2005年10月17日

恐怖漫画と恐怖映画

【999】
恐怖漫画と恐怖映画
 高橋半魚
WEB
 - 05/8/17(水) 16:47 -
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ご無沙汰しています。苦しい時の岡島先生&皆様頼みですみません。
「恐怖漫画」という言葉は楳図かずおが作ったと言われています。それまでは「怪奇漫画」や「スリラー漫画」はあったが、それらは見た目の怖さにすぎず、心理に訴えかけるような怖さを描く漫画として、その語を作った、と。1961年10月頃刊の貸本漫画雑誌「虹」に発表した「口が耳までさける時」という作品で、この作品を「恐怖マンガ」としてお届けします、と楳図自身が書いています。その語の作風・志向性としても、まあ、納得していいと思っています。
 私が気になるのは、「恐怖映画」という言葉です。1961年以前に、普通に使われていたのでしょうか。
 他に、「恐怖小説」とは、あまり言いませんよね。

(なお、明後日から出張するので、お返事遅れるかもしれません。申し訳ありません)


【1000】
Re:恐怖漫画と恐怖映画
 岡島昭浩
 - 05/8/18(木) 13:04 -
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半魚さん、お久しぶりです。

▼高橋半魚さん:
> 私が気になるのは、「恐怖映画」という言葉です。1961年以前に、普通に使われていたのでしょうか。


「普通に」かどうかは分かりませんが、夢野久作『ドクラマグラ』で使われています。比較的最初の方の「卷頭歌」の少し後に、「『胎児の夢』と題する恐怖映画」と。他に、「恐怖劇」という言葉も見えます。

> 他に、「恐怖小説」とは、あまり言いませんよね。


江戸川乱歩がよく使っているようです。昭和10年の『改造』十月号に載った「日本探偵小説の多様性について」でも、
例へば異常な犯罪の経路を描いたもの、犯罪その他異常な事件の恐怖を主眼とするもの、怪奇なる人生の一断面を描いたもの、精神病者又は変質者の生活を描いたもの、ビーストン風の「意外」の快感に重点を置くものなどは、犯罪小説、怪奇小説、恐怖小説などに属するものであつて、探偵小説とは云へない。
とあります。

昔、英国で流行したそうです。

で、よく知らないのですが、どちらも翻訳語ではないのでしょうか。



【1001】
Re:恐怖漫画と恐怖映画
 高橋半魚
WEB
 - 05/8/18(木) 16:25 -
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▼岡島昭浩さん:

 ほんとに頼りになります、なりました。
そうですか、「恐怖小説」もありましたか。
 方向性も見えてきた感じがします。僕としても、今後、用例を増やしていきたいと思います。翻訳語だとすると、ゴシック小説だとか、そんな感じなのでしょうか。あと、ポーなどは、楳図自身も読んでいます。

 ご教示頂いたものを、論文ですこしだけですが、使わせていただく事になるかも知れません。予め、ご報告申し上げておきます。ありがとうございました。



【1003】
「恐怖小説」用例追加
 岡島昭浩
 - 05/8/19(金) 12:07 -
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江戸川乱歩『幻影城』「再版に際して」(江戸川乱歩推理文庫51のp11による)

読物時事 昭和二三・八・一(海外恐怖小説特集) 金剛石レンズ(オブライエン) 幽霊(モーパッサン) 死刑執行人(バルザック) 蝋燭の恐怖(コリンズ) いずれも訳者名なし


同書p40
セイヤーズは「探偵、怪奇、恐怖小説集」第一集の作品配列に於て一種の分類を行っている

ただし、原題の"Great short stories of detection, mystery and horror"(webcat)からも分かるように、「(探偵、怪奇、恐怖)小説集」。

同書p51
心理的スリル派(この派は多くの場合同時にサスペンス派でもある。映画「断崖」や最近の「窓」などから類推し得るような犯罪恐怖小説。

「恐怖映画」に、おしい用例。

p285-349は「怪談入門」。恐怖小説の歴史などが書かれています。

p397(「探偵小説叢書目録」)
「アルス・ポピュラー・ライブラリー 自大正十、十一年頃〜至同十四年」に、「フレデリック「恐怖の映画」」が採録されている、と。



【1004】
Re:恐怖漫画と恐怖映画 状況証拠ばかりでごめんな...
 佐藤
 - 05/8/19(金) 21:10 -
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> 私が気になるのは、「恐怖映画」という言葉です。1961年以前に、普通に使われていたのでしょうか。


 『日本大百科全書』(小学館)に「恐怖映画」の項があるのですが、この言葉の日本での使われ方などは触れてないのが残念です(参考文献に、S・S・プロウアー著、福間健二・藤井寛訳『カリガリ博士の子どもたち――恐怖映画の世界』(1983・晶文社)があがってました)。

 また、「1910年ごろからのドイツ表現派映画には、芸術的恐怖映画ともいうべき不気味な作品がある。30年代には、アメリカのユニバーサル映画が製作した『ドラキュラ』『フランケンシュタイン』『狼男(おおかみおとこ)』などがヒット、シリーズ化され、いまや恐怖映画の古典となっている」とあり、この種の映画が古くからあったことが分かりました。
 
 これらの映画が日本にも上陸してくると「恐怖映画」という言葉が誕生しそうです。とりあえず大正期から続いている『キネマ旬報』のDBだと、題名に「恐怖」のはいった作品が1919年から見られました(作品の完成年なのか、キネ旬に紹介された年なのか不明)。
 ・ 恐怖の瞬間 1919
 ・ 恐怖島 1920
 ・ 恐怖市場 1920
 ・ 恐怖の家 1922
 ・ 恐怖の一夜 1922 (以下省略。全100作品ヒット)
この頃以降には、「恐怖映画」という語の生まれる素地ができたことになります。なお、「活動(写真)」が「映画」に取って変わられるのは関東大震災(1923)ごろからだそうです(日国2による)。



【1012】
Re:「恐怖小説」用例追加
 高橋半魚
WEB
 - 05/8/25(木) 19:00 -
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 岡島さん、佐藤さん、ありがとうございました。
乱歩「幻影城」は、じつは楳図が10代の頃に読んでいる本の一つでした。
ご教示を参考にして、今回、初めて読みました。いや、もっと早く読んで
おくべき本でした。楳図作品のいくつかについて、元ネタの推測もできま
した。^^;
 佐藤さんにお示しいただいた恐怖映画も含めて、horror という言葉
の訳語のようですね。この、horror=恐怖、の内実をどう理解し構築した
かというような点が、作家的な問題なわけで、かなり方向性が見えてきま
した。ありがとうございました。


この記事へのコメント
高橋明彦さんより『日本文学』54-11「特集・怪異をひらく――近代の時空へ」をお送りいただきました。高橋明彦「楳図かずおの恐怖概念」所収のものです。
「恐怖マンガ」に関して論じておられ、本会議室での話題に触れておられます。
Posted by 岡島昭浩 at 2005年11月27日 17:32
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