2005年10月17日

曙と東雲のニュアンスについて

【851】
曙と東雲のニュアンスについて
 鈴木ともうします。
 - 05/5/23(月) 14:21 -
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はじめてメールさせていただきます。
わたくしは、茨城県在住の高校2年生で
鈴木ともうします。
 
ところで、きっとご多忙であられよう中
突然のお願いで恐縮ですが
もし、少しでもお時間のございますようでしたら、
お知恵を拝借できませんでしょうか?

1.古語的表現の中に“曙”と“東雲“というのがございますが、
厳密にはどのような違いがあるのでしょうか?
2.「わずかに 白んできた 明け方の情景」
というこのキーワード・表現だけでどちらのことを指しているのかを限定することは
学識者の方からご覧になって、可能でしょうか?

こちらにまいりまして、はじめてインターネット大辞林という便利な物の存在を知りまして、
早速ありがたく行ってまいりました。
ありがとうございました。
もちろん他に自分でも、広辞苑・広辞林・古語辞典・国語辞典(三省堂/金田一京助・春彦氏他)・日本国語大辞典などを調べてみましたが、
これだけの表現では、言葉足らずで判別できないように思いました。
不躾とは存じますが、特に2.についてのご見解をただ一言結論だけでも結構です。
お教えいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願い申し上げます。



【853】
Re:曙と東雲のニュアンスについて
 道浦俊彦
 - 05/5/23(月) 20:52 -
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学識者ではないですが・・・語感から言って、「曙」は昇る「朝日」つまり「太陽」を、「東雲」その太陽の光を浴びた東の空の雲・・と言うか、ほのぼのと明けてくる状況を言うのではないでしょうか?

「春は曙」と言われる時の「曙」は、やはり朝日かなあ。
「東雲」の方が、まだ朝日が顔を出す前、雲の下の方から明るくなってきたような感じを受けますが。
まだ朝日が顔を出していない「あさぼらけ」の全体の情感を出すのなら「東雲」、顔を出し始めた「朝日」も含めて言うなら「曙」で、いかがでしょうか?

でも高校二年生で、こんなことに気づくなって、偉いですねえ。



【854】
Re:曙と東雲のニュアンスについて
 岡島昭浩
 - 05/5/23(月) 22:49 -
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▼鈴木ともうします。さん:

>1.古語的表現の中に“曙”と“東雲“というのがございますが、
>厳密にはどのような違いがあるのでしょうか?


「あけぼの」と「しののめ」ですね。


>2.「わずかに 白んできた 明け方の情景」
>というこのキーワード・表現だけでどちらのことを指しているのかを限定することは
>学識者の方からご覧になって、可能でしょうか?



>もちろん他に自分でも、広辞苑・広辞林・古語辞典・国語辞典(三省堂/金田一京助・春彦氏他)・日本国語大辞典などを調べてみましたが、
>これだけの表現では、言葉足らずで判別できないように思いました。


そうですね。表現者(出題者?)の意図を推し量れば、「わずかに」という言葉で
、「あけぼの」ではなく「しののめ」を答えて欲しい、というところでしょうか。「白んできた」ので「あかつき」でもない、と。

『日本国語大辞典』を御覧になったと言うことですが、「あかつき」の語誌欄も御覧になりましたでしょうか。「あけぼの」「あかつき」「しののめ」は、もともと混同されそうな時間帯ですが、「しののめ」は男女の別れを含意する言葉としてよく使われることにより、時間帯よりもその方面でのニュアンスの差を持つことになったものでありましょう。



【855】
Re:曙と東雲のニュアンスについて
 Yeemar
 - 05/5/23(月) 23:46 -
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▼鈴木さん:

これは、もともとは試験問題か何かの文章でしょうか。もしよろしければ、疑問が出て来るまでのいきさつとか、もとになった文とかを教えてくださいませんか?



【888】
Re:曙と東雲のニュアンスについて
 岡島昭浩
 - 05/6/11(土) 0:38 -
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▼Yeemarさん:

>これは、もともとは試験問題か何かの文章でしょうか。もしよろしければ、疑問が出て来るまでのいきさつとか、もとになった文とかを教えてくださいませんか?


