1999年11月12日

ミーハー(toko)


「ミーハー」というのは、昭和初期に流行したミーチャンハーチャンから
来たことば、というのは知っていたのですが、
ミーチャンは、みつ豆の好きな女の子、ハーチャンは林長二郎(長谷川一夫)のファン
の女の子、の意味だというのを、最近知りました。
となると、ミーハーは基本的には女の子にのみ使われる言葉なのでしょうかね?
はて、今時のミーチャンハーチャンは何なんだろう? (^^)



Yeemar さんからのコメント

( Date: 1999年 11月 13日 土曜日 5:08:28)


「みいはあ」は、上田敏「うづまき」(1910)に「結綿のみいちゃ
んはあちゃんが屈み勝にして、周章仮花道を走けて行くのを」と
出ているようなので(『大辞林』)、すくなくとも昭和初期より
は古いはずです。この「みい」「はあ」についても、諸説ありま
すが、私の考えは控えておきましょう(もっとも、相馬御風作詞
「春よ来い」1923の「あるきはじめた みいちゃんが」のように
ありふれた愛称であることは推測されます)。

むしろ、「みつ豆」「林長二郎」説をどこで耳にされたか、目に
されたか、お教えくださればと思います(私は知りませんでした)。
「こういうことが民間で言われている」という事実は、ちゃんと
勉強しておかないといけないと思いますので。



toko さんからのコメント

( Date: 1999年 11月 13日 土曜日 18:50:34)


何で読んだか、いろいろ思い出してみたら、出久根達郎氏の「恋文の香り」というエッセイ
に載っていたのでしたが、元々の出典は「オール読物」の1996年7月号とあります。
そして、うっかり読み落としていましたが、昭和初期の映画界で用いられたとある本で読み、
語源を「みつ豆」と「林長二郎」までは突き止めた、と筆者が言っています。
しかし、いろいろ調べていくと森銃三氏の著書には、これは明治20年頃の流行語と
あって、となると、林長二郎の誕生以前になるわけで、やはりみつ豆説は怪しいのだろうか、
と出久根氏もギモンを感じているようです。
同じくこの本には、「フリーランサー」という言葉が、すでに昭和初期に
「所属不定の俳優のこと、転じて職業不定の人のことをも云ふ」と
「大日本連合青年団」に配られる小冊子に現代用語として登場してる
とあります。
ミーハーについての、Yeemar さんの説も教えて下さいませ。



Yeemar さんからのコメント

( Date: 1999年 11月 15日 月曜日 14:51:39)


出久根達郎氏とは意外でした。しかも「うづまき」よりも古い
例がたどれそうな感じですね。さっそく読んでみなければなり
ません。
私は『広辞苑』の説で納得しています。「みい」とか「はあ」
とかいう愛称の娘が多いところからではないでしょうか。



岡島昭浩 さんからのコメント

( Date: 1999年 11月 15日 月曜日 15:13:08)


 平凡社東洋文庫の森銑三『明治東京逸聞史』は、よい本です。

 近代語研究の論文などで、この『明治東京逸聞史』によってたどり着いたであろう資料を引用しながら、参考書名にこれを挙げていないことがあるなどは、徳富蘇峰『近世日本国民史』と似たような位置付けの書なのかもしれません。



岡島昭浩 さんからのコメント

( Date: 1999年 11月 15日 月曜日 23:33:41)


『明治東京逸聞史』1、171頁。明治二十二年、饗庭篁村の『むら竹』第1巻所収「下宿屋」に、みいちゃん、はあちゃんという言葉が見えるとのこと。



shin さんからのコメント

( Date: 1999年 11月 18日 木曜日 18:40:09)


知恵蔵(?)の付録に(99年)、大船撮影所の?さん(くわしくみてないんです)
の造語で、あらゆる女性の人にもわかりやすい映画を作ろうというのを見ました。
でも、辞書を見ると江戸時代後期からあるようなことを書かれているんですが
どっちが本当なんでしょう?



