1999年06月14日

ぜんぜん大丈夫?(ウルフ)


はじめまして、ウルフです。

私は以前から、「ぜんぜん」の後には「〜ない」をつけるべきだと思っていました。ですから、「ぜんぜん大丈夫」という使い方は間違いだと思っていました。
しかし、漱石が「先生は授業にぜんぜん埋没している」(三四郎)という使い方をしているのを見つけました。
「ぜんぜん大丈夫」は日本語として正しいのでしょうか、もし間違いだとしたら、「ぜんぜん埋没している」との違いを教えてください。



岡島昭浩 さんからのコメント

( Date: 1999年 6月 15日 火曜日 10:14:17)


 「全然」の、「ない」を付けない用法の、最近槍玉に挙げられる言い方と、漱石なども使っていた言い方とについては、〈連続する〉という捉え方と、〈連続しない〉という捉え方があるようです。

 使われている例を時代順に並べて行くと、連続しているように見えます。漱石といわず、昭和の人も使っています。

 「全然」については、「とても」との関連も言われることです。芥川が「とても」は否定につく言葉で肯定には用いない、ということを言っているのですが、それで、「全然」についても〈否定とともに〉という付加価値が付いたのではないか、とか。

 でも、「全然」には否定の意味が有るのは確かですよね。「私の授業は面白いですか?」「全然!」という会話があった場合、これを〈とても面白い〉と解釈は出来ないでしょうから。このように単独で「全然」と言った時に、否定の意味を伴うものであるのが、時代的にどうなのか、というのが、漱石の全然と同じか否か、というところと関ってくると思うのですが、このへんの研究はどうなっているのでしたっけねえ。



さんからのコメント

( Date: 1999年 6月 17日 木曜日 12:25:42)


>「ぜんぜん大丈夫」

「大丈夫」=「問題ない」と考えて・・・
「ぜんぜん問題なし」→「ぜんぜん大丈夫
という変化も考えられなくはないですね



森川知史 さんからのコメント

( Date: 1999年 6月 22日 火曜日 0:17:26)


「全然」は「全く」と並記して考えると分かるように思います。
「全くすばらしい!」とか「全くきれいですね」は「全然すばらしい!」や「全然きれいですね」よりは不自然でないように感じられます。でも、「全く」も元来は「全く分からない」や「全くお手上げだ」のように否定的意味合いで使われるものだったのが、いつからか肯定文にも使われ出した訳です。ただ、「全然」の肯定文での使用よりはもっと古くから使われて来たので、今ではさほどの違和感を感じなくなっている、ということでしょう。だとすれば、「全然すばらしい!」や「全然きれいですね」もやがては多くの人に受け入れられるようになるのではないでしょうか?
また、これは、「とても」の肯定文での使用を見れば、より一層よく分かるように思います。「とてもすばらしい!」「とてもきれいですね」は、もはや違和感を感じる人の方が珍しいのではないでしょうか?でも、この「とても」も元来は「とてもかくても」の意(どうしてもこうしても)として、否定的意味合いで使われるだけの言葉だった訳です。
「全然」が否定的意味合いでなく使われることに違和感を感じない人が今後益々増えていくのは、むしろ自然のなりゆきのようにさえ感じます。



言魔 さんからのコメント

( Date: 1999年 6月 23日 水曜日 9:28:40)


森川さんのご意見に賛成。
私のページでも以前に取り上げましたが、古典のカカリムスビという
発想のなごりで、「全然〜ない」と繋がなければいけなかったのでは
ないでしょうか。祖父(国語学者、昭和27年没)が生きていたら、
森川さんご指摘の「とても〜肯定」ですら、耳障りだと言いそうだな
などと感じました。

言葉のよろずや



トッシー さんからのコメント
( Date: 2002年 09月 03日 火曜日 10:11:26)

1)結論として、「全然」の後に肯定がきた場合、日本語として正しいのでしょうか?

2)それとも、ことばというものは、時々刻々と変化するものであり、正誤うんぬんの問題ではない、ということでしょうか?


