1997年05月30日

「虹霓」と「副虹」(情報言語学研究室(萩原義雄))

こうげい【虹霓・虹〓〔虫兒〕】
 このことばを和語で読むと「をにじ、めにじ」といいます。
すなわち、「雄虹」と「雌霓」という意味になのでしょう。
漢字熟語でこれと同樣な語として「けいげい【鯨鯢】」があり、これも和語読みすると「をくぢら、めくぢら」となるわけです。
雌雄二体を識別する漢字表記語というものでしょう。私の研究愛用する室町時代の古辞書『下学集』に收載されている語です。そのうち、「鯨鯢」については、割注に「(上略)鯨ハ雄〔イウ〕、鯢〔ゲイ〕ハ雌〔シ〕ナリ也」と見えます。
 そこで、今回の話題は、「虹」が二重に見える現象を私たちはなんと表現するのかということです。私は二度見たことがあります。いずれもホノルルでしたが、実に美しい現象でした。
 つい先頃、読売新聞・富山版(1997.5.23金朝刊)にこんなことばで表現されていました。
 七重、七重に色添えて 珍しや「副虹」
です。
 「虹は空気中の水滴が太陽光線を屈折させて起きるが、副虹は二回屈折させる。色の変化の仕方が普通の虹の反對になるのが特徴。」とコメントされています。この「副虹」が「虹霓」の二字表記されたことばかなとふと思うのでここに取り上げてみたしだいです。
 そして、この読み方なのですが、「フクコウ」と音読するのか、また「フクにじ」と混種(重箱読み)で読むのか?まずその読み方が問題となりましょう。
新聞は音読することが少ないものです。ですから、勝手気ままな読み方が生まれる事にもなります。みなさん、どちらで読みますか。
ところで、私は、この「副虹」ということば表現を初めて知りました。気象用語では、確認されたことばなのでしょうか?


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 18日 月曜日 23:38:06)

総合演習という科目で、学生が「しゅにじ」「ふくにじ」と言っていました。理科の関係の学生だと思います。


小駒勝美 さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 19日 火曜日 13:18:07)

『日本国語大辞典』の「めにじ」の項にこうあります。
虹が二重にかかっているとき、内側の薄く見える方をいう。

百科事典などによると内側が濃い虹(主虹)、外側が薄い虹(副虹)なようです。いずれにせよこの定義は誤っているようです。


萩原 義雄 さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 19日 火曜日 22:23:59)

この「主虹」と「副虹」についてということで「副虹」の語が掘り出されてきていますことに感謝申し上げます。そして、現行の国語辞典に未収載となっていることばであることを確認しておきましょう。小駒勝美さんの引用された「めにじ【雌虹】」ですが、小学館『日本国語大辞典』第一版そして第二版ともに意味は変わっていませんが、用例に古活字版毛詩抄が追加されています。



小駒勝美 さんからのコメント
( Date: 2002年 2月 20日 水曜日 12:01:34)

『漢語大詞典』の「霓」の項にこうあります。
「副虹。大気中有時跟虹同時出現的一種光的現象,形成的原因和虹相同,只是光線在水珠中的反射比形成虹時多了一次,彩帯排列的順序和虹相反,紅色在内,紫色在外。顔色比虹淡。有時亦統指虹霓。《文選・班固〈西都賦〉》:“虹霓迴帯於〔林/分〕〔木眉〕。”張銑注:“雄曰虹,雌曰霓。”」唐蘇〔廷頁〕《暁発方騫駅》詩:“片陰常作雨,微照已生霓。”清阮元《小滄浪筆談》巻一:“残霞雌霓,起于几席。”」
中国でも「副虹」と呼ぶようです。

なお、『日本国語大辞典』の「おにじ」の項も「めにじ」と似た記述です。


posted by 岡島昭浩 at 00:09| Comment(0) | TrackBack(0) | ■初代「ことば会議室」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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