某テレビ番組関係者から、質問を受けました。これが偶然にも曙・東雲だったので驚きました。

「わずかに白んできた明け方の情景」を表す言葉として、「曙」を不正解とし、「東雲」を正解としたが、それでよかったのだろうか、と。収録はしたけれどまだ放送していない段階。

選択肢があるわけではなく、これを表す言葉を答えよ、という問題だったとのこと。

私は、この問題だけで、「あけぼの」を排除し、「しののめ」でなければならないとするのは、無理だろうと答えました。理由を説明しましたが、どうもあまり真面目に聞いている風ではなく、おそらくは、「東雲でなければならない」と答えてくれる人が居るまで、大学宛に電話して質問を続けて行くのだろうと思ったことでした。

鈴木さんは、出場者だったのでしょうか。それとも応援団でしょうか。そして番組相手に抗議をなさったのでしょうか。



【890】
Re:曙と東雲のニュアンスについて
 skid
 - 05/6/11(土) 7:47 -
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>「わずかに白んできた明け方の情景」を表す言葉として、「曙」を不正解とし、「東雲」を正解としたが、それでよかったのだろうか、と。


『枕草子』の「春はあけぼの。やうやうしろくなり行く、山ぎは少しあかりて……」からすれば、やっぱり「曙」も正解にしないと変でしょうね。

『角川古語大辞典』によると「あかつき」「しののめ」「あけぼの」「あした」の順になるそうですが、はっきり境界があるわけではなく、けっこう重なっているのではないかと思います。



【896】
Re:曙と東雲のニュアンスについて
 岡島昭浩
 - 05/6/16(木) 23:08 -
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今日、放映だったようです。

http://www.tv-tokyo.co.jp/tvchamp/result/result.htm

> 今回の決勝の最後の問題について、番組収録後に改めて専門家に見解を求めたところ、「東雲」が正解として最適ですが、「曙」を不正解とは言えないという意見が多く寄せられました。
> よって、鈴木翔子さんには優勝と同等の表彰をさせて頂きます。


それはそれは。
「しののめ」でなければならない、とする専門家を捜しているのではないかという私の予想は邪推だったことになります。お見それいたしました。

ところで、番組制作者側からFAXで示された資料によれば、「しののめ」の説明には、多く「しらむ」という表現が使われているのに、「あけぼの」には使われていない、ということでした。これは、国語辞典の不備と言いますか、横並び性と言いますか、問題を残すところですね。skidさんの御指摘にもあるように、「やうやう白くなりゆく」曙があるわけですから。



【897】
Re:曙と東雲のニュアンスについて
 skid
 - 05/6/17(金) 1:44 -
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信じがたいヒット数になっていますね。
もっと早くに『新明解古語辞典』補注版第二版の引用をもとに説明しようとしたのですが、誤って消してしまいました。
いまさらですが、小学館の『古語大辞典』から。

しののめ【東雲】(語誌欄)
「あけぼの」との違いは、「あけぼの」は明るんできたとき、「しののめ」はまだ明けやらぬ間、という説もあるが、時間的な違いはなく、歌語と散文語との違いとみる説に従うべきであろう。(木之下正雄)



【898】
黎明でいいんじゃない?
 家電王
 - 05/6/17(金) 14:26 -
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[本文なし]



【901】
Re:黎明でいいんじゃない?
 岡島昭浩
 - 05/6/18(土) 14:06 -
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▼家電王さん:
>黎明でいいんじゃない?


黎明でも、いいでしょうね。
「やまとなでしこ」だからといって、「漢語はだめ」というルールがあるわけではないでしょうから。

嚮明・暁明・昧爽あたりもよいでしょうか。

「しののめ」が「東雲」という漢字表記と結びついた経緯も知りたいところです。



【909】
Re:曙と東雲のニュアンスについて
 岡島昭浩
 - 05/6/21(火) 9:01 -
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こちらこちらにも関連記事があります。

なお、スレッドを続けるには、「返信」をクリックして下さい。



【912】
Re:曙と東雲のニュアンスについて
 kara
 - 05/6/29(水) 6:45 -
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はじめまして、今更ながらですが、私もこのスレッドの発端になっている鈴木さんの出演していらっしゃるTV番組を観て、この2つの言葉のニュアンスの違いに興味を持った者です。それで、曙、東雲で検索していてここにたどりつきました。

 >しののめ」は男女の別れを含意する言葉としてよく使われること
 >により、時間帯よりもその方面でのニュアンスの差を持つことに
 >なったものでありましょう。

このくだりを見て、なんとか疑問が解けたようなきがしました。実は私は 東雲 というのは時間帯をさすより、朝、東の空の棚雲に下から光があたって照らされている情景そのものを言うのだと思っていたのです。あけぼの、というとむしろ湿度の高い季節に東の空全体がぼんやりと一面明るくなる情景を言うのだと思っていました。

