宮澤甚三郎『日本言語學』(芳賀矢一校閲、弘文館、明治37.8.5)という本がある。方言などにも言及することが多く(各地の方言談話の記録も有る)、面白い本である。
「音の鼻にかゝるを矯正する法」として、
「字ケシゴム」の附きたる鉛筆にて、懸壅垂の邊を突上げながら練習すべし
とあるとか、「或る場合に飲食物の鼻孔より出づる理由如何」とかある。
「薩摩人、佐渡人等のラ行音をダ行音に誤る理由、并に矯正法」というのがあるのだが、その中で、
故西郷従道侯、少時の名は隆道なりしに、侯は常に「ヂュードー」と発音せられしより、文字までも従道と書誤られしなりといふ。事実の如何は知るべからざれど兎に角薩州人としては有り得べき事柄なり。
とあるのが興味深かった。これはかつてどこかで聞いたことが有るのだが、明治時代の記録ということで嬉しい。《「隆盛」の弟だから「隆」》
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