ムチはしなう?しなる?
道浦俊彦
- 05/7/27(水) 18:06 -
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「しなう」と「しなる」、「しなう」の方が古い言葉のようですが、意味の違いや使い分けはあるのでしょうか?
私は「ムチ(鞭)」は「しなう」の方が合うような気がするのですが。「木の枝」は断然「しなる」です。
そして、ともに過去形は「しなった」で良いのでしょうか?
【956】
Re:ムチはしなう?しなる?
Yeemar
- 05/7/27(水) 23:48 -
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▼道浦俊彦さん:
>「しなう」と「しなる」
ほかに、ごはんを「よそう」と「よそる」、赤ん坊を「負ぶう」と「負ぶる」、いずれも前者が古く、後者が俗語的という感じがします。私の場合、意味による使い分けをするかどうかは、あいまいです。
活用はいずれも五段活用で、過去形は「しなった」「よそった」「負ぶった」でいいでしょう。つまり、過去形では終止形が「う」か「る」か分からないところから、交替が起こったのでしょう。
見坊豪紀『〈'60年代〉ことばのくずかご』(筑摩書房)p.57によれば
「しなう」は辞書にある。「しなる」はない〔Yeemar注、当時の話〕。が、「しなる」は、「しなう」と同じくらいに新聞では使われているらしい。とのことです。
オリンピック〔Yeemar注、東京〕期間中、「しなう」6例「しなる」5例「しなり」(名詞)1例を新聞から採集した。
【958】
Re:ムチはしなう?しなる?
道浦俊彦
- 05/7/28(木) 8:33 -
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『はなしのくずかご』によると、1960年代には、もう「しなる」が出てきていたのですね。じゃあ、もう「しなう」の方が詩か何か出ないと見られない言葉になっているのでしょうね、おそらく。
【971】
Re:ムチはしなう?しなる?
POP3
- 05/7/31(日) 9:58 -
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▼道浦俊彦さん:
>『はなしのくずかご』によると、1960年代には、もう「しなる」が出てきていたのですね。じゃあ、もう「しなう」の方が詩か何か出ないと見られない言葉になっているのでしょうね、おそらく。
童謡「船頭さん」の歌詞に
元気いっぱい櫓がしなる
とあります.
作曲:河村光陽(1897-1946)
作詞:武内俊子(1905-1945)
だそうですから戦前にも「しなる」は登場していたのでしょう.
余談ですが,この歌詞を聞いて僕は「ろがす」という動詞があると思って
いました.
【972】
Re:ムチはしなう?しなる?
Yeemar
- 05/7/31(日) 11:29 -
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▼POP3さん:
>戦前にも「しなる」は登場していたのでしょう.
「船頭さん」は「昭和十六年七月キングレコード」ということですね(『童謡』野ばら社1983)。
【973】
Re:ムチはしなう?しなる?
佐藤
- 05/8/1(月) 18:05 -
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▼道浦俊彦さん:
>『はなしのくずかご』によると、1960年代には、もう「しなる」が出てきていたのですね。
方言差も考えたいところ。ここ十年くらいの論文で、誰のだったかで見た気がします(柴田武先生? 手紙で調査依頼が来たような記憶が……)。また、津軽方言などでは、共通語・東京語のワ行五段活用が、規則的にラ行五段活用化しているのは夙に有名。ただし、ここ10〜20年ほどのあいだで急速に共通語化が進んでいるようなので、若年層ではどんなものか。
【997】
Re:ムチはしなう?しなる?(しゃくる)
Yeemar
- 05/8/13(土) 18:02 -
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>ほかに、ごはんを「よそう」と「よそる」、赤ん坊を「負ぶう」と「負ぶる」
「しゃくる」と「しゃくう」というのもあり、前者は「さくる」の転、後者は「杓」+「う」という、名詞の動詞化でしょうか。ところが混用もされます。
扉口で一度振り返った伊作を、天上は凝と見遣り、そうして、(もう行け)というように顎を掬{しゃく}うようにした。(森茉莉「甘い蜜の部屋」〔1975年発表〕『新潮現代文学62』1981.04.15発行 p.259)「しゃくう」は、『大辞林』第2版によれば「手やひしゃくなどで液体や粉などをすくい取る。しゃくる」という意味しかありません。ところが、ここの「しゃくう」は、『大辞林』第2版の「しゃくる」(4)「あごを軽く突き出すようにして上げる。人に横柄に指示する時の動作」と同様の意味で用いられています。