「ものすごい」ことを「すさまじい」と言いますが、これの「さ」を濁って「すざまじい」という人がいますが、これは方言なのでしょうか?Google検索では「すさまじい」が11万2000件、「すざまじい」は1460件でした。
岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 01月 08日 水曜日 12:52:51)
方言的な要素があるのかどうか存じませんが、いろんなところで目にし、みみにしますね。
ふるくは「すさまし」だったので、どんどんと濁音が勢力を伸ばしているのです。
しかし、「ずざまじい」には、しばらくはならないでしょう。
道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 01月 08日 水曜日 16:15:24)
濁点が入った方が「すさまじさ」の程度が上がるように感じます。
1月6日のTBS「ニュース23」でコメンテーターの岸井成格さんが使っていました。毎日新聞の方だと思います。
Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 01月 09日 木曜日 11:47:57)
「すざまじい」について「語彙索引の検索」を使わせていただいたところ、見坊豪紀『日本語の用例採集法』に載っていることが分かりました。同書を参照しましたら、「すざまじい」が『言苑』に「載っていない」ということだけが書いてあったのでした。見坊氏『現代日本語用例全集』には載っているでしょう。残念なことに手元にありません。同氏の『三省堂国語辞典』には「すさましい」「すざましい」「すざまじい」の語形が報告されています。さすがは見坊先生です。
「すさまじい」のようにやたらに濁音化する例をほかに思い出そうとしているのですが、出てきません。ちなみに、「〜じい」と濁る形容詞は、古来
いみじ/同じ/犬じ・馬じ・時じ・我じ……(これらは万葉語)/らうらうじなどがあります。現代の「むつまじい」は「むつまし」が濁ったようですが、「むずまじい」にはなっていません。「ひもじい」は「ひ文字い」ですから語構成がちょっと違います。
skid さんからのコメント
( Date: 2003年 01月 09日 木曜日 12:54:12)
『現代日本語用例全集』に「すさまじい」の項目はありませんね。
「あとすさり/あとすざり/えとずさり」
「あとしさり/あとしざり/えとじさり」
なんてのはいかがでしょう。
松井栄一著『国語辞典にない言葉』『続・国語辞典にない言葉』に取り上げられています。
skid さんからのコメント
( Date: 2003年 01月 09日 木曜日 15:01:21)
「えとずさり」「えとじさり」の「え」は、入力ミスでした。
「あとずさり」「あとじさり」です。
UEJ さんからのコメント
( Date: 2003年 01月 11日 土曜日 04:29:50)
広辞苑から濁音化した形容詞をいくつか拾い出してみました。
あわただし・い(アワテルと同源。古くは清音)
いぶかし・い(上代はイフカシと清音)
おびただし・い(近世初期頃までオビタタシと清音)
かがやかし・い(光り輝いてまばゆい意。近世前期まで清音)
かぐわし・い(「香細(くわ)し」の意)
まぎらわし・い(古くはマキラワシ)
もの‐ぐさ・い(古くは清音)
「かぐわしい」や「ものぐさい」は連濁とも呼べるかもしれません。
(「ものぐさい」の本当の語構成は知りませんが)
「すざまじい」とはまた違いますが、
「あわだたしい」「おびだたしい」と言ってしまうことはありそうです。
Googleで「あわだたし」は約188件、「おびだたし」は約64件。
前者に関しては「泡立たし(約15件)」「泡だたし(約6件)」という表記まであり。
「泡立つ」→「皿洗い・洗濯」→「忙しい」という連想が働いているという話を
どこかで読んだ記憶があるのですが、どこでだったか思い出せません。
音はあっているのですが「泡ただし(約12件)」、まさかと思ったけど「泡正し」も1件だけあり。
後者は「帯立たし」は無かったけど「帯だたし(1件)」。
こちらも音はあっている「帯ただし(約25件)」のパターンもあり。
さすがに「帯正し」はありませんでした。
これらは「腹立たしい」「苛立たしい」との混同だと思いますが、
「腹ただし(約3,120件!)」「いらただし(約413件)」も多いです。
話が逸れてしまいました。
単純な濁音化とは呼べないかもしれませんが、こんなものもあり。
かんばし・い(カグハシの転)
こうばし・い(カグハシの音便)
とぼし・い(トモシの転)
下は逆パターン。
しかつめ‐らし・い(シカツベラシから変化した語)
以下はどちらが先なのか…。
むずかし・い(ムツカシイとも)
さみしい→さびしい
CD-ROM版広辞苑で「古くは清音」で全文検索すると形容詞以外にもいろいろ見つかりますが、
「古くは濁音」の検索結果は0でした。
skid さんからのコメント
( Date: 2003年 01月 11日 土曜日 02:45:30)
形容詞ではないのてすが、松井栄一著『出逢った日本語・50万語』に『和英語林集成(第三版)』と現在との異なる言い方を掲載したもののうち、漢語の清濁に関するものがけっこうあります。
また、松井先生は『東京成徳大学研究紀要』(1994年)で、明治期の漢語の清濁について書いていらっしゃいます。
それらをみると、どうも清濁のあいまいさは伝統的な感じがします。
NISHIO さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 16日 日曜日 03:38:46)
UEJ さん:
>以下はどちらが先なのか…。
>
> むずかし・い(ムツカシイとも)
『ことばに関する問答集―総集編』に、
古くは「むつかし」、江戸語で「むずかし」が発生云々とあります。
東西方言の違いに基づいているという解釈もある由。
備讃方言圏で生まれ育った私はずっと「むつかしい」を使っていたので、パソコンの仮名漢字変換で当初「難しい」が変換できずイライラしました。
いつの間にか、MS-IME2002では「むつかしい」と「むずかしい」の両方が使えるようになっています。MS-IME97の辞書は「むつかしい」がなかったような覚えがあります。