)。
主人公の情婦が、デパートの地下の食品売場で「ご利用!」と言いつつ
食品を売っていた、という話ではなかったかと……。
Yeemar さんからのコメント
( Date: 1999年 6月 01日 火曜日 15:27:22)
1999.05.31 午後、太秦経由京都駅行の市バスの中で立ちづめ
だった私は、運転席の脇に吊り下げられていた安売りのチラシ
(車内吊り広告?詳細失念)をぼんやり見ていました。
お値打ち 大バーゲン (とか何とか)
「お値打ちかぁ……へんなことば遣いをするなぁ。それより早
く着かないかなあ……」
それきり別のことを考え始めた。今になって気づいてももう
遅い。そのときは、せっかく「写ルンです」も持っていたのに。
メモもできたのに。
過ぎにし方、とりかへさまほしう思へど、甲斐なし。
ただ、「京都での使用」の例はこちらでは出ていなかったの
で(satopyさんのサイトでは「神戸・大阪」の例報告あり)、
ここに書き付ける次第です。
佐藤@岐阜大 さんからのコメント
( Date: 1999年 6月 01日 火曜日 22:31:17)
貴重な用例のご報告、ありがとうございました。
こちらで「お値打ち」情報、統合しましょう!
→ Re: 「おねうち」前線北上中
佐藤@岐阜大 さんからのコメント
( Date: 1999年 6月 01日 火曜日 22:33:40)
上記「こちら」は、ここ「ことば会議室」のことです。
紛らわしい書き方になってしまいましたね。
きき さんからのコメント
( Date: 1999年 6月 07日 月曜日 0:13:58)
「お値打ち」が北上している言葉だなんて知りませんでした。
静岡県清水市で育った私は、ごく普通の表現と信じていました。
東京での生活が長いので、たいていの方言は認識しているつもりだったのですが。
これから広告等を気を付けてチェックしようと思います。
後藤斉 さんからのコメント
( Date: 1999年 6月 07日 月曜日 18:15:44)
検索結果のページをURLでしめすことはできないようですので、それぞれお試し
いただきたいのですが、下のような検索エンジンだと行政周辺での「お値打ち」の
使用が中京圏に集中している様子が見て取れますね。
北は、岩手県花巻市、秋田県湯沢市。(岩手県江刺市の例は三重県の話者)
西は、京都から飛んで山口県光市(ただし、ジャスコ社内用語の可能性あり)と
長崎県(「お値打ち物」)。
→ 地域発見
佐藤@岐阜大 さんからのコメント
( Date: 1999年 6月 09日 水曜日 12:32:08)
あ、これ、いいですね。早速「北詰・南詰」で試してみます。
岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 1999年 6月 09日 水曜日 15:33:48)
なるほどたしかに、地域差が見えますね。
私がやってみたのは「有っている」。「があっています」で検索すると、九州がひっかりますね。「があっている」だと「会」「合」もあるので、他の地方もありますが、島根県は、九州のように「有っている」を使うのでしょうか。山梨の「海があっている」は「海があって、いるかがあって」でした。
「校区」は多すぎますが、「校下」なら見て行けるかな?
後藤斉 さんからのコメント
( Date: 1999年 6月 10日 木曜日 17:03:05)
>あ、これ、いいですね。
>なるほどたしかに、地域差が見えますね。
「お値打ち」について調べるには、商工会のページも検索する、下に挙げた検索サイトも
併用するのがよかったかもしれません。(ただし、データの収集状況について
ほとんど情報がないのが不安材料)
→ 地域作り関連団体ページ キーワード検索
Yeemar さんからのコメント
( Date: 1999年 6月 26日 土曜日 20:14:21)
紙の媒体の用例です。
●京都市内の観光会社で、知人が入手したパンフレットです。
世紀の旅をしよう HOLYDAY
これだね 台湾
この内容でびっくり<圓山大飯店に泊まるおねうち台北3日間>
59800円〜76800円
〔近畿日本ツーリストパンフレット〕
●新聞屋さんがくれた冊子の広告には、
一段と涼しい氷風機能をプラスしながら、これまでの冷風扇では
考えられないお値打ち価格を実現。今こそ、お求めのチャンスで
す。〔二光株式会社=千葉県柏市=広告〕
(「朝日家庭便利帳 暮らしの風」1999.07=朝日新聞のPR雑誌)
東京の例とはいえないようです。このことばは東京をよけて通っ
ているかのようです(ただし「富士フイルム」「サッポロビール」)。
森川知史 さんからのコメント
( Date: 1999年 6月 27日 日曜日 9:53:17)
そもそもこのテーマが神奈川在住の平塚さんから提起されたとき以来、何やら
問題の核心が充分には掴めていないように感じていました。
それは、つまりは私のように京都に暮らす者からすれば、「お値打ち品」とか「お値打ち価格」とかいう表現がごく自然な、決して目新しい表現でも何でもないという感覚があるからではないか。例えば、Yeemarさんは京都で入手したパンフレットや冊子に記載の「お値打ち価格」や「圓山大飯店に泊まるおねうち台北3日間」という表現について、「東京の例とはいえない」と記しておられますが、京都在住の私には、「東京では見られない表現だ」という指摘の真意ががよく理解できずにいるのです。
京都では極めて当たり前になっている上記のような表現が、東京では陳腐だということなのでしょうか?こういう場合東京では一般にどのように表現されるのでしょうか?
おそらく、先にも指摘したように、「こいつは値打ちやね」のように関西で旧くから使われてきた表現がベースにあって、我々にはこういう言い回しにさほどの違和感がないということがあるように思います。
Yeemar さんからのコメント
( Date: 1999年 6月 27日 日曜日 15:07:45)
森川さんのお訊ねについてですが、「お値打ち」は、私はまだ
東京で目にしたことがないのです(1986年まで香川県在住、以
後東京都中野区)。使用されつくして陳腐化したのではなく、
逆にまだほとんど使用されていないものと思います。
今までのお話を拝見したところでは、「『お値打ち』は、北か
ら南まで使用例があり、『三省堂国語辞典』にも載っている
(お値打ちな)。しかし、地域差がある。中部地方の例が目に
付くようだ」といったところかと思います。
仮に中京なり関西なりで発祥したことばだとして、それが岩手
や山口にまで広まっているのであれば、東京発行の全国紙など
にも載っているかもしれないと気を付けてみていますが、まだ
発見していないのが現状です。
では東京ではどう表現するかというと、今日のチラシには
・良品を特価で大奉仕!! (大正堂 東京・神奈川)
・これは見逃せません!!サマーカジュアルも大奉仕!!
(コナカ 目黒・杉並・中野)
・メガネ(一式)3本まとめて 超お買得!!
(ビックコンタクト 新宿)
などの文字があります。
「お値打ちです→お買い得です・お得です」
「お値打ち価格→特価・奉仕価格」
「お値打ち品→お買い得品・奉仕品」
といったところでしょうか。
用字としては「お買い徳」もあります。
あすからは、男の1週間。ビジネスアイテムが、お買い徳。
〔日本橋高島屋広告〕(朝日新聞夕刊 1998.12.08 p.1)
豊島正之 さんからのコメント
( Date: 1999年 6月 28日 月曜日 23:44:12)
>「お値打ち」は、私はまだ東京で目にしたことがないのです
山本益博 1996 「ガストン」(Masuhiro Japan) p.33
メートル・ソムリエの田崎さんは、'95年に行われた世界ソムリエコンクールの優勝者。土曜日なら黒いタブリエを締めた田崎さんのサービスがうけられる。彼の選んだグラスワインのお値うちなこと。お試しあれ。
(強調豊島) [レストラン評論「パストラル」の項]
Yeemar さんからのコメント
( Date: 1999年 6月 29日 火曜日 1:24:52)
ウェブで検索しますと、山本益博氏は1948年、東京浅草生まれ
ですか。
ということは、まぎれもなく東京の用例ですね。恐れ入りました。
豊島正之 さんからのコメント
( Date: 1999年 7月 02日 金曜日 6:46:40)
大谷浩己 1999.2 フランスワインの12ヵ月(講談社現代新書 1441)
- ここでもお昼に160フランの定食をやっていて、これはお値打ち感がある。(p.129)
- スーパーで買えるワインは、…僕は「お宝コーナー」といっているが、実際、お値打ち品が見つかる確率が高い。(p.193)
著者は1957埼玉県生まれ、1997よりボルドー在住との事。
全国席捲の上、フランスはボルドーにまで進出 :-)
佐藤@岐阜大 さんからのコメント
( Date: 1999年 7月 02日 金曜日 11:12:45)
レストラン(ワイン)の例に、東急百貨店(日本橋店の閉店セール(拙サイト「芳名帳」 99/02/16)。
東京(など)では、高級志向の場で先行して使われている、ということになりますか。
佐藤@岐阜大 さんからのコメント
( Date: 1999年 7月 02日 金曜日 21:42:19)
幸便にも出てきましたので。料理関係です。
しり切れとんぼもいいところで、自分のところの話題にしてしまったというのも恰好が悪いのですが、取り急ぎ。
→ 気になることば 〜 辰巳浜子の「お値打ち」
後藤斉 さんからのコメント
( Date: 1999年 7月 03日 土曜日 10:00:09)
