小学5年生から「学校で方言のことを調べる授業があります。方言はどうして、できたのか教えてください」とのメールをもらいました。
ああ、それなら……と参考書を示そうとして、小学5年生にふさわしい方言の入門書を知らないことに気づきました。まさか柳田国男『蝸牛考』というわけにもまいりますまい。小学館『方言の読本』は、『日本方言大辞典』の副産物としてできたらしい一般向けのやさしい本ですが、「方言はどうしてできたのか」という根本的なことは書かれていないし、第一、小学生にはやはりむずかしすぎます。
そこで、参考書は示すことができず、ない知恵をしぼって私なりの考えを書いて返信した次第でした。それにしても、その後わかったともわからぬとも返事が来ないのは、どうしたことでしょうか。
また、学生に、音韻・アクセントのやさしい――というより、おもしろく読める参考書を示そうとして困ったこともあります。
おもしろく読める参考書といえば、まずは○○新書・○○文庫のたぐいでしょう。ところが、語彙や文法、文字などに関する新書・文庫は多いのに、音韻・アクセントに関するものはあまり見当たりません。金田一春彦氏でさえ、音韻・アクセントだけをテーマに一般向けの本を書いてはおられないと思います。今のところ、私の知るのは城生佰太郎『ことばの未来学』(講談社現代新書)ぐらいです。
岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 07月 18日 金曜日 12:52:07)
これは、今でも買えそうです。
→ 彦坂 佳宣 『方言はまほうのことば!ことばの探検―4』
岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 07月 18日 金曜日 12:59:13)
福武書店の『方言をしらべよう』全10巻は、もうないようです。
→ 『方言をしらべよう』(webcat)
岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 07月 18日 金曜日 13:09:31)
シリーズ全体が見渡せるページがないかと思ったがうまく見当たらないので、サーチで。
アリス館はここだと思うのですが。
→ ことばの探検(アマゾン)
岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 07月 18日 金曜日 13:39:46)
>その後わかったともわからぬとも返事が来ない
「インターネットで調べよう」という名目のもとに生徒に調べさせる。しかし、「もしメールで尋ねるとしたら」というようなことも教えないのはどうしたことなのでしょう、と思います。
>音韻・アクセントのやさしい――というより、おもしろく読める参考書
たしかに、思いつきません。
skid さんからのコメント
( Date: 2003年 07月 19日 土曜日 02:40:04)
まだ見てはいないのですが、学研の『小学生の新レインボー方言辞典』はどうなんでしょう。
Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 07月 19日 土曜日 06:08:11)
「ことばの探検」シリーズ、『新レインボー方言辞典』など、小学生にというよりは私自身が読みたいと思いました。『レインボー』は分類方言辞典というおもむきですね。
amazon.co.jpによりまとめると、アリス館「ことばの探検」シリーズ(1997.04)のラインアップは:
1 吉田 智行『日本語は世界一むずかしいことば?』(日本語と世界の言語)
2 あべ せいや『日本語のルーツをさぐったら…』(日本語の起源)
3 飛田 良文, 荒尾 禎秀『ことばのはじめ ことばのふるさと』(日本語の単語)
4 彦坂 佳宣『方言はまほうのことば!』(方言と標準語)
5 湯浅 茂雄『生まれることば 死ぬことば』(新語・流行語・隠語)
6 浅田 秀子『日本語にはどうして敬語が多いの?』(敬語)
7 木下 哲生『ことわざにうそはない?』(ことわざと慣用句)
8 古藤 友子『日本の文字のふしぎふしぎ』(漢字・ひらがな・カタカナ)
ここでもまた音韻・アクセントが抜けております。文法もないようです。第1巻でまとめて触れているのかもしれませんが。
道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 07月 19日 土曜日 10:32:44)
参考書・・・は示せないのですが、「方言はなぜできたか?」ではなく「共通語(標準語)はなぜできたか?」を教えるべきではないでしょうか?
方言・・・というか、言葉は最初からその地域地域にあるものではないですか?
標準語という概念が出来たことでその対立概念として「方言」という「くくり」がでてきたのではないでしょうか?
と、感じましたが、いかが?
岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 07月 19日 土曜日 12:15:43)
まず、標準語:方言という問題の前に、〈言語の地域差はなぜ出来たか〉ということから考えてみるべきでしょう。
かつて日本語がどの程度の範囲で使われていたものなのかは知ることが出来ませんが、現在、日本列島の全域で使われています。そして、日本語には地域差があります。これは標準語が必要とされる以前からあった地域差です。これが何故生じたのかを考えてみるのはよいことだと思います。
〈北の方は寒くて口を開けないように発音したから東北方言が出来た〉などという俗説に惑わされない目を、子供たちに持って貰いたいものです。
Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 07月 19日 土曜日 20:46:51)
方言の観念ということなら、万葉集にも「東歌」がありますし、「鳥が鳴くあづま」と東国方言を鳥のさえずり扱いにしているので、ことばの差は古くから意識されていたのでしょうね。
私はくだんの小学生に、「グループによることばの差というのは、あなたのクラスの中でも生まれることがあるはずです」などと教室内のことを例に挙げて書き送りましたが、同意が得られたかどうかは、なにしろ返答がないのでわかりません。その小学校の先生が、「東北では口を開けないので訛りが生まれたのです」というようなことを教えているのかどうかも、なにしろ返答がないのでわかりません。小学生よすべからくメールには返答すべし。
くさむら さんからのコメント
( Date: 2003年 07月 20日 日曜日 06:57:35)
未見ですが、佐藤亮一監修 日本の方言大研究(全7巻・7巻のみCD付き) ポプラ社 \19,000 などはいかがでしょうか。
6冊目の「なるほど方言学入門」に、「方言と共通語」「方言はなぜできるか?」「方言はいつごろからあるのか?」「古いことばが生きている」などの項目があります。
→ ポプラ社ホームページ
岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 07月 20日 日曜日 23:00:44)
くさむらさん、有り難うございます。
そのポプラ社のと、福武のを混同していました。ポプラ社のものの、福井市立図書館で借りてみたことがあります。「ききくらべよう日本の方言」は、うちの子供に好評でした。
Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 07月 21日 月曜日 20:03:15)
ポプラ社のものも役に立ちそうですね。大人にとっても。「こちら」は直リンクです。
「ききくらべよう」に入っている方言による桃太郎の語りは、富士通の日本語探検シリーズに入っている「方言ももたろう」および「日本列島ことばの探検」の中の「桃太郎」とは別物なのでしょうか。「日本列島ことばの探検」は持っています。「方言ももたろう」は持っていたか、持っていてなくしてしまったのか、分からなくなりました。
Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 04日 木曜日 18:19:11)
> 音韻・アクセントのやさしい――というより、おもしろく読める参考書
柴田雅生氏の「日本語研究のための参考図書」(価格は1000円程度までとする方針)の「音韻・文字に関するもの」でも、ほとんどは文字関係で、音韻に関するものは橋本進吉『古代国語の音韻に就いて 他二篇』だけとなっていますね。
Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 04日 木曜日 18:22:29)
↑おや、リンクが私の本の箇所になっています。失礼しました。はい、さようです、私の本を記していただいているのを拝見したついでに、音韻・アクセントを探してみわけです。