2005年10月17日

「あき缶」の「あき」

【26】
「あき缶」の「あき」
 道浦俊彦
 - 04/4/23(金) 10:14 -
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ふと、思ったのですが、「あき缶」の「あき」は、連用形なのになぜ体言を修飾しているのでしょうか?
「缶」にかかるのは、本来「連体形」ではないかと思うのです。
「あく」という動詞の連体形は「あく」ですよね? 「あき」は「連用形」ですよね。なんででしょうか?
このほかにも「あき〜」という形の名詞は多いですが、なぜ連体形ではな「連用形」が体言を修飾するのでしょうか?(もっとも連体形を使って「あく缶」としたら、これはこれでおかしいですけど。)
それとも「あき」は「連体形」なのでしょうか?



【28】
Re:「あき缶」の「あき」
 岡島昭浩
 - 04/4/24(土) 2:55 -
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▼道浦俊彦さん:
>ふと、思ったのですが、「あき缶」の「あき」は、連用形なのになぜ体言を修飾しているのでしょうか?
>「缶」にかかるのは、本来「連体形」ではないかと思うのです。
>「あく」という動詞の連体形は「あく」ですよね? 「あき」は「連用形」ですよね。なんででしょうか?
>このほかにも「あき〜」という形の名詞は多いですが、なぜ連体形ではな「連用形」が体言を修飾するのでしょうか?(もっとも連体形を使って「あく缶」としたら、これはこれでおかしいですけど。)
>それとも「あき」は「連体形」なのでしょうか?


ちょっと書いている時間がないので、
http://www.let.osaka-u.ac.jp/~okajima/PDF/matusita/koogohoo/04.pdf
これのファイル上の30ページ、ノンブルの132ページ、「第二活段中程形」をご覧下さい。



【31】
Re:「あき缶」の「あき」
 岡島昭浩
 - 04/4/28(水) 17:14 -
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松下文法では馴染みにくい、と思われるかもしれませんので、橋本文法を。
http://www.let.osaka-u.ac.jp/~okajima/PDF/miseiri/sinbunten_bekki.pdf
これの210ページ(書物では一八二頁)から。複合語の章です。
〔一、名詞〕
 複合して名詞となるものは、非常に多いのですが、本書には、各四・五例を挙げて、主な種類を示しました。引例は説明する必要を認めませんから、左に補充の例を記しておきませう。
  川底  鳥籠  石橋  煙草屋  マッチ箱  縞ズボン  一本松(名詞と名詞)
  花見  |日照《ひでり》  |火消《ひけし》  神|参《まゐり》  煉瓦造  インキ|消《けし》  カルタ遊(名詞と動詞)
  |建物《たてもの》  釣橋  |沸《にえ》湯  |負軍《まけいくさ》  |貸金《かしきん》  冷しコーヒー(動詞と名詞)
  やりばなし  書置  割合  立話(動詞と動詞)
  たゞ事  また|從兄弟《いとこ》   ぼんやり者(副詞と名詞)
  山々  木々  月々  ひとり/\  一日/\(同じ名詞と名詞)
 右の遖り、動詞が複合語を造るには、連用形を用ひるのが原則ですが、形容詞はその語幹を用ひて、
  淺瀬  近目  薄墨 廣|縁《えん》  夜寒  |丈《たけ》長〔女見の髪飾〕
  古着  長生  高笑  遲蒔  嬉し泣  悔し涙
のやうになるのが普通であります。ですから、語幹のま丶では直ちに単語と見ることは出來ませんが、この場合は単語と同様に取扱はなければなりません。




【43】
Re:「あき缶」の「あき」
 道浦俊彦
 - 04/5/5(水) 16:39 -
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岡島さん、ご教示ありがとうございます。お返事が遅れてすみません。
ところで、ご教示いただいた松下、橋本両文法が書かれた本(論文)の「書名」はなんと言うものなのでしょうか?



【45】
Re:「あき缶」の「あき」
 岡島昭浩
 - 04/5/5(水) 18:26 -
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▼道浦俊彦さん:
>ところで、ご教示いただいた松下、橋本両文法が書かれた本(論文)の「書名」はなんと言うものなのでしょうか?


松下大三郎『標準日本口語法』
橋本進吉『改正 新文典別記 口語篇』
です。



【46】
Re:「あき缶」の「あき」
 Yeemar
 - 04/5/5(水) 18:37 -
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横合いから失礼します。

『標準日本口語法』1930では松下は「中程形」と言っていますが、松下『改撰 標準日本文法』(1928初版、1930年版〔昭和五年訂正版〕)では「中止格」と言っています。意味は一緒でしょう。

要するに、連用形といわれる「歩き」「飛び」「飲み」などは、動詞・形容詞等(用言)へ連なるためにこの形が用意されたわけではない。原因と結果が逆である。そもそも、「歩き」「飛び」「飲み」などは動作を言い切る力をもたない形である。言い切る役割は、そのあとに続くことばに任せる。たとえば、「歩き」に「始める」を続けて「歩き始める」、「飛び」に「たい」を続けて「飛びたい」などとする。結果的に用言がくっついて使われているだけのこと。「酒を飲み、かつ歌う」の「飲み」も言い切っていない。したがって、これを「連用形」というよりも「中止形」(松下の言い方では「――格」)と言ったほうがよい――松下説をとりこんで乱暴に言い直すとざっとこうなるでしょうか。

渡辺実『国語構文論』1971では、いわゆる「連用形」をさらに3つに分けています。
 1. 連用形 (例、「本を読み、理解する」の「読み」)
 2. 誘導形 (例、「父に似てがんこだ」の「似て」)
 3. 並列形 (例、「よく遊び、よく学ぶ」の「遊び」)
 *例は私が加えたもの
連用形がひとつの機能だけを果たしているわけではないのですね。


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