岡島昭浩 さんからのコメント

( Date: 1999年 11月 22日 月曜日 12:49:27)


 ちょっとわかりにくいのですが、「あらゆる女性の人にもわかりやすい映画を作ろう」ということを言う際に「ミーハー」あるいは「みいちゃんはあちゃん」という言葉を使った、ということでしょうか。

 「使った」というのは本当であるのでしょうが、そのとき初めて「作った」、というのは間違いなのでしょう。もっと古くからあるわけですから。

 江戸後期にある、と書いてある辞書は、なんという辞書でしょうか。もしご記憶ならばお教え頂ければ幸いです。



Yeemar さんからのコメント

( Date: 1999年 11月 25日 木曜日 2:39:07)


「言語生活」285 1975.06 p.64「ことばのくずかご」に


“脚線美”という言葉があるでしょう。あれは私がつくったんですよ。昭和三年に〔松竹で〕“脚線美女優”を募集した。これが始まりなんですよ。それに“ミーちゃんハーちゃん”あれも私が初めて使ったんです。

(「夕刊フジ」4月15日13「わたしのアルバム」欄 城戸四郎)

「私が作った」は信用ならないわけ。
『知恵蔵』は見ていませんが、やはり城戸四郎氏とあるのでしょうか?



shin さんからのコメント

( Date: 1999年 11月 25日 木曜日 18:42:42)


まず訂正を。 知恵蔵ではなく現代用語の基礎知識の付録の流行語の欄にあります。
?さんは確か尾上菊五郎だったと思います。
(もう2000年度版が出ているので確認はとれませんが…)
江戸後期というのは「赤恥青恥」で言っていたことをチラッと聞いただけなので、
初の書き込みで舞い上がってしまいました。 申し訳ない
私も2年前から疑問に思っていて、みいはあ=みいちゃんはあちゃんで片付けていたのですが、
流行語で出ているのを見て何かあるのでは?と思った一人です



太田 さんからのコメント

( Date: 1999年 12月 03日 金曜日 17:44:14)


「日本国語大辞典」に「はあちゃん」だけで見出し語になっています。
そこでは、「@馬鹿を言う。力士仲間の隠語(特殊語百科事典)」となっています。
あいにく、「特殊語百科事典」なるものを知らないので、どのように書かれているのか
わからないのですが。さらに驚いたのは「隠語辞典」(東京堂)で調べると「ばか、
白痴。(実在の人名、力士・明治)」となっていました。相撲に詳しい人に聞いてみたいものです。



Yeemar さんからのコメント

( Date: 1999年 12月 04日 土曜日 5:50:12)


松井栄一『国語辞典にない言葉』に説明があります。『特殊語百科辞典』は昭和6年とのこと。
差別的な表現がありますが、資料として引用しますと

相撲仲間にて馬鹿のこと。昔年寄の娘に「はーちャン」といふ低能児があったので、それから始まったものといふ。〔促音表記、松井ノママ〕
松井氏は「この語源説は疑わしいが」としています。
「みいちゃんはあちゃん」は、松井氏の同書中に紹介されているものでは昭和2年の例(内田魯庵)が最も古い。



Yeemar さんからのコメント

( Date: 2002年 2月 18日 月曜日 16:35:43)


shin さんが言われている「現代用語の基礎知識」の付録は、『現代用語の基礎知識1999別冊付録 最新日本語活用事典』(自由国民社)ですね。

ミーハー
正確には「ミーちゃん、ハーちゃん」。松竹映画の大船撮影所長の城戸四郎氏が昭和一〇年代に造語したものと言われ、映画製作は美代子さんや花子さん(その当時の女性の名前に多いと言われていた)のような大衆レベルの分かるものでは〔ママ〕なければならないということ。しかし時代が経るにつれて昭和二〇年代後半には歌謡曲や映画スターに熱を上げる女性の意味で使われるようになった。(p.277)
とあります。「言語生活」285所引記事と同じく城戸四郎となっています。城戸四郎説は、夕刊フジの本人談から広まって、ついには『現代用語の基礎知識』の採るところとなった?

この本の編集にあたっては、『「語源」の謎にこだわる本』(雄鶏社)、『流行語・隠語辞典』(三一書房)、その他、数十の文献を参照したようですから、そのどれかに上記の説が書かれているのでしょう。

ちなみに、佐竹秀雄氏「ことばのこばこ」の「ミーハー」にも「ミヨちゃん・ハナちゃん」説、力士仲間の隠語説(「少し間の抜けた者」をハーちゃんと言い、それをドレミファ(ミハ)ソラシドと関係づけた)が紹介されています。


posted by 岡島昭浩 at 23:28| Comment(0) | TrackBack(0) | ■初代「ことば会議室」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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