2004年02月01日

「五十連音図」縦横誦習の薦め(波江究一)




たてぬきに大和言葉の仮名の数誦みつくしてぞ言癒さまし


五十音図とは母音同じきを以て段を構成し、子音同じきを以て行を為す経緯図ですから、誦み習はせるには「あいうえお」から「わゐうゑを」までの行だけでなく「あかさたなはまやらわ いきしちにひみいりゐーーーーー」と続く段の語序も併せて暗誦み習はすべきでせう。これを国語問題を取り扱ふ講演会の前に講師聴衆一緒になつて唱和して頂きたい。当然国語の授業にも「詩のボクシング」の競技前にも心してこれを習慣づければ自づと「現代国語」なるものの非理不合理に国民全般が目覚めてくる契機となる筈です。

又五十音図が使用音標の一覧羅列では無く、語形活用を定める方程式であり、表であるといふことを周知徹底させるには宣長の呼称「五十連音図」といふを採用してみるも可と思ひます。五十音図とは契沖の命名が明治四年の文部省令で採用されて以降定着したものでして変遷表をご覧になればわかるやうに五韻次第 五音相通 たてぬき 等時代により著者の認識によつて呼称区々でした。

かなころがしを「占領仮名」と呼び「アメリカの陰謀」と毛嫌ひする向きもありますが、責任を他

に転嫁するやうで好ましからず。却て今の言語状況を諷刺するにふさはしいのは当のアメリカ大統領リンカーンの語録に

全体を一時期 一部の人々を永遠に騙すことは出来ても全体を永遠に騙し続けることは出来ぬ

とあり。まさしく今は全体が一時期騙されて居る状態です。


一部が自由一部が奴隷といふ状態では連邦は永続出来ぬ。一方が他方を絶滅するまでこの戦ひは

止まぬであらう

と「別れたる家」の演説の精神を貫徹して大統領になつた彼は南北戦争に突入してゆくのですが、

仮名遣がかなころがしを撲滅するまでといひ換へてもおなじです。山田孝雄博士もこれと似た口吻

で論じてをられました。

何より文とは真理によつて指針づけらるべき物であり、一時期の官憲の腕力によつて強制慣用化され朝野これを疑はぬやうになつたところで、不磨の真理に化け変はれるものではないといふことを

遠からず肝に銘ずる時至らぬ限りは日本の一段の脱皮成長はあり得ぬと断言してよい。鹿は飽くまで鹿でしかなく馬にはなり得ぬもの。いたづらに滅びの門を駄々広くするものではない。事は文化

の大枠骨組みに関はるものですから。


posted by 岡島昭浩 at 12:30| Comment(0) | TrackBack(0) | ■初代「ことば会議室」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック