仮名遣異聞「泥鰌」
佐藤
- 05/8/6(土) 21:07 -
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杉浦日向子氏が若くして世を去りましたね。最近、彼女にかかわる文章をあちこちで見かけます。そのなかに、泥鰌の仮名遣いに触れるものがありました。生きてるときは「どじやう」で、食材になると「どぜう」と記すというのが、『大江戸美味草子』にあるとか。どこまで裏が取れるか、興味があります。
http://www.asahi-net.or.jp/~wh4k-bnb/dosa/2001/20010714.html
純粋に仮名遣いの問題としては、そんな馬鹿なということになりますが、語形の異なり並みに見れれば、ありかなと思います(もちろん、発音上は同一でしょう)。類例はあるものか。
【1006】
Re:仮名遣異聞「泥鰌」
NISHIO
- 05/8/20(土) 5:34 -
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▼佐藤さん:
>生きてるときは「どじやう」で、食材になると「どぜう」と記すというのが、『大江戸美味草子』にあるとか。どこまで裏が取れるか、興味があります。
『大江戸
ところで、「どじやう」「どぜう」では、「どじょう」本人の状態が異なっていることを付記したい。「どじやう」は、「どじょう」が存命中の呼称で、「どぜう」は「どじょう」が食い物になった呼称である。それだから、たんぼに「どぜう」はいないし、はふはふつつく鍋に「どじやう」はいない。耳できいて、どじょうがどんな段階にあるか即わかるようになっている。それほど、江戸人とどじょうは付き合いが深かったのだ。再三出た「どじやう汁」は、生きたのをいきなり調理するから、あくまでも「どじやう」であり、対して「どぜう鍋」は、あらかじめ骨までやわらかく下茹でした姿煮や、裂いて頭を落とし、骨や内臓をきれいに取り除いた開き身をもちいるから、すでに「どじやう」ではなく、食材としての「どぜう」なのである。「どじやう(土壌)」ではなく「どぢやう(泥鰌)」ではないか、という話はさておき、
「どぜう」の表記の元祖駒形どぜうを始め、東京のどじょう料理店のお品書きは、ほとんどが「どぜうなべ(鍋)」と「どぜう汁」となっています。
昭和創業の桔梗屋だけは「どじょう鍋」で「どじょう汁」は記載なし。ここだけが生きたままのどじょうを出しているというわけでもなさそうですが…。
・駒形どぜう(浅草駒形) 享和元年(1801)
http://www.dozeu.co.jp/
(「どぜう」の由来→http://www.dozeu.co.jp/yurai.html)
・どぜう伊せ喜(深川高橋) 明治20年(1887)
http://www.iseki-dozeu.com/
・どぜう飯田屋(合羽橋) 明治36年頃(1903)
http://www.asakusa-umai.ne.jp/umai/iidaya.html
・どぜうひら井(吾妻橋) 明治36年(1903)
http://www.hanako-net.com/omise/detail.jsp?id=73008103&gosu=0
・どぜう桔梗屋(両国) 昭和8年(1933)
http://sdi.co.jp/kikyou/
>類例はあるものか。
「どじょう」を一般名詞、「どぜう」を固有名詞(もとは駒形の商標?)と考えると、
似たような例はいくつかあります。
【プディング】
卵・牛乳・砂糖・香料などを混ぜ、蒸し焼きにして柔らかく固めた洋菓子。プリン。
パン・米・果物などを加えたものもある。「カスタード‐―」 (広辞苑)
【プリン】
プディングの訛。カスタード‐プディングのこと。(広辞苑)
1967年にハウス食品工業(株)(当時)が発売した「プリンミクス」が起源(推測)。
http://housefoods.jp/products/catalog/index.php?cat=1,1111,1110
現在でもカスタードは「プリン」(主に安価な量産品)、その他は「プディング」が一般的。
【スナップエンドウ】
1970年代に米国で育種された莢も実も食べるタイプのエンドウ。英名:snap bean, sugar snap.
【スナックエンドウ】
1979年に(株)サカタのタネが「スナックえんどう」の品種名で発売したのが起源。
1983年に農水省が統一名称を「スナップエンドウ」と定めたが、市場では未だに混乱している。
【エシャロット】
小型のタマネギに似たヨーロッパ産の香味野菜。仏名:eshalote, 英名:shallot.
