「なぜ、品詞によってアクセントが変わるのか?」
ということです。
一応自分で考えて導いた答えは、
「平板アクセントは、次に続く言葉との区別が付きにくい。中高アクセントであれば区別・強調がしやすい。副詞は主語になりえず、用言の修飾という従属的な立場にあるので、あまり強調しなくても文意が伝わるが、名詞は主語や目的語になり、強調することで文のニュアンスが変わることもありうる。ゆえに、ほかの語と区別が付きやすく強調しやすい『中高アクセント』(頭高や尾高でもいいですが。つまり『平板アクセントではない』、ということ)を、名詞の場合はとるのではないか?」
というものでしたが、本当のところはどうなんでしょうか?
Yeemar さんからのコメント
( Date: 2004年 03月 16日 火曜日 13:21:51)
平板型に比べて起伏型(頭高、中高、尾高型の総称)が「強調しやすい」かどうかは慎重に考えるべきだと思います。「かなり面白い」の「かなり」を若い人が平板で言っていますが、この場合、頭高で言うよりも平板で言ったほうが強調している感じがします。
ところで、「名詞・数詞からの転成副詞」について『新明解日本語アクセント辞典』に述べるところがあります(付録p.66)。
「数」「時」「量」を表す名詞・数詞が副詞的に用いられるときは,一般には変化しないことを原則とする。但し,尾高型のもの,及び最後の拍が引き音・撥音・二重母音副音でその前の拍まで高いものは,平板型に変る傾向がある。そしていくつか例を出しています。分かりやすいものを抜粋してまとめると:
《引き音〔ー〕で終わる》
「十(とお)」(起伏型)→「十(平板型)ある」
「昨日(きのう)」(起伏型)→「昨日(平板型)見た」
《撥音〔ん〕で終わる》
「たくさん」(起伏型)→「たくさん(平板型)買う」
「五人」(起伏型)→「五人(平板型)帰る」
《二重母音〔アイ・オイ等〕で終わり、その二重母音の中にアクセント滝がある》
「三回」(起伏型)→「三回(平板型)出た」
「おととい」(起伏型)→「おととい(平板型)来い」
ではなぜこうなるか、ですが、なぜでしょうね。
Shuji さんからのコメント
( Date: 2004年 03月 18日 木曜日 03:53:08)
文で考えてみると、たぶん以下のようになると思います。
1、「きのう」の映画は良かった。・・・きのう(名詞・起伏型)
2、「きのう」見た映画は良かった。・・・きのう(副詞・平板型)
3、「きのう」いい映画を見た。・・・きのう(副詞・起伏型)
2の文で副詞「きのう」が平板型になるのは「きのう見た」が「映画」にかかって「きのう見た映画」で全体で名詞節をつくっていることが関係しているのではないでしょうか。
これは単独の「サッカー」(頭高)が「協会」にかかって「サッカー協会」となると「サッカー」の部分が平板型になるのと同じ作用のような気がします。
Shuji
→ 日本語はいかが?「書き言葉」と「話し言葉」
道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2004年 03月 18日 木曜日 05:01:31)
Shujiさん
2の「きのう」は「見た」にかかるから「副詞」で平板でいいのでは?
3の「きのう」は「起伏」ではなく「平板」では?
また「サッカー協会」は、複合語の場合にはコンパウンドするということで、今回の件とは関係ないのではないでしょうか?
Shuji さんからのコメント
( Date: 2004年 03月 18日 木曜日 11:36:35)
道浦さん
>2の「きのう」は「見た」にかかるから「副詞」で平板でいいのでは?
3の「きのう」は「起伏」ではなく「平板」では?>
副詞としての「きのう」のアクセントについては、私は二通りに考えたほうがいいと思っています。
2、「きのう見た映画」は良かった。・・・名詞節をつくる「きのう」(副詞・平板型)
3、「きのう」、いい映画を見た。・・・名詞節をつくらない「きのう」(副詞・起伏型)
>「サッカー協会」は、複合語の場合にはコンパウンドするということで、今回の件とは関係ないのではないでしょうか?>
2の副詞の「きのう」がアクセントの変更をして名詞節をつくる準備(予告)をする作用と、単独の「サッカー」がアクセントを変更して複合語をつくる準備をする作用と通うところがあるのではないか、というのが私の推測です。さらに、ご教示頂ければありがたいです。
岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2004年 03月 18日 木曜日 13:13:19)
Shujiさんのアクセント体系では、そのような規則になっている、ということでしょうね。そうなると、複合語化と通じる部分もあると思います。
ただ、3でも平板で現れるのが道浦さんや私などのように居るのですから(アクセント辞典等によればこれが記されている)、これは複合語化とは別に考えねばならないと思います。
道浦さんの書き込みを見てからは、「-り」「-と」などで終わらない副詞は、平板型が多いような気がするので(未調査)、それに引かれたのか、と思っておりました。
道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2004年 03月 18日 木曜日 13:42:47)
Shujiさん
アクセントを区別するポイントは「きのう」の単独の品詞ではなく、「きのう」が含まれる文章の中で「名詞節を作るか作らないか」ということでしょうか?
