2005年10月17日

ハモる ―名詞の動詞化―

【929】
ハモる ―名詞の動詞化―
 Yeemar
 - 05/7/13(水) 16:47 -
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金田一春彦・安西愛子編『日本の唱歌(中)』(講談社文庫)p.292に「朝はどこから」の歌について
安西と岡本とがハモッて歌ったのが、当時はまだ珍しい試みで新鮮な感じを与えた。
とあります。この文庫の初版は「昭和54年7月15日」。このころから「ハモる」はあるのか、意外に古いと思いました。

『日本国語大辞典』の「ハモる」には用例がありません。

名詞の動詞化の例については、だいぶ前に、「トラブる」の先祖というページに書きつけたことがあります。ほとんどは知られた例ですが、中には珍しいと思ったものも入れたつもりです。



【930】
Re:ハモる ―名詞の動詞化―
 岡島昭浩
 - 05/7/13(水) 21:03 -
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▼Yeemarさん:
>「昭和54年7月15日」。このころから「ハモる」はあるのか、意外に古いと思いました。



私が中学生の頃、昭和48年から51年頃ですが、福岡の民放、RKBラジオで、大人気番組「スマッシュ11(イレブン)」というのがありました。その中で、「○○○ないコーラス」というコーナーがありました。一語化して言っており、下がり目はコの後。聴取者が集まって、なにか歌を歌い、それを編集して放送する、というコーナーでした。


この「○○○ないコーラス」が何と言っているのか分からず、
「真駒内コーラス」?
「浜もないコーラス」?
「たまらないコーラス」?
と、首を傾げておりました。

これが「ハモらないコーラス」だったんです。多分、音楽愛好者の間では、早くから使われていたものだろうと思います。



【960】
Re:ハモる ―名詞の動詞化― 昭和35年!
 佐藤
 - 05/7/30(土) 11:25 -
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昭和35年発生説、発見。我等、ハモるとともに生まれし者達?
http://www.geocities.jp/showahistory/history5/showa35.html

歌声喫茶が発祥の場。昭和35年に「使われ(てい)た」ということでしょうから、もう少しさかのぼれるか。ただ、回想録のような書きぶりなので、思い違いも考えられますね。他の証言もほしい。



【961】
Re:ハモる ―名詞の動詞化― 昭和35年!
 道浦俊彦
 - 05/7/30(土) 13:30 -
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大学のOB合唱団で男声合唱をやっていますが、昭和20年代後半卒業の先輩たちも「ハモる」はごくフツウに使っていますね。新たに覚えた言葉、というようでもなく、学生時代から使われていると思われます。
今度、ご本人たちに直接伺って確認しておきます。



【962】
Re:ハモる ―名詞の動詞化― 昭和35年!
 道浦俊彦
 - 05/7/30(土) 14:49 -
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『日本俗語大辞典』(米川明彦編、東京堂出版)に載っている「ハモる」の用例で一番古いのは、1955年(昭和30年)8月28日号の 『週刊読売』の記事で、「『みんなで”若者”でもハモろうぜ』(”ハモるは合唱する。ハーモニーの転)左翼学生の隠語」
だそうです。
また、昭和31年初版・昭和48年22版の楳垣実『隠語辞典』(東京堂出版)にも学生語として「ハモる」が載っていました。意味は「合唱する」。

ただ、現在私が使っている「ハモる」は、単に合唱するのではなく、和音を聞かせるものを「ハモる」と言います。斉唱は、合唱ではありましょうが「ハモる」ではありません。



【965】
Re:ハモる ―名詞の動詞化― 昭和30年!
 佐藤
 - 05/7/30(土) 19:03 -
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▼道浦俊彦さん:
>『日本俗語大辞典』(米川明彦編、東京堂出版)に載っている「ハモる」の用例で一番古いのは、1955年(昭和30年)8月28日号の 『週刊読売』の記事で、「『みんなで”若者”でもハモろうぜ』(”ハモるは合唱する。ハーモニーの転)左翼学生の隠語」
>だそうです。


ありがとうございます。歌声喫茶を生み出した「うたごえ運動」(↓)の産物のようですね。するとさらにさかのぼるか。上限は1948年?
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%86%E3%81%9F%E3%81%94%E3%81%88

「ハモる」という言い方は、岡島さんやYeemarさんの受け取り方からすると、生まれてから現在まで必ずしも拡大の一途をたどった訳ではないようですね。ある時期に拡大してまた収束して、現代にみるように定着した、という筋でしょうか。あるいは大学生の隠語として長らく保たれたということか。



【966】
Re:ハモる ―名詞の動詞化― 昭和30年!
 道浦俊彦
 - 05/7/30(土) 19:09 -
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昭和35年大学卒業の先輩から返事が返ってきました。それによると、

「現役の頃は、ごく自然に『ハモる』を使っていました。またジャズメン達が使っていた 「C千」(=1000)、「G百」(=500)など、金銭に関する表現や、「ジャズ」を「ズージャ」というように語順を入れ替える表現なども仲間内で隠語として結構使っていました。」

早稲田大学グリークラブ(男声合唱団)での話です。「現役の頃」と言うのは、「昭和31年から35年」にかけて、「1956年から1960年」です。



【967】
Re:ハモる ―名詞の動詞化― 昭和30年!
 道浦俊彦
 - 05/7/30(土) 21:36 -
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さらに昭和34年(1959年)卒業の先輩からです。

