はじめて投稿いたします。
よろしくお願いいたします。
中学校の教員をしています。
先日授業で、「程度の副詞」を扱いました。
その中で、次のような問いをしました。
「たいへん」「非常に」「とても」「かなり」のうち、いちばん「程度が低い」言葉はどれでしょう。
意図としては、「かなり」だけが「程度が低い」ことを確認しようとしたものです。
「たいへん」「非常に」「とても」の違いは中学生にはむずかしいかなと思い、(というか
わたしもよくわからない)、最低限、「かなり」だけが「程度が低い」ことを押さえておこうと
したわけで、さっと流すつもりでした。
ところが、数人の生徒から「とても」という声が挙がり、ぎょっとしました。
それらの生徒に訊くと、「かなり」は、「たいへん」や「非常に」と同レベルの「程度の高い」
言葉だというのです。その場では「それはまちがいだ」と言い切ってしまったのですが、気に
なって、何人かの同僚に尋ねたところ、生徒と同様、「かなり」は、もっとも程度の高い言葉
のひとつである、という回答を得ました。
国語辞典を幾つか引いても、「かなり」が「もっとも程度の高い言葉」であるという説明はあ
りません。
「かなり」の用法は、何人かの生徒や同僚がいうように変化してきているのでしょうか。
岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 1999年 2月 02日 火曜日 18:45:04)
ようこそ。
「かなり」は、これらの中で異質である、ということは生徒さんも理解しているのでしょうね。
「かなり」は予想値があって、それとの比較である、ということですから、その予想値の高低によって、程度の高低がかわって来ますね。
問題は、文脈なしに、いきなり「かなり……」という場合で、その用法が盛んに使われると、「程度が高い」という意味が出て来るのかもしれませんね。
コマーシャルなどで「かなり来てます」とかいうのがあったような気がします。
kazii さんからのコメント
( Date: 1999年 2月 03日 水曜日 0:29:19)
アクセントはどうでしょう?平板型での使用はありませんか?
もし平板型で使用されることが多いのなら、それは若者語に変質したもので、新奇な語の「程度」が高くなる、ということだと思うのですが。
「超」と同様に考えられると思うのですが、「超〜」の使用の程度と相関関係はないでしょうか?
山川晃史 さんからのコメント
( Date: 1999年 2月 03日 水曜日 16:32:59)
岡島さん、kaziiさん、コメントありがとうございました。
「かなり来てます」のような使われ方は、わたし自身も知ってはいましたしが、意味としては従来と変わって
いないとばかり思っておりました。アクセントは、平板型ですね。
生徒が指摘した「かなり」の用法のアクセントも平板型だと思いますが、平板アクセントでなくても、意味だ
けが変化しているということもあるような気がします。
同僚に訊いたときも、人によってアクセントがちがいましたね。
わたし自身、平板型で使用することもありますが、「若者語」としては用いていません。
「超」と同様に考えられるというのは、なるほどと思いました。
言魔 さんからのコメント
( Date: 1999年 2月 07日 日曜日 10:50:57)
「若者用語」を採取中、この「カナリ」はそれこそ、
かなり頻繁に耳にします。単なるつなぎ言葉として
使用していると思います。
実例1:
「今日学校さぼっちゃおうか?」
「そうだね。かなり」
(その後、会話は別の方向へ進んでいます)
実例2:
(携帯電話のマスコット人形をさして)
「この人形、かなり、少しだけかわいい」
(どう考えても変ですけどね)
近い「妙な強調」として、昨今「号泣」という表現が
気になります。とある昼下がり、ボンヤリとテレビを
見ていたら、若い女性タレントの頬に一筋の涙が...
そのとき、テロップ(と言うのかな?)が流れて、
「××(多分、そのタレントの名でしょう)、号泣!!」...
テレビ局の編集をしている人達も日本語を知らない人が
増えた様子ですね。
→ 若者用語の裏知識
後藤斉 さんからのコメント
( Date: 1999年 2月 08日 月曜日 15:22:11)
見出し語にはありませんが、解説の方に「かなり」の用例が見られます。
ばくすいする 「爆発睡眠」略+サ変動詞 かなり思いきり眠ってしまうこと。
超BM 超+「バカ」の頭文字+「丸だし」の頭文字 かなりのバカ丸だし
#読みにくいかも。
→ 女子高生による新語:データ編
山川晃史 さんからのコメント
( Date: 1999年 2月 09日 火曜日 17:55:25)
言魔さん、後藤さん、情報ありがどうございました。
言魔さんの実例は全く初耳で、驚きました。
後藤さんの紹介されたものは、「超」や「爆」と同じように使われている例ですね。
紹介していただいたそれぞれのページをみました。
新語について、ずいぶんと参考になりました。
生徒がどの程度知っているか、また使用しているか確かめてみたいと思いました。
後藤斉 さんからのコメント
( Date: 1999年 3月 16日 火曜日 9:50:55)
関西の女子大生が使う「程度の大きいようすを表す単語やフレーズ」として以下が挙げられています。
鬼のように 鬼ほど かなり ごっつ(ー) ごっつい すごい 超 でーれー でってれー バリ バリバリ
ぶち ぼっけー ぼれ むっこ むっちゃ めちゃんこ めっさ めっちゃ
別に「若者の程度表現」(三省堂『国語通信』1998年新年号)も。
→ 『女子大生用語の基礎知識 1993年版』解説と付録
Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 01月 21日 火曜日 21:37:34)
いつぞや、たいへん豪華な趣向をこらした結婚式のニュースで、花嫁が「かなり感動しました」と言っていたので、思わず私は「がくっ」となり、最高に感動したわけではないのだな、花婿が気の毒だと思っていたら、意外や、隣に映る花婿はにこにこしていました。
むろん、この花嫁は「この上なく感動した」と言いたかったのでしょう。
私には、この花嫁の用いた「かなり」は、「どうせ大した結婚式ではないだろうと思っていたけれど、予想よりはずいぶんよかった」というニュアンスを伴って理解されました。しかし、そもそも「かなり」は、自分の感情を表す語には使いにくいのではないかと思います。昔は、「かなり感動した」「私は今、かなり悲しい」などという言い方はなかったのではないでしょうか? 自分の現在の感情は、何かと比較する性質のものではないからです。
林真理子『チャンネルの5番』〔1987年発表〕講談社 1988.02.22 を見ていると、この手の「かなり」がよく出てきて、私には「新しい」と感じられます。
(1)二十四時間スーパーは、そのビデオ屋の四軒先だ。待望のスイカは、おいしそうな赤い切り口を見せて並んでいる。しかし、どれも大きい。いちばん小さいやつで、4分の1カットだ。これをぶらさげて、これから二十分の道のりを歩かなければいけないと思うと、かなりうんざりする。(p.50)最後の(3)は、他人について「彼はかなり恨んでいるようだ」ならば違和感がありません。また、次の(4)「疲れる」は、上の(1)「うんざりする」に似ていますが、私にはやはり違和感がありません。感情というよりは体の状態をいうからでしょうか。
(2)私はそれを見ていると、夫婦の歴史というものについて、敬意をはらわざるを得ない。またその反対に、離婚を繰り返す女友だちもかなり羨しいと思う。(p.104)
(3)ラーメンはチャーシューメンを食べ、ビールを三本飲んだから三千三百円。彼は遠慮したのだが、年上の私が無理やり払った。次の朝、ラーメンのために顔がむくみ、私は彼のことをかなり恨んだような気がする。(p.164)
(4)どなたも経験あると思うが、タクシーの運転手さんに、うまくあいづちをうち、感心するふりをするのは、かなり疲れるものである。(p.130)