「ご用の方はお申し付けください」
という場合の「申し付ける」を広辞苑で引くと
「上の者が下の者に言いわたす。」
となっています。普通「申す」は謙譲語なのに
なぜ「付ける」がつくだけで尊敬語になるのでしょうか?
また、「申し出る」を広辞苑で引くと
「(希望・要求・意見などを)進んで言って出る。」
と書かれており、謙譲語とも尊敬語とも書かれていません。
「申し込む」などと同様に謙譲・尊敬の意味が
失われているということなのでしょうか?
「お申し出ください」は正しい日本語なのでしょうか?
どうかご教示お願いします。
森川知史 さんからのコメント
( Date: 2000年 2月 28日 月曜日 20:05:48)
全く矛盾のない表現です。
まず、「お(ご)〜ください」は、聞き手への敬意表現ですね。「お考えください」「ご発言ください」のように、相手の「考える」行為、「発言する」行為を敬意を込めて促す言い方です。
この言い方の中に「申し付ける(上の者が下の者に言いわたす)」という相手の行為を持ち込んだのが「お申し付けください」ですから、どこにも矛盾はない訳です。
因みに、「申す」が謙譲語だと、確定的に信じられるようになったのは、近年のことです。例えば、古今著聞集には「(アナタノ)申さるるがごとく」が見えますし、近松はじめ多くの近世の作品には「否とは申されまいな。(水木辰之助餞振舞)」のように「申さる」が使われています。
相手の行為を「申される」と表現するのは誤りとする考えが現れたのは、おそらく明治以後の標準語政策の中で敬語の三分類が強く意識されるようになってからのことだと思われます。
Yeemar さんからのコメント
( Date: 2000年 2月 28日 月曜日 21:01:09)
拙「文字のスナップ」042では、この「お申しつけ下さい」という語法に違和感を感じたためと思われる訂正の例を紹介しています。ご参考までに。
もっとも、訂正の結果〈正しく〉なっているわけではないようですが。
UEJ さんからのコメント
( Date: 2000年 2月 29日 火曜日 23:34:55)
なるほど、謙譲の意味が失われたわけではなくて
最初から無かったのですね。納得しました。
ありがとうございました。