2005年10月17日

辞書の語釈

【237】
辞書の語釈
 Yeemar
 - 04/7/9(金) 13:05 -
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辞書の語釈を見て気づいたことを記したいと思います。「辞書にない語釈」ならば別スレッド「辞書にないことば」でも覆えるようですが、ここは、問題ある語釈とか、語釈の変遷とかいうことにまつわるスレッドというつもりです。

持つ
たまたま『集英社国語辞典』(第2版)を開いて「持つ」の項目を見ると、第1番目に
物を手に持って、離さないでいる。提げる。「荷物を――」「左手に本を――」
とあります。その「手に持って」が分からないから辞書を引くのではないか?

取る
どうも基本語の語釈があまいのではないか、という目つきでさがすと、「取る」の第4番目に
不要なものを取り除く。「草を―」「ふろに入って一日の疲れを―」
というのも、良いのだろうかと思われます。「取る」ということばを「取り除く」ということばで説明するのはゆるされるのでしょうか。



【241】
Re:辞書の語釈――「とる」「もつ」
 岡島昭浩
 - 04/7/10(土) 17:50 -
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辞書の語釈は、説明しようとする語を使わず、出来るだけやさしい語で、ということが望まれますね。

私もたまたま机上にあった上田萬年『ローマ字引き国語辞典』(T4.4.24発行 T4.6.10 9版)で、

Motsu 持つ [自四] ながく,そのありさまを,つづける.久しく,たへる.―To wear, endure, last, bear.――[他四]1.手にとって,ささへる.はぢ(把持)する;所持する.―To have, hold.  2.もちゐる. 3.自分のものとする.有とする.―To owe, posess.  4.そなへ有する.所有する;所持する.―To have.  5.たもつ.まもる.―To keep.  6.うけもつ.たんにん(擔任)する.

「たもつ」「うけもつ」は、許されるところでしょうか。

Toru 取る [他四] 1.手にもつ.はぢ(把持)する.(執,把)―To take, hold, carry.  2.うばふ.だっしゅ(奪取)する;奪略する. 3.ぬすむ.せっしゅ(竊取)する. 4.ぶんどる.ろくゎく(鹵獲)する. 5.めしとる.とらへる.たいほ(逮捕)する;捕縛する. 6.とりあげる.ぼっしう(没収)する. 7.とりもちゐる.使用する.―To adopt.(以下略。37まであり)

「ぶんどる」「めしとる」「とりあげる」「とりもちゐる」……沢山出てきますね。



【242】
Re:辞書の語釈
 佐藤
 - 04/7/10(土) 19:34 -
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▼Yeemarさん:
>辞書の語釈を見て気づいたことを記したいと思います。「辞書にない語釈」ならば別スレッド「辞書にないことば」でも覆えるようですが、ここは、問題ある語釈とか、語釈の変遷とかいうことにまつわるスレッドというつもりです。


以前、友人に教えてもらったのが、『明解国語辞典』(昭和18年初版)の語釈。

 つい-きゅう(0)[追及]ツヰキフ(名)おひおよぶこと。
 つい-きゅう(0)[追求]ツヰキウ(名)おひもとめること。
 つい-きゅう(0)[追究]ツヰキウ(名)おひきはめること。

あるいは有名な例で、どこかで読んで記憶にあったのかもしれません。コンパクトな辞典に多くの語を収載するので大変だとは思うのですが…… もちろん、昭和18年の社会情勢を考えれば、出版しただけで素晴らしいことかとも思います。現代のものは懇切な語釈になっています。



【849】
Re:辞書の語釈(アリバイ)
 Yeemar
 - 05/5/21(土) 10:49 -
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「アリバイ」が「現場不在証明」(そこにいなかったことの証明)という意味ではなく使われている例です。「あとで言いわけに使うため、いいかげんに作った証拠。」という語釈でいいでしょうか。佐藤貴裕さんかどなたかがこの用法あることをご指摘になったと記憶しますが……
〔報告者は〕報告内容が聞き手に理解されようとされまいとどうでもいいと考えているらしい。舞台から会場のほうへ目を転じると、聴衆のほうも心得ているらしく、大方は鼻で舟を漕{こ}いだり、鼾{いびき}さえかいたりしている。〔略〕こんな時は、もしかしたら自分たち〔通訳者〕も、この会議が「国際的」なものであることのアリバイづくりのために雇われたのではないかと思ってしまう。(米原万里『不実な美女か貞淑な醜女{ブス}か』〔徳間書店1994.09〕新潮文庫 2003.03.30 8刷 p.253)




【850】
Re:辞書の語釈(補導)
 Yeemar
 - 05/5/21(土) 11:30 -
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「補導」というのは、『三省堂国語辞典』第5版によれば「〔少年が〕まちがった ほうへ行かないように、忠告し指導すること。「―係・―歴・学生の―」」とあります。つまりは「教育・善導・訓導」などの類義語ですね。

ところが、ニュースでは「中学3年の少年らが逮捕、中学2年生が補導された。」などと、「検挙」の意味に使っています。もちろん、「検挙」も「補導」の一環でしょうが、本来の意味から考えれば、「中学2年生が教育された」とか「中学2年生が善導された」と言っているのと同じであり、おかしく感じます。補導の主たる部分は、検挙した時点以後に行われるものでしょう。

辞書に、「〔俗に、少年を検挙することの意で用いる〕」とでも添えておけばいいのかもしれません。

「補導」をなんとなく「捕導」と思っている人が多いということはないでしょうか。私も、不意に問われれば「捕導」と書くかもしれません。

ところで、次のような「補導」の使い方もあるようで、これは辞書にない語釈ではないでしょうか。
 突然話は変わるが、飼い犬を散歩の際に鎖に繋{つな}いで補導していた私は、自分が一方的に飼い犬の自由を束縛していると思っていたが、(米原万里『不実な美女か貞淑な醜女{ブス}か』〔徳間書店 1994.09〕新潮文庫 2003.03.30 8刷 p.307)



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