2001年06月24日

T字路(道浦俊彦)

「T字路」は、たいていの辞書では「丁(てい)字路」でしか載っていません。アルファベットの「T]ではなく、「馬丁」の「丁(てい)」です。
おばあさんが、「Tシャツ」のことを「丁(てい)シャツ」と言うということを聞いたことがありますが、私はずーっと「T(ティー)シャツ」だと思ってきました。
そういえば明日の宝塚記念の一番人気の「テイエムオペラオー」は「テイエム」、「ティーエム」ではありません。

なぜ年配の方は「テイ」なのか?「丁」の「てい」だというのはそうだとは思いますし、「ティー」という発音がし難いというのも分かります。
しかし、もう一つ、思いついたのですが、アルファベットの「T]を「テー」と発音したのではないか?たとえばドイツ語です。そちらの教養が英語の教養に勝っていたのではないか?
こんな考えについてはいかがでしょうか?


UEJ さんからのコメント
( Date: 2001年 6月 24日 日曜日 9:43:19)

うちの会社では「T」を「テー」、「D」を「デー」と発音する慣習があります。
理由は電話などで「ティー」を「ピー」と、「ディー」を「ビー」と聞き間違えやすいから。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2001年 6月 24日 日曜日 21:39:17)

「T字路」「丁字路」について、どなたかが日本語に関する随筆ふうの文章を書いていたと思いますが(道浦さん以外に、書物で)、心当たりの本を探しても出てきません。たしか、「最近の若い者は丁字路をT字路というので困る……」といった調子の文章だったと思いますが、夢で読んだのかもしれません。ご存じの方はご教示いただければ幸いです。

『言葉に関する問答集 総集編』(文化庁)では「「丁字路」か「T字路」か」という項があって(p.589)、漱石・白秋・徳永直・鴎外・道交法などの例を引きながら「「ていじろ」の方が本来の言い方であることが分かる。」としています。すなわち「丁字路」に関しては、「T字路」を「テージロ」と読んだから「丁字路」になったわけではないようです。

幕末の『英米対話捷径』では「D」に「リー」、「T」に「チー」と振ってあります。その後も、「チー(tea)」「スチーム(steam)」「スタビリチー(stability)」「ピチー(pity)」(以上漱石の文章より。なおladyは「レデー」)など、[ti:]は「チー」と書かれ、発音されたのだろうと思いますが、アルファベットの「T」だけは「テー」も有力だったようですね(実態はどうだったか勉強不足で存じません)。

「丁」の発音に引かれた、また、道浦さんのいわれるようにドイツ語等の発音に引かれたのでしょうか。

小学校ではじめて授業を受けた日、「帰りの会」で、年輩の女性の先生が保護者への連絡事項を黒板に書き、われわれ生徒に書き取らせました。それにいわく

  ぴちえのあんない

連絡帳を見た母はこれを理解しませんでしたが、「PTAの案内」のことでありました。「ぴてえ」でなかったところからすると、担任の先生は「テー」派ではなく「チー」派であったかもしれません(1974年、高松市の話)。

小学校で「ティ」など外来音節の表記を教えるタイミングはむずかしいでしょう。漢字は学年別配当表といういちおうの基準がありますが。「テュ」などは高校の世界史の教科書に突如断りもなく出てきました。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2001年 6月 24日 日曜日 21:48:15)

小松左京氏に『題未定』という奇妙な作品があります。Dime tea など、「ダイミテイ」の音に似るさまざまなものがキーワードとなり、筋が進行していく作品でした。その中で「T」と「丁」が掛けられた部分がありました(詳細は忘れました)。

私は文春文庫で読みましたが、いまは角川事務所の「ハルキ文庫」として出ているようです。


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2001年 6月 24日 日曜日 23:16:35)

 丁字路・T字路で思い出すのが、交叉点・交差点です。子供の頃に高年齢層の「こうしゃてん」を聞いたとき、訛ってるんだな、と思いましたから。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2001年 7月 08日 日曜日 7:48:22)

外来語らしからぬ音形」に関連話題。

また、こんなものも書きました。http://www.asahi-net.or.jp/~QM4H-IIM/k010708.htm


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2001年 10月 12日 金曜日 0:24:39)

>「T字路」「丁字路」について、どなたかが日本語に関
> する随筆ふうの文章を書いていたと思いますが(道浦
> さん以外に、書物で)、心当たりの本を探しても出て
> きません。たしか、「最近の若い者は丁字路をT字路と
> いうので困る……」といった調子の文章だったと思い
> ますが、夢で読んだのかもしれません。ご存じの方は
> ご教示いただければ幸いです。

毎日新聞校閲部編『新聞に見る日本語の大疑問』(東京書籍、1999.05.25)p.48「チョー字路と覚えよう」〔上田泰嗣〕でした。

要旨――私はずっと「T字路」だと思ってきた。ところが校閲部の先輩が「テー字路はチョー字路だからね、チョー字路」と言った。「丁」を強調するためにそう発音したのだった。道交法も「丁字路」だ。しかし30代の友人数人は「T字路」。アルファベットに違和感はない。悪しき日本語破壊なのか、新しい日本語の創造なのかはともかく、仕事では判断に迷う日が続きそうだ。

べつに「最近の若い者は丁字路をT字路というので困る……」とは書いていませんが、世代間のギャップについて触れた文章の趣旨が、私の記憶の中で変容したもののようです。


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posted by 岡島昭浩 at 00:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ■初代「ことば会議室」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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