2002年01月25日

誤解を避ける方法(Yeemar)

メールで/直接会話で誤解を招きそうな言い方を集め、その改善案を示すというのはいかがでしょうか。

 ◇  ◇  ◇

学生が教えてくれたエピソードで印象に残った話です。

ひさしぶりに友人に携帯メールを送るとき、「元気?」というつもりで「生きてる?」と書いてしまい、後悔したのだそうです。たしかに、直接笑いながらそう声を掛けられる場合ならばともかく、メールの文字でそう言われると必ずしもいい感じはしないかもしれません。メールで相手をからかうのはよほど慎重にしなければ、いや、事実上不可能ではないかと思います。

 ◇  ◇  ◇

私の例。メールではすぐに

  ○○なのかな、と思います。

と書いてしまいますが、推敲時にきまってひっかかります。たとえば「これが唯一の解決策なのかな、と思います」と書いた場合、唯一だと思っているのか、唯一ではないと思っているのか、あいまいです。そこで改善案としては、こういうときの「かな」はすべて削除する、ということになります。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2002年 1月 25日 金曜日 14:59:05)

「ファイルをメールに添付すると、少々重くなることもあり、郵便でお送りします」

という「こと」は、「重くなる場合もあり」ともとれるし、「重くなるためもあり」ともとれてあいまいです。私は「ため」の意味でつい「こと」を使ってしまうので、推敲のときに発見すれば、訂正することにしています。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2002年 1月 30日 水曜日 1:25:26)

これも誤解を与えるかな?

○○さんへのメールで――

「○○さんは、××についての知識がないとお嘆きとのこと。私もつねづねそのことを痛感しており、いっそう勉強しなければならないと思っています」

「そのことを痛感」の「そのこと」が問題だ。つまり「私自身も、××についての知識がないと痛感しています」というつもりなんですが、「私も○○さんが××について知識がないことを痛感している」ととられる可能性、なきにしもあらず。後段を読めば、誤解の余地は少ないと思うのですが、ことば足らずであったかもしれません。指示語(こ・そ・あ・ど)や主語には、要注意です。

※一連の例は、実例そのままではなく、本質を外れない範囲で文章を変え、フィクションにしてあります。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2002年 3月 11日 月曜日 1:13:00)

村上龍『eメールの達人になる』(集英社新書、2001.11)を読みました。

本書は基本的に「業務連絡のためのメール」について書いたものと考えられます。著者としては、「子供を産むの産まないの」などといったなまなましい話題はメールではしないもの、というポリシーをもっているようですから、これは当然の帰結です。

しかし、業務連絡というものはルーティンな部分が多く、メールの中では最も書きやすいもののひとつではないでしょうか。私としては、もう少し多様な場面で、どう書けばコミュニケーションが円滑化するかといったことを知りたいと思います。

こう書けば誤解を生む、こう書けば相手が怒るといった禁じ手ももう少し詳しく考えてみたいものと思います(このスレッドをたてたのもそういう理由からですが)。

本書はあくまで「村上流メールの書き方」であって、一般性に欠ける部分もあります。村上氏が書けば親しみをもって受け取られる表現であっても、若輩者がそのまねをするわけにはゆかないこともあるでしょう。

以下、注意が引かれたところを摘記します(原文通りではありません。《 》は私の感想)。


定型となっている敬語はメールにはマイナス(p.21、211)
《潤滑油ともなるのではないか》

あいさつの疑問文はきらい
 「いかがお過ごしですか」と聞かれると、答えなければいけないのかなというプレッシャーが生じる(p.39)

こんばんは・おはようは無意味
 受信者が読むのは半日後かも知れないから(p.42)

メールはシリアスな話題に向かない、議論にも向かない
 「産むべきかどうか」など(p.43)

結びのことば
 「それでは」「またメールします」「じゃあね」(p.44)
 《「それでは」や「では」で終わるのは突き放した感じがするので私は使いません》

「お返事、お待ちしています」は厚かましい(p.45)