最近、頻発するたとえば、「全然おいしい」のように「全然」の後に肯定(or打消し)がこなければ、理屈抜きに違和感を感じます。

私だけでしょうか。



岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2002年 09月 04日 水曜日 09:51:22)

 (2)のように、言い切ってしまうのは行き過ぎだと思いますが、「日本語として正しい」という認定も行き過ぎになると思います。(これは「全然」という一語について言っているのではなく、言語一般について言っています。)


 ことばが時々刻々と変化するのは確かです。しかし、変化に違和感を覚える人が居るのも確かです。また変化するのを静観する人もいるし、変化を押さえようとしないと変化が加速して大変なことになるという考えで変化を糾弾する人も居ます(もちろん「自分の使い方とは違う」と言うだけで糾弾する人も居ます)。



トッシー さんからのコメント
( Date: 2002年 09月 04日 水曜日 22:07:38)

岡島様ありがとうございます。


それにしても、テレビの料理番組で著名人の「全然おいしいですね」には違和感というより、不快感を覚えますね。しつこいようですが。



岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2002年 09月 04日 水曜日 23:53:55)

 「食べられない・おいしくないと思ったが、全然問題なく、おいしい」であるとか、「○○と比べると、全然おいしい」のように「断然」の場所を奪ったようなものであれば、私は違和感程度ですみますが、単に「非常においしい」という意味で「全然おいしい」ということがあれば、不快感に近くなりそうです。



森川知史 さんからのコメント
( Date: 2002年 09月 06日 金曜日 09:00:06)

私の「全然」についての認識は先に書いた通りですが、トッシーさんの「不快感」発言を受けて、ちょっと書かせてもらいます。

ことばというのは一端身に付いてしまうと、その人の感覚にまで繋がってしまう、という側面があります。「ニュアンス」のように、その表現に何となく違和感を覚えるという水準から、「間違い」だと強く感じたり、「不快」だと感じたりする、というようなことまである訳です。でも、ことばは所詮「生き物」ですからどんどん変化して行きますし、誰かが「正誤」を認定して押しつけることもできません(しようとしたところで、ことばは勝手に変化するだけですから)。最初は自分の「不快感」が多数意見であったものが、やがては少数意見になり、ついにはその不快感そのものが誰からも理解されなくなる、そういう推移を辿る筈です。

「とてもきれいだね」という表現について、「不快感を感じる」と主張する人物を想像してみて下さい。「変な人だ」と殆どの人が思うでしょう。でも、明治の初期には「きれいだ」と肯定的に文末を括る文で「とても」を使うのは非常に違和感のあることだったのです。

自分が身に付けてしまった言語感覚を、それこそが「正しい」とか「正当だ」とか信じ込んで、他の表現を「変だ」「違和を感じる」「不快だ」と主張するのは如何なものでしょうか?自分の言語感覚と異なるから違和を「感じてしまう」のは仕方ないでしょうが。



トッシー さんからのコメント
( Date: 2002年 09月 07日 土曜日 19:59:45)

森川様ありがとうございます。


>自分が身に付けてしまった言語感覚を、それこそが「正しい」とか「正当だ」とか信じ込んで、他の表現を「変だ」「違和を感じる」「不快だ」と主張するのは如何なものでしょうか?


おっしゃるとおりだと思います。

通常の場でこのような露骨な主張をするつもりは、勿論ございません。

ことばの会議室ということで、あえてこのような表現を使わせいただきました。

いずれにしましても、「全然」の意味のご質問に対し、広い角度からのご意見をいただき、改めてお礼を申し上げます。

また、ちょくちょく寄らさせて下さい。



トッシー さんからのコメント
( Date: 2002年 09月 09日 月曜日 10:39:41)

たまたま今朝(9月9日、8:10頃)、ニッポン放送でことばについて次のような内容について放送しておりましたので、私なりにまとめてご紹介します。

(中年男性アナウンサーと若い女性アナウンサーが番組進行)


『早急』について

・一視聴者の意見・・・「さっきゅう」と読む(言う?)人がいるが、日常は「そうきゅう」が使われており、さっきゅうは一般的でなくおかしい。

・男性アナ・・・そうかなあ。僕らは「さっきゅう」しか使わない。


『全然いい』について

・男性アナ・・・若者の間で使われているようだが、間違いもいいとこで、問題外(という主旨の発言)


『ことばに対するある人のコメントの紹介』

(ある人とは、国語学者なのか先輩なのか、またはそれ以外の人か聞き逃しました)

「ことばは時間の経過とともに変化するものであり、その意味についてあれこれ言う性格のものではない側面も持っている」という主旨の紹介。


これは、森川さんが言われる(↑)