【エシャレット】
若採りラッキョウを髷状に束ねたもの。1955年頃に浜松の組合から「根ラッキョウ」の名で
出荷された新商品を、東京中央青果常務の川井彦二氏が「エシャレット」と命名した。
本物のエシャロットと区別のため「エシャ」「エシャラッキョウ」などと呼ぶこともあるが、
逆に本物のほうが「ベルギーエシャロット」「ベルギーエシャ」と表示されることが多い。
「どじょう」は生物(生き物・生もの)、「どぜう」は加工した食材、とする観点では…
【サケ】と【シャケ】
半分冗談でしょうが、前者をシャケと呼ぶのは聞かないような気もします。
方言でもなさそうです。「酒」とはアクセントで区別できるので問題ないはず。
広辞苑: サケの転。
大辞林: 「さけ(鮭)」に同じ。
新明解: 〔口頭〕魚のサケ。
岩波 : →さけ(鮭)
日国 : 「さけ(鮭)」に同じ。
大言海: さけノ訛。
【スルメイカ】と【するめ】
スルメイカの他に、ヤリイカやケンサキイカなども、するめに加工される。
【てれすこ】と【すてれんきょう】
お後がよろしいようで…
【1007】
Re:仮名遣異聞「泥鰌」
岡島昭浩
- 05/8/20(土) 16:55 -
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発音は同じだけれど、表記で書き分ける、という視点で行けば、「バレエ」と「バレー」とか、「ボウリング」と「ボーリング」とか、外来語系のものが思い浮かびます。
あと、無理矢理探せば、〈いやなおやじ〉を「おぢ」と書く、という風習が、数年前のどこかにあったような気がします。叔父・伯父は「おじ」だろうけれど。
「痔」だけは「ぢ」と書く、というのはちょっと違いますが、これが現代仮名遣だと思っている人もいるようで。
【1008】
Re:仮名遣異聞「泥鰌」
佐藤
- 05/8/22(月) 13:42 -
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▼NISHIOさん:
「どじやう」は、「どじょう」が存命中の呼称で、「どぜう」は「どじょう」が食い物になった呼称である。(中略)耳できいて、どじょうがどんな段階にあるか即わかるようになっている。
原文提示、ありがとうございます。ううむ。完全に言い分けていたと考えてますね。んん、そうだろうか。
【1010】
Re:仮名遣異聞「泥鰌」
NISHIO
- 05/8/24(水) 2:52 -
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「どぜう」の同類で、「お嬢様」を「おぜうさま」と書く例を思い出しました。
また、「おたく」を「ヲタク」「ヲタ」と省略するのも相当あるようです。
■お嬢様
"おぜう様" 236 件
"おぜうさま" 1,230 件 "おぜうさん" 732 件
"おぜうサマ" 7 件 "おぜうサン" 22 件
"おじゃうさま" 22 件 "おじゃうさん" 117 件
"おじやうさま" 1 件 "おじやうさん" 2 件
"おじゃう様" 8 件
"おじやう様" - 件
"おぢゃうさま" 6 件 "おぢゃうさん" 98 件
"おぢやうさま" - 件 "おぢやうさん" 2 件
"おぢゃう様" 5 件
"おぢやう様" - 件
"お嬢様" 710,000 件
"お嬢さま" 69,800 件 "お嬢さん" 639,000 件
"お嬢サマ" 703 件 "お嬢サン" 587 件
"御嬢様" 4,910 件
"御嬢さま" 104 件 "御嬢さん" 559 件
"御嬢サマ" 4 件 "御嬢サン" 23 件
"おじょう様" 489 件
"おじょうさま" 890 件 "おじょうさん" 7,840 件
"おじょうサマ" 28 件 "おじょうサン" 45 件
■泥鰌
"どぜう" 22,900 件
"どじょう" 1,190,000 件
"どじよう" 107 件
"どじゃう" 104 件
"どじやう" 89 件
"どぢゃう" 55 件
"どぢやう" 114 件
■御宅(全く別の語彙を相当数含むと考えられます。)
"おたく" 328,000 件
"オタク" 812,000 件
"オタ" 359,000 件
"ヲタク" 259,000 件
"ヲタ" 697,000 件