「この後」と「その後」『日本国語大辞典』を見ると、「このご(此の後)」ということばもあります。
道浦俊彦
- 05/10/19(水) 16:10 -
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ふと、不思議の思ったことがあります。
「この後」
という言葉は、副詞的には、
「このあと」
としか読めず「このご」とは言わないのに(「この後に及んで」とは言うが、これは名詞)、なぜ、
「その後」
という言葉は、
「そのあと」「そのご」
の2通りの読み方があるのでしょうか???
*浮雲(1887-89)〈二葉亭四迷〉二・一一「母親が此後(コノゴ)何様(どん)な言(こと)を云ひ出しても、決してその初の志を悛(あらた)めないと定ってゐれば」ほかに樋口一葉・国木田独歩の例も。明治には使われていたのでしょう。一方、「そのご(其の後)」も、明治からこっちの例しか載っていません。明治時代には、「このご」「そのご」が仲よく使われていて、対称をなしていたのでしょう。
すると問題は、今は「このご(此の後)」がなぜ使われなくなったのか(少なくとも一般的でなくなったのか)、ということになるでしょう。その理由は、「こんご(今後)」に吸収されたから、と見てはどうでしょうか。音も似ていますし。一方、「そのご(其の後)」の類語に「じご(爾後)」がありましたが、今ではあまり使われなくなりました。
つまり、ちょっと前ならば
こののち このご こんご(今後)・きょうこう(向後)
そののち そのご じご(爾後)
と、多くのことばがあったものが、だんだん整理されてきたという考えではどうでしょう。
なお、「このごにおよんで」は「この期に及んで」ですから、別のことばですね。
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