>「全然」が否定的意味合いでなく使われることに違和感を感じない人が今後益々増えていくのは、むしろ自然のなりゆきのようにさえ感じます。

に共通するものがあり、興味深いものがありました。


まとまりのない既述になってしまいましたが、お許しを。




トッシー さんからのコメント
( Date: 2002年 09月 09日 月曜日 11:57:19)

↑訂正します。


まとまりのない「既述」 → まとまりのない「記述」



道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2002年 09月 09日 月曜日 19:00:32)

個人的には「全然OK!」というのは使ってますね。基本的には「全然十否定形」のほうがよく使うと思いますが。(頻度として。)

「さっきより全然いいよ!」というような場合は「断然」と間違っているのかもしれません。

「言葉は変わって行くもの」は真理だと思いますが、「状況に応じて使い分けるもの」「規範とされがちなメディアで使う言葉は、変化の一番最後についていくべきもの」とも考えてもいます。

参考になりますでしょうか?



森川知史 さんからのコメント
( Date: 2002年 09月 09日 月曜日 21:47:51)

何をどう考えようと、「言葉は変わっていく」のです。言葉が生きて使われているかぎり仕方ないわけですね。そして、大昔から現在まで「言葉の乱れ」は嘆かれているのですよね。私自身も現在使われている多くの表現に違和を感じます。「こちらが正しい」「それは間違っている」と言いたくなります。いや、言ったこともあります。でも、独りが主張する正しさなんて、結局はほんの一時期のものでしかないのです。今現在、平安朝の言葉で喋っている人なんていないのですから。



道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2002年 09月 10日 火曜日 00:25:53)

基本的には、森川さんのおっしゃるとおりでしょう。「時間が流れる」のと同じぐらい確かに「言葉は変わっていく」のです。川の流れのように。(あ!あの曲の「川」は「時間」の比喩だったのか。今ごろ気づくなんて。)

でも、「流れを堰きとめる」ことは無理でも、支流へ氾濫しそうな川筋を修正させることは出来るかもしれない、それは無理でも支流に行くのを遅らせることは・・・などと考えているということです。

どうせ、支流へ流れていくのだと言えば、それまでなんですけどね。



skid さんからのコメント
( Date: 2002年 09月 13日 金曜日 03:32:39)

石山茂利夫『今様こくご辞書』(読売新聞社、1998年)の〈「全然」――打ち消しを伴わなければ誤用か〉(118ページ)はいかがでしょう。



トッシー さんからのコメント
( Date: 2002年 09月 13日 金曜日 06:21:22)

skid様、ありがとうございます。


もしよろしかったら、その大意(118ページ)をお教えいただけませんでしょうか。



skid さんからのコメント
( Date: 2002年 09月 13日 金曜日 10:08:46)

要点を○字以内で述べよ……という課題は苦手だったなあというわけで、小見出しの羅列です。


  くずれた用法の「肯定表現」、今も違和感

  「とても」と「全然」の異なる事情 

  明治、大正期の肯定表現

  「打ち消しを伴う」の常識がおかしい


〈それにしても、いつごろから、全然という言葉に、「普通、下に打ち消しか否定的な語が伴う」という“常識”が生まれたのだろうか〉

と疑問を呈して終わっています。




トッシー さんからのコメント
( Date: 2002年 09月 13日 金曜日 21:15:57)

なるほど。ここでも、ことばは時々刻々と変化してきたことを窺い知ることができますね。

skidさん、ありがとうございました。



skid さんからのコメント
( Date: 2002年 09月 14日 土曜日 00:43:24)

手抜きで申し訳ありません。

結局、『日本国語大辞典』第二版の語誌欄を見ていただければ幸いです。


posted by 岡島昭浩 at 19:42| Comment(1) | TrackBack(0) | ■初代「ことば会議室」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「全然+肯定」も「全然+否定」同様に明治大正期には共存していたが、昭和軍国主義の中で「全然+否定」だけが生き残った。

興味深いことに大正末期から昭和初期にかけて三河方言とされる「とても+肯定」が、標準語法の「とても+否定」に加えて並立するようになり、現在に至るわけであるが、これについて現在誰も目くじらを立てたり、不信感を抱かないのは何故だろう。

平成の現在、恰も先祖返りの如く「全然+肯定」が使われるようになった現象を私はむしろ歓迎したい。目くじらを立てている輩は単に歴史音痴な無知である。
Posted by xapaga at 2008年01月07日 01:17
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