まっさかさま
道浦俊彦
- 04/7/14(水) 19:17 -
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夕方のニュースのリポーターが、新潟の集中豪雨の被害で、中古車センターの自動車が裏返しにひっくりかえっている様子を指して、
「自動車が、まっさかさまになっています」
と言っていたのですが、この用法に違和感を覚えました。
「まっさかさま」という言葉は「落ちる」という動詞と一緒に使われて、「落ちていく動きの状態」を示すように思うのです。既にひっくり返ってしまって動かない状態の自動車に「まっさかさま」は使えるのでしょうか?
辞書を引いてもこのあたりについて詳しく記しているものが見当たりません。『日国大』の用例はすべて「落ちる」とともに使われています。
いかがでしょうか?
【252】
Re:まっさかさま
Yeemar
- 04/7/15(木) 2:31 -
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「まっさかさま」というのは単に「さかさま」の強調かと思ったら、どうも「さかさま」のほうがいっそう用法が広いのですね。
「時計がさかさまに回る」「捕虜をさかさまに吊り上げる」「(富士山は)すりばちをさかさまにした(ような形)」「○○という文字列をさかさまに〔=逆順に〕読む」などは、「まっさかさま」とすることはできないようです。
ざっと例を調べたにすぎませんが、「まっさかさま」は落ちるとか水にもぐるとかいうときにしか使われていませんでした。それ以外の例が出てくるとおもしろいのですが。(夕方ニュースの例がまさにその希少な例ですね。)
自動車も「さかさまになっている」ならばOKでしょうが、「ひっくり返っている」がよりよいと思います。
「転覆しています」も意味としてはいいはずですが、自動車が転覆、というのはあまり言わないような気がします。列車、船、政府などに使われています。ただし、トラクターの「転覆事故」という例(「朝日新聞」1997.04.04「声」)もありました。
【253】
Re:まっさかさま
道浦俊彦
- 04/7/15(木) 8:05 -
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平成ことば事情15「ひっくりかえる」441「横転と横倒し」に、ちょっと関係しそうなことを書いていました。
やっぱり「落ちる」を伴わない「まっさかさま」はヘンですよね。
【254】
Re:まっさかさま
岡島昭浩
- 04/7/16(金) 10:56 -
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つい眼と鼻の先に月光に半面を照らされた、巨大な白っぽい円型が、東京湾の上をいっぱいにおおってそびえたち、かすかな縮緬《ちりめん》じわをよせた波おだやかな海面に、それがまっさかさまにうつっているのだ。
(小松左京『首都消失』第四章「熱い空白」4)
これなどはどうでしょう。