「首を振る」の使い方
佐藤
- 04/7/12(月) 0:56 -
----
私の「首を振る」という表現の理解はこうです。
首を振る────横に振る。拒否・否定の身振り。無標。
首を縦に振る──うなづく。受諾・肯定の身振り。有標。
高橋克彦の作品だと、反転した用法に出会います。次の例は、探偵役が、OLから、不倫相手の部長の安否と行方を引き出すくだり。
「絶対に金曜にはもどると言っていたのに」出会うたびに面白いなと思いますが、方言上の特色でしょうか。他の作家・筆者でも似たようなことがありましょうか(この話題、既出でしたら御放念・放置ください)。
「部屋には入った?」
耿介の問いに聡美は躊躇の末に首を振った。
「どうやら遊びじゃなかったらしい」
目くらましのために遠藤は他の女との関係を吹聴していたのに違いない。二十四、五にしては落ち着いた女性だった。
「アメリカに行った目的は?」
それには聡美も首を横に振った。
(『春信殺人事件』光文社文庫)
【248】
Re:「首を振る」の使い方
Yeemar
- 04/7/12(月) 8:30 -
----
筒井康隆氏(大阪出身)は「首を(横に)振る」を使わない作家です。「かぶりを振る」と言います。『俗物図鑑』(1972)では
首を かしげる15 すくめる2 他4
かぶりを 振る37
ほか、「うなずく」は多数。
筒井氏にとって、首はかしげるもの、頭(かぶり)は(横に)振るものであるようです。
北原亞以子氏(東京)も「首を振る」ではなく「かぶりを振る」を使います。川端康成(大阪)もそうでしょうか。
【249】
Re:「首を振る」の使い方――高見順の場合
岡島昭浩
- 04/7/12(月) 11:01 -
----
高見順「故旧忘れ得べき」
ツンと取りすまし他人の感情をまるで無視した口のきき方であった彼が、きゅうに愛想よく応対しはじめ、相手の話に絶えず小首を振って、いかにも熱心に聴き入っているように装《よそお》いはじめたのは、彼のいわゆる人心収攬《じんしんしゆうらん》のための政治的技巧であって、(第三節)
「小首を振る」は違うのかとも思いますが、
白く浮いた妻の項《うなじ》を、のぞきこむようにして、じッとみつめつつ、うん、よしよしと首を振った。(第七節)
なお、
ううんと彼女は首を横に振った。(第二回)があります。
同「如何なる星の下に」では、
朝野は悪夢でも払うように首を振って、
「いや、違う」
と大きな声で言って、(第四回)
また、
「いや、いや」
と、朝野が首を振った。(同)
さらに、
「いいや」と私は首を振った。(第十回)
と、横に振るのもあります。
「あら、――倉橋先生」
という声があった。声をたよりに眼を据えると、サーちゃんであった。
私はこういう場合に慣れないので、とっさに言うべき言葉が浮ばず、やあ、やあと首を振ると、(第九回)
これは縦でしょうか。
とんでもない誤解であると私は言った。言うのもあほらしいくらいであった。
「誤解?」ドサ貫が三方白の眼を私に注ぐのに、
「うん」
私は大きく首を振ったが、ドサ貫は何も書わず、首を小刻《こきざ》みにうなずかせた。承認のうなずきではなく、そうして私の言葉を吟味《ぎんみ》している風なのに私は心|穏《おだ》やかでなく(第十一回)
これも縦であるようです。
【250】
Re:「首を振る」の使い方
UEJ
- 04/7/12(月) 23:17 -
----
話は逸れますが、英語だと
nod one's head(首を縦に振る)
shake one's head(首を横に振る)
と、単語が違うので区別がはっきりしてますね。