「定かではありませんが、私の記憶ではグリークラブ現役当時(昭和30年から34年)から使われていたように思います。いつ頃からかと言われると、一寸困りますが・・・。21号館共通教室裏手の部室で、現在ボニージャックスの西脇さんや高橋さん玉田さん達が、何人か集まっては暇があれば何かを歌っているのを見かけて、
『あー、またハモッてるネ』
などと云っていたような気がします。」

とのことです。



【968】
Re:ハモる ―名詞の動詞化― 昭和30年!
 道浦俊彦
 - 05/7/30(土) 21:40 -
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「うたごえ運動」で歌われたものは、どちらかというと「斉唱」のようにユニゾン(同じメロディ)で歌うものか、せいぜい2部合唱ぐらいが多かったのではないでしょうか?それだと「ハモる」感覚とは、ちょっと違うかなと思うのですが・・・。
「コード」がバシッと決まってこそ、「ハモった」と言えるような気がします。



【969】
Re:ハモる ―名詞の動詞化― 語義・語感
 佐藤
 - 05/7/30(土) 22:02 -
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▼道浦俊彦さん:
>「うたごえ運動」で歌われたものは、どちらかというと「斉唱」のようにユニゾン(同じメロディ)で歌うものか、せいぜい2部合唱ぐらいが多かったのではないでしょうか?それだと「ハモる」感覚とは、ちょっと違うかなと思うのですが・・・。
>「コード」がバシッと決まってこそ、「ハモった」と言えるような気がします。


私も「ハモる」を使うときは、和音(三度とか六度?とか)が成立したときが主です。ちゃんとした(?)不協和音でも言いそうです(「音程が合っていない」とは別)。ただ、俗に「単に同じ言葉を同時に発話した(歌ですらない!)」場合でも使ってますね。そして、それを承知の上で、ちょっとだけ後ろめたさを覚えつつ、使うこともあります。

「ハモる」の許容度などを調べるのも面白そうですね。どこで線が引けるか、とか。
 A正式な不協和音でひびく
 Bきれいな和音(不協和音除く)がひびく
 C4声部(以上? 分からん)でうたう
 Dせいぜい2声部程度でうたう
 Eともかく皆で一緒にうたう
 F偶然、同時に同じ言葉をいいあう
程度差順に並べたつもりですが、BとCのあいだで、状態をいうのか、行為をいうのかという大きな境界ができますね。



【970】
Re:ハモる ―名詞の動詞化― 昭和30年!
 Yeemar
 - 05/7/31(日) 0:21 -
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▼佐藤さん:
>「ハモる」という言い方は、岡島さんやYeemarさんの受け取り方からすると、生まれてから現在まで必ずしも拡大の一途をたどった訳ではないようですね。


私は1979年の例を見て「意外に古い」と思ったのですが、よく考えてみれば、私は中学生の時、1982年に音楽の先生が「ハモる」を使っているのを聞いた覚えがあります。そして、意味もすぐに分かりました。ですから、実際には79年の例は、私にとっても3年さかのぼったにすぎませんでした。考えが足りませんでした。



【974】
Re:ハモる ―名詞の動詞化― 昭和30年!
 道浦俊彦
 - 05/8/2(火) 16:37 -
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昭和23年(1948年)入学の先輩から、返事が来ました。

「入部時には既に使われていた記憶があります。終戦間もない頃。当時、指揮者は磯部俶さん、一年上には故・関屋晋さんがいました。よく『ハモってないな』とか『ひとつハモるか』という風に使っていました。」

とのことです。



【975】
Re:ハモる ―名詞の動詞化― 昭和30年!
 佐藤
 - 05/8/2(火) 17:01 -
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▼道浦俊彦さん:
>昭和23年(1948年)入学の先輩から、返事が来ました。
>
>「入部時には既に使われていた記憶があります。終戦間もない頃。当時、指揮者は磯部俶さん、一年上には故・関屋晋さんがいました。よく『ハモってないな』とか『ひとつハモるか』という風に使っていました。」


 あっさり理論的上限(=うたごえ運動発祥)の例まで出ましたね。
 ひょっとすると、合唱はじめ音楽に(準)専門的に関わる人には、早くから使われていたのでしょうか。で、うたごえ運動の広がりとともに昭和30年代あたりから「ハモる」が専門外の人にも広がりだした……

 いまさら言うのもあれなんですが、「ひとつハモるか」のような使い方、恐らくは「二声部以上で合唱する」の意味だと思うのですが、私にとっては初めて接する用法です。さきに語義などを何段階かに分けましたが、「合唱する」系のいくつかのブランチは、私にとっては実感のわかない用法です。



【976】
Re:ハモる ―名詞の動詞化― 昭和30年!
 道浦俊彦
 - 05/8/2(火) 18:46 -
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うちのOB合唱団の最高齢の「大」先輩は、なんと、
昭和12年(1937)”卒業”
の92歳!現在、間接的に「現役時代に『ハモる」を使っていたかどうか?」を確認してもらっているところです。



【977】
Re:ハモる ―名詞の動詞化― 昭和30年!
 道浦俊彦
 - 05/8/5(金) 10:00 -
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さらに古い時代の先輩の話が聞けました。

「昭和24年卒の先輩は所謂「特攻帰り」で、当時航空隊の長靴を履いて通学しておられたように思います。学徒出陣で戦闘機に乗っていたということでした。

その学生時代に「ハモる」を使っていたということですから、昭和17、8年(1942、43年)頃には間違いなく使われていたということになります。磯部さんは17年卒ですからその頃は普通に使っていたのではないでしょうか。
それ以前については残念ながら不詳です。」


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