個人的には「お値打ち品」や「お値打ち価格」にはなじめても「お値打ちにご提供」のような
連用修飾の用法には多少の違和感を感じます。
gooによると「お値打ち品」(196)や「お値打ち価格」(382)より「お値打ちに」(456)の方が
多いことは意外でした。456件をとても全部は見切れませんので、きちんとした形では
言えませんが、ざっとみたところ中京圏の例が圧倒的に多いという印象を受けます。
少なくとも最初の10件の内"404 Not Found"がでる1件を除く9件は中京圏です。
(Not Foundがでるものも、中京圏のサイトのようです。)宮城県柴田町の例もあることは
あるのですが。
→ goo 「お値打ちに」
Yeemar さんからのコメント
( Date: 1999年 7月 11日 日曜日 0:02:20)
5月の新刊として、
小倉エージ『これはお値打ち KODAWARIの料理店』集英社
が出版されている由。「週刊文春」1999.07.15(p.146)のブックレビュー
で知りました。
ワインについて言われるのと、このようなグルメの本で使われたりす
るのとは、使われる場が似ているように思います。高級志向の場の中で
も、とくに食の世界という共通点があります。
内容紹介はウェブにもありました。↓
→ 新刊書籍(集英社)
Yeemar さんからのコメント
( Date: 2002年 11月 24日 日曜日 21:41:43)
「言語生活」1962年に「値打品」が報告されています。
ある家具店のチラシの一部。投書者は、福岡県・新谷保次郎さん。「お値打ち品」または「お値打ち」の例ではありませんが、「値打品」がそうとう珍しかったので、報告されたのでしょう。
恒例の五色市
みどり 一割引 値打品(「言語生活」1962.05掲載=佐竹秀雄編『言語生活の目』筑摩書房 1989.07.20 p.189)
「値打ち品」→「お値打ち品」→「お値打ち」という過程をたどったものでしょうか?
Yeemar さんからのコメント
( Date: 2004年 01月 28日 水曜日 03:06:06)
長谷川町子『サザエさん』29 朝日新聞社 p.117に
(1)座敷。波平の前で掛け軸を広げる骨董屋の主人らしき人物。「本書は朝日新聞連載の昭和39年4月から昭和40年2月分までを収録しました」とあります。『三省堂国語辞典』第2版(1973)が今までの最古例だったと思いますが、さかのぼったといえるでしょうか。
(2)波平(掛け軸を眺めて)「たかいよ!」骨董屋「しかしおねうちですよ」
(3)フネ「なんのえですの?」
(4)骨董屋「かずのこです」
Yeemar さんからのコメント
( Date: 2004年 04月 02日 金曜日 07:14:29)
2004.03.31 NHK「ニュース7」で、北海道のスーパーマーケット店内に「おつとめ品」の表示。
私は知らないことばです。ネット検索すると、いろいろな地方のホームページが出てきて、地域性については分かりません。「
名古屋人チェック 」では
ヤマナカやナフコの「おつとめ品」につい目が行ってしまう。とありますが、どこの方言ともしれません。
「おつとめ品」が方言ということ自体が驚きだ
Google の「daterange」オプションで検索すると、
(年) (件)
1996 1
1997 0
1998 6
1999 4
2000 18
2001 47
2002 89
2003 527
2004 373
のごとくです。数字の上では、あたかもここ何年かできゅうに増えた言い方のように見えます。しかし、ホームページのドキュメントは最近作られたものが圧倒的に多いわけで、あまり数字は参考にならないかもしれません。
masakim さんからのコメント
( Date: 2004年 04月 02日 金曜日 07:47:48)
私は1948年東京都品川区で生まれましたが、小学生の頃「おつとめ品」という表示は商店街でよく見かけました。
そんな昔のことをなぜ覚えているかというと、母に向かって「おとめひんだからおかあちゃんは買えないね」といって笑われたからです。