平安時代以前のことば
すずき
- 05/4/17(日) 7:59 -
----
はじめまして、
私はフィンランドの大学で勉強しているものです。
こちらの文献のなかで、何人かが700年ー800年には日本では中国語が公用語として話されていた。女性はそれを使うことができなかったため、特別な言葉を使っていた。その結果生まれたのが、源氏物語等の女流作家の本だという理論を出しています。
この理論に反論したく、これについての情報をお待ちしております。
よろしくお願い致します。
【800】
Re:平安時代以前のことば
Yeemar
- 05/4/17(日) 21:15 -
----
すずきさん、こんにちは。
いくつか、論点がありますね。
(1)700年―800年には日本では中国語が公用語として話されていた
(2)女性はそれを使うことができなかった
(3)当時の女性は特別な言葉を使っていた
(4)その結果生まれたのが、源氏物語等の女流作家の本だ
まず論じやすいのは(4)でしょう。「源氏物語」など11世紀の女流文学の文章を、300年隔たった8世紀ごろの言語状況とを直接結びつけるのは飛躍があります。
(3)について、日本女性は8世紀ごろから11世紀ごろにかけて「特別な日本語」を使っていたか? 「源氏物語」をはじめ、平安朝の文学に描かれた男女の会話を見るかぎりでは、基本的に同じことばを「話して」いたようです。
(2)女性は中国語を理解できなかったか。そんなことはなく、紫式部も清少納言も漢籍をよく理解したということは「紫式部日記」「枕草子」のエピソードなどから分かります。
(1)の中国語が公用語だったというのは、正式の公文書は漢文(中国語)で書かれたという意味ではそのとおりでしょう。ずっと後世まで正式の文書は漢文でした。しかし、日本人同士の会話で「話されていた」のは日本語だったでしょう。漢文は、日本語の語順に従って読まれる(つまり訓読される)ことが多かったでしょう。訓読のための点を記入した書物はすでに8世紀のものから残っています。
私は、「古代の日本人は公の場では何語を話していたか」という問題設定で書かれた本を知りませんが、上に述べた理由から、(1)〜(4)の論には従うことができません。