2003年10月29日

プラスのことば:「効率化」は「“好”効率化」を表す(ogi)

もともとの語には程度もプラスマイナスもないのに、ほかの語とくっつくとプラス表現になる語があると思います。
例えば「効率」は「効率的」「効率化」となると「効率がよいこと」を表します。
よくスポーツ選手などが「結果を出す」と表現することについて、ある時期新聞やテレビ、日本語本などでも問題になっていましたが、
私は「結果」は「よい結果」なのだと思っています。
こういった語はたくさんあると思いますし、もしかしたらプラス表現だけでないのかもしれません。
ただ、例を探すのが難しく、皆さんのお力を借りられたらと思って投稿いたしました。
また、この件について皆さんのご意見もぜひお聞かせください。

(ひと通りこれまでのものを見てみたのですが、見当たらないようなので投稿いたしました、もし似た項目があるようなら教えてください)


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 29日 水曜日 18:00:40)

佐竹秀雄『サタケさんの日本語教室』(角川文庫 2000.03.25初版)の p.21に「結果を出す」という節があります。

そこに紹介されている例としては「評価」「タイプ」です。

 これ〔結果〕と似ているのが「評価」。「評価」自体には、よい場合も悪い場合もあるが、「評価されている書物」「その努力を評価したい」といえば、「よい」意味に限られる。ただ「結果」と違って、これらはすでに一般化していて、辞書にもこの使い方が載せられている。
 もう一つ似た語が「タイプ」。「彼はわたしのタイプよ」などと使い、これは「好みのタイプ」の意味だ。俗語的で、一般化の程度は、まだ「結果」以下のようである。
私の思いつくのはほかに:
・「天気」。悪い天気もあるはずだが、「今日は天気だ」といえば「良い天気」。
・「雰囲気」または「ムード」。「雰囲気がある」は、悪い雰囲気ではなく「良い雰囲気がある」ということ。
・「健康」も、healthの訳語であるからには「悪い健康」もあるはずですが、「健康な人」といえば、「健康の良い人」ということになります。
・「経済(的)」。「電気代がかからず経済だ」といえば、「経済に負担がかからない」。
・「始末」も、「おばあさんは始末な人で、新聞の折込広告をみな小さく切ってこよりでとじ、釘にかけていた」(高島俊男)というのは、「始末をきちんとつける=倹約する」ということでしょう。私自身は使わないことばなので、ニュアンスがよく分かりませんが。
・「しあわせ」。「仕合せ」だから、もともとは「巡り合わせ」というほどの意味。「しあわせのよい人」などと言っていたのが、「しあわせな人」になった。当然「しあわせの悪い子」(不幸な子)などという言い方もあるわけ。
・「理屈な」(金沢方言)「あーら理屈なー」というと、「ああら、いい考えね」ということ。「理屈」に「合っているか・合っていないか」を言うのを省略して、「理屈」だけで「合理的、名案」の意味を表した。

以上はただの思いつきです。これらとは反対に、悪い語感の伴うものもあるはずです。

・「批判」は、よい・悪いを論ずることですから、「私の説についてどうぞご批判ください」という場合、必ずしも「けなしてください」と言っているわけではないはずです。しかし、「私の考えは友人から批判された」というと、これは「非難された」に近い語感があります。

やや異質なものをごった煮的にまとめたようにも思われます。ご批判ください。


ogi さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 30日 木曜日 02:07:35)

ありがとうございます。
異質なものだとしても、とにかく拾ってみて、それからどういった類のものがあるか、何か規則を見つけられるか考えたいと思います。

「私の説についてどうぞご批判ください」の場合は敬意表現として見るとやっぱり、「けなしてください」の意があるのではないかと感じました。
でも、「批判」に似た類にマイナス表現になるものが探せば出てきそうに思いました。いろいろあたってみたいと思います。
「理屈な」はそうですよね。私も北陸出身なので、似たようなことばがあって、とてもよくわかりました。

「語彙索引の検索」で『サタケさんの日本語教室』が出てきたのに、それに先に当たらずに投稿してしまって申し訳ございません。
明日、図書館と本屋に行ってまずその本もじっくり見てみようと思います。
ある時期、「結果を出す」について批判がありましたが、私はそれは語の一面的なところしか見ていないのではないかと思っておりました。
ただ、新聞記事やニュースなどは「わかりやすく」という目的があると考えたとき、やはり問題が起きるのかもしれません。
例えば、新聞の見出しで「〜の公算」というのをよく見かけますが、これは「公算が大きい」を表していると私は解釈していますが、
「〜の公算大」としないといけないと新聞社では言っています(東京新聞「ことば言葉コトバ」、2003年10月22日付)。
これは新聞という制約の上では仕方のないことなのでしょうか。
日本語としてどうか、というのと違う問題と捉えた方がいいのでしょうか。

これからもたくさんの語例とご意見よろしくお願いいたします。

東京新聞「ことば言葉コトバ」バックナンバー


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 07日 金曜日 17:54:46)

「批判」は、「私の説についてどうぞご批判ください」は、たしかに謙遜の意(「けなしてください」)が入っているかもしれません。「源氏物語の本文を批判する」という場合は、これはべつに「源氏物語の本文はまるでなっていない」などとけなすわけではなく、どの本文がより原形に近いかを比較検討することであり、ニュートラルな用法と思います。

