「ぬ」と「ない」
Yeemar
- 05/9/5(月) 12:04 -
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本棚の筒井康隆『旅のラゴス』(新潮文庫)を久し振りに手にとってみると、1箇所、ページに折り目がついていました。何のつもりで折ったのだっけと思ってよく読むと、
城壁はほんの二間余の高さしかなく上部の幅も三、四尺であり石火箭が設置されると通行不能になるという不便な代物{しろもの}で、半日の守備さえおぼつかぬように見えた。(p.77)とありました。
「おぼつかぬ」「やるせぬ」等、「ぬ」「ない」の混乱の例を集めたスレッドがあったような気がしましたが、ありませんでしたので、新設しました。
「かたじけぬ」の幽霊例はこちらに書きました。「かたじけぬ」は、ウェブでは若干の例が拾われますが、まだ放送や活字では出会いません。
【1022】
Re:「ぬ」と「ない」
岡島昭浩
- 05/9/6(火) 0:17 -
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▼Yeemarさん:
>「かたじけぬ」は、ウェブでは若干の例が拾われますが、まだ放送や活字では出会いません。
『ことばのくずかご』p157下に、
(9)相手は/「かたじけぬ」/と言った。〔73・9 104(『代表作時代小説』昭和四十八年度版323〜324)とありました。誰の作品かは書いてありません。見坊豪紀氏には「「おぼつかぬ」の用例」[日本語]6-11|〈1966年11月〉2というものもあるのですね(未見)。
【1041】
Re:「ぬ」と「ない」
Yeemar
- 05/9/13(火) 21:48 -
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尾崎紅葉『多情多恨』に
「少しお話の出来ん事情です。」と覚束{おぼつき}そうもなく語{ことば}が濁る。(岩波文庫p.342)というのを発見し、おや、これはめずらしいと驚いて『日本国語大辞典』を見ると、初版でとっくに用例に採られていて、拍子抜け。ただし、見出しの形は「おぼつきそうもない」。これは「おぼつく」という動詞として立てるべきではないでしょうか。
【1048】
Re:「ぬ」と「ない」
Yeemar
- 05/9/19(月) 6:54 -
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こんなのもありました。
〔前略〕それを正確にかぞえあげようと試みても、おそらく成功はおぼつかず、すきもきらいも背中合わせだ。(島尾敏雄「死の棘」〔1977年単行本〕『新潮現代文学36』p.165)
「おぼつく」という言葉
という文章が入っていました(p68-71)