2005年10月17日

知らぬげに

【597】
知らぬげに
 道浦俊彦
 - 04/12/16(木) 12:13 -
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本を読んでいたら、
「知らぬげに」
という表現が出てきました。「ググる」と2540件も出てきましたが、なんとなく、しっくりこない気がします。
「なにげに」と同じようなものなのでしょうか?それとも昔からある「正しい形」なのでしょうか?



【598】
Re:知らぬげに
 Yeemar
 - 04/12/16(木) 21:22 -
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その「本」は何でしょうか?

三橋三智也「哀愁列車」(1956)の3番に
泣いて泣いて
泣いているのを 知らぬげに
とありますね。

また、谷山浩子「風を追いかけて」(1979)に
丘の上から 見る町は
私のことなど 知らぬ気に
とあります。

「げ」は手元の『三省堂国語辞典』を見ると「接尾」、つまり単独の語としては使われないということになっています。「はかなげ」(これは形容詞語幹に付いたもの)とか「ありげ」(動詞連用形に付いたもの)のように、上のことばと合体して全体で1語となるものですね。

ところが、「知らぬげ」と言うと、否定助動詞「ぬ」(ず)の連体形プラス「げ」であって、「知らぬ人」「知らぬ顔」などと同じく2語っぽくなってしまうので、注意が引かれますね。

古くはどれくらいからあったかというと……13世紀の「宇治拾遺物語」に
此女、時々は見かへりなどすれども、わがともに、蛇のあるとも知らぬげなり。
とありますから、「正調日本語」といってよろしいでしょう。「源氏物語」では「知らぬやうにて」となります。

群馬県あたりでは「げ」がさかんに使われますが、「知らぬげだ」(知らないようだ)とは言われないでしょうか(「ぬ」の使用地域でないので無理かもしれません)。香川県では「あの子はなんも知らんげやった」(知らないようだった)と言うはずです。



【599】
Re:知らぬげに
 Yeemar
 - 04/12/17(金) 0:33 -
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「ぬ」の連体形だけでなく、「動詞連体形+げな」、「過去の助動詞『た』の連体形+げな」の形もありますね。

たとえば「柳多留」三・16に
おふくろが切ッて廻すでのひるげな
(おふくろが切って廻すで伸びるげな?)
また漱石「坊っちやん」に松山方言として
御望み通りでよからうと思ふて、其手続きにしたから行くがえゝと云はれたげな。(漱石全集)
と出てきます。

香川方言では「一人で来るげに言いよった」(一人で来るようなことを言っていた)と使います。



【600】
Re:知らぬげに
 岡島昭浩
 - 04/12/17(金) 23:45 -
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私の方言(福岡県を転々)では、「げな」は使いますが、「げに」は文語としてしか意識できません。また「げな」でも文末で終止形接続のもの(「美しいげな」「あるげな」)は使うのですが、形容詞語幹接続・動詞連用形接続で連体用法のもの(「美しげな人」「自信ありげな態度」)は、文語と意識します。

終止形接続のものは、「知らんげな」(知らないそうだ)というのですが、後者はどういえばよいのか。「知らない」なら「知らなげに」(あるいは「知らなさげに」?)だろうと感じるのですが、「知らぬ」はすぐには出てきません。「知らずげに」「しらざりげに」では変かな、などと考えて、「しらぬげに」を思い出すような気がします。


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