佐藤 さんからのコメント
( Date: 2004年 03月 18日 木曜日 17:47:35)
倒置するとどうでしょうか。副詞なのに修飾される語(文節)が後続しないケース。
「え〜! 行っちゃったんですか? きのう」
(美術展の前売り券を売りつけようと思ったのに)
私は、まず起伏型を想起し、ちょっと考えて平板でもいいのかなと感じます。
道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2004年 03月 18日 木曜日 17:59:44)
私はこの倒置のケースは、(1)平板(2)起伏ですね。
(2)の起伏の場合は「きのうに。」の「に」が省略されたと考えてやはり名詞扱いだから起伏、と考えます。
岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2004年 03月 18日 木曜日 23:32:40)
このスレッドの最初の話は、「品詞によって変わるアクセント」でありました。
品詞によって、ではありませんが、意味によってアクセントがかわる一群があることを思い出しました。よく指摘されることですが、擬声語が起伏型で擬態語(的な使い方)が平板型である、ということです。
が’らがら と がらがら
ご’りごり と ごりごり
ど’ろどろ と どろどろ
起伏型が「ーと(音がする)」で、平板型が「ーになる」というものです。
岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2004年 03月 19日 金曜日 00:37:31)
>「え〜! 行っちゃったんですか? きのう」
この話と関係してきそうですね。
→ 最近気になる「語尾上げ」論
佐藤 さんからのコメント
( Date: 2004年 03月 19日 金曜日 21:04:02)
あ、ずいぶん時間が空いてしまいました。Shujiさんの示した
3、「きのう」、いい映画を見た。
ですが、私のアクセント(生後より埼玉県に22年在住)だと、まず平板が現れますが、
読点を相応のポーズとして発音すると、起伏型でもいいと思えます(あるいは、
やや朗読調になるかもしれません)。
で、ポーズを置くこと(=後続語との距離を多少なりとも置くこと)で副詞であっても
名詞と同じような起伏型が現れはしないか、また、そういう現象がありはしないかと
考えているのですが(あるなら、今後の説明がしやすい)、一方では、名詞の無助詞
用法(「おれ、東京、行って来るよ」)のようなものも考慮しないといけないか、
とも思っているところです。
あ、言葉・表現は異なりますが、方向としてはおおむね、道浦さん・Shujiさんと
似たようなことを考えています。
Shuji さんからのコメント
( Date: 2004年 03月 20日 土曜日 10:45:02)
最初の私の投稿で挙げた文例<1、「きのう」の映画は良かった。・・・きのう(名詞・起伏型)>
は、あまりいい例ではありませんでした。「の」を続けると
<「きのうの映画」は良かった。>のように名詞句をつくる意識が働き「きのう」が平板型になり得るからです。文例1を次のように「が」の続く形にしておきます。
(1)その映画は「きのう」が封切りだった。・・・きのう(名詞・起伏型)
>アクセントを区別するポイントは「きのう」の単独の品詞ではなく、「きのう」が含まれる文章の中で「名詞節を作るか作らないか」ということでしょうか?>(道浦さん)
日本語は最後まで聞かなくてもある程度その構造が予測できます。これは同時通訳者などが直感として捉えているのだろうと思います。
たとえば
<「きのう」、学校の先生が推薦した映画を見た>
の「きのう」(副詞)は「起伏型」ですが、
<「きのう学校の先生が推薦した映画」を見た。>
の「きのう」(副詞)は「平板型」になっています。
これは、最初の「きのう」のアクセントの変更が次に名詞節をつくる予告をしている、と見るのが自然のような気がします。
道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2004年 03月 22日 月曜日 11:28:32)
(1)<「きのう」、学校の先生が推薦した映画を見た>
(2)<「きのう学校の先生が推薦した映画」を見た。>
私はどちらの「きのう」も「平板」ですね。ただ、内容が分りにくいので、(1)の場合は「きのう」を「見た」の直前に置くようにします。ニュース原稿など(書き言葉)では。