(新刊)日本語本レビュー ##
Yeemar
- 04/12/31(金) 9:51 -
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(新刊)日本語本レビュー・(新刊)日本語本レビュー #
の続きです。
メモしておかなければ「その本に書いてあった」ということがあとで分からなくなりそうなもの(内容が多岐にわたるものなど)もここに記しておきたいと考えます。
●加藤秀俊『なんのための日本語』中公新書2004.10.25
【はじめに寸評】 著者は日本語に関する見識をもつ人とおもうが、それにしては、頼りない記述が目につく。伝聞・憶測による記述がしばしばあらわれ、一事を以て万事をはかるたぐいも多い。「こんなめずらしい言語について、わたしはなにも知っているわけではない」(p.7)「わたしは文法学についてほとんどなにも知らない」(p.95)「まったくの耳学問だが」(p.105)などという記述に接すると、「おやおや」と思う。著者は「これはけんそん、韜晦だよ」と言われるかもしれないが、実際に読んで「誤りだ」「思いこみだ」「話をおもしろくするために俗信を利用している」と感ずる部分も少なくない。日本語について大所高所からものを言うためには、不正確でもあえていう蛮勇が必要なのか。しかし、読者、とりわけ日本語研究が専門でない一般の読者には迷惑な話ではないか。
とはいえ、メモすべきだと思った箇所は諸処にあるので――
・たんび このように外語としての日本語を勉強しているひとたちに会うたんびに、(p.61)
・ウォーター 比嘉正範(社会言語学者)は少年時、沖縄戦で重傷を負って米軍野戦病院に収容され、看護兵の「ウォーター?」の一言に「たんに「水」以上のひろく、ふかい意味」を感じ、言語研究の道にすすんだ〔要旨〕(p.71-72)
・単語 「きょうは、いい天気でした」というかたまりは「きょう」「は」「いい」「天気」「でした」の五つの単語でできあがっている。(p.82)〔*「でし」「た」と分けるのが一般的〕
・マイペンライ プリアー『マイペンライ』(1995)によればこのタイ語は「申しわけありません」「お気の毒でした」「ありがとうございます」など多様な意味で使われる〔要旨〕(p.105-106)〔*「どうも」「アロハ」と比較〕
・あげる 「いただく」の反対の「あげる」をやたらにつかうのもおかしい。(p.117)〔*「やる」と言うべしとの趣旨〕
・話す 大牟羅良『ものいわぬ農民』(1958)では北上山地で黙々とはたらくひとびとのすがたをえがく〔要旨〕(p.134)〔*当時の山村の言語生活を知る資料?〕
・つくり・はじかみ・ぎんなん 〔旅館の夕食の献立に「飯蛸」「蕗浸し」のほか〕「造里」というのはなんだ。はこばれてきたのでやっとわかったが、これは「ツクリ」すなわちお刺身のことなのであった。「初地神」というのもありました。クイズ番組のつもりで解読してこれが「ハジカミ」(すなわちショウガの雅名)であることがわかり、「銀庵」を「ギンナン」とよませようとしていることも実物をみてわかった。(p.190)〔*あて字を批判〕
・漢語癖 佐伯功介『國字問題の理論』(1941)(p.193)〔*同じ意味の漢語・和語を対比的に列挙して漢語癖を批判〕
・酷 二〇〇三年の秋に、ある在日中国人が〔いうには〕なんでも中国の若いひとたちがことあるごとに「酷」というのだそうだ。〔略〕英語の「クール」というのが流行語になって、その表記に「酷」をあてているというわけ。(p.197)
・サンキョウ・グバイ 文久3年に栗本市郎左右衛門〔ママ。左衛門か。著者はATOKを使用〕は漂着船船員の英語を記録して「サンキョウ」「グバイ」を含む「単語帳」を作った〔要旨〕(p.201)〔小林亥一『文久三年御蔵島英語単語帳』(小学館1998)として出ている〕
・カミングアウト 「いきなりこの場でカミングアウトさせていただくが、実はわたしはフェミニストである」〔略〕たぶん「カミングアウトする」というのは「結論をいう」というつもりらしいことは見当がつくが、いくら和製英語でもこれはひどい。(p.227)〔*coming outは少数者であることを告白することで、英語の辞書にも載っているのでは?〕
・日本製漢字語 高名凱先生の編纂による『現代漢語外来詞研究』(一九五八)(p.236)〔*邦訳は『現代中国語における外来語研究』関西大学出版部1988。岡島さん「中国に渡った日本語」(テキストファイル)にも〕
・ことばの乱れ 「こだわる」「悩ましい」「あえて」の使い方が気になる。乱れといっても、楽譜と違ってことばには基準がない。辞書もあてにはならない。「ことばは生きているから変化する」という説にまどわされるな。自分のことばに責任をもて〔要旨〕(p.217-226)〔*気持ちは分かるが、とすると「こだわる」「悩ましい」を「新しい」意味で使う人はことばに責任を持っていないのか。どういうことばを選べば責任を持っていることになるのか。その「基準」はあるのか。論理矛盾ではないか〕
【656】
Re:(新刊)日本語本レビュー ##
岡島昭浩
- 05/1/10(月) 11:18 -
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私がレビューするわけではなく、産経新聞の書評です。
http://www.sankei.co.jp/news/050110/boo022.htm
【ベストセラーを斬る】『問題な日本語』北原保雄編(大修館書店)
【663】
Re:(新刊)日本語本レビュー ##
道浦俊彦
- 05/1/11(火) 20:42 -
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『問題な日本語』、読書日記149で取り上げました。
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読書日記149『問題な日本語〜どこがおかしい?何がおかしい?』(北原保雄、大修館書店:2004、12、10)
2002年12月に出た「明鏡国語辞典」(大修館書店)。そのスタッフが、言葉に対する疑問や変わりつつある言葉についての疑問に答える形でまとめたのがこの本。タイトルそのものが「問題な」というヘンな日本語の使い方をしているところがミソ。
まあ、たしかにたいていの最近気になる日本語について答えてくれていますから、一般の人でちょっとだけ言葉の問題に興味のある人にとっては、目からウロコが落ちることも多いと思う。
まるで参考書のように、下の段に注釈のように「コラム」があるのだが、これは読みづらい。コラムはコラムとして出して欲しい。同じページの下にあると、いっぺん上の段を読んでから、また下の段を読まなきゃならないから、面倒です・・・。
挿絵、かわいいです。
(☆☆☆)
(2004、12、16)