このことに興味を持ってから下に書くようなことに気付きました。一つは

あけぼの
あけ
あさ
あさぼらけ
あかつき
あした

など、朝を表すやまとことばの中で、しののめだけが音として異質であること。もう一つはこれまで知らなかったこと、東雲の語源、「篠の目」です。

もう一つ、ここに来て(恥ずかしながら)「東雲」という言葉が男女の別れというニュアンスを持つことを知り、この言葉が生まれた状況が想像できるようになりました。

まったく素人の想像ですから笑止なものかもしれませんし、あるいは実は良く知られているのかもしれませんが、その想像を書きます。

東雲という言葉は後朝の別れの時、床の中で見た蔀を通した光の印象が男女の頭の中にあって、東の空の棚雲をそれに見立て生まれたのだと思います。

以下、よろしければ質問ですが、

あけぼの、しののめ、それぞれ使われ始めた時代はいつごろなのでしょうか。

平安の頃の後朝の別れは、どのくらいの時間が一般的だったのでしょうか。



【913】
Re:曙と東雲のニュアンスについて
 Yeemar
 - 05/6/29(水) 18:39 -
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▼karaさん:
>あけぼの、しののめ、それぞれ使われ始めた時代はいつごろなのでしょうか。


以下、皆さんのご発言を踏まえつつ、私見を入れます。

両語が盛んに使われ始めたのは同時期で、平安時代ころでしょう。

『日本国語大辞典』では、「あけぼの」の初出は「日本書紀」前田本訓の例が挙がっており、「720」(年)とあります。しかし、前田本は平安時代のものです(田島さんご紹介の東みづほ氏の論文はそれを指摘か)。その次に載っている「蜻蛉日記」(974頃)の例のほうがより確実でしょう。

「しののめ」は古今和歌集(905-914)の例が挙がっています。

千何百年の日本語の歴史からいえば、十年、何十年は誤差の範囲としかいいようがありませんから、どちらが時代的に早いとも言えませんね。


>平安の頃の後朝の別れは、どのくらいの時間が一般的だったのでしょうか。


スタンダードはあったのでしょうか? 「あかつき」「しののめ」の別れを詠んだ歌は、ともに多くあります。とりあえず、「あかつき」はまだ暗いころ、「しののめ」は夜が明け始めたころと考えていいでしょうが、それぞれの歌がどの時間帯のつもりで詠まれているのか、それは堀井令以知氏の文章(田島さんご紹介)にあるとおり、見極めがむずかしそうですね。

「あけぼの」「あさぼらけ」は、ことさら、きぬぎぬの別れに使われるというわけでもないようですが、例はあります(少ないか?)。以下に、きぬぎぬを詠んだ例を挙げます。
・有明のつれなくみえし別れよりばかりうきものはなし 壬生忠岑(古今集)
しののめのほがらほがらと明けゆけばおのがきぬぎぬなるぞかなしき よみ人知らず(古今集)
・明けぬればくるるものとはしりながらなをうらめしきあさぼらけかな 藤原道信(後拾遺和歌集)
・暮にとも契りてたれか帰るらむ思ひたえたるの空 藤原家隆(千載和歌集)




【917】
Re:曙と東雲のニュアンスについて
 kara
 - 05/7/1(金) 1:05 -
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▼Yeemarさん:

お答え、ありがとうございました。用例を出していただいて、あらためて気付きましたが、自分で興味を持ったことなら、人に聞く前にできる範囲で自分でも調べてみるべきでした。そう思って、本棚をひっくり返したら、古今と新古今は出てきたのであらためてそういう興味で恋歌のところを読んでみて、Yeemarさんにあげていただいた用例以外のものをいくつか見つけましたので書いておかせて下さい。

古今和歌集649
題しらず 寵
しののめのわかれををしみ我ぞまづ鳥よりさきになきはじめつる

夜明け前の鳥の声が最も盛んなのは初夏の頃で、空がまだ暗いうちからアカハラなどがさえずり初め、空が白み始めたころに最高潮に達しますから、この人の意識はまだ白み始めた頃を「しののめ」としててらしているのですね。この時点でこの人の思っていたのは「篠の目」なのでしょうか「東雲」なのでしょうか。

新古今和歌集1184
二條院御時、あかつきかへりなんとする恋といふ事を 二條院讃岐
あけぬれどまだきぬぎぬになりやらで 人のそでをもぬらしつるかな

夜があけても、未練があればまだ帰らないこともあったようです。

新古今和歌集1186
後朝恋のこころを 摂政太政大臣
又もこん秋をたのむのかりだにも鳴きてぞ帰る 春の曙

新古今和歌集1189
三條関白女後入内のあしたにつかわしける 花山院御歌
朝ぼらけおきつる霜の 消えかへり 暮れ待つ程の袖をみせばや

このあたりはあまり参考になりませんでしたが、

新古今和歌集1193
 西行法師
有明は思ひいであれや よこ雲の だたよはれつるしののめの空

この歌あたりが、「しののめ」という言葉が男女の別れを暗示しつつ朝の情景を指すようになった機微を明らかにしているように思いました。そういえば、昔の駆逐艦に「東雲級」っていうのがありましたが、こうしてみるとちょっと弱そうな名前ですね。


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