スポーツ選手がインタビューで「応援よろしくお願いします」と言います。
これは日本語として間違い(または問題あり)で、「応援をよろしく・・・」で
なければならないのかどうか、お教え下さい。
話し言葉としては、特に違和感はありませんが、文書として表現するとき、
たとえば、「依頼の件よろしく・・・」はダメで「依頼の件はよろしく・・・」
なのか。
些細なことで申し訳ありません。
岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2000年 9月 14日 木曜日 18:48:54)
「文書として表現するとき」というのが、どういう限定なのかが分かりませんが、日本語として間違いではないはずです。
聞き手・読み手の中に、問題あり、と文句を言いそうな人がいる場合には、おとなしく入れておけばよいと思います。
また、これを「省略」と言ってよいものかどうか。「助詞のない形」とでも言っておく方がよいようです。
天野修治 さんからのコメント
( Date: 2000年 9月 15日 金曜日 9:28:50)
「応援(、)よろしくお願いします」「依頼の件(、)よろしく・・・」と読点を入れると書き言葉としても使えるのではないでしょうか。「応援(を)よろしくお願します」「依頼の件(を)よろしく」というよりも「応援(のほど)よろしくお願します」「依頼の件(について)よろしく」のように(のほど)(について)の省略された表現と考えられます。「話し手の意思・感情」を差し挟みたくない場合は、寧ろ「を」(場合によっては意図的な「確認」の意思と受け取られる)などの助詞を入れない方が良いという無意識の判断が働くのかもしれません。
Oyanagi さんからのコメント
( Date: 2000年 9月 15日 金曜日 18:42:12)
初めて投稿します。たまたま手元に助詞の省略についての参考文献があったので紹介しておきます。
助詞の省略の問題は、書き言葉では使われるものが話し言葉で単に<省略される>場合と、省略自体に積極的な文法機能を認める<ゼロ助詞>の場合に分けて考える見方があります。
言語学(日本語学)では下の参考URLで富山大学の加藤先生の論文『ゼロ助詞の談話機能と文法機能』をウェブ上で読むことができます。
参考文献としては『日本語類義表現の文法(上)単文編)』(くろしお出版)の中で大谷博美さんが「ハもヲも使えない文」について小論を寄せています。
日本語教育関係では『月刊日本語』93年1月号(アルク)の「教科書の落し穴」という特集記事で「これを召し上がってください」の「を」が不自然になる場合とその理由が解説されています。
私の考えでは問題になっている「応援よろしくお願いします」は、上で挙げた文献で説明されているように、会話体における単なる<助詞の省略>ではなく、<ゼロ助詞>による文法機能のあらわれだと思います。もちろんこの二つの違いははっきりと線引きできるものではありませんが。
その主旨は対象の「ヲ格」にも「ガ格」と似た<総記>の用法が存在するために、話題を持ち出す際に対象に強く焦点が当たることを避ける心理が働いて<ゼロ助詞>になるというものです。
私の個人的な考えを付け加えると、談話機能として「押し付けがましい印象」を避けるために依頼表現などではこの<無助詞>の用法が積極的に行われていて、さらに<丁寧化>の意識の中で「〜ほう」などの焦点をぼかす用法につながり、「応援のほうよろしくお願いします」という日本語が生まれるのだと考えています。
→ 加藤研究室(論文)
畠中敏彦 さんからのコメント
( Date: 2000年 9月 18日 月曜日 8:54:26)
早速のご意見ありがとうございます。
1.岡島さんが言われるように、「助詞の省略」でなく「助詞のない形」として問題
ないようですね。ありがとうございます。
2.天野さんがご指摘のように、助詞のない形でも読点(、)を入れるとすっきりしま
すね。
助詞がある場合と、ない場合は微妙な意味の違いがあるのではないでしょうか。
たとえば、
1)「依頼の件、よろしくお願い・・・」→サラッとお願いしている。
2)「依頼の件はよろしくお願い・・・」→念押しをしている。
3)「依頼の件をよろしくお願い・・・」→やや強制している。
これ(微妙な違い)については、天野さん、Oyanagiさんもご指摘されておりますが。