「〜いただけると助かります」
 「○○日までに返信いただけると助かります」という表現をよく使う(p.47、67)

「幸甚です」
 わざとカビが生えたような表現を使うことがある(p.50)

メールアドレス変更の通知
 「お手数ですが、登録の変更をお願いします」との要求は傲慢(p.62)

言いわけ・謝罪
 必死で考えたユーモアを含んだエクスキューズは、相手の心を和ませるものだ(p.65)
 《村上氏ならともかく、私がまねてはたいへんだ》

依頼するときには相手のプレッシャーを軽減
 「無理だったら無視してください」「依頼を断っても、坂本はそれを根に持つような人ではありません」(p.80-81)

依頼を断るのはすぐに
 長引けば長引くほど、さらに言いにくくなる。検討の場合は「いつまでに返事をします」と期限を示す(p.84)〔cf.「○○日までに返信いただけると助かります」(p.47、67)〕

理由を箇条書きして依頼を断る
 のは悪い例。箇条書きは無機的・事務的な印象がある(p.93)

使うと便利な英語
 「no problemです」「○日がavailableです」「better」「best」「and」「or」(p.116-119)

「ちょっと違和感を感じました」
 メーリングリストでの意見交換を平和裡に成立させるには、言葉に細心の注意。「賛成できません→ちょっと違和感を感じました」(p.122)

「悪いです・ないです」(形容詞+です)
 純朴というか、ちょっと舌たらずの感じがするが、そのせいで「好感度」が上がる(p.126)
《そうだろうか?》

「忘れるかも知れないので、結果を催促してください」
 40代後半になって、急激に物忘れするようになったので、常套句になってしまった(p.189)
《「源氏物語」にも「さるべきをりをりは、うち忘れたらむこともおどろかしたまへかし」(初音)というような常套句があったっけ》

「よろしくお願いいたします」
 送信者の形式主義が暴露されてしまう。ただ、相手によっては定型が無難だと思われることがある(p.211)
《私の頻用語で愛用語のひとつなんですが……》


◆おまけ ことばのくずかご

「○○させていただきます」
「○○させていただきます」が、これだけひんぱんに使われ出し、ほとんど主流になったのはたぶんここ20年のことだろう。パーティや授賞式などの司会者は、高度成長の終わりごろまでは、「司会を担当します村上です」と言っていた。ところがいまは必ず「司会を担当させていただきます村上です」と言う。(p.18-19)

「あ・うんの呼吸」(p.96。表記注目。「あうんの呼吸」「阿吽の呼吸」でない)

だいじょうぶ
「原稿は再来週の掲載になりますが、よろしいでしょうか」
「だいじょうぶです」
 意味は通じるが、「だいじょうぶ」という日本語には横綱が土俵にどーんと構えていて「盤石」というようなイメージがあって、承諾に含まれる負担が表されることがない。何となく、「わたしはからだが丈夫なので何でもだいじょうぶです」と言っているような印象がある。だから、だいじょうぶです、という表現がわたしは嫌いなのだ。(p.117。最近、「けっこうです」「わかりました」などの代わりに「だいじょうぶです」と言う人が増えたような気がします)


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2002年 04月 26日 金曜日 01:08:28)

これも実例に基づいた架空の例文です。

「私の関与する例の件は、大変さの点ではそちらとは比べものになりませんが、何とかやりとげました」

もちろん、「そちらの大変さに比べれば、(私の件の大変さは)大したことはありませんが」という意味です。しかし、「そちらとは比べものにならないほど、こちらの大変さの程度は大きい」と誤解されないともかぎりません。


道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2002年 04月 29日 月曜日 10:25:33)

