皆さん、こんにちは。
「重たい」「眠たい」の「たい」は、名詞・動詞連用形などに付けて形容詞をつくる接尾語で、「いたし」(痛し・甚し)から来ているようです。
それでは、「ひらべったい」の「べっ」、「厚ぼったい」「腫れぼったい」の「ぼっ」はどこから来ているのだろうか(あるいは「べったい」「ぼったい」で捉えるべきか)、という疑問が涌いてきました。皆さんのお知恵を拝借できれば有り難いです。
(バルセロナから)
天野 さんからのコメント
( Date: 2001年 12月 09日 日曜日 10:25:25)
自分で提起した疑問ですが、考えが浮かんだので書き込んでおきます。
「ひらべったい」については、文語では「ひらぶ」(四段)「ひらむ」(四段、下二段)という動詞があるので、例えば、下二段活用の「ひらむ」の連用形「ひらめ」+「いたし」から変形して「ひらめったい」→「ひらべったい」になった、と考えることもできます。
しかし「あつぼったい」や「はれぼったい」では、「ひらべったい」の「ひらむ」に相当する動詞が存在したのか確認できていません(「集む」なら存在するが)。
すると、「ひらべったい」は「動詞+たい」で「あつぼったい」「はれぼったい」は「名詞+ぼったい」と考えた方がいいのかもしれません。この推論でも「ぼったい」の正体が不明です。
上記の推論の是非も含めて、やはり、皆さんのご意見を窺いたいと思います。
Yeemar さんからのコメント
( Date: 2001年 12月 09日 日曜日 18:40:11)
『日本国語大辞典』にはほかに「薄べったい」「暗ぼったい」「安ぼったい」などがあります。「べったい」は載っていず、「ぼったい」を引くと、「いかにもそういう状態である、そういう感じである」ということで、静岡県では接尾語として「暗ぼったい」「荒ぼったい」「湿りぼったい」「濡れぼったい」などと使われるようです。
「薄っぺらい」「甘っちょろい」といった造語法とも関係があるでしょうか。「ぼったい」「ぺらい」「ちょろい」は「ぼたぼた」「ぺらぺら」「ちょろちょろ」を連想しますが、「べったい」は「べたべた」と関係があるか、どうか。
岡島 昭浩 さんからのコメント
( Date: 2001年 12月 11日 火曜日 12:15:59)
「ったい」というと、他に「くすぐったい」「くちはばったい」「やぼったい」「じれったい」。最近のものでは「うざったい」
「っこい」「っぽい」ほどの力はなさそうですね。
さて、「ひらたい」というのがありますが、「ひらったい」ということもあるのでしょうね。江戸っ子の場合。おや日本国語大辞典初版は「ひらたい」の訛に「ヒラバッタェ・ヒラベクタイ・ヒラペタイ」などを載せてますね。
「べたべた」よりも「べた」を思い出します。
べた・扁平足(広島)
べたこい・扁平である(大阪・西宮)
「ベた焼き」などの「べた」から派生したものかと思いますから、「べたべた」とも関係するのですが。
島田泰子さんなどが研究していそうな気もします。下のページには「たらしい」の論文は載っていませんが。
#以上の書き込みはベータ版ということで。
→ 島田泰子さん
天野修治 さんからのコメント
( Date: 2001年 12月 12日 水曜日 8:59:35)
Yeemar さん、岡島さん、貴重な情報を有り難うございます。
ご指摘のように「べったい」は「べた」「べたべた」の音の響きに何か関係があるかもしれないですね。
もう一つ私の思い付きなのですが、「平平(ひらべい)たい」→「ひらべったい」
「厚重(あつおも)たい」「腫れ重(はれおも)たい」→「あつぼったい」「はれぼったい」
というのは奇策に過ぎるでしょうか?
岡島 さんからのコメント
( Date: 2003年 02月 08日 土曜日 22:12:12)
松尾捨治郎「近世口語一斑」(国学院雑誌S2-10)に、「六あみだ詣上」の「へらへいとう」を引いて、
「へら」は平で「へいとう」は平等であらう。「ひらびったい」「ひらべったい」といふ語も同語源かと思はれる。としているのを見つけました。
また『語文』69(大阪大学1997)に館谷笑子「接尾語タシの成立過程―タシ型形容詞の考察から」という論文があるのに気付きましたが、まだ見ていません。