2005年10月17日

「斜に構える」についての不審

【315】
「斜に構える」についての不審
 Yeemar
 - 04/8/22(日) 13:22 -
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「斜に構える」(しゃにかまえる)とはどういう意味か。それは「正対する」ということである。『広辞苑』にもそう載っている――と、ことばに関る仕事の方(かりにAさん)から伺い、おどろきました。

まずその『広辞苑』を見ると、初版では
剣道で、手にしている得物をななめに構える。また、身構する。改まる。気取った態度をする。
第2版・第3版では
剣道で、刀をななめに構える。転じて、身構える。改まった態度をする。
第4版では
剣道で、刀をななめに構える。転じて、身構える。改まった態度をする。また、正面から対応せず、皮肉な態度をとる。
第5版(現在)では
剣道で、刀をななめに構える。転じて、身構える。改まった態度をする。また、正面から対応せず、皮肉な態度をとる意にもいう。
とあり、「正対する」とは書いてありません。ただし「改まった態度をする」とは書いてあり、この部分が「正対する」となんとなく通ずるようでもあります。とはいえ、この「改まった態度」は「身構えた態度」ということでしょう。

「春色梅児誉美」(1832-33)には「(此糸という花魁が)どうして恥をすゝがんと胸をいためて、湯どのより出るらう(廊)下の中の間に、しやにかまへたる彼(かの)鬼兵衛」とあります。『日本古典文学大系』の注には「ふくむ所ある姿勢をして」。にやにやしながら懐手でもしていたのか。あごでもさすっていたのか。

『三省堂国語辞典』(第5版)では、「しゃにかまえる」と「はすにかまえる」とを区別している模様。「しゃにかまえる」は、「刀をななめに構える」ものの、体の向きは(言及はないが)正面を向いているようです。一方、「はすにかまえる」は、「相手をまっすぐに見ず、からだをななめにして対する」と釈しています。

Aさんは、このあたりのことを言われたものかもしれません。真相は現時点ではよくわかりません。



【316】
Re:「斜に構える」についての不審
 佐藤
 - 04/8/23(月) 19:27 -
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▼Yeemarさん:
>ただし「改まった態度をする」とは書いてあり、この部分が「正対する」となんとなく通ずるようでもあります。とはいえ、この「改まった態度」は「身構えた態度」ということでしょう。


「改まった態度をする」の意味があるとは知りませんでした。勉強になりました。『新明解』第5版に
(b)何かに対し、構え過ぎるほどの姿勢を取る
とあり、『新明解古語』補注版第2版に
(2)しゃちこばって構える。きちんとした態度をする
とあります。このあたりになると、「正対する」により近いニュアンスになりますね。「全力でことにあたるべく身構える」のような語釈も浮かんできますが、私自身用例に当たりきれてないので何とも。
なお『新明解古語』は元になった姿勢を次のように記します。この構えがどういう時に取られるものなのかが分かると糸口になりそうですが。
剣道用語で、刀をさげて両手で柄を持ち、刀を筋違いにして向こう斜めに構えることから




【317】
Re:「斜に構える」についての不審
 KS
 - 04/8/24(火) 14:23 -
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▼佐藤さん:
>「改まった態度をする」の意味があるとは知りませんでした。勉強になりました。『新明解』第5版に

『新明解古語』補注版第2版に
>
(2)しゃちこばって構える。きちんとした態度をする
とあります。このあたりになると、「正対する」により近いニュアンスになりますね。


同感です。
 一般の使用例では「正面から(正攻法で)対処しないで皮肉やからかいの態度で臨む」の意(正対とは逆の用例)が多い様に思いますが、これは本来の意味とは間違った使用例なのでしょうか。
「流れに掉さす」もそのうちに流れに逆らうの意味が一般化していく?様に。
 



【319】
Re:「斜に構える」についての不審
 佐藤
 - 04/8/25(水) 22:39 -
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▼KSさん:
> 一般の使用例では「正面から(正攻法で)対処しないで皮肉やからかいの態度で臨む」の意(正対とは逆の用例)が多い様に思いますが、これは本来の意味とは間違った使用例なのでしょうか。


↓んん、ここまで言い切れる人がいるとは……
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/reader/200406/2004062700059.htm#0003



【320】
Re:「斜に構える」についての不審
 KS
 - 04/8/26(木) 10:38 -
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▼佐藤さん:
この種の言葉(専門用語が一般化したもの)には本来の意味とは違う解釈や使われ方をするものがままありますね。
 「若干16歳でオリンピック出場」とか云いますが、語源は「弱冠」で20歳。「…本来「じゃっかん」は20歳であり、16歳や21歳であってはいけないのだ…」と子どもの頃国語の先生に教えられたのが印象に残っています。



【321】
斜の構え
 佐藤
 - 04/8/29(日) 16:50 -
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実際、どんな構え方なのか。とりあえず香取神道流という流派の画像がありました。
http://members.hknet.com/~cjj/japanese/shinto/shinto.html

一方で「青眼の構え等と言われる斜の構え」といった表現もあり、(流派によっては)最も基本的な構えを「斜の構え」と言ったのか。http://www5a.biglobe.ne.jp/~ichini/bbs7/799658955847011.html

流派によって「斜の構え」で表す姿勢が異なるので、それを反映して「斜に構える」が「正対する/正対しない」両用の意味で使われるようになったのか…… この考えに拘泥するつもりはありませんが、とりあえず、可能性の幅を見極めるために挙げておきますね。



【322】
Re:「斜に構える」についての不審
 岡島昭浩
 - 04/8/29(日) 22:12 -
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『日本国語大辞典』の「正構」のところに、「斜に構える」の用例がありました。
せい−こう【正構】[名】受太刀(うけたち)の構(かま)えの一つ。正しい構えで相手の刀を受けとめること。*浄瑠璃・道中龜山噺-六「臂を落して斜に構へるせいこうの受方も、はて能教へたものじゃよな」


また、『近世上方語辞典』では、
剣道で、剣・棒などを斜めに構える。一説、笏(しゃく)に構えるか。
としています。〈ななめに構えていないじゃないか〉という意識からそのような語源説が出てきたのでしょうか。

『嬉遊笑覧』巻四武事には、
斜に構る
○(安斎随筆)に、しやにかまへるといふ俗語剣術より出たる詞なり 立て刀を提げ両手に柄を持刀をすぢがひになして向ふを斜に構へると云なり かやうの事何のわけも知らずして人なみにいふこと多し 扇をしやにかまへ其外何にてもかまへる物ある也 さもなき空手にいふはいかヾといへり おもふに空手にて正体に居らず筋かひにかまへたらんは斜にかまふなるべし(葉子譜)【(広百川学海)癸集に収む】刻画品の骨牌に斜眼また斜歯といへるあり 其図を見るに牌の縁の黒き処上下にすぢかひて星あるは斜眼なり 歯のかたも筋かひたるは同じ斜といふ事是にて明らかなり
とありました。


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