2003年08月15日

これって誤用でしょうか(守沢良)

 日頃から(やはりこの表現は重言っぽい)気になっている「これは誤用ではないか?」と感じる表現などについて書きます。過去に同じような話があったらご容赦ください。ご意見をお聞かせいただければ幸いです。デス・マス体は書きにくいのでデアル体で書きます。失礼をお許しください。

1)足元をすくう(「足下をすくう」も同様)
 8月11日「朝日新聞」(夕刊17面)から。11日の朝刊が休みだったため、10日と11日(前半)の全国高校野球選手権記念大会の結果を伝えている。問題の記事は、10日の岩国(山口)対羽黒(山形)戦の試合結果。「羽黒、足元すくわれた」と大きな見出しが踊る。文中にも、「岩国の粘っこい攻めに足元をすくわれた」とある。まず問題なのは「足元をすくう」。本来の表現は「足をすくう」のはずだが、もはや誤用ではないのだろうか。インターネットなんかで調べても、誤用としか思えない。にもかかわらず、けっこう目にする。新聞でも何度か目にした。次に気になるのは、「足をすくわれる」は「格上の者が格下の者に不覚をとる」のニュアンスがあること。たしかに2人の好投手を擁する羽黒は前評判が高かったが、これは対戦相手に対して相当失礼な書き方じゃないだろうか。
 などと書きながら、新たにいくつかの疑問が湧いてくる。
1)-2「不覚をとる」は漢字で書くなら「取る」なのだろうか。表記の問題は別として、「不覚をとる」はなんか異和感がある。論理的に考えると「不覚をとられる」になりそうな気がするが、そんな表現は聞いたことがない。いちばん無難なのは「不覚を喫する」だろうな(大ゲサかな)。
1)−3「〜を擁する」ってすごく堅苦しい。通常は「〜を持つ」にするところだが、この場合は使えない。書きかえるなら「〜がいる」ぐらいか。これはなんかヘン。
1)-4「対戦相手に対して」って重言じゃないのかな。

2)しのぎ合う
 4月8日「朝日新聞」(朝刊16面)から。山下泰裕・全柔連男子強化部長の署名記事に「2人がしのぎ合うことは、日本柔道界に大きなプラスだ」とある。
「凌ぐ」には主としてふたつの意味がある。@「困難などに耐えて状態を保つ」……「急場を凌ぐ」とか「危機を凌ぐ」とか。A「他者を超越して優位に立つ」……「A社の売り上げを凌ぐ」のような使い方(なんかヘンだな)。どちらの意味で考えても微妙にずれている気がする。「鬩(せめ)ぎ合う」(これも迂闊に使うと誤用と言われる)「競り合う」「競い合う」などとの混用ではないだろうか。「互いによく攻め、互いによく守り」(カッコよく言えば、「攻めも攻めたり、守りも守ったり」ってヤツ?)って意味で具体的な戦いを描写するのに「攻め合い、凌ぎ合い」という使い方ならアリの気がするけど、やや強引。
 語呂がよく似ている混用が「凌ぎを削る」。これは「鎬を削る」が正しい用法だから明らかに誤用。この誤用は、ワープロソフト&ワープロの普及によって明かに増えた。

3)〜しませんでした(「〜ありませんでした」「〜できませんでした」なども同様)
 ふつうに使われている表現で、誤用の問題とは性質が違う。ただ、うまい逃げ道がないという意味ではこちらのほうが深刻。
「〜しない」のデス・マス体は「〜しません」。これは小学生レベルの問題。しかし、「〜しなかった」をデス・マス体にするとどうなるのかがわからない。
 もし、「美しい」の過去形として「美しかったです」が認められるのなら、「〜しなかったです」もアリの気がするが、いかんせん言葉足らず。
 かと言って「〜しませんでした」は、いったん気になると、使えなくなる。「〜しましたです」がおかしいのなら、「〜しませんでした」もおかしいのではないか。文法的に解析するとどうなるのだろう。このあたりのことを考えはじめると、ますますデス・マス体の文章が書けなくなる。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 08月 16日 土曜日 02:52:24)

下記のスレッドが誤用の問題を扱っていますので、そちらにコメントさせていただきました。

誤用(かと思われるもの)の用例集




posted by 岡島昭浩 at 21:05| Comment(0) | TrackBack(1) | ■初代「あれこれ会議室」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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誤用(かと思われるもの)の用例集
Excerpt:  上記のようなものが欲しいですね。昔の月刊文法に誤用すれすれとかいう特集があったかと思いますが。  今回、そう思ったきっかけは、見知らぬ人からのメールでした。 >本当に厚手がましいお願いですが、どうか..
Weblog: ことば会議室
Tracked: 2005-10-20 10:38
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