どこで聞いていいやらずっと困っていたことがあるので、場違い
かもしれませんが、相談させてください。
最近「最もAAであるBBのひとつ」という言い方が増えてきたと
思います。しかしこれは、英文を訳すときにしかたなくつかわ
れた用法で、正しい日本語ではないと聞いたことがあります。
(日本語の「最も」は単数であって複数ではないものだから)
本当はどうなのでしょうか?
もともと違和感があったのですが、先日NHKのニュースでも使
われていたのを聞いて、ぐっと違和感が高まりました。
道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 05月 15日 木曜日 07:30:13)
英文和訳の影響はあるかもしれませんね。根拠はありませんが。
ニュースでは「最大級」「最古級」というような表現がよく出てきます。これも「最大」とか「最古」ではなく、「そう呼ばれているもののうちの一つ」ということなんです。そういう意味では、「最古級」は、その「最も古い」ものが確定していないような場合に使われています。「最大級」は「最大」であることがメリットである場合に、それに「あやかりたい」という、売り手側、宣伝側(マスコミなども含む)の意図によって生みだされたのではないでしょうか?
Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 05月 15日 木曜日 07:38:54)
鎌倉時代の「宇治拾遺物語」には「昔、天竺に一寺あり。住僧もつともおほし。達磨和尚、この寺に入て、……」とあり、これはこの寺が住僧の人口において天竺第1位というわけではなく、「住僧が非常に多い」ということと解されます。
すると、日本語では「最も」は古来only oneである必要はなかったことになります。
「最も優秀な学生の一人」という言い方が欧文脈の直訳ということは間違いないでしょう。もとの言語では論理的に正しいのかどうか分かりませんが、もとの言語では、あるいは「最も優秀な学生(のグループ)の一人」という考え方なのかな、と想像しますが、いかがでしょうか。
欧文脈が日本語にどのように取り入れられていくのか、もう少し勉強してみたいと思います。明治〜大正〜昭和とどのように移り変わっていくのか知りたいものです。
Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 05月 15日 木曜日 07:41:24)
上記「宇治拾遺物語」の例は『日本国語大辞典』の用例にとられているものです。
岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 05月 19日 月曜日 00:43:27)
「最も○○なものの一つ」の用例ですが、どうやら明治以降のようですから、翻訳による表現だ、ということがあるのでしょうが、Yeemarの書いておられるように、「最も」の意味が唯一である必要がない、ということは関係してくると思います。ただ江戸にも「もっとものひとつ」というように見えるのがあり、これを検討せねばなりません。
さて、明治以降の用例です。
漱石『三四郎』
この字は三四郎の覚えた外国語のうちで、尤も長い、又尤もむずかしい言葉の一つであった。意味はまだ分らない。
漱石『彼岸過迄』
敬太郎は、田口の義弟に当る松本が、叔父という資格で、彼の娘と時間を極めて停留所で待ち合わした上、ある料理店で会食したという事実を、世間の出来事のうちで最も平凡を極めたものの一つのように見た。
鴎外『妄想』
凡ての人為のものの無常の中で、最も大きい未来を有しているものの一つは、やはり科学であろう。
伊藤左千夫 大正四年九月「アララギ」長塚節追悼号
いい加減にしておくことは、長塚君の最もきらいなことの一つであった。
島崎藤村『家』
その晩は、若いものに取って、一年のうちの最も楽しい時の一つであった。
寺田寅彦「映画時代」
そういう意味でニュース映画は自分にとって最もおもしろいものの一つである。
古そうなのだけ。