二つ上の村上春樹さんの本の最後、「だいじょうぶ」に関して。
たとえば、一緒に歩いていた人がつまずいてこけた時にどう声をかけるか?私は「だいじょうぶ?」
と言いますが、関東の人は
「平気?」
と聞くような気がします。この「平気?」は、関西人は、まず使いません。
「こけとんねんから、平気なわけないやろ!」
とつっこむと思います。
大丈夫かどうかは、外から見た状態について、平気かどうかは内面の気持ちをさすのではないでしょうか?
「こけて、擦り傷ができたけれど、気持ちは平気」
とか、逆に
「こけて、擦り傷程度のケガだけど、こんな所で転んでしまった自分に対してショックが大きくて平気じゃない」
こともあるでしょう。
「こけて、どうやら骨が折れたようだけど、よく骨折はするので、気分としては平気」
ということもあるかもしれません。

表題の”メールの「誤解を避ける方法」”とはちょっと話がそれてしまいました。
すみません。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2002年 07月 15日 月曜日 21:47:12)

メールでの表現2つ。

例文1

   △あなたの腕前には驚きました。

「腕前」を尊敬表現にする必要があります。かといって「お腕前」はだめ。語を置き換え、「あなたのお手並みには驚きました」ならOKでしょう。

例文2

   △その記事があなたの注意を引いたのでしょうか。

「注意」を尊敬表現にして「その記事があなたのご注意を引いたのでしょうか」とするのもなんだか変。「注意を引く」という連語として熟しているためでしょう。この場合、「(あなたの)お目に止まったのでしょうか」とすればOK。

「腕前」→「お手並み」
「注意をひく」→「お目に止まる」

は、敬語法に語彙の問題がからむ例と申せましょう。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2002年 09月 28日 土曜日 18:57:46)

お詫びのときに「(笑)」マークをつけてはならない。

「こういう言い方をすると相手の怒りを買うだろう」という判断は、人間性の問題でもあり、かつ、言語能力の問題であるでしょう。言語能力を高めることは人間性の錬磨につながると信じます。

ことばの話841「単純ミスです(笑)」 〔道浦さん〕


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 07月 17日 木曜日 21:29:24)

メールで「混乱を与えたとすればすみません」と書こうとして、「なんだ、『与えたとすれば』って。仮定法で詫びるんじゃない!」と自己批判し、「混乱を与えてすみません」と書き直しました。

ついでに、役人や政治家が「誤解を与えたとすれば申し訳ない」などというのもこの際批判しておきます。

上に出てきた「だいじょうぶですか」について。2003.07.14、銀座の某アジアンレストランで食事をしていたら、店員が「お箸をお下げしても大丈夫ですか?」と。思わず「はい、特に危険はございません」と答えそうになり、絶句しました。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 11日 土曜日 13:59:26)

多くの生徒さんを担当していて、お忙しい中返信ありがとうございますm(__)m
返信のさらに返信の仕方がよくわからないので、自分なりに返信したいと思います。
という書き出しのメールが届き、はて、だれであろうと不審でした。この書きぶりからは、私と同等か目上の人が、私の教える学生(「生徒さん」)に敬意を払っているようです。

署名を見ると、何のことはない、授業を取っている当の学生。要するに、学生の質問に対して私が回答をしたメールに、さらに返信をくれたもの。

それならば、自分で「生徒さん」などと言ってはいけない(学生全体を、彼の身内扱いとすべきなので)。反対に、私に対しては敬語がほとんど使われていないのはどういうこと?

原文を尊重しつつ添削すれば「多くの学生を担当されていて、お忙しい中ご返信ありがとうございます。ご返信にさらにご返信する仕方がよくわからないので、自分なりにご返信したいと思います」ぐらいになろうか。

しかしいくら敬語を補っても違和感が抜けないのは、教師が多数の学生を担当するのはそもそも当たり前であって、言わでものことをくどくど書いているから。こういう場合は単に「ご返信ありがとうございます」でよいのです。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 11日 土曜日 14:25:38)

