2005年10月17日

ホームレスの語誌

【336】
ホームレスの語誌
 Yeemar
 - 04/9/5(日) 14:48 -
----
〈「ホームレス」ということばが広まったのは1980年代後半。当初は欧米の路上生活者を指した。〉

――と考えるのは正しいか。調べてみました。「朝日新聞記事データベース」と「国会会議録検索システム」で年ごとの出現頻度をまとめました。数字は末尾に記します。結論としては、「正しい」と思いますが……

■朝日新聞記事データベースを検索して――
・国際居住年(1987年)をきっかけに「ホームレス」ということばが知られるようになったようだ。国会でも使われるようになった。
・「ホームレス」の用例数が「浮浪者」を抜くのは1989年で、1995年には両語用例数合計の90%以上を占めるに至る。
・当初「ホームレス」は欧米の路上生活者を指す用法が多かったとみられる。(私の記憶でも)
●〔アメリカ生活での観察を記した文章で〕ホームレスと呼ばれる浮浪者が物乞(ご)いするそばで、大勢の金持ちが大型ヨットを連ねてパーティーに興じる光景はどうでしょうか。〔1989.06.10 東京朝刊「声」〕

■国会会議録検索システムを検索して――
・「浮浪者」の用例が昭和58(1983)年と翌年に目立つのは、横浜で中学生による浮浪者連続殺人事件が起こったため。
・「ホームレス」について、昭和60(1985)年の2例は、「ホーム・レスポンシビリティーズ・プロテクション」という語が拾われたもの。「ホームレス」初出は昭和62(1987)年11月19日。
・「浮浪者」「ホームレス」の用例数は、昭和60(1985)〜平成4(1992)年ごろは抜きつ抜かれつという感じ。とはいえ平成元(1989)年に「ホームレス:浮浪者」が2:1で逆転してからは「ホームレス」の用例数が伸び、差を大きくしている。
●ことしは国際居住年でありますが、その目的とするところは、ホームレスの人に家を保障する、こういうことでありますけれども、逆に家からほうり出されてしまっている。〔衆 - 土地問題等に関する特別委員会 - 2号 昭和62年11月19日 中島武敏委員〕

●四月二十日の毎日新聞の夕刊社会面を大臣ごらんになりましたか。現在、立ち退きを迫られてひとり暮らしのお年寄りが施設に避難したり、あるいは駅や地下道で野宿を続ける人がかなり出てきている。長くは読みませんが、深刻な事態、ホームレスですね、日本の、これが出てきておる。〔参 - 建設委員会 - 10号 昭和63年04月21日 内藤功君〕

【朝日新聞記事データベースの検索結果】
     浮浪者 ホームレス
1984(年) 0(件) 0
1985   18    1
1986   16    4
1987   17    10
1988   41    33
1989   33    40
1990   26    57
1991   21    52
1992   22    79
1993   17    72
1994   21   122
1995   13   164
1996   12   169
1997   13   139
1998   18   143
1999   11   203
2000   12   235
2001    8   314
2002   12   318
2003    8   359
2004    6   160

【国会会議録検索システムでの検索結果】
昭和 浮浪者 ホームレス
50(年)1(件)
51   0
52   4
53   2
54   1
55   0
56   3
57   1
58   19
59   14
60   4    2
61   3    0
62   1    1
63   3    2
平成
01   1    2
02   1    3
03   0    3
04   0    1
05   0    6
06   1   15
07   2   11
08   1    5
09   0   12
10   0    6
11   0   32
12   2   17
13   2   35
14   2   46
15   3   45
16   3   24


【337】
Re:ホームレスの語誌
 道浦俊彦
 - 04/9/5(日) 16:48 -
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関連で、「平成ことば事情147」に書いた「ホームレス」関連用語について、引き写します。2000年8月のものです。


ことばの話147「野宿者」

大阪・天王寺で、ホームレスの男性を若者が襲撃する事件が起きました。
そのニュースを伝えた新聞各紙の「ホームレス」を表わす見出しが微妙に違っていました。

読売・・・野宿者(本文では、野宿者の男性)
朝日・・・野宿者
産経・・・野宿者(本文では野宿生活者)
日経・・・天王寺の男性(本文では、野宿者)
毎日・・・路上生活男性(本文では、路上生活者の男性)

おおむね「野宿者」となっていますが、毎日は「路上生活者」となっています。また、読売は夕刊の3版では「野宿生活者」を使っていたのが、4版では「野宿者」になっています。ちなみに、読売テレビでは「ホームレス」を主に使いました。(翌日のニュースではなぜか“野宿者”を使ってましたけど。)
一般的には「ホームレス」が一番耳になじんでいると思いますが、実はこの「野宿生活者」
はお役所用語なのです。
つまり大阪市がホームレス対策を扱っている部署の名前が「野宿生活者対策室」なのです。読売が3版でこの「野宿生活者」を使っていたのに、4版で「野宿者」にしたのは、また各社「野宿者」という言い方をとったのは、お役所(=大阪市)の手垢のついた言葉(=野宿生活者)を避けた結果ではないでしょうか?
ちなみに各自治体などによって、呼び方は異なります。具体的には、
国=「ホームレス」
大阪市=「野宿生活者」
東京都=「路上生活者」
横浜市=「屋外生活者」
名古屋市=「住所不定者」
という具合です。
ちなみに「路上生活者」と言った場合は、「大阪城公園」や「長居公園」に住む人たちは含まれるんでしょうか?厳密に言葉を解釈すれば「含まれない」ことになるんですが、その場合は「公園生活者」など、具体的な「場所の名前」を「〜生活者」の前につけて呼ばなくてはならなくなり、一般名詞としては面倒くさいことになりはしないでしょうか?
ホームレスの人たちを生み出す社会状況に目を向けるけることはもちろんですが、こういった用語の使い方に目をむける事も大切だと思います。
(2000、8、8)



【338】
Re:ホームレスの語誌
 岡島昭浩
 - 04/9/6(月) 23:51 -
----
『ことばのくずかご88』では、「毎日新聞」7月17日夕刊4「ホームレスの変質」佐江衆一を挙げていますね。

また、『現代用語の基礎知識』(92年?)では、〔アメリカ問題用語〕として取り上げられ、
1987年の冬はとくに寒さが厳しく、路上での凍死者が続出したことから、ホームレスとよばれる放浪生活者が急増していることが注目された。
としていました。



【339】
Re:ホームレスの語誌 1983年の用例
 佐藤
 - 04/9/7(火) 14:57 -
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国会図書館の雑誌記事索引だと次の例が出て来ました。
高速道路やテントにゴロゴロ--二百万人?米国のホームレス(特派員ノート) / 草野 徹 世界週報. 64(12) [1983.03.22]




【340】
Re:ホームレスの語誌 1983年の用例
 佐藤
 - 04/9/7(火) 19:35 -
----
続き。国会図書館の雑誌記事索引で年次ごとに見てみました。どれだけ普通の使用例とシンクロするか心もとないですが、参考に。1996年以降の増え方が印象的ですが、景気低迷とかかわるのでしょう。

  浮浪者 ホームレス
1980
1981
1982 1    
1983 8    1
1984 2    1
1985 1      →「浮浪者」の消滅?   
1986      1
1987      1 
1988      3
1989      3
1990 4    7
1991      2
1992      3
1993      4
1994      6
1995      3
1996 1   16 →「浮浪者」復活。
1997 2   28  わずかだが「ホームレス」
1998 4   23  の使用例に連動するように
1999 3   58  使われていくのも面白い。
2000 3   83   ↓
2001     67   ↓
2002 1  108   ↓
2003 3  112   ↓


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