2003年02月19日

「ビール」が「大好物」(道浦俊彦)

「ビール」や「ワイン」「ジュース」「牛乳」といった「飲み物」に対して「好物」という表現を使うことに私は抵抗があるのですが、皆さんはどうでしょうか?また、どうして『好物』は飲み物に使うと違和感があるのでしょうか?(ない方は、この質問には答えられないと思いますが。)


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 02月 19日 水曜日 02:39:52)

私も「ビールが好物」「紅茶が好物」等々は違和感があります。

しかし『日本国語大辞典』『広辞苑』等々には「すきな飲食物」とあります。そこで、新潮文庫CD-ROM等のいくつかのデータをみると、「酒が大の好物」(二葉亭四迷)、「コーヒーと煙草は好物で」(阿川弘之)、「好物の酒ではどうじゃ」(芥川龍之介)、「好物の、蕎麦湯で割った焼酎」(三浦哲郎)、「スープのたぐいはすべて好物だから」(阿刀田高)、「好物の葉巻」(加賀乙彦)、「おれも風呂は大好物だ」(子母沢寛)、「好物であるコーヒー」(野坂昭如)、「ことの外それ〔葡萄酒〕が好物で」(野村胡堂)と、いろいろあります。

ただ、飲み物は少数派であるようです。食べ物のほうが飲み物よりも品目が多いということがあるかもしれないと思いますが、いかがでしょうか。

やや似たようなお話を。

われわれが「食べる」物の中には、「食べ物」でないものがあります。「食べる物」必ずしもイコール「食べ物」ではありません。では、その例外は何でしょう。

「薬」ではありません。「薬」は「のむ」ものですから、食べているわけではありません。「スープ」も、英語では‘eat soup’ですが、日本語では飲むものですから違います。

答えは「かき氷」(または「かち割りの氷」)です。かき氷に対して「食べ物」という表現を使うことに私は抵抗があります。「かき氷を食べる」とはいうけれども、「食べ物」とは思われないのです。違和感のない方も、いられますでしょうか。


道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 02月 19日 水曜日 19:06:03)

ナルホド。Yeemarさんと同じようなことを昨日考えたのです。「食べ物」イコール「食べる物」ではない、に近いのですが。
つまり「食べる物」は「食べ物」ですが、「食べるもの」は「食べ物とは限らない」ということを考えたのです。この場合の「物」は具体的な物質、「もの」は概念を指すという使い分けを、私はします。


道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 02月 19日 水曜日 19:36:50)

「かき氷」ですが、私はまあ「食べ物」でもいいかなあ、と。
静岡県出身のHアナウンサーによると、静岡県焼津市では「かき氷」は「食べる」ものではなく「飲むもの」だそうです。「氷、飲みに行こう!」と言うそうです!!子どもの頃の話。30年ぐらい前の話です。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 02月 21日 金曜日 15:37:01)

「かき氷」を「氷水」(こおりすい・こおりみず)という向きもあるようですから、「水」ならば飲むこともOKでしょうか。甲子園の「かち割り」は、これは飲めそうにないですね。

私の語感では、「消化吸収」が可能なものでなければ、「食べ物」とは言えないように思われ、「かき氷」ははじかれてしまいます。おそらく、この語感は人によって異なるのでしょうね。アンケートを取ってみれば面白そうです。

「食べ物」というものが、あらかじめ自然界にあるのではなく、ことばによって作り出されたカテゴリーにすぎないということが、このことを以てしても分かります。


道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 02月 21日 金曜日 16:06:48)

「かち割」は夏の甲子園では、30分もたたないうちに「飲む」ことが可能な状態になりますよ・・・。


道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 03月 15日 土曜日 14:36:09)

「平成ことば事情」に[大好物」をアップしました。

平成ことば事情1092「大好物」


posted by 岡島昭浩 at 00:57| Comment(0) | TrackBack(0) | ■初代「ことば会議室」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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