「Yomiuri Weekly」2003.08.10 p.106の「上司必読! 「とか弁社員」を特訓する 正しい日本語講座」は、「気になる若者言葉」「間違いやすい慣用句・諺」などを列挙して解説、おじさん族の感情に訴えかける書き方でおおむね感心しません。ただ、「できれば避けたいフレーズ」の中に、コミュニケーションの上での敬意について考えさせられるものもありました。

いい質問ですね〜
「日時は承知しましたが、雨天の場合はどうしましょうか?」「いい質問ですね〜」。「そう聞かれると思っておりました」といわんばかり。こういわれると、なんだかバカにされた気がするという声は多い。「いいところにお気付きになられましたね〜」も同様

電話があったことだけ、お伝えいただけますか
「あえて連絡してくれと頼むほどの用件じゃないんだけど、折り返し電話をくれればうれしい」といった微妙なニュアンスが含まれるが、伝言されたほうは、「伝えるだけでいいなら、かけ直せばいいじゃん」と口をそろえる(p.109)

このスレッドは、「メールで/直接会話で誤解を招きそうな言い方を集め、その改善案を示す」というつもりで始めたのですが、「失礼なことば遣い(見た目は文法にかなっているものを含めて)」を集めているようでもあります。


益山 健 さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 22日 水曜日 11:18:41)

「いい質問」は英語の「good question」の直訳でしょうが, すくなくとも英語ではバカにしたようにひびくことはないとおもいます。「質問された相手がひるむような鋭い質問」という意味でつかわれているようです。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 12日 水曜日 14:02:09)

「ご苦労」は目上から目下に使うものである、と言われます。ただし、この考え方を受け入れるには留保が必要だ、職業、地方によっても差がありそうだ、ということはこちらに少し述べました。

だからといって、目上の方に堂々と「ご苦労さまでした」と言うことはできない。ある言い方について、ある語感をもつ人が多い以上、その語感に敢えて挑戦することは穏当ではないから。しかし、目上の人がたいへん苦労したことを知っているとき、それをことばに言い表すのはどうすればいいのか。「さぞご苦労をなさったことと思います」ではいけないのか。

無用の誤解を避けるために、「ご苦労」が言いたくなったら、単にひっくり返して、「ご労苦」にしてしまう。姑息策なれど、これで無事解決。「ご労苦いかばかりかと拝察いたします」「ご労苦がしのばれます」。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 12月 25日 木曜日 15:31:09)

授業で行った討論(ディベートふう)について、肯定側・否定側のいずれが優勢であるかに関し、陪審役の学生が書いた判決文が以下のごとくでした(一部修正)。

どちらとも言えないが、敢えて言うなら否定側です。しかし五十歩百歩といったところが正直なところです。
すると、両方とも大したことがなかったのか? しかしそのあとを読んでみるとずいぶん褒めてある。思うに「実力伯仲」「甲乙つけがたし」といったような意味で「五十歩百歩」を使ったようです。

「いやあ、今日の討論はどちらも白熱して、どんぐりの背比べでした」

などと褒めたつもりでいう感想もあり得るかもしれません。

「どっこいどっこい」も、私にとっては「どんぐりの背比べ」に近い語感があるのですが(「ど」が同じだし)、これはとくにマイナスのイメージはないのでしょう。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2004年 03月 26日 金曜日 11:28:29)

ことばにも多少関係する職業の方が電話をくださって、「(書類をお届けしますので)拝見していただいて……」。この方、この前も「拝見していただいて」を使っていらした。「ご覧いただいて」などとあってほしいところ。

Google検索では「"拝見していただいて"」83、「"拝見していただき"」116、「"拝見していただく"」57件でそれほど多くはありません。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2004年 03月 26日 金曜日 11:31:39)

「"拝見してください"」ならば、より多く約564件。「"拝見して下さい"」は約245件。


新会議室に続く

posted by 岡島昭浩 at 01:43| Comment(0) | TrackBack(0) | ■初代「ことば会議室」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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