某私立大学では、教授が定年退職するときは、「退職」ではなく「解任」というのが正式です。これがある程度一般的な用法だとすれば、「解任」は、「責任を問われて解任された」のようなマイナスの場合だけでなく、ニュートラルな場合にも使われるということです。というよりも、ニュートラルな「任を解く」が、多くの場合、マイナスの場合に使われるということで、「批判」と同じであろうかと思います。

「ていたらく」は、「悪い、ひどいていたらく」と形容詞を冠して使われていたのが、今では「ていたらく」だけで「ひどいていたらく」の意を表し(例「大学生のていたらくが明らかになる」)、「ていたらくぶり」「ていたらくな」などのことばも現れているということを書いたことがあります(こちら)。これが一般化すれば、「ていたらく」も例に入るでしょう。


ogi さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 08日 土曜日 00:42:58)

たしかに、その例は思いつきませんでした<「批判」
「解任」もたしかにマイナスの場合に使われる場合が多いです。
「解任」の裏には「任期を決めるのは自分だ」と思っているような、なんだか日本の伝統的な考え方が映っているように思います。
「ていたらく」にはそんな広い用法があったのですね!
どんなことばがこれにあてはまるかとずっと考えているのですが、なかなか用例が思いつかなくて。

「的」「化」をつけて成り立つことばの場合は、反対の意味にするとき「無○○的」「非○○化」など、わざわざ否定を必要とする○○が、当てはまることが多いのかなと、、、思っていたのですが、今までの例を考えてみてもわかることですが、これではいまいち、いやほとんど説明できないようです。これは焦るより、用例を探し続けるしかないかな。。。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 12月 23日 火曜日 05:51:36)

「人物」ということばがプラスイメージ(大人物)の意で用いられることがあります。

 たしかにギルビー校長は人物だった。アヴァリルが聖アン女学院に入学したときも校長の職にあり、その一学期後にようやく引退したのだが、新校長には前任者のようなダイナミックな個性が欠けており、学校の評判は、その後急速に低下した。(アガサ・クリスリティー・中村妙子訳『春にして君を離れ』ハヤカワ文庫 1973.03.31発行・1995.12.15 32刷 p.118)


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 12月 23日 火曜日 07:34:01)

「あの男は心臓だ」というのは、「あの男は強心臓だ」ということですが、これはからかいの気味が多分にあり、単純なプラスイメージではないようです。かといって、まるきりマイナスイメージでもないようです。


かねこっち さんからのコメント
( Date: 2003年 12月 24日 水曜日 11:28:08)

二酸化炭素などの気体が増加することにより地球の平均気温が上昇するとする説は広く認知されているようです(異論もあるようですが)。
この「地球温暖化現象」の原因となっているといわれる、いわゆる温室効果ガスなどについて論じるときに、しばしば「寄与」という言葉が使われるようです。
たとえば、「温室効果ガスの地球温暖化への寄与度 」あるいは「二酸化炭素の温暖化寄与率」などのように。
「寄与」はcontributionの訳語のようですが、これですと言葉のイメージとしては、地球温暖化はまことに望ましいことのように感じてしまいます。
「関与」などとすればまだしもの感ありですが、いかがでしょうか。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 12月 24日 水曜日 12:22:42)

「寄与」のことは初めて伺いましたが、この類例(または逆の例)と思われるものが別のスレッド「ああ、勘違い」にあります。「活性酸素」「冗長性」「富栄養化」など。


道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 12月 25日 木曜日 09:39:30)

兵庫県尼崎市の公害の裁判で、トラックの排ガスが「大気汚染に寄与」という判決文があったと思います。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2004年 01月 10日 土曜日 05:14:03)

結構

「結構な御堂じゃな」というのは、「立派な結構(造り)のお堂じゃな」ということですが、それがいつしか「立派なお堂じゃな」というふうに意義変化したということを考えれば、「結構」も中立から肯定的な意味の語に変わった一例といえるでしょうか。

別スレッド・「結構」はなぜ、あいまいになったのか?


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2004年 02月 06日 金曜日 13:38:57)

アイデア
「考え、思想、観念、思いつき、着想……」という意味ですが、「グッドアイデア」という意味で使われます。上記の「理屈な」と似ています。

(FAXで)わが家の防犯。私ども六十歳後半の二人暮らし。……
伊東アナウンサー「二人暮らしなんですね」
……ガレージの車は黄色のスポーツタイプ。そして、玄関脇には若者向きの自転車を置き、大家族のように見せかけています。
国井アナウンサー「アーなるほど」
伊東アナウンサー「はー、これもアイデアですね」(NHK「お元気ですか日本列島」2004.02.02放送)
『スタンダード英語語源辞典』(大修館書店)によれば、ideaは語源的にはラテン語「(プラトンの)理念」、ギリシャ語「様子、形、性質、理想形」とあって、この「理想形」にすこしよい意味という含みが感じられます。似た発音idealとは直接には関係なさそうです。


posted by 岡島昭浩 at 12:39| Comment(0) | TrackBack(0) | ■初代「ことば会議室」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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